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【発明の名称】 歯肉診査用触覚センサー
【発明者】 【氏名】藤井 誠一

【要約】 【課題】歯肉炎や歯周炎について定量的、客観的な測定が可能であり、且つ生体に非侵襲的で2次感染の虞れが皆無な新規な歯肉診査用触覚センサーを提供する。

【解決手段】歯肉に押し当てられる接触子と、上記接触子の固有振動数の変化を検出するセンサー部とを備え、これらにより歯肉の硬さが測定される。この触覚センサーの基本的な動作原理は、有限長の棒の固有振動数が音響負荷の有無によって変化する現象を利用したもので、固有振動数の変化を例えば共振周波数の変化に変換し、これを測定することで測定材料、すなわち歯肉の硬さに関する情報が把握される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 歯肉に押し当てられる接触子と、上記接触子の固有振動数の変化を検出するセンサー部とを備え、歯肉の硬さが測定される歯肉診査用触覚センサー。
【請求項2】 上記センサー部は圧電振動子と振動検出素子とを有するとともに、当該振動検出素子からの出力信号を圧電振動子に帰還することにより発振回路が構成され、上記接触子の固有振動数の変化に伴う発振回路の共振周波数の変化により歯肉の硬さに関する情報が得られることを特徴とする請求項1記載の歯肉診査用触覚センサー。
【請求項3】 上記接触子の形状が針状またはプローブ状であり、先端が球面状とされていることを特徴とする請求項1記載の歯肉診査用触覚センサー。
【請求項4】 上記接触子及びセンサー部が歯科用ハンドピース型のケースに収納されていることを特徴とする請求項1記載の歯肉診査用触覚センサー。
【請求項5】 上記歯科用ハンドピース型のケースに、測定荷重を段階的に表示するLEDが組み込まれていることを特徴とする請求項4記載の歯肉診査用触覚センサー。
【請求項6】 上記歯科用ハンドピース型のケースは、接触子が取り付けられたヘッド部が水平方向に回動自在とされていることを特徴とする請求項4記載の歯肉診査用触覚センサー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、歯周組織やインプラント周囲組織の診査に用いられる新規な歯肉診査用触覚センサーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】歯周組織は、文字通り歯の周囲組織を指し、通常、歯肉、歯槽骨、歯根膜、セメント質の4つから成り立っている。そして、歯肉の炎症を歯肉炎、その炎症が他の3つの歯周組織にまで及んでいるものを歯周炎と呼んでいる。
【0003】これとは別に、近年、歯を喪失した部分にインプラントと呼ばれる人工歯根を用いた治療が広く施されるようになってきている。このインプラント周囲組織は、歯周組織と比較して組織学的な性質が若干異なるため、歯肉組織とは区別して別名で呼ばれている。
【0004】歯肉炎や歯周炎については、これまでも様々な診査方法が試みられており、病理学的、組織学的、細菌学的な裏付けのデータも数多くの研究において報告されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、現状において、歯肉炎や歯周炎の診査方法としては、プロービングと呼ばれる手法が主流であり、歯科医療の現場において広く実施されている。
【0006】しかしながら、このプロービングと呼ばれる方法では、術者の主観的要素を100%除外することができず、また、同一の術者による診査方法でさえ100%の再現性がないことが明らかになっている。したがって、複数の異なる診査を行い、それらの結果を総合的に考慮して診断へと結びつけざるを得ず、診査、診断を非常に煩雑なものとしている。
【0007】また、上記プロービングでは、操作そのものが若干ではあるが生体に侵襲的な検査方法であり、この操作による2次感染の危険性も含んでいる。
【0008】一方、インプラント周囲組織の炎症状態の診査は、その周囲組織が歯周組織と性質を異にするため、上記プロービングのような従来の診査では、正確な診査ができないことが明らかになりつつある。
【0009】したがって、上記従来の方法に代わる新しい診査方法が望まれるところであるが、世界的にも未だ模索中の状態にある。
【0010】本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、歯肉炎や歯周炎について定量的、客観的な測定が可能であり、且つ生体に非侵襲的で2次感染の虞れが皆無な新規な歯肉診査用触覚センサーを提供することを目的とする。
【0011】さらに本発明は、従来不可能であったインプラント周囲炎の診査にも応用可能な歯肉診査用触覚センサーを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明の歯肉診査用触覚センサーは、歯肉に押し当てられる接触子と、上記接触子の固有振動数の変化を検出するセンサー部とを備え、これらにより歯肉の硬さが測定されることを特徴とするものである。
【0013】本発明の触覚センサーの基本的な動作原理は、有限長の棒の固有振動数が音響負荷の有無によって変化する現象を利用したもので、この固有振動数の変化を例えば共振周波数の変化に変換し、これを測定することで測定材料、すなわち歯肉の硬さに関する特性が示される。
【0014】上記測定は、定量的、客観的であり、且つ生体に非侵襲的である。また、インプラント周囲組織についても、客観的、定量的な評価が可能である。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の触覚センサーの具体的な構成について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】本発明の触覚センサーの基本構成は、図1に示すようなものであり、先端が歯肉hに押し当てられる接触子1の基端側に、振動検出素子2及び圧電振動子3が取り付けられている。
【0017】この基本構成において、上記振動検出素子2は、上記接触子1の音響負荷の有無による固有振動数の変化を電気信号に変換して出力する。
【0018】一方、上記圧電振動子3は、PZT等の圧電材料よりなり、上記振動検出素子2からの出力信号がアンプ4により増幅されて強制帰還され、発振回路が構成されている。
【0019】したがって、図1に示す触覚センサーの等価回路は、図2に示すようなものとなる。
【0020】接触子1のフリーな端部(先端)が被験物、すなわち歯肉hの表面と接触すると、PZTの振動モードが変わり、発振回路の共振周波数がシフトする。
【0021】この周波数のシフトは、接触子1の先端に接触する被験物の音響負荷の大きさに依存する。
【0022】したがって、上記発振回路の共振周波数のシフトを測定することで、被験物である歯肉の硬さに関する情報を得ることができる。
【0023】以下、この触覚センサーの基本的動作原理について説明する。
【0024】この触覚センサーは、有限長の振動棒の固有振動数が接触した物質の特性によって変化する現象を利用するものである。
【0025】振動する長さlの有限長棒が対象物質に接触すると、振動モードの変化によって、共振周波数及び共振時の振幅が変化する。
【0026】棒が物質に接触していない無負荷状態での共振周波数をf0 とすると、物質に接触させて負荷を与えたときの共振周波数がfx に変化した場合、この変化量(=fx−f0)(以下、Δf)は、接触する物質の物性に依存するので、接触前後の共振周波数と振幅の大きさの変化を求めれば、対象物質の物理的な特性、すなわち弾性特性に関する情報を得ることができる。
【0027】図1の触覚センサーは、この基本原理を利用したもので、PZTを用いた振動素子(圧電振動子3)と検出素子(振動検出素子2)で構成され、振動素子の振動モードの変化を検出素子で捉え、この出力信号を増幅して振動素子に強制帰還させて発振回路系として構成している。
【0028】センサー素子(接触子1)の先端を対象物質に接触させれば、素子の振動モードが変化して、回路系全体の周波数がシフトする。
【0029】棒の中を伝わる平面波の波動方程式から、棒が物質に接触していない無負荷状態の共振周波数f0 と物質に接触させて負荷を与えたときの共振周波数fx の変化量Δfは、下記の数1のように表すことができる。
【0030】
【数1】

