| 【発明の名称】 |
放射線画像信号検出装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】荒川 哲
|
| 【要約】 |
【課題】コーンビームCT装置において、散乱線の影響を受けない断層画像や3次元画像が得られるようにする。
【解決手段】銅板フィルタ21を介して比較的高いエネルギーレベルの放射線(60KeV以上)のみを被写体9に照射する。被写体9を透過した放射線を、エネルギー弁別機能を有する量子計数型の放射線検出器3で検出する。検出器3の検出部30は、放線線粒子のエネルギーレベルに応じた電圧を発生する。信号処理部40は、一定時間内に検出部30に入射したエネルギーレベルが60KeV以上の放射線粒子数を計数し、計数結果を画素データとする。被写体9を略直進する1次放射線のエネルギーレベルは、被写体9内で散乱した散乱線のエネルギーレベルよりも高く、60KeVを閾値としてエネルギー弁別し、1次放射線成分のみに基づいて画像データを生成することにより散乱線の影響を低減する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 被写体の一方に放射線を発する放射線源を配し、前記被写体の他方に放射線検出器を配し、前記被写体を透過した放射線を前記放射線検出器で検出することにより前記被写体の放射線画像信号を得る放射線画像信号検出装置において、前記放射線検出器が、放射線のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力する検出部と、該検出部から出力される信号の内、特定の閾値以上のエネルギー成分による信号のみに基づいて前記放射線画像信号を得る信号処理部とから成るものであることを特徴とする放射線画像信号検出装置。 【請求項2】 被写体の一方にコーン状の放射線を発する放射線源を配し、前記被写体の他方に放射線検出器を配し、前記放射線源と前記放射線検出器とを前記被写体を挟んで該被写体の回りに相対的に回転させながら前記被写体を透過した放射線を前記放射線検出器で検出することにより前記被写体の放射線画像信号を得る放射線画像信号検出装置において、前記放射線検出器が、放射線のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力する検出部と、該検出部から出力される信号の内、特定の閾値以上のエネルギー成分による信号のみに基づいて前記放射線画像信号を得る信号処理部とから成るものであることを特徴とする放射線画像信号検出装置。 【請求項3】 前記放射線検出器が量子計数型検出器であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像信号検出装置。 【請求項4】 前記放射線源が、前記閾値以上のエネルギーレベルの放射線のみを前記被写体に照射する照射エネルギー制御手段を備えていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像信号検出装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、被写体を透過した放射線を放射線検出器で検出することにより被写体の放射線画像信号を得る放射線画像信号検出装置に関し、さらに詳しくは、散乱線による画質劣化の改善に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来より、医用画像の分野においては、被写体の形態的2次元情報(断層画像)を得る装置として、X線CTやMRI等が提案されている。 【0003】「X線CT」は、被写体の一方にX線等の放射線を発する放射線源を配し、被写体の他方にラインセンサー(一次元の放射線固体検出器)を配し、放射線源から発せられた放射線を散乱線除去のためにスリットを使用してファンビーム化し、放射線源とラインセンサーとを被写体を挟んで仮想軸(以下「体軸」という)を中心として該被写体の回りに相対的に回転させながら被写体を透過した放射線をラインセンサーで検出することにより被写体の透過放射線画像信号を得、各回転位置すなわち各投影方向において取得した多数の透過放射線画像情報(1次元画像情報)に基づいて被写体の断層画像を得るものである。 