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【発明の名称】 X線コンピュータ断層撮影装置
【発明者】 【氏名】村木 宏一

【氏名】森 一生

【要約】 【課題】本発明の目的は、ボリュームスキャンのようなチャンネル数が膨大になるケースでも、オーバフローの発生率を低減し、しかもチャンネル数を落とさずにデータ収集を可能にするX線コンピュータ断層撮影装置の提供にある。

【解決手段】本発明は、X線管に対して被検体を挟んで対向配置されたX線検出器の1チャンネル又は複数チャンネルごとにプリアンプ391とA/Dコンバーター398とを設け、X線管とX線検出器との少なくとも一方が被検体の周囲を回転しながら繰り返し収集したA/Dコンバーター398の出力データに基づいて断層像を再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、プリアンプ391のゲインを、直前の回転サイクルで繰り返し収集したA/Dコンバーター398の出力データに基づいてデータモニタ/ゲイン制御回路399で調整する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 X線管に対して被検体を挟んで対向配置されたX線検出器の1チャンネル又は複数チャンネルごとにプリアンプとA/Dコンバーターとを設け、前記X線管と前記X線検出器との少なくとも一方が前記被検体の周囲を回転しながら繰り返し収集したA/Dコンバーターの出力データに基づいて断層像を再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記プリアンプのゲインを、直前の回転サイクルで繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データに基づいて調整することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】 前記直前の回転時に繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データのなかのオーバフローデータの数に基づいて前記プリアンプのゲインを調整することを特徴とする請求項1記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】 前記オーバフローデータの数が所定数より多いとき、前記プリアンプのゲインを所定レベルだけ下げることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】 前記オーバフローデータの数が所定数より少ないとき、前記プリアンプのゲインを所定レベルだけ上げることを特徴とする請求項2記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】 X線管に対して被検体を挟んで対向配置されたX線検出器の1チャンネル又は複数チャンネルごとに信号を入力し、プリアンプで増幅し、A/Dコンバーターでディジタル信号に変換するX線コンピュータ断層撮影装置用データ収集装置において、前記プリアンプのゲインを、直前の回転サイクルで繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データに基づいて調整することを特徴とするX線コンピュータ断層撮影装置用データ収集装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線コンピュータ断層撮影装置、特にデータ収集装置内のアンプのゲインコントロールの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、体軸方向に複数列の検出器を有し、複数のスライスを同時に収集することのできるマルチスライススキャンやボリュームスキャンの実用化に関わる技術の提案が盛んに行われている。
【0003】また、検出器の出力電流を増幅し、A/D変換を行うデータ収集装置において、A/Dコンバーターのオーバーフローを防ぐために、外部からの制御によりプリアンプのゲインを調整するというPGA(Programmable Gain Amplifier)と呼ばれる方法や、入力信号量を随時モニターし、その信号量に応じて自動的にプリアンプのゲインを切り替えるFPA(Floating Point Amplifier)と呼ばれる方法が取られている。
【0004】ボリュームスキャンにおいては、複数の検出器列を有するため、空間ダイナミックレンジ、時間ダイナミックレンジを従来のシングルスライススキャンと同等に保とうとすると、1スキャン当たりのデータ量はシングルスライススキャンに対して検出器の列数倍となり、膨大なデータを短時間でA/D変換する必要が生じる。
【0005】例えば、1,000チャンネルのシングル検出器で、1秒あたり1,000回、データを収集しようとすると、1秒あたり、百万回(1,000×1,000)のデータ収集が必要となる。これを1台のA/Dコンバーターで賄おうとすると、単純計算でも、1μS(1MHz)のサンプリング能力を有する高速のA/Dコンバーターが必要となる。また、同様のデータ収集を、1チャンネルに対しそれぞれA/Dコンバーターを1つずつ設けて行おうとすると、1mS(1kHz)のサンプリング能力を有するA/Dコンバーターが、1,000個も必要になってしまう。
