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【発明の名称】 天然素材ジェル
【発明者】 【氏名】杉中 昭典

【氏名】秋山 研二

【氏名】秋元 孝仁

【氏名】大西 貴子

【要約】 【課題】海藻類から抽出生成される天然素材ゲルの使用を技術的前提として、当該天然素材のゲルに透明感を与え、粘度を自由に調整可能とする。

【解決手段】海藻から抽出生成した海藻ゲルにカバノキ科カバノキ属植物の樹液を配合する。また前記海藻ゲルは、紅藻類および褐藻類のうち少なくともいずれか一方の海草類から抽出精製した乾燥エキスに適当量の水分を添加してゲル化させたものを使用する場合がある。また前記樹液はシラカバ樹液であり、海藻ゲルに対する重量比で30〜99.2重量%を配合することが望ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】海藻から抽出生成した海藻ゲルにカバノキ科カバノキ属植物の樹液を配合したことを特徴とする天然素材ジェル。
【請求項2】前記海藻ゲルは、紅藻類および褐藻類のうち少なくともいずれか一方の海草類から抽出精製した乾燥エキスに適当量の水分を添加してゲル化させたものを使用することを特徴とする請求項1記載の天然素材ジェル。
【請求項3】前記樹液はシラカバ樹液であり、30〜99.2重量%を配合することを特徴とする請求項1記載の天然素材ジェル。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人体の皮膚や頭髪に塗布する各種のジェル製品に係り、とくに天然素材だけを用いた化粧料ジェルに関する。
【0002】
【従来の技術】取り扱い容易で、皮膚や毛髪につやと光沢を与えることの出来るジェル状製品は、近時、ハンドクリーム、フェーシャルクリーム等の各種フェーシャル製品、ファンデーション、アイシャドー、口紅等のメーキャップ製品、ヘアジェル、ヘアクリーム等の毛髪製品、サンスクリーンクリーム等の日焼け止め製品、虫よけ・虫さされ対応の製品、マッサージジェル、医療用の各種ジェル、制汗クリーム等に広く使用されるようになっている。
【0003】ところで、これらの製品に使用されるジェルは、各種の樹脂系素材、例えば、ポリオキシアルキレン、ポリ系シンリコン、イソパラフィン、ポリビニル等のアニオン性ポリマーなどを基本成分とする(例えば特開平6−100418号公報、特開平7−101826号公報、特開平8−73313号公報、特開平9−194323号公報等)。
【0004】一方、樹脂系素材をまったく使用しないゲルも勿論存在する。例えば寒天がそうであり、紅藻類(とくにテングサ属)の細胞膜中に存在する一種のヘミセルロースを熱湯で浸出し、冷却凝固させたものであり、食品以外にも一部の化粧品には古くから使用されていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、いわゆるジェル製品として広く用いられる樹脂系ゲルは、透明感があり、のびも良いという優れた側面があるものの、塩(塩化ナトリウム)の作用によってゲル状物質を構成する成分から水が分離するという難がある。これは化粧品にとっては少なくない問題である。化粧品としてのジェルは、皮膚や頭髪に塗って使用するが、皮膚細胞から絶えず排出される塩分が皮膚に塗布されているジェルから水分を分離させる結果、皮膚の表面にはポリ系の薄膜が形成されることになるからである。このためジェル製品を使用すると、皮膚に突っ張り感が起きたり、感覚的に僅かな痛みを伴うことがある。皮膚の表面に密着して形成された樹脂皮膜によって、皮膚の自由な伸縮が妨げられ、また皮膚呼吸も妨げられるからである。
【0006】また、こうして出来た皮膚表面の樹脂コーティングは、洗顔ソープで洗い落とすにしても時間がかかり、化粧料に関する十分な知識のない一般需要者の中には、きれいに樹脂皮膜を落とさないまま就寝し、翌日の化粧を上塗りすることもあって、皮膚の健康を保つ上での悪循環を繰り返すケースが考えられる。ジェル製品は化粧品や毛髪料だけではないので、腕や脚、胸部、腹部といった部分に使用している限りは、入浴時に十分洗い落とすことも可能であるが、首から上の部分は強くこすり落とすことが難しいので、かかる問題は特に化粧料、毛髪料において顕著となる。
【0007】一方、寒天をはじめとする天然のゲル状物質は、塩分による脱水作用がみられない。また皮膚に塗布しても細胞の皮膚呼吸を妨げない。このため化粧料、毛髪料その他、人体に塗布して使用する各種製品の原材料としてみると樹脂系素材では得られない格別の利点がある。