【0004】「MRI」は、核磁気共鳴を利用して、上記X線CTと略同様の方法によって断層画像を得るものである。 【0005】また今日では、被写体の形態的3次元情報(立体像)を検出する技術の研究が成されており、例えば、ヘリカルCTやコーンビームCTが提案されている(「コーンビームCT開発の現状とその将来」映像情報(M);1988年1月P122〜P127参照)。 【0006】「ヘリカルCT」とは、多段層X線CT手法の1つである。ここで「多段層X線CT手法」とは、被写体の一方に放射線を発する放射線源を配し、被写体の他方にラインセンサーを配し、放射線源から発せられた放射線をX線CT同様にスリットによりファンビーム化し、放射線源とラインセンサーとを被写体を挟んで該被写体の回りに体軸を中心として相対的に回転させながら被写体を透過した放射線をラインセンサーで検出することにより被写体の透過放射線画像信号を得、各回転位置すなわち各投影方向において取得した多数の透過放射線画像情報(1次元画像情報)に基づいて被写体の断層画像データを算出し(ここまでは上記X線CTと同じ作用である)、放射線源とラインセンサーとを体軸方向に移動させたのち再度上述と同様に断層画像データを算出して、該体軸方向の多数の移動位置における断層画像データから体軸方向の画像データを補間計算して前記被写体のボリュームデータ(3次元の放射線画像情報)を求めるものである。 【0007】ここで上記体軸方向に連続した断層画像データを求めるに際して、放射線源とラインセンサーとを被写体の体軸を回転の中心軸とするつるまき螺旋状に移動させるものを特に「ヘリカルCT(スパイラルCT)」という。 【0008】なお、このヘリカルCTにおいては、エリアセンサー(2次元の放射線固体検出器)とコーンビーム(円錐ビーム)を用いたヘリカル(スキャン)CT手法も提案されている(「円すいビーム投影を用いた3次元ヘリカルスキャンCT」電子情報通信学会論文誌D−II vol.J74−D−II No.8 1991年 8月)。以下、この手法によるヘリカルCTと上記ラインセンサーを用いる方式のヘリカルCTとを区別するために、ラインセンサーを用いる方式のヘリカルCTを「通常のヘリカルCT」という。 【0009】また「コーンビームCT」とは、被写体の一方にコーン状の放射線を発する放射線源を配し、被写体の他方にエリアセンサーを配し、放射線源とエリアセンサーとを被写体を挟んで該被写体の回りに相対的に回転させながら被写体を透過した放射線を前記エリアセンサーで検出することにより被写体の透過放射線画像信号を得、各回転位置すなわち各投影方向において取得した複数の透過放射線画像情報に基づいて、被写体に関するボリュームデータや断層画像データを取得するものである。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】ところで、放射線を被写体に照射すると、放射線の一部は被写体の各部で散乱し散乱線となる。したがって、被写体を透過した放射線の中には、線源から発せられ被写体内を直進し透過する1次放射線成分の他に、この散乱線の成分が含まれることになる。 【0011】ここで、X線CTや通常のヘリカルCTのように放射線検出器としてラインセンサーを用いる方式のCTにおいては、上述したように、放射線源から発せられた放射線をスリットによりファンビーム化し、被写体を透過し直進入射する放射線のみをラインセンサーで検出する方式であるため、散乱線の成分を検出することが少なく、該散乱線の影響は比較的小さい。 【0012】一方、上記コーンビームを用いたヘリカルCTやコーンビームCTにおいては、コーン状の放射線照射により被写体全体へ放射線が入射するため、散乱線が多く発生し、該散乱線が被写体を透過しエリアセンサーに入射する。したがって、被写体に照射され該被写体内を直進し透過する1次放射線だけでなく、被写体の各部で散乱された散乱線を多くエリアセンサーが検出するため、該散乱線による信号成分が本来の画像信号(1次放射線による成分)に混入し、コントラストが低下したり、十分なS/Nが得られない等、画像品質の劣化した画像が出力されるという問題が生じている。 【0013】本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、散乱線による画質劣化という問題を改善することのできる放射線画像信号検出装置を提供することを目的とするものである。 