【0006】さらに体軸方向に100列の検出器を並べてボリュームスキャンを、同様に1秒あたり1,000回、データ収集を行おうとすると、1秒あたり1億回のデータ収集が必要となってしまう。空間ダイナミックレンジ、時間ダイナミックレンジをより高くさせようとなると、データ量はさらに増えることになる。このデータ収集を、1台のA/Dコンバーターで賄うおうとすると、単純計算でも、10nS(100MHz)のサンプリング能力を有する超高速のA/Dコンバーターが必要となる。また、1チャンネルに対しA/Dコンバーターを1台ずつ設けた場合には、10μS(100kHz)のサンプリング能力を有するA/Dコンバーターが10万個必要になる。
【0007】現在、X線コンピュータ断層撮影装置では、20ビット程度のダイナミックレンジを有するものが一般的であり、20ビットのダイナミックレンジを持ち、100MHzという超高速のサンプリング能力を持つA/Dコンバーターは存在しないし、また100kHzのサンプリング能力を持つA/Dコンバーターがあったとしても、それを10万個使うとなると非常に高価になってしまう。
【0008】A/Dコンバーターにおいては、ダイナミックレンジと処理速度とは、トレードオフの関係にあり、高いダイナミックレンジを追求すると低速になり、高い処理速度を追求すると、高いダイナミックレンジは望めない。このため膨大なデータ収集が必要となるボリュームスキャンにおいては、処理速度を考慮すると、20ビットや18ビットのような高ダイナミックレンジのA/Dコンバーターを使用するのは困難であり、16ビットや14ビット程度の比較的狭いダイナミックレンジのA/Dコンバーターを使用しなければならない。
【0009】しかしながら、16ビットや14ビット程度のダイナミックレンジでは、小さな頭部から大きな腹部まで撮影可能な全身用装置には対応できず、つまり頭部スキャン時にA/Dコンバーターでオーバーフローが起きないようにプリアンプのゲインを小さくすると、腹部のスキャンでは量子化雑音が無視できなくなって、必要最低限のS/Nすら確保することが難しくなるし、逆に、腹部のスキャンに合わせてプリアンプのゲインを大きくすると、頭部スキャンではオーバーフローの発生率が高くなってしまう。
【0010】従来装置では、高ダイナミックレンジでしかも高速のA/Dコンバーターの採用はコストの面で折り合いが付かず、このため高速であるが、ダイナミックレンジの狭いA/Dコンバーターと、PGAやFPAといったゲイン可変のプリアンプに対するゲイン制御とを組み合わせるという対処法が取られていた。
【0011】PGAはX線のばく射条件や、スキャン領域の大きさ(頭部をスキャンするのか腹部をスキャンするのか)に合わせて、予めプリアンプのゲインを設定しておく方法であるため、スキャン条件によってはオーバーフローの発生率が高くなることがあった。この点に関しては、入力レベルに応じて自動的にプリアンプのゲインを調整するFPAの方が優れている。
【0012】しかし、FPAでは、最適なゲインを決めるためにA/Dコンバーター出力を所定時間(例えば0.5μS)モニターしてゲイン調整の基礎データを集める必要があり、このモニタリング時間によって、A/D変換処理に与えられる時間は圧迫されてしまい、A/Dコンバーターが超高速でない限り、ボリュームスキャンのようにチャンネル数が膨大なケースでは、採用できないものであった。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ボリュームスキャンのようなチャンネル数が膨大になるケースでも、オーバフローの発生率を低減し、しかもチャンネル数を落とさずにデータ収集を可能にするX線コンピュータ断層撮影装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】(1)本発明は、X線管に対して被検体を挟んで対向配置されたX線検出器の1チャンネル又は複数チャンネルごとにプリアンプとA/Dコンバーターとを設け、前記X線管と前記X線検出器との少なくとも一方が前記被検体の周囲を回転しながら繰り返し収集したA/Dコンバーターの出力データに基づいて断層像を再構成するX線コンピュータ断層撮影装置において、前記プリアンプのゲインを、直前の回転サイクルで繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データに基づいて調整することを特徴としたものである。
【0015】(2)本発明は、(1)の装置において、直前の回転時に繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データのなかのオーバフローデータの数に基づいて前記プリアンプのゲインを調整することを特徴としたものである。
【0016】(3)本発明は、(2)の装置において、オーバフローデータの数が所定数より多いとき、前記プリアンプのゲインを所定レベルだけ下げることを特徴としたものである。