【0008】しかしながら天然のゲル状物質は、第一に白濁しており、化粧品としての実用に耐える十分な透明感をもたないという問題があり、第二に自由な粘度調整が難しく、伸びのある化粧料ジェルを得ることが出来ないという問題がある。逆に云えば、天然素材にはこのような問題があるため、透明感があり粘度調整が容易な樹脂系素材が多用されているという面がある。透明感は、製品購入時の見た目の色彩効果を高めるだけでなく、使用時の自然な色を表現するために欠かせない条件である。またジェルの粘度は、薄く使用する、厚く使用するといった、いわゆる使用量の自由な調整を可能とするために欠かせない条件である。
【0009】天然素材とはいえ、食品寒天のように白濁して伸びのないゲル状物質は、基礎となるテングサエキスの含有率を低下させない限りそのままでは化粧品には使用出来ないし、その場合でも天然素材を用いた化粧料を得るには、ハンドクリームのように自由な伸びをもたせるため多量の脂肪分を配合する必要が生ずるわけである。
【0010】そこで本発明の目的は、海藻類から抽出生成される天然素材のゲルを使用することを技術的前提として、当該天然素材のゲルに透明感を与えるとともに、天然素材のゲルの粘度を自由に調整可能とする点にある。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明に係る天然素材ジェルは、海藻から抽出生成した海藻ゲルにカバノキ科カバノキ属植物の樹液を配合する。
【0012】また前記海藻ゲルは、紅藻類および褐藻類のうち少なくともいずれか一方の海草類から抽出精製した乾燥エキスに適当量の水分を添加してゲル化させたものを使用する場合がある。また前記樹液はシラカバ樹液であり、海藻ゲルに対する重量比で30〜99.2重量%を配合する。
【0013】
【実施例】海藻から抽出生成されるゲル状物質に、ある種の樹液、例えばシラカバの樹液を配合すると、それまで白濁していたゲル状物質は無色透明となり、また樹液の配合量に略比例して増粘の作用を呈する。この結果、従来困難とされていた天然素材を用いた、透明で伸びのあるジェル製品を得ることが可能となる。
【0014】人体の皮膚に塗布して使用する各種のジェル製品としてみた場合、実用に耐える透明感と粘度は、当然のことながら基礎となる天然素材のゲルと樹液の配合比によって変化する。樹液の配合量を少なくするほど天然素材のゲルの特性が保持され透明感と伸びは落ち、樹液の配合量を多くするほど天然素材のゲルの特性が良好に向上して透明感と伸びが高まる。但し、樹液の配合量を増加させても塩分による脱水作用は認められず、この結果、基本的にはいかなる配合量をもってしても天然素材のゲルの特徴的な物性を劣化させることはなく、従って、化粧料、毛髪料、虫よけ製品、日焼け止め製品その他の用途に自由に適用できることがわかる。
【0015】樹液は、カバノキ科カバノキ属植物のもの、とくにシラカバの樹液を使用することが望ましい。わが国において多量に自生しており、樹液の取得が比較的容易であり、古くから安全性が確認されているからである。
【0016】尚、カバノキ科カバノキ属植物の樹液を使用する化粧料の提案は、従来から存在する。例えば、■ 特開平9−291012号公報■ 特開平9−291013号公報■ 特開平9−291021号公報である。しかし、いずれの提案もカバノキ科カバノキ属植物の樹液が本来的にもっているといわれる、漢方医学上の保湿効果、消炎効果、色素沈着の消失効果等を各種の化粧料に導入しようとするものであり、当然ながらジェル製品に応用する場合は従来の樹脂系ジェルの使用を前提とし、樹液それ自体の効能による美顔・美肌効果を獲得しようとするものであって、本発明における天然ジェルの透明化、粘度調整の自由化といった視点から樹液を構成要素としているわけではない。
【0017】本発明に係る天然素材ジェルは、塩分による脱水を惹起させない素材として海藻から抽出されるエキスゲルを使用する。海藻エキスの抽出方法は幾通りかあるが、例えば原料となる海草を熱湯で煮出して基本成分を抽出し、濃縮、乾燥させた精製物を使用し、ゲル化する際には適当量の水(とくに蒸留水)を使用する。熱湯を使用せずにエキスを抽出する場合は、過剰成分の残存を避けるため、好ましくは化学薬品を使用せず、可食性の抽出液を用いる。
