| 【発明の名称】 |
肢体駆動装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】榊 泰輔
|
| 【要約】 |
【課題】肢体への急激な過負荷を防止しつつ、関節可動域訓練と筋肉のストレッチ訓練をすることができる肢体駆動装置を提供する。
【解決手段】患者の肢体を支えて運動させる機構部1と、機構部1に設けられて患者の肢体にかかる負荷を計測する負荷計測手段5と、機構部1が動作してたどる軌道を予め設定する軌道設定手段10と、軌道設定手段10に設定された設定軌道を負荷計測手段5から得られる負荷の大きさと方向に沿って修正する軌道修正手段9とを有し、軌道修正手段9は、負荷計測手段5の負荷情報を受けると、機構部1が駆動する負荷の仮想慣性、仮想粘性、仮想剛性でなる2次系動力学モデルまたは仮想粘性、仮想剛性でなる1次系動力学モデルの何れかと、積分項の演算をする演算器とを持つ仮想インピーダンスモデルを用いて位置偏差を求め、軌道設定手段10の軌道情報にその位置偏差を加算して軌道を修正する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】患者の肢体を支えて運動させる機構部と、その機構部に設けられて患者の肢体にかかる負荷を計測する負荷計測手段と、前記機構部が動作してたどる軌道を予め設定する軌道設定手段と、その軌道設定手段に設定された設定軌道を前記負荷計測手段から得られる前記負荷の大きさと方向に沿って修正する軌道修正手段と、を有する肢体駆動装置において、前記軌道修正手段は、前記負荷計測手段の負荷情報を受けると、前記機構部が駆動する負荷の仮想慣性、仮想粘性、仮想剛性でなる2次系動力学モデルまたは仮想粘性、仮想剛性でなる1次系動力学モデルの何れかと、積分項の演算をする演算器とを持つ仮想インピーダンスモデルを用いて位置偏差を求め、前記軌道設定手段の軌道情報にその位置偏差を加算して軌道を修正することを特徴とする肢体駆動装置。 【請求項2】前記軌道設定手段は、前記機構部の教示によって軌道が設定され、その教示中は前記仮想インピーダンスモデルの仮想剛性と前記積分項のゲインが0に設定されることを特徴とする請求項1記載の肢体駆動装置。 【請求項3】前記仮想インピーダンスモデルを演算する際は、前記積分項の演算をする前記演算器の後段にリミッタを設けて演算することを特徴とする請求項1記載の肢体駆動装置。 【請求項4】前記積分項の演算をする前記演算器の後段に、予め設定された軌道と実際の軌道とのずれに応じて前記演算器の演算結果を調整する積分量調整部を設けるとともに、実際の軌道があらかじめ設定した軌道の近傍に近づけば、1より小さい数を前記演算結果に乗じて調整することを特徴とする請求項1記載の肢体駆動装置。 【請求項5】前記積分項の演算をする前記演算器の積分ゲインは、あらかじめ設定された軌道と実際の軌道とのずれに応じて変化させるとともに、実際の軌道があらかじめ設定した軌道の近傍に近づくにしたがって前記積分ゲインを漸近的に0に近づけることを特徴とする請求項1記載の肢体駆動装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、下肢や上肢のような肢体の一部を運動させてその機能を向上する医療用の機械装置であって、肢体にかかる過負荷を防止しつつ、目標とする肢体の可動域に到達させることができる肢体駆動装置に関する。 【0002】 【従来の技術】最近の医療分野では、肢体に運動させて筋力の衰えを回復したり、増強したりするための様々な装置が開発されている。例えば、筋・骨格系統の機能の低下を回復させて全身の機能を改善し、健康状態を維持するため、関節可動域訓練や、筋力増強訓練、持続力増強訓練、協調性訓練、神経筋再教育、その他の訓練を行うことができる運動療法装置が開発されている。また、整形外科に関しては、関節軟組織修復と関節可動域維持・拡大のため、患者の肢体にかかる負荷を計測する手段と負荷の大きさと方向に沿って軌道を修正する手段を備えて関節他動運動をする肢体駆動装置が開発されている。そこで、まず、従来の整形外科で用いられる関節運動装置と理学療法科で用いられる運動療法装置について説明する。