【0017】(4)本発明は、(2)の装置において、オーバフローデータの数が所定数より少ないとき、前記プリアンプのゲインを所定レベルだけ上げることを特徴としたものである。
【0018】(5)本発明は、X線管に対して被検体を挟んで対向配置されたX線検出器の1チャンネル又は複数チャンネルごとに信号を入力し、プリアンプで増幅し、A/Dコンバーターでディジタル信号に変換するX線コンピュータ断層撮影装置用データ収集装置において、前記プリアンプのゲインを、直前の回転サイクルで繰り返し収集した前記A/Dコンバーターの出力データに基づいて調整することを特徴としたものである。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明を好ましい実施形態により詳細に説明する。X線コンピュータ断層撮影装置には、X線管とX線検出器とが1体として被検体の周囲を回転するROTATE/ROTATE-TYPE、リング状にアレイされた多数の検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するSTATIONARY/ROTATE-TYPE等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本発明を適用可能である。ここでは、現在、主流を占めているROTATE/ROTATE-TYPEとして説明する。また、1枚の断層像を再構成するには、被検体の周囲1周、約360゜分の投影データの1セットが、ハーフスキャン法でも210〜240゜程度分の投影データの1セットが必要とされる。いずれの方式にも本発明を適用可能である。ここでは、一般的な前者の約360゜分の投影データから1枚の断層像を再構成するものとして説明する。
【0020】図1に、本実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置の構成を示している。走査ガントリ3は、ボリュームスキャン対応のコーンビーム型X線管31とやはりボリュームスキャン対応の2次元アレイ又は多列のX線検出器35とが寝台テーブル上の被検体Pを挟んで対向して配置されている。X線管31は、スキャン制御部11から供給されるビュートリガ信号に同期して高電圧発生装置5から周期的に発生される高電圧パルスを受けて、X線を放射する。X線検出器35は、電離箱形検出器箱又は半導体検出器で構成される。
【0021】X線検出器35には、一般的にDAS(data acquisition system) と呼ばれているデータ収集装置39が接続されている。このデータ収集装置39には、X線検出器35から出力される微弱な電流信号を検出素子(チャンネル)毎に積分し、増幅し、そしてディジタル信号に変換して出力するという機能を有している。
【0022】画像処理プロセッサ23は、データ収集装置39からの出力信号を投影データの再配列すると共にオフセット補正、ゲイン補正、チャンネル間の感度均一性補正、散乱線補正等の補正かけるといった前処理を施し、そして前処理された投影データに基づいて断層像又はボリュームデータを再構成する。この断層像又は3D処理画像は画像表示装置25を介して操作コンソール27上のCRTモニタ41に表示される。この操作コンソール27には、CRTモニタ41の他に、スキャンパネル43とキーボード45とが装備されている。
【0023】上述したスキャン制御部11,画像処理プロセッサ23、画像表示装置25、操作コンソール27には、バス21を介してCPU13に接続されている。さらにこのバス21には、画像データ等を記憶再生するために磁気ディスクドライブ15、光ディスクドライブ17、フロッピーディスクドライブ19が接続されている。
【0024】図2には、図1のデータ収集装置39の1チャンネルあたりの構成を示している。X線検出器35の複数のチャンネル各々に対して、プリアンプ391とA/Dコンバーター398とが1つずつ設けられている。X線検出器35のチャンネル各々からの出力信号(電流信号)は、プリアンプ391で増幅と共に電圧信号に変換され、さらにA/Dコンバーター398でディジタル信号に変換されて、画像処理プロセッサ23に出力される。ここでは、プリアンプ391として、積分器を用いており、ゲイン可変なように、差動増幅器392に対して帰還インピーダンスとしての複数のキャパシタ393,394,395がTFTスイッチ396,397を介して並列にアレンジされている。プリアンプ391のゲインを調整するためのスイッチ396,397の開閉制御は、データモニタ/ゲイン制御回路399により現在の回転サイクルの直前の回転サイクルで繰り返し収集したA/Dコンバーター398の出力データ(セット)に基づいて行われる。以下に、この制御方法について詳細に説明する。
【0025】図3には、図2のデータモニタ/ゲイン制御回路によるあるチャンネルのプリアンプ392に対するゲイン下方制御を示すものである。ここでは、いわゆる複数回転スキャンが行われる。複数回転スキャンとは、1フレームの断層像又は1塊のボリュームデータの基礎となる投影データを2以上の回転サイクル(2回転以上のスキャン)で収集しようとするものであり、サンプリングポイントを回転サイクル間で少しだけずらすことでサンプリングポイント(ビューポイントともいう)の間隔を実効的に短くして空間分解能を2倍又は整数倍に向上したり、サンプリングポイントをずらさずに同じポイントのデータを加算又は加算平均することによりS/Nの向上を図る等の効果を奏することができ、膨大なチャンネル数のために処理時間が制限されてるボリュームスキャン等では一般化しつつある方式である。