【0014】 【課題を解決するための手段】上述したように、放射線を被写体に照射すると、放射線の一部は被写体の各部で散乱し散乱線となり、被写体を透過した放射線の中には、被写体内を直進し透過する1次放射線成分の他に、この散乱線の成分が含まれることになる。 【0015】ここで、放射線が被写体を透過するに際しては、骨や内蔵といった生体構成要素による放射線吸収により、被写体を透過した透過放射線のエネルギーレベルが被写体への入射時(透過前)よりも多少低下する。しかしながら、散乱線のエネルギーレベルは、1次放射線に比べてより低い。 【0016】本発明は、この1次放射線と散乱線のエネルギーレベルの差に着目してなされたものであり、エネルギー弁別によって1次放射線と散乱線とを峻別し、1次放射線のみに基づいて放射線画像信号を得るものである。 【0017】すなわち、本発明による第1の放射線画像信号検出装置は、被写体の一方に放射線を発する放射線源を配し、被写体の他方に放射線検出器を配し、被写体を透過した放射線を放射線検出器で検出することにより被写体の放射線画像信号を得る放射線画像信号検出装置であって、放射線検出器が、放射線のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力する検出部と、該検出部から出力される信号の内、特定の閾値以上のエネルギー成分による信号のみ、すなわち前記閾値以下のエネルギー成分による信号を除外した信号に基づいて放射線画像信号を得る信号処理部とから成るものであることを特徴とするものである。 【0018】本発明による第2の放射線画像信号検出装置は、被写体の一方にコーン状の放射線を発する放射線源を配し、被写体の他方に放射線検出器を配し、放射線源と放射線検出器とを被写体を挟んで該被写体の回りに相対的に回転させながら被写体を透過した放射線を放射線検出器で検出することにより被写体の放射線画像信号を得る放射線画像信号検出装置であって、放射線検出器が、放射線のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力する検出部と、該検出部から出力される信号の内、特定の閾値以上のエネルギー成分による信号のみ、すなわち前記閾値以下のエネルギー成分による信号を除外した信号に基づいて放射線画像信号を得る信号処理部とから成るものであることを特徴とするものである。 【0019】「放射線源と放射線検出器とを被写体を挟んで該被写体の回りに相対的に回転」させるに際しては、少なくとも前記検出部と放射線源とを被写体を挟んで該被写体の回りに相対的に回転させるものであればよく、必ずしも検出器の信号処理部を回転させるものでなくてもよい。 【0020】上記において「特定の閾値」とは、比較的高いエネルギーの成分と比較的低いエネルギーの成分とを弁別(完全な弁別でなくともよい)するのに適当な値を意味し、特に比較的高いエネルギーの成分を被写体に入射し略直進する1次放射線成分とし、比較的低いエネルギーの成分を被写体によって散乱される散乱線成分とし、この両者を峻別するのに好適な値とするのが望ましい。また、この「特定の閾値」は、放射線源、被写体の年齢、性別等及び人間の内外部器官の諸要件を考慮し定めることが望ましい。 【0021】なお、上記第1および第2の放射線画像信号検出装置において使用する放射線検出器としては、上記検出部と信号処理部とを備えエネルギー弁別機能を有した、半導体を主要部としてなる固体検出器であれば、どのようなものを使用してもよく、その形状も問わない。なお、この放射線検出器としては、量子計数型検出器を使用するのが好適である。 【0022】「エネルギー弁別機能」とは、放射線のエネルギーレベルの差に基づいて、検出器に入射した放射線を、比較的低いエネルギーの成分と比較的高いエネルギーの成分とに峻別することを意味する。 【0023】「量子計数型検出器」とは、前記検出部として放射線光子(粒子)のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力するセンサー(検出結晶)を使用し、1個の放射線光子がセンサーに入射することにより該センサーから出力される電圧パルスをコンパレータで閾値比較してエネルギー弁別し、これにより得られたデジタルパルスをカウンタで一定時間計数を行って、該一定時間にセンサーに入射した放射線光子数を計数し、該計数結果を前記信号処理部に入力して放射線画像信号を得るものである(”INNERVISION(10・7)1995”;P47〜48、”医用電子と生体工学,第32巻特別号(1994)”;P311、島津評論VOL.49,No3(1992.10);P185〜189等参照)。 