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【発明の名称】 歯科用アルギン酸塩印象材
【発明者】 【氏名】堀江 真司

【氏名】水野 憲二

【要約】 【課題】アルギン酸塩印象材の練和時の手触りの柔らかさを保ったまま、自重による流れ性(タレ)の経時的な増加を抑えたアルギン酸塩印象材の提供。

【解決手段】ジブチルヒドロキシトルエンを好ましくは0.01〜1.5重量%含有する歯科用アルギン酸塩印象材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ジブチルヒドロキシトルエンを含有することを特徴とする歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項2】 ジブチルヒドロキシトルエンの含有量が0.01〜1.5重量%である請求項1記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【請求項3】 アルギン酸塩、硫酸カルシウムおよびジブチルヒドロキシトルエンを含有してなる請求項1又は2に記載の歯科用アルギン酸塩印象材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯科用アルギン酸塩印象材に関する。詳しくは、印象材ペーストの自重による流れ(以下、この現象を「タレ」と記す)の経時的な増大を防止した、安定性に優れた歯科用アルギン酸塩印象材に関する。
【0002】
【従来の技術】アルギン酸塩印象材は、アルギン酸塩が硫酸カルシウムなどのゲル化反応剤によりゲル化してゲル状硬化体を生ずることを利用したものであって、アルギン酸塩、ゲル化反応剤および充填剤から主としてなる組成物であり、歯牙などの様々な型取りに利用されている。
【0003】アルギン酸塩印象材の商品形態は、粉末タイプとペーストタイプの2種類に分類される。ペーストタイプは、アルギン酸塩と充填剤とを水を主成分とする溶液でペースト化した主剤と、ゲル化反応剤を主成分とする粉末状またはペースト状の反応剤とからなる。この両者を使用時に秤量、混合し、均一なペーストとして用いる。
【0004】粉末タイプは、アルギン酸塩に、ゲル化反応剤、ゲル化調節剤、充填剤等の各種成分を混合した粉末状のものであり、使用直前に水と練和して均一なペースト状にして用いる。上記の粉末タイプ、ペーストタイプのいずれも使用時に練和作業を行う必要がある。この練和作業の目的は、各成分を混合して均一組成物を得ると共に各成分の溶解を促し、均一に反応させることにある。即ち、練和作業は印象材を使用する際の重要な工程の1つである。
【0005】しかしながら、この印象材の練和作業は経験と力を要し、不慣れな作業者では均一に練和することが難しいという問題がある。
【0006】この練和作業を容易にする方法の一つは、印象材ペーストの粘度を低くすること、即ちペーストを柔らかくすることである。しかし、印象材ペーストの粘度を低くすると、印象採得時にもペーストが流動し易くなり不都合を生ずる。例えば歯牙の印象を採得する際に、ペーストが自重によりたれてしまい、必要な部分に十分な厚みがとれず、採得した印象の強度が不足し、あるいは良好な印象が得られないという問題が生じる。また、極端な場合には患者の咽頭に流れ込み、著しく不快感を与え、また患者に危険な事態を招く可能性さえある。
【0007】特に、アルギン酸塩印象材は、保管中にその主成分であるアルギン酸塩が解重合を起こして経時的に粘度が低下する性質がある。その結果、印象材自体も経時的に粘度低下を起こし、印象材ペーストとして使用する際に流動性が大きくなり過ぎ、かつ使用時毎に使用感が異なるという不都合を生じる。
【0008】粉末タイプでは、使用するたびに印象材粉末を所定量の水で練和するが、標準量より少ない水で練和する、いわゆる固練りを行うことにより、この経時変化による過剰流動性を回避することが考えられる。しかし、固練りでは出来上がった印象材ゲル体の含水量が少ない為、弾性歪みも小さくなり、歯牙から脱型する際に歯牙に負担を生じさせることになる。
【0009】また、ペーストタイプではこうした練和に際しての固さ調整ができないので、粘度低下した印象材は全く使用できないものとなり大きな問題である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来のアルギン酸塩印象材の練和時の手触りの柔らかさを保ったまま、自重による流れ性(タレ)の経時的な増加を抑えたアルギン酸塩印象材を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討を行った結果なされたもので、その要旨は、ジブチルヒドロキシトルエンを含有することを特徴とする歯科用アルギン酸塩印象材に存している。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の歯科用アルギン酸塩印象材は、アルギン酸塩印象材にジブチルヒドロキシトルエンが添加されることを特徴とする。本発明に使用されるアルギン酸塩印象材は、ジブチルヒドロキシトルエンを添加すること以外は通常のアルギン酸塩印象材と変りがなく、アルギン酸塩、ゲル化反応剤、ゲル化調節剤、充填剤等によって構成される。(なお、本発明における印象材の量的組成は、ペーストタイプの場合には分散媒又は溶媒、典型的には水、を除いた粉末換算の組成である)。