【0018】原材料となる海藻は、例えば、紅藻類または褐藻類である。これらの海藻は、古くからある種のゲル状物質を得られることが知られており、人体への安全性も問題がないからである。尚、本発明は、天然ジェルの透明感と伸びを獲得することを基本目的とするので、海藻自体の薬効成分の有無や、樹液それ自体の薬効の有無は問わない。樹脂系素材を用いず、透明で伸びのあるジェルを得ることが出来るならば基本的には海藻の種類も、樹液の種類も限定されない。化粧料にミネラルや栄養分を添加しても皮膚細胞に吸収され難いことは近時の研究で広く知られるようになっており、むしろ、皮膚細胞の自由な活動(伸縮湾曲運動、呼吸)を制限しないことが重要であって、栄養成分の含有率の多寡は副次的な問題にすぎないからである。勿論、本発明に係るジェル製品においても天然のミネラル、脂肪、栄養素を添加する自由は残される。それらの成分を添加しても、皮膚細胞から排出される老廃物(とくに塩分)に起因する脱水作用を生じないことに変わりはなく、ジェルの基本物性に変化を生じさせないからである。
【0019】本発明に係るジェル製品を得る原材料となる海藻のうち、紅藻類は、特にツノマタ属、キリンサイ属、スギノリ属を使用することが望ましい。これらのエキスは硫酸基をもつ多糖類の一種で、ガラクトースおよびその硫酸エステルのナトリウム塩、カルシウム塩からなり、シラカバ樹液等に含まれる各種ミネラル、アミノ酸、油分(芳香油)が作用すると、無色透明化し、増粘作用を呈する。
【0020】また他に実用可能な海藻として、主成分アルギン酸の褐藻類がある。この抽出エキスに適当量の水分を加えて得たゲル状物質も、シラカバ樹液を添加すると無色透明のジェル状物質に変性転化する。尚、本明細書ではジェルとゲルとを粘度の相違によって区別した。本来的には区別が困難であるが、「ジェル」は製品として使用可能な柔らかい伸びのあるゲル状の物質、「ゲル」は化粧料等の製品としての使用に耐えない粘度の低い軟性物質(食用寒天など)を意味している。アルギン酸を主成分とする褐藻類抽出ゲルもまた、シラカバ樹液等に含まれる各種ミネラル、アミノ酸、油分(芳香油)が作用すると、無色透明化し、増粘作用を呈する。
【0021】本発明に係るジェルを得る場合、海藻エキス粉末は0.8〜3重量%程度を使用する。一方、樹液の配合量は、海藻エキス粉末、水、その他の添加物(ミネラルや栄養素等)の配合量に応じて決定する。例えば100gのジェルを得る際、抽出精製した海藻エキスの粉末を最小の0.8g使用した場合、残り99.2gを樹液とすれば水を加えなくても所期のジェルを得ることが出来るのであるが、コストの点で不利が出る可能性が高い。そこで例えば海藻エキス粉末2g、水30g、各種の栄養素30gを加え、残り38g樹液とする等、各種の配合量を調整することによって樹液の使用量を低減することが望ましい。尚、実験の結果、100gのジェルを得るに際して、樹液の下限使用量は約28g、より好ましくは30gであった。従って、樹液の配合量は最低30重量%、最高99.2重量%となる。この範囲で樹液を配合することにより、のびのある透明なジェルを得ることが可能となる。すでに述べたようにミネラル、栄養素、脂肪を適宜量配合しても良い。
【0022】そして、このような天然ジェルによれば、皮膚細胞から排出される老廃物、とくに塩分の作用を受けても当該ジェルは脱水作用を呈さず、常に自然な使用感を保つ。脱水による乾燥皮膜が形成されないので皮膚の曲げや伸縮にも柔軟に対応でき、つっぱり感が生じない。また皮膚呼吸も妨げられず、皮膚の健全を保つことが可能となる。また本発明に係るジェル製品は化粧品や毛髪料に限らず、医療用ジェル製品(例えば超音波エコージェル、心電図用ジェル、脳波用ジェル等)にも使用できる。尚、本発明において使用する天然素材は、海藻抽出ゲルを使用するが、他に可能性のある素材としては海老や蟹から得られるキトサン、ある種の植物の種子から抽出されるゲル状物質素材がある。これらについては現在、配合すべき素材の組み合わせや配合比率につき研究中である。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る天然ジェルによれば、海藻類から抽出生成される天然素材ゲルの使用を技術的前提として、当該天然素材のゲルに透明感を与え、粘度を自由に調整することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】396008015
【氏名又は名称】株式会社リノキア
【出願日】 平成10年7月1日(1998.7.1)
【代理人】 【識別番号】100099014
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 滿茂
【公開番号】 特開2000−26230(P2000−26230A)
【公開日】 平成12年1月25日(2000.1.25)
【出願番号】 特願平10−202797