【0024】なお、上記第2の放射線画像信号検出装置において使用する放射線検出器としては、特に2次元的に放射線を検出するエリアセンサーを用いるのが好ましい。また、ラインセンサーを使用し、該ラインセンサーを多数配列したり、移動させるなどし、それらの出力を合成することにより2次元の放射線画像信号を得るようにしてもよい。 【0025】また、上記第2の放射線画像信号検出装置において、コーン状の放射線を発する放射線源とあるのは、点状の放射線源を用いた従来のコーンビームCTにおいて使用されているものに限定されるものではなく、文献”SPIE VOL.2708P140〜P149”や本出願人が特願平10−238737号で提案した装置において用いた走査型の放射線源、つまり、面上に配置された多数の線源を有し、該線源の夫々を順次切り替えながら被写体に放射線を照射する方式の放射線源であってもよい。そして、この場合に使用する放射線検出器としては、該放射線源における多数の線源が配置された面の面積より小さな面積の検出領域を有し、走査により各線源から発せられ被写体を透過した放射線を順次検出する検出器とするのが望ましい。該検出器は1つの検出センサーから構成されたものであってもよいし、複数の検出センサーから構成されたものであってもよい。 【0026】さらに、本発明による上記第1および第2の放射線画像信号検出装置の放射線源を、前記閾値以上のエネルギーレベルの放射線のみを被写体に照射する照射エネルギー制御手段を備えたものとするのが望ましい。 【0027】この照射エネルギー制御手段としては、前記閾値以上のエネルギーレベルの放射線のみが被写体に入射するようにするものであればよく、放射線が発せられた時点においては閾値以下のエネルギーレベルの放射線を含んでいても、例えば発生元と被写体との間に銅板等のフィルタを配置して、放射線が被写体に入射するまでの間に前記閾値以下のエネルギーレベルの放射線を除去するものであってもよい。この場合、銅板等のフィルタが照射エネルギー制御手段に相当する。 【0028】なお、放射線源としては、モノクロ放射線源といわれる、単一のエネルギーレベルの放射線を発するものであるのが最も望ましいのはいうまでもない。この場合、単一のエネルギーレベルの放射線が発せられるようにする手段が照射エネルギー制御手段に相当する。 【0029】 【発明の効果】本発明による放射線画像信号検出装置は、上述したように、1次放射線と散乱線のエネルギーレベルの差に着目してなされたものであり、放射線のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力する検出部と、該検出部から出力される信号の内、特定の閾値以上のエネルギー成分による信号のみに基づいて放射線画像信号を得る信号処理部とから成る放射線検出器を使用し、「特定の閾値」として1次放射線成分と散乱線成分とを弁別するのに適当な値を用い、該閾値以下の散乱線を多く含む成分を画像信号として使用せず該閾値以上のエネルギー成分による信号のみに基づいて画像信号を得るようにしているので、信号処理部から出力される放射線画像信号としては、1次放射線による成分をより多く検出した結果として出力されるようになり、散乱線の影響を低減することができる。したがって、この画像信号に基づいて断層画像や3次元画像を形成すれば、画像品質のよい、高S/N・高コントラストの画像を得ることができる。 【0030】特にコーンビームとエリアセンサーを用いる方式のCT装置では、散乱線除去のためのスリット撮影を行うことが困難であるが、本発明による放射線画像信号検出装置を該方式のCT装置に適用すれば、スリット撮影を行うことなく散乱線の影響を低減することができるので、該方式のCT装置に本発明が果たす効果は非常に大きい。 【0031】また、放射線検出器として量子計数型検出器を使用すれば、放射線光子のエネルギーレベルを光子個々に弁別することができ、1次放射線と散乱線とを精度よく峻別することが可能となる。