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【発明の名称】 X線照射位置合わせ方法並びにX線断層撮影方法および装置
【発明者】 【氏名】柳田 弘文

【氏名】貫井 正健

【要約】 【課題】スキャン開始当初からX線照射位置を定位置に一致させるX線照射位置合わせ方法、並びに、そのようにX線照射位置合わせをして撮影を行うX線断層撮影方法および装置を実現する。

【解決手段】X線照射・検出装置により被検体をスキャンするに当たり、スキャン開始前のX線管20の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づきX線焦点の位置を予測し、X線がX線検出器24の定位置に照射するようにコリメータ22またはX線検出器24の位置を調節する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置により被検体をスキャンして断層撮影を行うに当たり、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測し、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測した位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節する、ことを特徴とするX線照射位置合わせ方法。
【請求項2】 X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置により被検体をスキャンして断層撮影を行うに当たり、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測し、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測した位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節し、前記位置調節後の前記X線照射・検出装置でスキャンして断層撮影を行う、ことを特徴とするX線断層撮影方法。
【請求項3】 X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置で被検体をスキャンして断層撮影を行うX線断層撮影装置であって、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測する焦点位置予測手段と、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測したX線焦点の位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節する位置調節手段と、を具備することを特徴とするX線断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線照射位置合わせ方法並びにX線断層撮影方法および装置に関し、特に、X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置のためのX線照射位置合わせ方法、並びに、X線照射位置合わせをして撮影を行うX線断層撮影方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】X線CT(computed tomography)ではX線管から発生するX線をコリメータ(collimator)を通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置を被検体の周りで回転(スキャン:scan)させて、被検体の周囲の複数のビュー(view)方向でそれぞれX線による被検体の投影データ(data)を測定し、それら投影データに基づいて断層像を生成(再構成)するようになっている。
【0003】X線照射装置は、撮影範囲を包含する幅を持ちそれに垂直な方向に所定の厚みを持つX線ビーム(beam)を照射する。X線ビームの厚みはコリメータのX線通過開口(アパーチャ:aperture)の開度によって設定される。
【0004】X線検出装置は、X線ビームの幅の方向に多数のX線検出素子をアレイ(array)状に配列した多チャンネル(channel)のX線検出器によってX線を検出する。多チャンネルのX線検出器は、X線ビームの幅の方向に、X線ビームの幅に相当する長さ(幅)を有する。また、X線ビームの厚みの方向に、X線ビームの厚みよりも大きな長さ(厚み)を有する。