【0013】これらの各成分は、歯科用印象剤に通常使用されるものを適宜選択して用いることができる。アルギン酸塩としては、アルギン酸のナトリウム、カリウム、アンモニウムまたはトリエタノールアミン等の水溶性の塩が用いられる。アルギン酸塩は印象材全体の5〜25重量%、好ましくは7〜20重量%を占めるように添加される。ゲル化反応剤としては、水に溶解して2価以上の金属イオンを生ずる化合物が用いられる。好ましくは硫酸カルシウム2水塩、硫酸カルシウム半水塩、硫酸カルシウム無水塩等の硫酸カルシウムが用いられる。ゲル化反応剤は印象材の5〜30重量%、好ましくは、7〜25重量%使用される。
【0014】ゲル化調節剤としては、ナトリウム、カリウム等アルカリ金属の燐酸塩、蓚酸塩、珪酸塩、炭酸塩等が用いられる。これらの添加量は、印象材の0.01〜4重量%、好ましくは0.1〜3重量%が望ましい。
【0015】本発明の印象材には、目的に応じて他の成分を加えることができ、通常充填剤が添加される。充填剤としては、珪藻土、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム等が用いられるが、好ましくは珪藻土である。なかでも顕微鏡で観察して円盤状のものと桿状のものとを含む珪藻土を用いるのが好ましい。充填剤は印象材の30〜89.8重量%、好ましくは40〜85重量%添加される。
【0016】更に本発明のアルギン酸塩印象材には、上記の添加剤の他に、本発明の目的を損なわない限り、その他の添加剤、例えば、歪み調整剤、相性改良剤、界面活性剤その他の粉塵防止剤、着色剤や着香料、等の添加剤を含有していてもよい。また、本発明の印象材は粉末状およびペースト状のいずれのタイプとすることもできる。
【0017】本発明の歯科用アルギン酸塩印象材は、ジブチルヒドロキシトルエンを含有する。添加されるジブチルヒドロキシトルエンの量は目的に応じて増減することができるが、一般には、0.01重量%以上、1.5重量%以下、好ましくは0.02重量%以上、1.2重量%以下である。このジブチルヒドロキシトルエンを添加することにより自重による流動性、すなわちタレの経時的な増加を抑制することができる。添加量が0.01重量%未満では経時的なタレの増加の抑制効果が不十分となり、一方添加量が1.5重量%を越えて多くなっても、添加量の増加に見合った効果の増加は得られず経済的でないだけでなく、印象の強度が低下するという悪影響が生じることがあり、好ましくない。
【0018】なお、このジブチルヒドロキシトルエンは、他の酸化防止剤、例えばビタミンC(アスコルビン酸)やビタミンEなどと併用してもよい。本発明におけるジブチルヒドロキシトルエンの作用は、主にアルギン酸塩の解重合を予防することであるので、粉末タイプの印象材の場合には、ジブチルヒドロキシトルエンをアルギン酸塩と混合しておくことが好ましく、また、ペーストタイプの場合には、ジブチルヒドロキシトルエンをアルギン酸塩を主成分とする主剤ペーストに含有させておくのが好ましい。
【0019】また、本発明においては、カラギーナンやキサンタンガム等の多糖類を併用すると、練和後のペーストのタレの程度を調整することができるので好ましい。この場合の、カラギーナンやキサンタンガムの添加量は印象材の0.05〜0.7重量%が好ましい。
【0020】
【実施例】以下に実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0021】<測定方法>以下の実施例及び比較例における測定は下記の方法によって行った。
(1)ゲル化時間:JIS T−6505(歯科用アルギン酸塩印象材)に準拠して測定した。
【0022】(2)タレ:練和した印象材ペーストをガラス板上に27×20×10mmに盛り付け、練和開始から1分後にガラス板を垂直に立ててゲル化させた。ゲル化後、垂直方向のゲル化物の長さを測定し、初期の長さである20mmを除いた長さをタレとした。
【0023】(3)経時変化:アルミニウム箔をラミネートした合成樹脂製の袋に印象材を入れて密封し、45℃の恒温槽中で8週間保持した。その後、恒温槽から取出し、23℃に降温させた後、評価試験に供した。
【0024】<実施例、比較例>(1)印象材の調製表−1に記載の各成分を配合し、均一になるように混合した後、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中に一晩放置した。なお、ジブチルヒドロキシトルエンは武田薬品(株)製「BHT」を使用した。
【0025】(2)印象材の評価試験印象材に2.5重量倍の水を加えて練和して印象材ペーストを調製し、これを用いて上記の方法に従って、ゲル化時間、タレの各試験を行った。練和および試験は全て温度23℃、相対湿度50%の雰囲気中で行った。結果を表にまとめて示す。
【0026】
【表1】

【0027】<結果の評価>実施例1、2は、いずれも初期のタレは比較例と同等であるが、経時後のタレは比較例に比べて著しく少ない。即ち、本発明のジブチルヒドロキシトルエンの添加による経時変化抑制効果は明らかである。
【発明の効果】本発明のジブチルヒドロキシトルエンを含有する歯科用印象剤は、長時間保管後も、ペーストの自重による流動性(タレ)の増加が抑制され、保管前と同様に使用することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【出願日】 平成10年7月8日(1998.7.8)
【代理人】 【識別番号】100103997
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 曉司
【公開番号】 特開2000−26227(P2000−26227A)
【公開日】 平成12年1月25日(2000.1.25)
【出願番号】 特願平10−192668