また、量子計数型検出器が有する優れた性質、つまり高感度且つ広ダイナミックレンジという性質を利用して、より高品質の放射線画像信号を得ることができる。 【0032】また、閾値以上のエネルギーレベルの放射線のみを被写体に照射する照射エネルギー制御手段を備えた放射線源とし、予め前記閾値以下の放射線を除去して被写体に照射すれば、被写体を透過した放射線のうち、少なくとも前記閾値以下の放射線は散乱線の成分を多く含むと考えられるから、散乱線と1次放射線とを精度よく弁別することが可能となる。また、放射線源から発せられた放射線のエネルギーと同じエネルギーの透過放射線を全て1次放射線とみなして検出することになり、放射線源から発せられた放射線を無駄なく利用することができる。さらに副次的効果として、放射線画像信号の生成に寄与しない閾値以下の放射線を被写体に照射することがないので、被写体に対する被曝軽減を図ることもできる。 【0033】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明による放射線画像信号検出装置の一実施の形態について詳細に説明する。 【0034】図1は本発明の実施の形態による放射線画像信号検出装置を適用したコーンビームCT装置1の概略構成図、図2は該CT装置1に使用する放射線検出器3の1画素分の詳細を示すブロック図(A)および波形図(B)、図3は放射線源2から発せられた放射線のエネルギースペクトル図である。 【0035】図1に示すように当該CT装置1は、被写体9に向けてコーン状の放射線Rを発する放射線源2と、被写体9を挟んで前記放射線源2と対向する位置に配され被写体9を透過した放射線を検出する検出部30および該検出部30から出力された信号Sに基づいて透過放射線画像データDを求める信号処理部40から成る放射線検出器3および放射線検出器3から出力された透過放射線画像データDに基づいて被写体に関するボリュームデータや断層画像データを生成する画像データ生成部5とから構成される。 【0036】また、放射線源2および放射線検出器3の検出部30を被写体9を挟んで該被写体9の回りに相対的に回転させる不図示の回転手段を備える。この回転手段としては、被写体9に対する放射線源2と検出部30との前記位置関係を保ちながら、被写体9を通る図中Z−Z’で示す体軸を回転軸として、放射線源2および検出部30を回転させるものであってもよいし、放射線源2と検出部30とを固定し、図中Z−Z’で示す体軸を回転軸として、被写体9を回転させるものであってもよい。 【0037】放射線源2は、放射線としてのX線を発する発生部20とフィルタ21とからなる。発生部20には管電圧140KVの線源を使用する。フィルタ21として厚さ5mmの銅板を用いる。発生部20から発せられた放射線を、この銅板フィルタ21を通過させた後に被写体9に照射する。銅板フィルタ21を通過した後、すなわち被写体9に入射する放射線粒子のエネルギーレベルは、図3に示すように、略60KeV以上略140KeV以下の範囲内でピークを略110KeVとする、略60KeV以下の成分が除去されたものとなる。これにより閾値を略60KeVとする、比較的高いエネルギーレベルの放射線のみが被写体9に照射される。 【0038】なお、このフィルタ21の厚さは、発生部20から発せられ被写体9を透過し検出器3に入射する放射線のうち、被写体9内で発生する散乱線のエネルギーレベルと被写体9内を略直進する1次放射線のエネルギーレベルとを区別するのに都合の良い値とするのが望ましく、被写体9に照射される放射線のエネルギーレベルのピーク値、被写体構成要素による1次放射線のエネルギー吸収特性や散乱線の発生具合等の諸要件を考慮し、1次放射線と散乱線のエネルギー弁別に好適な厚さとするのが望ましい。 【0039】放射線検出器3は、被写体9を透過した放射線を2次元状に検出する検出部30を備えると共に、該検出部30から出力された信号Sに基づいて透過放射線画像データDを求める信号処理部40を備えた量子計数型検出器である(上記”医用電子と生体工学,第32巻特別号(1994)”等参照)。以下、図2に示す1画素分の詳細図を参照して、検出部30および信号処理部40の構成について説明する。 