なお、ここで引用する従来の技術は、関節の可動域を確保するための関節可動域訓練と、筋力のストレッチと増強などの訓練が目的とされている。その訓練では、肢体にかかる急激な負荷が関節や筋肉にとって大変危険であるため、そのような負荷がかかることを回避することが必要である。しかしながら、ある大きさ以下の定常的な負荷はむしろかけながら、目標とする関節可動域まで到達したり、筋肉をストレッチすることが重要である。 【0003】従来技術の第1グループの技術は、たとえば、特開昭60−179062号、特開昭60−232158号、特開昭61−170464号、特公平4−14028号の各公報などに開示された発明によると、肢体の稼働角度を数値で設定すると、その角度にしたがって一定速度で患者の肢体を運動させるいわゆる連続他動運動を行う。これは、関節可動域訓練を主な目的とする。これらの従来技術にもとづく製品には、例えば、マンソン社のL4Kがある。こうした装置には一般にリバースオンロードという機能があり、モータなどの駆動源にかかる負荷を監視して、高負荷時には肢体関節への過負荷を避けるため、一時停止や運動方向を反転させる機能がある。 【0004】従来技術の第2グループの技術は、例えば、特公昭57−44337号、特公平3−54587号の各公報に開示された発明によると、他動運動の他に筋力増強などを目的とした、等尺運動、等張運動、等速運動の自動運動を行う。他動運動の場合、先の角度入力の他に肢体を直接動かすいわゆる直接教示手段を用いて稼働角度を時系列データとして設定すると、その時系列データにしたがって肢体を運動させることができる。また自動運動の場合、装置によって肢体が動かされる他動運動とは異なり、肢体が能動的に力を発揮して運動するものである。なお、これらの従来技術に基づく製品にも、肢体と関節への負荷を監視する機能が一般的に付加されている。この場合、ロボット工学におけるインピーダンス制御が適用される。インピーダンス制御では、動作する部分の慣性と、粘性、弾性の仮想インピーダンスモデルによる2次動力学モデルが設定され、負荷の大きさに応じてそのモデルに追従して倣い動作が行なわれる。そのため、制御装置に設定される仮想インピーダンスモデルと計測した負荷の大きさと方向とにしたがって、あらかじめ入力しておいた機構部の軌道を負荷に倣う方向に修正し、患者に過大な負荷がかからないようになっている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところが、第1グループの従来技術の場合には、リバースオンロード機能が働く負荷のしきい値以下では関節可動域訓練を実施できるが、そのしきい値以上の負荷がかかる場合には動作を反転するために、目標の関節可動域まで装置の動作が到達せず目標とする関節可動域訓練が実施できない。また、そのしきい値はほとんどの場合変更することができないか、変更できても、しきい値をあげれば肢体への急激な過負荷防止ができないため肢体に痛みが発生するなど、いずれにしても訓練に不都合である。 【0006】また、第2グループの従来技術の場合には、いくつかの考案にはインピーダンス制御機能が組み込まれ、過負荷を防止することができる。これは、肢体からの負荷の大きさに応じて装置の動作軌道のずれを発生させることで実現している。しかし、この機能が、今後は関節可動域訓練や筋肉のストレッチ訓練を実施するには問題となる。通常、健常者の場合には肢体の剛性は小さく、肢体が柔らかくなっているが、一方、患者の場合には関節や筋肉が固く、肢体の剛性が大きい傾向にある。これより、装置からみた肢体の剛性(関節の固さや筋肉の固さの総合されたもの)がある程度存在している限り、目標とする関節可動域に到達できない、あるいは目標とする筋肉のストレッチができないことになる。以上のことから、かつ、目標の関節可動域まで装置の動作が到達せず目標とする関節可動域訓練および筋肉に定常的な負荷をかけるストレッチ訓練を実施することを両立させて実施することが、従来技術では実現できなかった。ところが前記の従来技術は、いずれのグループも、肢体への急激な過負荷を防止しつつ、関節可動域訓練と筋肉のストレッチ訓練をするには不十分であった。 