【0005】X線検出器の中には、X線検出素子のアレイを2列とし、2スライス(slice)分の投影データを一挙に得るようにしたものがある。そこでは、2列のアレイを隣接して平行に配置し、X線ビームを厚み方向に均等に振り分けて照射するようにしている。2列のアレイにそれぞれ照射したX線ビームの、被検体のアイソセンタ(isocenter)における厚みが断層像のスライス厚をそれぞれ決定する。
【0006】X線管では、使用中の温度上昇による熱膨張等によりX線焦点の移動が生じ、これが、コリメータのアパーチャを通してX線ビームの厚み方向での変位となって現れる。X線ビームが厚み方向に変位すると、2列アレイにおけるX線ビームの厚みの振り分け比率が変化し、2系統のアレイに投影される被検体のスライス厚が均等でなくなる。
【0007】そこで、2列のアレイにそれぞれ設けたレファレンスチャンネル(reference channel)のX線カウント(count)の比を監視し、比が1でなくなったことからX線照射位置のずれを認識し、コリメータの位置を調節してX線照射位置が定位置となるように制御している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記の照射位置制御はX線を照射してスキャンを開始しないと始まらないので、スキャン開始直後の時点ではX線照射位置は定位置に一致しているとは限らず、むしろずれていることのほうが多い。このため、最初に得られる画像は品質が劣るものとなりがちであるという問題があった。
【0009】本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、スキャン開始当初からX線照射位置を定位置に一致させるX線照射位置合わせ方法、並びに、そのようにX線照射位置合わせをして撮影を行うX線断層撮影方法および装置を実現することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】(1)上記の課題を解決する第1の発明は、X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置により被検体をスキャンして断層撮影を行うに当たり、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測し、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測した位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節する、ことを特徴とするX線照射位置合わせ方法である。
【0011】(2)上記の課題を解決する第2の発明は、X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置により被検体をスキャンして断層撮影を行うに当たり、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測し、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測した位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節し、前記位置調節後の前記X線照射・検出装置でスキャンして断層撮影を行う、ことを特徴とするX線断層撮影方法である。
【0012】(3)上記の課題を解決する第3の発明は、X線管から発生したX線をコリメータを通してX線検出器に照射するX線照射・検出装置で被検体をスキャンして断層撮影を行うX線断層撮影装置であって、スキャン開始前の前記X線管の温度およびこれから行おうとするスキャン条件に基づき前記X線管におけるX線焦点の位置を予測する焦点位置予測手段と、前記X線管から発生したX線が前記X線検出器における定位置に照射するように前記予測したX線焦点の位置に応じて前記コリメータおよび前記X線検出器のうちのいずれか一方または両方の位置を調節する位置調節手段と、を具備することを特徴とするX線断層撮影装置である。
【0013】第1の発明ないし第3の発明のうちのいずれか1つにおいて、前記スキャン条件は少なくともX線照射・検出装置のチルト角度およびスキャン時間を含むことが、アキシャルスキャン時のX線焦点位置の予測を適切に行う点で好ましい。
【0014】また、第1の発明ないし第3の発明のうちのいずれか1つにおいて、前記スキャン条件は少なくともX線照射・検出装置のチルト角度およびアジマス角度を含むことが、ステーショナリスキャン時のX線焦点位置の予測を適切に行う点で好ましい。
【0015】上記の場合、前記スキャン条件にさらにX線焦点の大きさを含むことが、X線焦点の大きさを変えた場合のX線焦点位置の予測を適切に行う点で好ましい。