【0040】検出部30は、被写体9を透過した放射線Rの放射線粒子の個々のエネルギーレベルに応じたレベルの信号を出力するセンサー(検出結晶)31と、センサー31の出力信号を増幅して信号処理部40に入力するアンプ32を備える。 【0041】センサー31としては、入射した放射線粒子のエネルギーに応じた信号を生成するものであればどのようなものを用いても良い。本例においては、放射線粒子のエネルギーに応じた電荷量を生成する、CdTe(カドニウム・テルライド)結晶を主要部とするものを使用している。 【0042】アンプ32は、このセンサー31で生成された電荷量に応じた電圧パルス信号を出力する。その際、後段の信号処理部40において利用可能なレベルまで信号レベルを増幅させる。 【0043】信号処理部4は、コンパレータ41およびカウンタ42を備える。コンパレータ41は、基準電圧Vthを閾値として検出部30から入力された電圧パルス信号Sを比較するものである。基準電圧Vthとしては、散乱線成分と1次放射線成分とを峻別できるように、上述の60KeV以下の成分が除去され被写体9に入射する放射線に合わせて、該60KeV以下の放射線粒子がセンサー31に入射したときにはコンパレータ41の出力がL(ロー)となり、それよりエネルギーレベルの高い放射線粒子がセンサー31に入射したときにはコンパレータ41の出力がH(ハイ)となる値に設定する(図2(B)に示す波形図を参照)。これにより、60KeV以上の放射線成分とそれ以下の放射線成分とをエネルギー弁別することができる。 【0044】カウンタ42は、一定時間内にコンパレータ41の出力がHとなる回数をカウントする。これにより、単位時間内にセンサー31に入射した放射線の内、エネルギーレベルが60KeV以上の放射線粒子の数がカウントされる。 【0045】つまり上述した検出部30および信号処理部40を備えた放射線検出器3においては、センサー31に入射した1つの放射線粒子により、電圧パルス信号Sが生成され、その電圧パルス信号Sが基準電圧Vth以上かどうかがコンパレータ41で判定される。もし、アンプ32から出力された電圧パルス信号Sが基準電圧Vth以上であれば、後段のカウンタ42のカウント値がカウントアップされる。すなわち、ある一定時間にセンサー31に入射した一定レベル(基準電圧Vthに対応する放射線のエネルギーレベルであり、本例では60KeV)以上のエネルギーを持つ放射線粒子を1つずつ計数し、このカウント値Dを画像データ生成部5に入力する。 【0046】なお、上述のように、センサー31により放射線粒子を1つずつ捕捉しその数を計数することにより放射線画像を得る方法の詳細については、上記”医用電子と生体工学”第32巻;P311、”INNERVISION (10・7)”1995 P47-P48等に詳しく述べられている。 【0047】画像データ生成部5は、カウンタ42から入力されたカウント値を一画素のデータ値として透過放射線画像データDを生成する。つまり、放射線検出器3の検出部30は2次元的に放射線を検出するものであるから、該検出部30を構成する各センサー31を順次切り換え、つまり検出部30を構成する各センサー31を電気的に走査し、各センサー31から出力される電圧パルス信号Sに基づくカウント値に基づいて被写体9の透過放射線画像データDを生成する。 【0048】上述のように、カウンタ42から入力されるカウント値は、エネルギーレベル60KeV以上の放射線粒子をカウントとした結果であるから、得られる透過放射線画像データDとしてもエネルギーレベルが60KeV以上の放射線粒子のみに基づくものとなる。 【0049】この画像データ生成部5は、透過放射線画像データDに対して更にγ補正や画像歪補正等の各種信号処理を施して被写体9の投影画像データを生成し、多数の投影方向(回転位置に対応する)の投影画像データを使用して、被写体のボリュームデータや断層画像データを生成する。 【0050】なお、ボリュームデータ生成のアルゴリズムとしては、フェルドカンプアルゴリズム(Feldkamp LA,Davis LC,Kress JW,Practical cone-beam algoritm. J Opt Soc Am A 1984;1:P612〜P619),フィルタ補正逆投影法(画像解析ハンドブック(東京大学出版会)p356〜p371参照)等、周知の3次元データを再構成する計算方法を使用することができる。