【0007】 【課題を解決するための手段】上記の問題を解決するため、本発明の肢体駆動装置は、患者の肢体を支えて運動させる機構部と、その機構部に設けられて患者の肢体にかかる負荷を計測する負荷計測手段と、前記機構部が動作してたどる軌道を予め設定する軌道設定手段と、その軌道設定手段に設定された設定軌道を前記負荷計測手段から得られる前記負荷の大きさと方向に沿って修正する軌道修正手段と、を有する肢体駆動装置において、前記軌道修正手段は、前記負荷計測手段の負荷情報を受けると、前記機構部が駆動する負荷の仮想慣性、仮想粘性、仮想剛性でなる2次系動力学モデルまたは仮想粘性、仮想剛性でなる1次系動力学モデルの何れかと、積分項の演算をする演算器とを持つ仮想インピーダンスモデルを用いて位置偏差を求め、前記軌道設定手段の軌道情報にその位置偏差を加算して軌道を修正することを特徴とする。また、本発明の肢体駆動装置の軌道設定手段は、機構部の教示によって軌道が設定され、その教示中は前記仮想インピーダンスモデルの仮想剛性と前記積分項のゲインが0に設定されることを特徴とする。さらに、本発明の肢体駆動装置は、仮想インピーダンスモデルを演算する際は、前記積分項の演算をする前記演算器の後段にリミッタを設けて演算し、或いは、前記積分項の演算をする前記演算器の後段に、予め設定された軌道と実際の軌道とのずれに応じて前記演算器の演算結果を調整する積分量調整部を設けるとともに、実際の軌道があらかじめ設定した軌道の近傍に近づけば、1より小さい数を前記演算結果に乗じて調整し、或いは、前記積分項の演算をする前記演算器の積分ゲインは、あらかじめ設定された軌道と実際の軌道とのずれに応じて変化させるとともに、実際の軌道があらかじめ設定した軌道の近傍に近づくにしたがって前記積分ゲインを漸近的に0に近づけることを特徴とする。上記手段により、肢体への急激な過負荷を防止しながら、目標の関節可動域まで装置の動作が到達せず目標とする関節可動域訓練、および筋肉に定常的な負荷をかけるストレッチ訓練を実施する肢体駆動装置を提供できる。また、インピーダンスモデルに積分項を挿入して構成した場合にも、目標とする関節可動域をオーバーシュートして肢体を駆動する危険性がない肢体駆動装置を提供できる。 【0008】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施例の主な構成を示すブロック図である。図において7は治療や訓練を行う患者の下肢であり、1は下肢7を動かす機構部である。機構部1は、基部2と、駆動軸3A、3B、3Cと、その間をつなぐリンク4A、4Bと、下肢7を把持する把持部6と、負荷計測手段5とからなる。駆動軸3A、3B、3Cにはモータと減速機、角度・角速度検出器が内蔵されており、減速機を介しモータによって駆動される。モータまたは駆動するリンクの角度または角速度は角度・角速度検出器によって検出される。下肢7にかかる負荷は負荷計測手段5によって計測され、その負荷情報fは負荷センサアンプ8に送られて、増幅された負荷情報Fが軌道修正部9へ送られる。軌道修正部9では、その内部に設定された仮想インピーダンスモデルと、教示された軌道があらかじめ記憶されている軌道設定部10の軌道情報Xtと、負荷情報Fとをもとに軌道を修正し、修正軌道X0が制御装置11に送られる。制御装置11は、駆動軸3A、3B、3Cに内蔵されたモータを駆動するサーボアンプと、駆動軸3A、3B、3Cに内蔵された角度・角速度検出器の信号を受けて機構部1が修正軌道Xoの通りに動作するようサーボアンプに指令を与える制御器を備えている。こうして、機構部1の全構成要素を使い、下肢7を修正軌道X0に沿うよう駆動する。なお、軌道設定部10には、機構部1の先端すなわち把持部6の位置と姿勢の時系列データ、あるいは駆動軸3A、3B、3Cにおける角度の時系列データ、あるいは下肢7の各関節の曲げ角度を機構部1から教示軌道情報tとして受け取り、時系列データとしてその教示軌道情報tがあらかじめ記憶されている。その時系列データとは、運動の始めから終わりまでの運動周期をひとつのパターンとして記憶したもので、そのパターンをある回数繰り返すことによって治療が行われる。