(作用)本発明では、スキャン開始前に予測したX線焦点の位置に応じてコリメータやX線検出器の位置を調節し、X線がスキャン開始の最初期からX線検出器の定位置に照射されるようにする。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は実施の形態に限定されるものではない。図1にX線CT装置のブロック(block)図を示す。本装置は本発明の実施の形態の一例である。本装置の構成によって、本発明の装置に関する実施の形態の一例が示される。本装置の動作によって、本発明の方法に関する実施の形態の一例が示される。
【0017】図1に示すように、本装置は、走査ガントリ(gantry)2、撮影テーブル(table)4および操作コンソール(console)6を備えている。走査ガントリ2はX線管20を有する。X線管20は、本発明におけるX線管の実施の形態の一例である。X線管20には図示しない温度検出器が設けられている。X線管20から放射された図示しないX線は、コリメータ22により例えば扇状のX線ビームとなるように成形され、検出器アレイ24に照射されるようになっている。コリメータ22は、本発明におけるコリメータの実施の形態の一例である。検出器アレイ24は、本発明におけるX線検出器の実施の形態の一例である。検出器アレイ24は、扇状のX線ビームの広がりの方向にアレイ状に配列された複数のX線検出素子を有する。検出器アレイ24の構成については後にあらためて説明する。
【0018】X線管20、コリメータ22および検出器アレイ24は、X線照射・検出装置を構成する。X線照射・検出装置は、本発明におけるX線照射・検出装置の実施の形態の一例である。X線照射・検出装置の構成については後にあらためて説明する。検出器アレイ24にはデータ収集部26が接続されている。データ収集部26は検出器アレイ24の個々のX線検出素子の検出データを収集する。データ収集部26は、また、X線管20の温度データを収集する。
【0019】X線管20からのX線の照射は、X線コントローラ(controller)28によって制御される。なお、X線管20とX線コントローラ28との接続関係については図示を省略する。コリメータ22は、コリメータコントローラ30によって制御される。なお、コリメータ22とコリメータコントローラ30との接続関係については図示を省略する。
【0020】以上のX線管20ないしコリメータコントローラ30が、走査ガントリ2の回転部32に搭載されている。回転部32の回転は、回転コントローラ34によって制御されるようになっている。なお、回転部32と回転コントローラ34との接続関係については図示を省略する。走査ガントリ2は、また、チルト(tilt)コントローラ36を有する。チルトコントローラ36は、走査ガントリ2のチルト動作を制御する。
【0021】撮影テーブル4は、図示しない被検体を走査ガントリ2のX線照射空間に搬入および搬出するようになっている。被検体とX線照射空間との関係については後にあらためて説明する。
【0022】操作コンソール6は、中央処理装置60を有している。中央処理装置60は、例えばコンピュータ(computer)等によって構成される。中央処理装置60には、制御インタフェース(interface)62が接続されている。制御インタフェース62には、走査ガントリ2と撮影テーブル4が接続されている。
【0023】中央処理装置60は制御インタフェース62を通じて走査ガントリ2および撮影テーブル4を制御するようになっている。走査ガントリ2内のデータ収集部26、X線コントローラ28、コリメータコントローラ30、回転コントローラ34およびチルトコントローラ36が制御インタフェース62を通じて制御される。なお、それら各部と制御インタフェース62との個別の接続については図示を省略する。中央処理装置60は、本発明における焦点位置予測手段の実施の形態の一例である。中央処理装置60、制御インタフェース62およびコリメータコントローラ30からなる部分は、本発明における位置調節手段の実施の形態である。
【0024】中央処理装置60には、また、データ収集バッファ64が接続されている。データ収集バッファ64には、走査ガントリ2のデータ収集部26が接続されている。データ収集部26で収集されたデータがデータ収集バッファ64に入力される。データ収集バッファ64は、入力データを一時的に記憶する。