ここでは、このボリュームデータD4の求め方についての詳細説明は省略する。 【0051】以下、本発明による放射線画像信号検出装置を適用した上記コーンビームCT装置1の作用について説明する。 【0052】放射線源2の発生部20から放射線を発し、銅板フィルタ21を通過させてエネルギーレベル60KeV以下の成分を除去して、エネルギーレベル60KeV以上の放射線Rのみを被写体9に照射する。 【0053】放射線検出器3の検出部30を構成する各センサー31が、被写体9を透過した放射線を検出して得た、該放射線をなす放射線粒子のエネルギーレベルに応じた電圧パルス信号Sを信号処理部40に入力する。 【0054】信号処理部40のコンパレータ41が、センサー31に入射した1つの放射線粒子による電圧パルス信号Sがエネルギーレベル60KeVに対応する基準電圧Vth以上かどうかを判定し、基準電圧Vth以上のとき、その出力をHにする。後段のカウンタ42は、コンパレータ41の出力がHとなったとき、カウント値をカウントアップする。これを一定時間継続して、該一定時間にセンサー31に入射した一定レベル(本例では60KeV)以上のエネルギーを持つ放射線粒子を1つずつ計数し、このカウント値Dを画像データ生成部5に入力する。 【0055】画像データ生成部5は、カウンタ42から入力された各センサー31毎、つまり各画素毎のカウント値を夫々その画素のデータ値とし、該データ値(カウント値)に基づいて透過放射線画像データDを生成する。 【0056】ここで、画像データ生成部5に入力されるカウント値は、カウンタ42においてエネルギーレベル60KeV以上の放射線粒子をカウントとした結果であるから、得られる透過放射線画像データとしてもエネルギーレベルが60KeV以上の放射線粒子のみに基づいて生成されたものとなる。 【0057】また、被写体9内で生じる散乱線のエネルギーレベルは、被写体9内を直進し透過する1次放射線のエネルギーレベルよりもより低いので、エネルギーレベルの比較的高い方には1次放射線を多く含み、エネルギーレベルの比較的低い方には散乱線を多く含む。また、上述のように、エネルギーレベルが比較的高い60KeV以上の放射線(エネルギーレベルのピークは略110KeV)のみが被写体9に照射されているので、被写体に入射し透過する放射線のうち、被写体に入射する放射線には含まれない比較的低いエネルギーレベルの60KeV以下には散乱線が多く含まれ、60KeV以上には1次放射線が多く含まれ、該60KeVを閾値としてエネルギー弁別すれば散乱線と1次放射線とが精度よく弁別されていると考えることができる。つまり、エネルギーレベル60KeVを閾値としてエネルギー弁別を行うと、カウンタ42および画像データ生成部5から出力される信号としては、1次放射線が多く含まれる60KeV以上の放射線を検出したことになり、結果的に、各画素の画像データとしては散乱線による成分が低減されたものとして得ることができ、散乱線の影響が低減された透過放射線画像データを得ることができる。 【0058】また、放射線検出器として量子計数型検出器を使用し、放射線粒子個々のエネルギーレベルを弁別しているので、1次放射線と散乱線とを精度よく峻別することができる。また、高感度且つ広ダイナミックレンジという、量子計数型検出器が有する優れた性質を享受し、より高品質の画像データを得ることもできる。 【0059】このようにして、放射線源2および放射線検出器3(詳しくはその検出部30)の被写体9に対する所定の回転位置における透過放射線画像データが求められたら、放射線源2(発生部20とフィルタ21を一体にして)および放射線検出器3の検出部30を体軸Z−Z’を中心に被写体9の回りに所定の角度だけ相対的に回転させて、上述と同様にその回転位置、つまりその投影方向における透過放射線画像データを求める。このような処理を、被写体9の全周に亘る各投影方向毎の透過放射線画像データが求められるまで繰り返す。 【0060】画像データ生成部5が、各投影方向毎の透過放射線画像データに対してγ補正や画像歪補正等の各種信号処理を施して被写体9の投影画像データを生成し、多数の投影方向の投影画像データを使用して、被写体9のボリュームデータや断層画像データを生成する。 