なお、軌道設定部10が軌道情報を機構部1の実際の動作情報である教示軌道情報tとして得る代わりに、軌道修正部9から制御装置11へ伝えられる修正軌道X0を得ても良い。したがって、どちらかにより軌道情報を得ることができる。 【0009】次に、軌道修正部9について図2を用いて説明する。図中、21はインピーダンスモデルを演算するインピーダンスモデル演算部であり、22は加算器である。軌道修正部9が負荷センサアンプ8から負荷情報Fをうけると、インピーダンスモデル演算部21によって軌道修正のための位置偏差ΔXが計算される。この位置偏差ΔXと軌道情報Xtとが加算器22で加算されると、図示しない飽和防止用のリミッタを通じて、修正された軌道Xoが出力される。 【0010】ここで、本発明の特徴を表わしているインピーダンスモデル演算部21について説明する。従来、インピーダンスモデルには、慣性M、粘性B、剛性Kのいわゆる2次動力学モデルが使用されている。これに対し、本発明では、その2次モデルに新規に積分項が加えられている。負荷情報Fを入力とし、位置偏差ΔXを出力とした時、これらの関係は(1)式であらわされる。ただし、以下は周波数領域で表わしたもので、積分ゲインをHとしている。 ΔX(s)=F(s)/{Ms2+Bs+K+H/s} (1) このとき、修正された軌道Xoは(2)式のようになる。 Xo(s)=Xt(s)+ΔX(s) (2) ここで、Xtは教示軌道である。従来の仮想インピーダンスモデルを使うと、負荷Fに対し、慣性M、粘性B、剛性Kのいわゆる機械系の2次モデルに沿って過渡的な応答を行なうことができる。このため、リハビリ装置の場合は患者の肢体への負荷に対し柔らかくならう動作を実現していた。ところが、定常状態のときは仮想剛性Kの大きさにもとづくF/Kという位置偏差が残るため、目標とする関節可動域まで把持部6の位置が到達せず、関節可動域訓練が十分に行なえなかった。これに対し、本発明の仮想インピーダンスモデルでは、積分項H/sを加えたことにより、いわゆる制御理論における内部モデル原理により、一定の大きさの負荷Fに対し、位置偏差を0にすることができる。一方、それ以外の急激に変動する負荷に対しては、位置偏差を0にする必要はなく、むしろ従来どおりの、負荷に対し柔らかくならう動作を実現できるのである。ここで、上記は治療動作中の機構部1の動作について説明したが、機構部1の動作を教示する場合は、剛性Kと積分項のゲインを0に設定し、かつ、制御系が不安定にならないように粘性項を小さい値に設定すると、機構部1はフリーに動くようになるので、肢体を把持した状態で自由に動作を教示できる。このときの軌道が時系列データとして、軌道設定部10に記憶される。 【0011】次に、仮想インピーダンスモデルを離散系として演算する場合のインピーダンスモデル演算器21の構成について図3を用いて説明する。図において、31は位置偏差Xの前回、前前回の値Xp、Xppを演算する演算器、32はその演算結果と負荷情報Fを受けると図に示す関数を演算する演算器、33は積分項の演算をする演算器、34は入力値の大きさを制限する飽和防止リミッタ、35は加算器、36は図に示す関数を演算する演算器、37は除算器である。この構成で、まず、位置偏差Xの前回、前前回の値Xp、Xppが演算器31で計算されると、演算器32では、その計算結果と、負荷情報F、インピーダンスモデルの係数M、B、K、制御周期Tとを用いて図に示す計算が行われる。また、演算器33が位置偏差をうけて積分項の計算を行い、計算結果αを出力すると、飽和防止リミッタ34で飽和が点検され、その点検結果が出力される。飽和防止リミッタ34と演算器32の出力は加算器35で加算されると加算結果βが得られる。一方、演算器36でインピーダンスモデルの係数M、B、K、Hと制御周期Tをもとに図に示す関数が演算されると定数γが得られる。2つの計算結果β、γを受けると除算器37ではβ/γの計算が行われ、最終的に軌道修正のための位置偏差ΔXが計算される。なお、ここでは便宜上位置偏差ΔXを位置偏差Xと表わしている。また、qはいわゆる離散系で用いられるシフトオペレータである。なお、演算器31、33の入力となっている位置偏差と、除算器37の出力となっている位置偏差ΔXは等しい量である。