【0025】中央処理装置60には、また、記憶装置66が接続されている。記憶装置66は、各種のデータや再構成画像およびプログラム(program)等を記憶する。中央処理装置60には、また、表示装置68と操作装置70がそれぞれ接続されている。表示装置68は、中央処理装置60から出力される再構成画像やその他の情報を表示する。操作装置70は、操作者によって操作され、各種の指示や情報等を中央処理装置60に入力する。
【0026】図2に、検出器アレイ24の模式的構成を示す。検出器アレイ24は、多数(例えば1000個程度)のX線検出素子24(i)を円弧状に配列した2列の多チャンネルのX線検出器242,244を形成している。iはチャンネル番号であり例えばi=1〜1000である。X線検出器242,244は互いに平行に隣接している。検出器アレイ24の両端部の所定数のチャンネルは、各列においてそれぞれレファレンスチャンネルとなっている。レファレンスチャンネルは、撮影時に被検体が投影される範囲の外にある。
【0027】図3に、X線照射・検出装置におけるX線管20とコリメータ22と検出器アレイ24の相互関係を示す。同図の(a)は正面図、(b)は側面図である。ここで、X線照射・検出装置が形成する幾何学空間における互いに垂直な3つの座標軸をx,y,zとする。以下に示す他の図でも同様である。同図に示すように、X線管20から放射されたX線は、コリメータ22により扇状のX線ビーム40となるように成形され、検出器アレイ24に照射されるようになっている。図3の(a)では、扇状のX線ビーム40の広がりすなわちX線ビーム40の幅を示す。X線ビーム40の扇面はxy面に平行である。図3の(b)では、X線ビーム40の厚みを示す。X線ビーム40は、2列のX線検出器242,244に、厚みを均等に振り分けて照射される。X線ビーム40の厚み方向はz方向である。z方向はまたX線照射・検出装置の回転軸の方向である。
【0028】このようなX線ビーム40の扇面に体軸を交叉させて、例えば図4に示すように、撮影テーブル4に載置された被検体8がX線照射空間に搬入される。被検体8の体軸はz方向に一致している。X線ビーム40によってスライスされた被検体8の投影像が検出器アレイ24に投影される。被検体8のアイソセンタにおけるX線ビーム40の厚みの1/2ずつが、被検体8の2つのスライス厚thをそれぞれ与える。スライス厚thは、コリメータ22のアパーチャによって定まる。
【0029】検出器アレイ24に対するX線ビーム40の照射状態のさらに詳細な模式図を図5に示す。同図に示すように、コリメータ22におけるコリメータ片220,222をアパーチャを狭める方向に変位させることにより、X線検出器242,244における投影像のスライス厚thを薄くすることができる。また、コリメータ片220,222をアパーチャを広げる方向に動かすことにより、投影像のスライス厚thを厚くすることができる。また、スライス厚thを設定したコリメータ片220,222の相対的位置関係を維持しながら両者をz方向に同時に動かすことにより、検出器アレイ24上のz方向の照射位置を調節することができる。
【0030】このようなスライス厚調節および照射位置調節はコリメータコントローラ30によって行われる。z方向の照射位置は検出器アレイ24における2列のレファレンスチャンネルの出力比に基づいて検出され、この検出信号に基づいて、2つの検出器列上でスライス厚が均等になるようにコリメータ22の位置が調節される。これによって、X線管の焦点の移動に伴う照射位置の変化が修正され、常に定位置にX線ビーム40が照射されるようになる。以下、この機能をオートコリメータ(auto collimator)という。
【0031】なお、z方向の照射位置の調節は、コリメータ片220,222を動かす代わりに、検出器アレイ24を、破線矢印で示すように、コリメータ22に関してz方向に相対的に変位させて行うようにしても良い。このようにすれば、スライス厚の調節機構と厚み方向の照射位置の制御機構を別々に2系統設けることができ、多角的な制御が可能になる。これに対して、上記のように全てコリメータ22で行えば、制御の系統が1系統に統一でき、構成簡素化の要請に応じられる。なお、これら2つの手段を組み合わせて照射位置調節を行うようにしても良いのはもちろんである。
【0032】X線管20、コリメータ22および検出器アレイ24からなるX線照射・検出装置は、それらの相互関係を保ったまま被検体8の体軸の周りを回転(アキシャルスキャン:axial scan)する。スキャンの1回転当たり複数(例えば1000程度)のビュー角度で被検体の投影データが収集される。投影データの収集は、検出器アレイ24−データ収集部26−データ収集バッファ64の系統によって行われる。