【0061】上述のように、透過放射線画像データは、散乱線の影響が低減されたものであるから、ボリュームデータや断層画像データも散乱線の影響が低減され、該ボリュームデータや断層画像データに基づく画像としては、画像品質のよい、高S/N・高コントラストの画像を得ることができる。 【0062】上記実施の形態においては、放射線源として、比較的高いエネルギーの放射線のみが被写体に照射されるようにしているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、被写体に照射される放射線のエネルギーレベルとしては、比較的低いエネルギーから比較的高いエネルギーまでのある程度の幅を有するものであってかまわない。なぜならば、閾値より低く散乱線と判定されるエネルギーレベルの放射線は、例え放射線源から被写体に照射されたとしても、画像データとしては利用されない、無効な放射線となるだけだからである。つまり、本発明によれば、エネルギー弁別機能を有する放射線検出器を使用して、被写体を透過した放射線の内、比較的高いエネルギー成分には1次放射線が多く含まれ、比較的低いエネルギー成分には散乱線が多く含まれるとみなして、被写体内で生じる散乱線と略直進する1次放射線とを峻別(エネルギー弁別)するようにしているので、被写体に入射する放射線のエネルギーレベルの分布は、エネルギー弁別性能上の差が生じるものの、本質的な問題とはならない。 【0063】このような観点から、上記実施の形態では、放射線画像データの生成に寄与しない不必要な放射線を被写体に照射することがないようにフィルタ21を使用したものである。なお、放射線画像データを生成するのに寄与する比較的高いエネルギーレベルの放射線のみを被写体に照射することにより、放射線源から発せられた放射線を無駄なく利用することができ、効率的であるのは勿論である。 【0064】また、上記実施の形態においては、放射線検出器として、放射線粒子のエネルギーレベルを粒子個々に計数することのできる量子計数型の放射線検出器を使用したものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、比較的低いエネルギーレベルの散乱線と比較的高いエネルギーレベルの1次放射線とをエネルギー弁別することができるものであればどのようなものを使用してもよく、例えば散乱線と1次放射線の平均エネルギーレベルの差に基づいて両者を峻別するものを使用することもできる。 【0065】さらに上述の実施の形態は、本発明による放射線画像信号検出装置をコーンビームCTに適用したものであるが、本発明はこれに限定されるものではない。つまり、放射線を放射線検出器で検出して放射線画像信号を得る装置であればどのようなものであってもよく、放射線検出器としてエネルギー弁別機能を有する放射線検出器を使用して、被写体内で生じる散乱線と略直進する1次放射線とを峻別する本発明による放射線画像信号検出装置を適用することができる。 【0066】また、ここで使用する放射線検出器としては、その形状は問わず、装置構成に合わせた形状とすれば良く、0次元的(点状)に放射線を検出するドットセンサー、1次元的に放射線を検出するいわゆるラインセンサー、2次元的に放射線を検出するいわゆるエリアセンサーのいずれでもよい。 【0067】例えば、従来のX線CTや通常のヘリカルCTでは、散乱線除去のためにスリット撮影を行うことがあるが、本発明による放射線画像信号検出装置を該X線CT等に適用すれば、スリットを使用しなくても散乱線の影響を低減することができるので、スリット撮影が不要になる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000005201 【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
|
| 【出願日】 |
平成10年12月25日(1998.12.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100073184 【弁理士】 【氏名又は名称】柳田 征史 (外1名)
|
| 【公開番号】 |
特開2000−189409(P2000−189409A) |
| 【公開日】 |
平成12年7月11日(2000.7.11) |
| 【出願番号】 |
特願平10−370893 |
|