トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学



【発明の名称】 人工歯仮止め用蝋材支持板
【発明者】 【氏名】加賀 真史

【氏名】長谷川 明

【要約】 【課題】使用後、焼却処分されても、焼却炉を損傷させることが少なく、埋立処分されても、土壌中の微生物によって水、炭酸ガスといった無害な物質に分解されて減容し、埋立処分場の処分容量を減少させることのない人工歯仮止め用蝋材支持板を提供する。

【解決手段】人工歯仮止め用蝋材の装着部が形成された蝋材支持板が、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体、ポリL−乳酸に例示される生分解性プラスチックから構成されてなることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 人工歯仮止め用蝋材の装着部が形成された蝋材支持板において、該蝋材支持板が生分解性プラスチックからなることを特徴とする人工歯仮止め用蝋材支持板。
【請求項2】 生分解性プラスチックが3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体であることを特徴とする請求項1記載の人工歯仮止め用蝋材支持板。
【請求項3】 生分解性プラスチックがポリL−乳酸であることを特徴とする請求項1記載の人工歯仮止め用蝋材支持板。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、人工歯用保持板に用いる人工歯仮止め用蝋材支持板に関するものである。さらに詳しくは、この発明は、前歯部、臼歯部用等の人工歯が保持された人工歯用保持板に用いる人工歯を仮止めする蝋材を装着するための蝋材支持板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】総義歯または部分床義歯を作製するに際し、必要とする人工歯の配列状態、口腔内での咬合状態等を判断するのに、人工歯仮止め用蝋材支持板に形成された蝋材装着部に粘着性のある蝋材を装着し、該蝋材の粘着性を利用して前歯部、臼歯部用等の人工歯を仮止めした人工歯用保持板が使用されている。人工歯用保持板に用いる人工歯仮止め用蝋材支持板は、仮止めする前歯部、臼歯部等に応じて各種の形状のものが開発されている。
【0003】例えば、図1に示される人工歯用保持板(1)の蝋材支持板(2)は、平板状であって、上面に凹部(2a)が形成されてなるものである。そして、前記凹部(2a)に蝋材(3)が蝋材支持板の水平基準面(2b)から所定高さ突出するように装着され、蝋材(3)に人工歯(4)が天然歯と同様の順序で仮止めされる。
【0004】また、図2に示される人工歯用保持板(5)の蝋材支持板(6)は、前歯用のものであって、上方に向かう湾曲凸状部を有し、該湾曲凸状部の湾曲形状に沿った凹部(6a)がその上面に形成されたものである。そして、該凹部(6a)に蝋材(7)が装着され、前歯6歯の人工歯(8)が天然歯と同じ配列順序で蝋材(7)に仮止めされる。
【0005】また、図3に示される人工歯用保持板(10)の蝋材支持板(11)は、臼歯用のものであって、蝋材支持板(11)の水平面(11a)に対して傾斜した傾斜部(11b)が形成されてなるものである。そして、該傾斜部(11b)に蝋材(12)が装着され、小臼歯部用と大臼歯部用の人工歯(13)がそれぞれ蝋材(12)に仮止めされる。
【0006】これらの蝋材支持板には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性合成樹脂が、安価で軽量であって、成型や取り扱いが容易であり、物理的にも化学的にも安定した物性を有すること等の観点から一般に使用されている。ところで、このような熱可塑性合成樹脂を用いた蝋材支持板は使用後、ゴミとして焼却処理されたり埋立処理される。燃焼処理する場合、燃焼カロリーが高いことにより、焼却炉を損傷させる原因となる。埋立処理の場合は、難分解性であることから、そのまま土壌中に残留することになり、埋立処分場の寿命を短縮させることになる。また、自然環境に放置されたりすると環境を汚染させることにもなる。このようにポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性合成樹脂の蝋材支持板では環境への負荷が大きいといった問題がある。使用済み合成樹脂のリサイクルが検討されているが、分別、回収コスト等の観点から良好な対策を構築することに難点がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記のような実情に鑑み鋭意研究の結果創案されたものであり、使用中は安定しており、使用後、焼却処分にされた場合、燃焼熱が低く焼却炉を損傷させる恐れが低く、埋立たり自然環境中に放置された場合、微生物により水、炭酸ガスに分解され、環境を汚染させることのない人工歯仮止め用蝋材支持板を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、この発明は、人工歯仮止め用蝋材の装着部が形成された蝋材支持板において、該蝋材支持板が生分解性プラスチックからなることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】生分解性プラスチックとしては、射出成型等による成型が可能であって、使用中は機能の劣化等がなく、蝋材支持板としての機能を果たすものであればよく、微生物生産系の生分解性プラスチック、化学合成系の生分解性プラスチック、天然物利用系の生分解性プラスチックが採用できる。
【0010】微生物生産系の生分解性プラスチックとしては、Alcaligenes eutrophus等によって生成される3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシ吉草酸の共重合体(P(3HB−3HV))、ポリ−β−ヒドロキシ酪酸、Aureobasidium pullulansによって生成されるプルラン、Acetobacter xylinumによって生成されるセルロースが例示される。