【0033】データ収集バッファ64に収集された2スライス分の投影データに基づいて、中央処理装置60により2スライス分の断層像の生成すなわち画像再構成が行われる。画像再構成は、1回転のスキャンで得られた例えば1000ビューの投影データを、例えばフィルタード・バックプロジェクション(filteredback−projection)法によって処理すること等により行われる。
【0034】チルトコントローラ36で走査ガントリ2をチルトさせると、X線照射・検出装置の回転軸(z軸)が被検体8の体軸に対して傾斜する。これによって、図4における反時計回りまたは時計回りに傾けたスライス面についてスキャンが行える。
【0035】また、X線照射・検出装置の回転を止めた状態でX線を照射し、撮影テーブル4を被検体8の体軸方向に移動させながら投影データを収集することにより、被検体8の透視像を撮影する。このような透視撮影はステーショナリスキャン(stationary scan)とも呼ばれる。透視像は、X線管20の回転軌道上の位置に応じて、正面像や側面像あるいは任意角度の斜め側面像が得られる。透視撮影時のX線管20の回転軌道上の位置を、y方向を基準とした角度(アジマス:azimuth)によって表す。
【0036】図6に、X線管20の要部の模式的構成を示す。同図の(a)は正面図、(b)は側面図である。同図に示すように、回転アノード(anode)200とカソード(cathode)202が、図示しない真空の管内に互いに対向して設けられている。回転アノード200とカソード202の間には所定の高電圧が印加される。回転アノード200は図示しない駆動部で駆動されて高速に回転する。回転アノード200は、カソード202と対向する面が斜面になっており、その斜面にカソード202から電子ビームが照射され、電子ビームの衝突エネルギー(energy)によってX線ビーム40を発生する。
【0037】ここで、回転アノード200の表面での電子ビームの照射領域は、例えばカソード202の切り換え等により、小領域204と大領域204’の2段階に切換可能になっている。小領域204はX線ビーム40を発生するための小さいX線焦点を形成し、大領域204’はX線ビーム40’を発生するための大きいX線焦点を形成する。以下、X線焦点を単に焦点という。
【0038】回転アノード200は電子ビームの衝突エネルギーで温度が上昇し、これによってX線管20の温度が上昇する。X線管20の温度はX線照射の継続時間に応じて高温になる。温度上昇に伴う熱膨張により焦点のz方向の位置が変化する。変位の方向は回転アノード200の回転軸が伸びる方向である。以下、この方向を+、反対方向を−とする。
【0039】変位の絶対量は微少であるが、コリメータ22のアパーチャを支点とする光学的なてこによって拡大されるので、検出器アレイ24のX線照射面ではかなりの移動距離となる。以下に述べる他の要因による焦点移動についても同様である。
【0040】z方向の焦点移動は、走査ガントリ2のチルトによっても生じる。すなわち、図4における反時計回り(+方向)にチルトさせると焦点は例えば+方向に変位し、時計回り(−方向)にチルトさせると例えば−方向に変位する。また、z方向の焦点位置は、スキャン時の走査ガントリ2の回転速度の影響を受ける。走査ガントリ2の回転による遠心力がX線管20に働き、その力が回転速度によって変わるので、回転速度が高いほど、すなわち、スキャン時間が短いほど焦点は例えば+方向に移動する。
【0041】また、図6に示したように、回転アノード200上での電子ビーム照射面積を変えて焦点の大小を切り換えるときは、回転アノード200の電子ビーム照射面が傾斜していることによりz方向の焦点位置が変化する。さらに、ステーショナリスキャンを行う場合は、スキャン時間は無関係となる代わりにX線管20のアジマスが焦点のz方向の位置に影響する。すなわち、アジマスが0度のとき例えば+方向に最大変位を生じ、180度では例えば−方向に最大変位を生じる。また、途中のアジマスでは両者の中間的な変位を生じる。
【0042】このように、少なくとも、X線管20の温度、走査ガントリ2のチルト角度、スキャン時間、焦点の大小およびアジマスを要因として、焦点のz方向の位置が変化する。そこで、中央処理装置60は、スキャンを開始するに当たり、これらの要因に基づいて焦点の変位量を予測し、X線ビーム40の照射位置を検出器アレイ24の定位置に一致させるための、コリメータ22のz方向の移動距離を計算する。あるいは、検出器アレイ24の位置調節機構を有する場合は、X線ビーム40の照射位置を検出器アレイ24の定位置に一致させるための、検出器アレイ24のz方向の移動距離を求めるようにしても良い。そして、計算値にしたがってコリメータ22(もしくは検出器アレイ24または両方)の位置を調節し、スキャンを開始する。