制御ブロックを簡単化するため図示していないが、位置偏差ΔXがフィードバックされ、形式上は演算器31、33にそれぞれ入力される。ただし、実際には、位置偏差Xは演算器31、33で過去の偏差量に変換されるため、位置偏差ΔXが直接計算に用いられるわけではない。 【0012】ここで、演算器33と飽和防止リミッタ34の動作について補足説明する。演算器33では、そもそも位置偏差が存在するときにその偏差を積分し、その積分量にゲインをかけたものが出力されるが、実際のシステムではメモリなどに制約があるため、無限に積分することができない。その積分された量を制限するために飽和防止リミッタ34が設けられているのである。この制限の上限は、本発明を適用するシステムのメモリの制約などにより適宜決めればよい。 【0013】次に、積分項の計算をする演算器33について図4を用いて説明する。図4は演算器33をその演算内容と等価な演算器に置き換えたブロック図を示しており、41、44はシフトオペレータにより前回の値を求める演算器、42は積分ゲインHと制御周期Tを用いて図に示す演算をする演算器、43は加算器である。このような構成をした演算器33が、位置偏差Xを入力すると演算器41でシフトオペレータqにより前回の値が求められ、その値と積分ゲインH、制御周期Tとから図に示す計算が行われる。加算器43では、その出力αから演算器44のシフトオペレータで前回の値を計算した結果と演算器42の計算結果とが加算されて出力αが得られる。インピーダンスモデル演算部21と、そこで演算される積分項の演算内容が上記のようになっているので、肢体にかかる急激な過負荷を防止することができ、同時に、目標とする関節可動域訓練と筋肉に定常的な負荷をかけるストレッチ訓練を実施することができるのである。 【0014】次に本発明の第1の変形例を図5を用いて説明する。その変形例とは、飽和防止リミッタ34に代えて積分量の調整部38を設け、これによって演算器33の情報が調整される点が特徴である。積分量の調整部38は、目標とする関節可動域に対し駆動される肢体の位置のオーバーシュートを避けるために設けられている。そもそも、積分項は、位置偏差が存在するときに、その偏差を積分し、その積分量にゲインをかけたものを積分量として出力とするのであるが、目標とする関節可動域に十分近づいたときにも積分量は増加する一方であり、その関節可動域を超えてはじめて積分量が減少する。従って、従来は関節可動域に対するオーバーシュートが避けられなかった。そこでこの変形例では、図2の位置偏差ΔXが十分小さくなった時を目標関節可動域に十分近づいた時とし、この場合に、制御周期ごとに1より小さい数を積分量に乗じて積分量を滑らかに減少させることによって、積分量の調整を行なうようにしている。なお、この場合、目標関節可動域に近い範囲を予め設定し、その範囲内に入ったら、可動域との距離、すなわち位置偏差ΔXに応じて1から0までの単調に減少する数を、積分量に乗じてもよい。 【0015】次に本発明の第2の変形例を図6を用いて説明する。その変形例とは、演算器36の積分ゲインHを可変にする操作36Cを設け、この操作によって目標関節可動域に対する肢体位置のオーバーシュートを回避することができるようにした点が特徴である。目標関節可動域に対し、積分ゲインHを十分近い範囲をあらかじめ設定しておくと、この範囲外では、積分ゲインHは予め設定した値を保ち、操作36Cは何もしない。一方、その範囲内では、図2の位置偏差ΔXに応じて、操作36Cにより積分ゲインHを漸近的に小さくする。このとき、位置偏差ΔXに対して、予め設定した積分ゲインHの値から0まで単調に減少するような関数を設定しておき、これに応じて積分ゲインHを調整する。 【0016】次に本発明の第3の変形例を図7を用いて説明する。その変形例とは、演算器42の積分ゲインHを可変にする操作42Cを設け、この操作によって目標関節可動域に対する肢体位置のオーバーシュートを回避することができるようにした点が特徴である。目標関節可動域に対して十分近い範囲をあらかじめ設定しておくと、この範囲外では積分ゲインHは予め設定した値を保ち、操作42Cは何もしない。