【0011】化学合成系の生分解性プラスチックとしては、ポリL−乳酸(PLLA)、ポリ乳酸/ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート、ポリビニルアルコールが例示される。
【0012】天然物利用系の生分解性プラスチックとしては、酢酸セルロース、変性澱粉、キトサンが例示される。
【0013】これらの生分解性プラスチックは、単体であってもよいが、複数の生分解性プラスチックの混合物であってもよい。複数の生分解性プラスチックの混合物としては、P(3HB−3HV)とポリカプロラクトンとの混合物、ポリ乳酸とポリカプロラクトンとの混合物、澱粉とポリビニルアルコールとの混合物等が例示できる。
【0014】生分解性プラスチックには、必要に応じ、着色剤、重合禁止材、酸化安定剤、酸化防止剤、分解促進剤、安定剤、帯電防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等を適宜添加することができる。また、強度向上の目的で、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等の金属塩、ケイ酸あるいはカオリン、タルク等のケイ酸塩、酸化チタン、酸化亜鉛等のアルミニウム化合物等の無機質充填剤を添加してもよい。
【0015】生分解性プラスチックのうち、P(3HB−3HV)、または、PLLAが好ましく、このうちPLLAが望ましい。P(3HB−3HV)は、融点が136〜162℃で、MFI等がポリエチレンとポリプロピレンとの間にあること等から、既存の射出成型用金型を使用して成型が可能である。そして、生分解性が良好であり、また、燃焼によって発生する熱量が5,700cal/gでポリエチレンの11,000cal/gやポリプロピレンの11,000cal/gのほぼ1/2であり、セルロース並でもある。PLLAは、融点がポリプロピレンのそれよりも高温の175℃程で、熱分解温度が230℃程度であり、常温よりも高温の58℃程のガラス転移点を示し、MIが20〜40で、既存の射出成型用金型、ブロー成型金型を使用して成型が可能である。また、透明性が高いことから着色が容易であり、安全性等の総合的な物性が高いものである。そして、生分解性が良好であり、また、燃焼によって発生する熱量が4,560cal/gでポリエチレンの11,000cal/gやポリプロピレンの11,000cal/gのほぼ1/3であり、セルロース並でもある。
【0016】
【実施例】以下、実施例を示し、さらに詳しくこの発明について説明する。もちろんこの発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
(実施例1)PLLAを成型金型内に射出し、成型温度230℃、成型時間10秒で厚さ3mmの樹脂板を成型し、蝋材支持板としての適性を曲げ強度の経時変化について以下のようにして測定した。試料の大きさは、3×15×90mmとした。60℃の恒温槽中で1カ月保存した試料と、夏期、外気中で日光に1カ月暴露した試料について、圧縮引っ張り試験機(島津製作所製 オートグラフAGS−500D)を用い、CHS(クロスヘッドスピード)=10mm/min、試験下支点間距離=50mmとして試験を行い、曲げ強度を求めた。結果は表1に示すとおりである。
【0017】(実施例2)P(3HB−3HV)を成型金型内に射出し、成型温度220℃、成型時間10秒で厚さ3mmの樹脂板を成型し、曲げ強度の経時変化について実施例1と同様にして測定した。結果は、表1に示すとおりである。
【0018】(比較例)ポリスチレンを成型金型内に射出し、成型温度235℃、成型時間10秒で厚さ3mmの樹脂板を成型し、曲げ強度の経時変化について実施例1と同様にして測定した。結果は、表1に示すとおりである。
【0019】PLLA、P(3HB−3HV)、ポリスチレン共、60℃の温度条件下、および、日光暴露条件下でほとんど経時変化は認められず、安定であった。なお、P(3HB−3HV)の曲げ強度は他の2種と比べて低いが、蝋材支持板として必要な強度は保持している。従って、PLLA、P(3HB−3HV)の蝋材支持板の室温程度の条件下での使用、また、通常の室内光程度の使用での支障がないものである。その他の生分解性プラスチックも蝋材支持板としては満足できるものである。
【0020】
【表1】

【0021】
【発明の効果】この発明の人工歯仮止め用蝋材支持板は、以上詳しく説明したように構成されているので、使用中は安定しており、使用後、焼却処分された場合、燃焼して水、炭酸ガスになることから、有毒なガスを発生させることがなく安全であり、しかも、焼却による発熱量が、これまで蝋材支持板に使用されてきたポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の熱可塑性合成樹脂と比べ低いことから、焼却炉を損傷させる恐れが少ない。また、埋立処分された場合は、土壌中の微生物によって水、炭酸ガスといった無害な物質に分解され減容することから、埋立処分場の処分容量を減少させることがなく、自然環境中に放置されたりしても環境を汚染させることがない。使用場所によっては植物等の肥料とすることも可能となる。
【出願人】 【識別番号】000181228
【氏名又は名称】株式会社ジーシーデンタルプロダクツ
【出願日】 平成11年2月18日(1999.2.18)
【代理人】 【識別番号】100103953
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 量
【公開番号】 特開2000−237213(P2000−237213A)
【公開日】 平成12年9月5日(2000.9.5)
【出願番号】 特願平11−84495