【0043】図7に、焦点移動とそれに対応するコリメータの位置調節の概念図を示す。同図に示すように、z方向における検出器アレイ24の中央に立てた垂線上の位置206に焦点が位置する状態を基準状態とし、この基準状態においてX線ビーム40を検出器アレイの中央に照射させるコリメータ22の位置230をコリメータの基準位置とする。
【0044】焦点が基準状態から図における左方向(+方向)の位置206’に移動した場合、そこから発するX線ビーム40’を検出器アレイ24に中央に照射させるためには、コリメータ22を基準位置230から+方向の位置230’まで移動させる必要がある。同様に、焦点が基準状態から図における右方向(−方向)の位置206’’に移動した場合は、そこから発するX線ビーム40’’を検出器アレイ24に中央に照射させるために、コリメータ22を基準位置230から−方向の位置230’’まで移動させる必要がある。コリメータ22の移動距離Zは焦点の移動距離zに比例し、【0045】
【数1】

【0046】となる。比例定数G1(ゲイン:gain)は1より小さい正の値である。図8に、焦点移動とそれに対応する検出器アレイの位置調節の概念図を示す。焦点が基準状態から図における左方向(+方向)の位置206’に移動した場合は、そこから発するX線ビーム40’を検出器アレイ24に中央に照射させるためには、検出器アレイ24を基準位置240から−方向の位置240’まで移動させる必要がある。同様に、焦点が基準状態から図における右方向(−方向)の位置206’’に移動した場合は、そこから発するX線ビーム40’’を検出器アレイ24に中央に照射させるために、検出器アレイ24を基準位置240から+方向の位置240’’まで移動させる必要がある。検出器アレイ24の移動距離Zは焦点の移動距離zに比例し、【0047】
【数2】

【0048】となる。比例定数G2(ゲイン:gain)は絶対値が1より大きい負の値である。本発明者は、鋭意研究の結果、アキシャルスキャンの場合、焦点の移動距離と上記の要因との間には、下記の関係があることを見出した。
【0049】
【数3】

【0050】ここで、T:X線管の温度、ただし使用温度範囲の百分率T1:温度範囲の上限、例えば90%T2:温度範囲の下限、例えば10%U:チルト角度U1:チルト角度の+方向の上限、例えば30度U2:チルト角度の−方向の上限、例えば30度V:スキャン時間V1:最長スキャン時間、例えば3秒V2:最短スキャン時間、例えば0.8秒W:焦点の大小、大=1,小=0a,b,c,d,k:定数また、ステーショナリスキャンの場合は、焦点の移動距離と各要因の間には下記の関係があることを見出した。
【0051】
【数4】

【0052】ここで、T:X線管の温度、ただし使用温度範囲の百分率T1:温度範囲の上限、例えば90%T2:温度範囲の下限、例えば10%U:チルト角度U1:チルト角度の+方向の上限、例えば30度U2:チルト角度の−方向の上限、例えば30度X:アジマスW:焦点の大小、大=1,小=0a’,b’,c’,d’,k’:定数中央処理装置60は、アキシャルスキャンの場合は(3)式により、また、ステーショナリスキャンの場合は(4)式により、それぞれ焦点の移動距離zを予測し、この予測値を用いて(1)式によりコリメータ22を動かすべき距離Zを求め、それに基づきコリメータコントローラ30を通じて位置調節を行う。なお、検出器アレイ24の位置を調節する場合は(2)式によって距離Zを求める。
【0053】ただし、(1)式はコリメータ22の初期位置が基準位置に一致している場合の式であり、一般的には基準位置に対するコリメータ22の現在位置のずれz0を含む下記の式によってコリメータ22の移動距離Z’を求める。なお、コリメータ22の現在位置は中央処理装置60により常時認識されている。検出器アレイ24の位置を調節する場合もこれに準じる。
【0054】
【数5】

【0055】本発明者は、また、コリメータ22の移動距離を上記の要因に基づいて一挙に求める関係式を見出した。それを下記に示す。なお、下式では特に区別していないものの、焦点移動の予測が含まれているのは当然である。
【0056】アキシャルスキャンについては、【0057】
【数6】

【0058】ここで、A,B,C,D,K:定数ステーショナリスキャンについては、【0059】
【数7】

【0060】ここで、A,B,C,D,K:定数定数A〜Kは、本装置をキャリブレーション(calibration)することにより求められる。キャリブレーションはスキャン条件を1つずつ異ならせたスキャンによって行われる。なお、キャリブレーション用のスキャンは、被検体8を搭載しないで行うことはいうまでもない。