【0026】本実施形態では、このような複数回転スキャンにおいて、直前の回転サイクルで繰り返し収集したN個のデータに基づいて、現在の回転サイクルにおけるプリアンプ392のゲインをチャンネルごとに調整化する、つまり現在の回転サイクルが2番目であれば、最初(1番目)の回転サイクルで繰り返し収集したN個のデータに基づいて、2番目の回転サイクルにおけるプリアンプ392のゲインをチャンネルごとに調整化し、また現在の回転サイクルが3番目であれば、2番目の回転サイクルで繰り返し収集したN個のデータに基づいて、3番目の回転サイクルにおけるプリアンプ392のゲインをチャンネルごとに調整化しようとするものである。
【0027】具体的には、1回転目で収集したN個のデータのうち、オーバーフローを示すデータ(A/Dコンバーター398のダイナミックレンジの最大値を示すデータ)が所定の上限数を越えたとき、2回転目でプリアンプ391のゲインを所定レベルだけ下げる。なお、2回転目のデータから、1回転目でオーバーフローを起こしたデータは、画像処理プロセッサ23で外挿補間等により計算する。
【0028】逆に、1回転目で収集したN個のデータのうち、オーバーフローを示すデータが例えば1個もない等の所定の下限数に満たないときには、図4に示すように、2回転目でプリアンプ391のゲインを所定レベルだけ上げる。
【0029】なお、上限数を越えたときゲインを所定レベル高くし、下限数に満たないときゲインを所定レベル低くするという動きでも、ゲインは適正値に収束していくものであるが、この収束の時定数を短くするために、上限数及び下限数を細分化すると共にゲインの増加幅及び減少幅を細分化し、オーバーフローを示すデータがあまりにも多い又は少ないときにはゲインを大きな増加幅又は減少幅で変化させるようにしてもよい。もちろん、上限数及び下限数、およびゲインの増加幅及び減少幅は、あらかじめ取得し、データモニタ/ゲイン制御回路399に保持させておくものである。
【0030】従って、従来のようにゲイン調整のためのデータモニタリングによってA/D変換時間が圧迫されるようなことがなくなり、従ってそれほど処理速度の速いA/Dコンバーター398を使わなくても、ある程度のチャンネル数を維持することができる。このためボリュームスキャンのようなチャンネル数が膨大になるケースでも、A/Dコンバーター398の選択範囲が広がり、より多くのチャンネル数でデータ収集が可能となるし、また、データ収集装置自体のコストを抑えることが可能となる。
【0031】しかも、複数回転スキャンで収集される元々は再構成用のデータをゲイン調整の基礎データとして流用するので、ゲイン調整の基礎データを収集するためだけに新たにスキャン動作を追加する必要はない。
【0032】以上の説明では、チャンネルごとにA/Dコンバーター398及びデータモニタ/ゲイン制御回路399を設けて、チャンネルごとにゲインを個別に調整するというものであったが、図5,図6に示すように、ランダムアクセス型の信号読出回路340の採用により近隣の複数個のチャンネルで、A/Dコンバーター398及びデータモニタ/ゲイン制御回路399を共有させ、そしてこの近隣の複数個のチャンネルごとにゲインを個別に調整するようにしてもよい。
【0033】本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々変形して実施可能である。なお、本発明はボリュームスキャンで絶大な効果を奏するが、その効果は若干減少するもののシングルスライススキャンにも応用可能であるのは勿論である。
【0034】
【発明の効果】本発明では、実際に収集したデータに基づいてプリアンプのゲインを調整するので、それほどダイナミックレンジの広くないA/Dコンバーターであっても、そのオーバーフローの発生率を低下させることができる。また、ゲイン調整の基礎データとしては、直前の回転サイクルで繰り返し収集したデータを利用するので、従来のようにゲイン調整のためのデータモニタリングによってA/D変換時間が圧迫されるようなことがなくなり、従ってそれほど処理速度の速いA/Dコンバーターを使わなくても、ある程度のチャンネル数を維持することができる。このためボリュームスキャンのようなチャンネル数が膨大になるケースでも、A/Dコンバーターの選択範囲が広がり、より多くのチャンネル数でデータ収集が可能となるし、また、データ収集装置自体のコストを抑えることが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年3月12日(1999.3.12)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外6名)
【公開番号】 特開2000−262516(P2000−262516A)
【公開日】 平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願番号】 特願平11−67122