一方、その範囲内では、図2の位置偏差量ΔXに応じて、操作42Cにより積分ゲインHを漸近的に小さくする。このとき、位置偏差ΔXに対して、予め設定した積分ゲインHの値から0まで単調に減少するような関数を設定しておき、これに応じて積分ゲインHを調整する。これら、いずれの変形例によっても、第1実施例と同様に肢体にかかる急激な過負荷を防止することができ、同時に、目標とする関節可動域訓練と筋肉に定常的な負荷をかけるストレッチ訓練を実施することができるのである。 【0017】次に、負荷計測手段5の実施例のいくつかを以下に示す。これには例えば、患者の肢体にかかる負荷を計測する手段として、図1で示したように、把持部6の根元に力センサを備えることで患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、図示していないが、別の手段として、図1の機構部1の各駆動軸3A、3B、3Cにトルクセンサを備え、把持部6の位置と姿勢情報から、患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、別の手段として、図1に示したアームの各軸に備えたモータの電流値を用いることで患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、図示していないが、別の手段として、図1に示したアームに設けた各モータの電流値と各モータの速度情報とを用いたいわゆる外乱オブザーバを用いることで患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、図示していないが、別の手段として、図1の駆動される肢体の主要な筋肉の筋電情報と、そのときの肢体の各関節の角度情報とから、患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、図示していないが、別の手段として、図1の駆動される肢体の主要な筋肉のふくらみの大きさと、そのときの肢体の各関節の角度情報とを計測することで、患者の肢体から装置への負荷を計測することができる。また、別の手段として、以上の計測手段を組み合わせることで患者の肢体から装置への負荷をより精密に計測することができる。これはたとえば、各出力に重みをつけて加算することで実現できる。 【0018】なお、本発明の装置は、関節組織または筋肉またはじん帯またはその他の関節組織の治療を一般に対象とするものであって、実施例で示したような股関節と膝関節の関節や筋肉等の組織の治療を対象とするものに限定されるものではなく、肢体の各部の関節や筋肉に容易に適用できるものである。また、前記実施例では、駆動軸3A、3B、3Cのモータに電気式モータを用いることを想定していたが、本発明によるとこれに限られることはなく、油圧式サーボ駆動手段や空気圧式サーボ駆動手段を用いても同様な効果が得られる。 【0019】 【発明の効果】以上述べたように、本発明の肢体駆動装置は、患者の肢体にかかる負荷を計測する負荷計測手段と、負荷の大きさと方向に沿って設定軌道を修正する軌道修正手段とを備え、肢体への急激な過負荷を防止しながら、目標とする関節可動域訓練、および筋肉に定常的な負荷をかけるストレッチ訓練を実施するので、肢体への急激な過負荷を防止しながら関節可動域訓練・筋肉のストレッチ訓練を実施するには不十分であるという従来の問題と、訓練をする際に目標関節可動域を越えて肢体がオーバーシュートするという従来の問題を解決できるという効果がある。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000006622 【氏名又は名称】株式会社安川電機
|
| 【出願日】 |
平成10年12月28日(1998.12.28) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2000−189475(P2000−189475A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月11日(2000.7.11) |
| 【出願番号】 |
特願平10−373847 |
|