【0061】アキシャルスキャンについてのスキャンの順番とその条件は、例えば図9に示す通りである。まず、コリメータ22を基準位置に合わせ、この状態で最初のスキャン1を行う。スキャン条件は、同図に示すように、X線管の温度が使用温度範囲の10%以下、チルト角度は−30度、スキャン時間は3秒、焦点の大きさは小である。スキャンはオートコリメータ機能を働かせた状態で行う。したがって、X線ビーム40の照射位置が定位置になるように、コリメータ22の位置が自動調節される。そして、自動調節されたコリメータの位置Z1を求める。Z1にはスキャン1のスキャン条件の影響を受けた焦点位置が反映している。
【0062】次にスキャン2を行う。スキャン条件はチルト角度を+30度とした以外はスキャン1と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z2を求める。Z2にはスキャン2のスキャン条件の影響を受けた焦点位置が反映している。なお、Z1とはチルト角度の影響だけが異なる。
【0063】次にスキャン3を行う。スキャン条件は焦点の大きさを大とした以外はスキャン2と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z3を求める。Z3にはスキャン3のスキャン条件の影響を受けた焦点位置が反映している。Z2とは焦点の大きさの影響だけが異なる。
【0064】次にスキャン4を行う。スキャン条件はスキャン時間を0.8秒とした以外はスキャン3と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z4を求める。Z4にはスキャン4のスキャン条件の影響を受けた焦点位置が反映している。Z3とはスキャン時間の影響だけが異なる。
【0065】この後、アイドルスキャン(idle scan)を連続的に行ってX線管の温度を上昇させる。ただし、その間オートコリメータは働かせない。X線管の温度が使用温度範囲の90%以上になったらスキャン5を行う。スキャン条件はX線管の温度を使用温度範囲の90%以上とした以外はスキャン4と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z5を求める。Z5にはスキャン5のスキャン条件の影響を受けた焦点位置が反映している。Z4とはX線管20の温度の影響だけが異なる。
【0066】以上のようにして求めたデータZ1〜Z5を用いて、下記の式により定数A〜Kを求める。
【0067】
【数8】

【0068】ここで、T1,T2,U1,U2,V1,V2は(3)式におけるものと同じである。ステーショナリスキャンについてのスキャンの順番とその条件は、例えば図10に示す通りである。まず、コリメータ22を基準位置に合わせ、この状態で最初のスキャン1を行う。スキャン条件は、同図に示すように、X線管の温度が使用温度範囲の10%以下、チルト角度は−30度、アジマスは0度、焦点の大きさは小である。スキャンはオートコリメータ機能を働かせた状態で行う。したがって、X線ビーム40の照射位置が定位置になるように、コリメータ22の位置が自動調節される。そこで、自動調節されたコリメータの位置Z1を求める。
【0069】次にスキャン2を行う。スキャン条件はチルト角度を+30度とした以外はスキャン1と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z2を求める。
【0070】次にスキャン3を行う。スキャン条件は焦点の大きさを大とした以外はスキャン2と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z3を求める。
【0071】次にスキャン4を行う。スキャン条件はアジマスを180度とした以外はスキャン3と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z4を求める。
【0072】この後、X線照射を連続的に行ってX線管の温度を上昇させる。ただし、その間オートコリメータは働かせない。X線管の温度が使用温度範囲の90%以上になったらスキャン5を行う。スキャン条件はX線管の温度を使用温度範囲の90%以上とした以外はスキャン4と同じである。このスキャンでオートコリメータにより自動調節されたコリメータ22の位置Z5を求める。
【0073】以上のようにして求めたデータZ1〜Z5を用いて、下記の式により定数A〜Kを求める。
【0074】
【数9】

【0075】ここで、T1,T2,U1,U2は(4)式におけるものと同じである。上記の(5),(6),(7)式は、いずれも2つの検出器列におけるスライス厚が均等になるようにX線ビーム40を照射する場合についての式であるが、2つの検出器列におけるスライス厚比を一般的に1:n(n≧1)とする場合は、下記の距離znだけ、スライス厚比が大きい側にコリメータ22の位置をずらす補正を加えれば良い。
【0076】
【数10】

【0077】ここで、M:コリメータのアパーチャの全幅本装置の動作を説明する。本装置の動作は、操作者による指令に基づき、中央処理装置60による制御の下で進行する。操作者は、操作装置70を通じて撮影条件を入力する。撮影条件には、管電圧、管電流、スライス厚、スライス位置、チルト角度、スキャン時間、焦点の大小等が含まれる。ステーショナリスキャンの場合はスキャン時間に代えてアジマスが含まれる。以下、アキシャルスキャンの例で説明するがステーショナリスキャンの場合もこれに準じる。また、コリメータ22の位置を調節する例で説明するが、検出器アレイ24の位置を調節する場合、または、コリメータ22および検出器アレイ24の位置を調節するもこれに準じる。
【0078】中央処理装置60は、スキャン条件およびX線管20の温度測定値から(3)式に基づいて、スキャン開始時点でのX線管20の焦点のz方向の位置を予測し、(5)式からコリメータ22のz方向の位置Z’を求める。あるいは、(6)式に基づいてコリメータ22のz方向の位置Z’を一挙に求める。
【0079】次に、操作者からの指令の基づき、被検体8を搭載した撮影テーブル4の位置決め後に、走査ガントリ2の回転部32を回転させてX線を照射し、アキシャルスキャンが始まる。コリメータ22のz方向の位置Z’が、スキャンの最初期のX線管20の焦点位置zに対応して調節されているので、X線ビーム40は最初から検出器アレイ24の定位置に照射される。また、スキャン開始とともに上昇するX線管温度に基づく焦点移動に対してはオートコリメータ機能によって照射位置の安定化が行われる。
【0080】スキャンによって収集されたビューデータに基づいて、中央処理装置60は画像再構成を行う。画像再構成は、ビューデータを例えばフィルタード・バックプロジェクション法等によって処理することにより行われる。画像再構成により被検体8の断層像が得られる。X線の照射が最初から検出器アレイ24の定位置に行われるので、再構成画像は最初から品質の良いものを得ることができる。
【0081】検出器アレイ24が平行な2列のX線検出器を有することにより、1回のスキャンで隣接する2つのスライスの断層像を一挙に得ることができる。これによって、マルチスライススキャン(multi−slice scan)やヘリカルスキャン(helical scan)を行う場合の効率が向上する。再構成した画像は表示装置68に表示し、また、記憶装置66に記憶する。
【0082】このように、スキャンの開始に先立って、X線管20の焦点の位置を予測し、X線ビーム40を検出器アレイの定位置に照射させるようにコリメータ22等の初期位置を調節する。このような位置調節は、例えばスキャン休止時間が1時間以上になった場合には必ず行うのが、品質の良い画像を得る点で好ましい。また、休止時間が1時間以内でも、X線管の温度が使用温度範囲の10%以下に低下していたら行うべきである。
【0083】また、それ以外の場合でも、これから行おうとするスキャン条件から求めた予測移動量と、前回行ったスキャン条件から求めた予測移動量の差が所定の限度を超える場合は上記の位置調節を行った方がよい。さらには、撮影のシリーズ(series)やエグザミネーション(examination)が変わる度に行うのが、常に品質の良い撮影を行う点で好ましい。
【0084】以上、検出器アレイが2列のX線検出器からなる例について説明したが、検出器アレイは3列以上の多列であって良い。また、単一列の検出器アレイであっても良いのはもちろんである。
【0085】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明によれば、スキャン開始当初からX線照射位置を定位置に一致させるX線照射位置合わせ方法、並びに、そのようにX線照射位置合わせをして撮影を行うX線断層撮影方法および装置を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000121936
【氏名又は名称】ジーイー横河メディカルシステム株式会社
【出願日】 平成10年11月20日(1998.11.20)
【代理人】 【識別番号】100085187
【弁理士】
【氏名又は名称】井島 藤治 (外1名)
【公開番号】 特開2000−152925(P2000−152925A)
【公開日】 平成12年6月6日(2000.6.6)
【出願番号】 特願平10−331134