【0031】センサーを均一な物質に接触させたとき、硬い物質上でのΔfは、センサー不の接触面の大きさを半球(半径r)とすると、点接触となってスティフネス効果が増大するので、物質に接触したときのΔfは数2のように表すことができる。
【0032】
【数2】

【0033】また一方、柔らかい物質に接触したときは、先端部の接触面積の増加とともに質量効果による影響が増大するので、物質に接触したときのΔfは数3のように表すことができる。
【0034】
【数3】

【0035】したがって、接触前後のΔfを求めれば、対象物質の物理的な性質と密接に関係した値となり、対象物質の弾性特性に関する情報を検出することが可能となる。
【0036】以上の基本動作原理に基づいて試作した計測システムを図3に示す。
【0037】この計測システムにおいて、センサー部11には、長さ7mm、外径1.2mm、内径0.6mmのPZT(富士セラミックス株式会社製)を使用し、長さ40mm、直径1mmのステンレス製の針を固定し、接触子12とした。
【0038】センサー部11は、硬質ウレタンフォームで保護した後に、円筒型のアクリルケース(長さ50mm、直径10mm)に組み込んだ。
【0039】また、接触子12は、先端をケースから外部に20mm出して、先端部を直径0.5mmの球面状に加工した。
【0040】そして、周囲を先端の外径が0.65mmのプラスチック製の管にてカバーし、その先端を1mmだけ露出させた。
【0041】移動量の測定には、変位センサー13を用いた。この変位センサー13は、コイルLとコンデンサCによって、LC発振回路を構成している。
【0042】このLC発振回路においては、コイルL内のフェライトが移動すると、コイルLのインダクタンスが変化するので、その発振周波数の変化によりセンサー部11の移動量を求めることができる。なお、この変位センサー13は、1/1000mmの分解能を有するものである。
【0043】また、この計測システムにおいて、荷重に関しては、荷重計14(SARTORIUS株式会社製、BP310S)を利用し、カウンターバランスをとってセンサーの基本特性を調べた。
【0044】カウンターバランス15は、レコードプレーヤのアーム部分の精密なバランス機構を利用した。これにより、対象物質との接触時に生じる誤差の減少が可能となっている。
【0045】物質と接触することによって変化する周波数データは、周波数カウンター16(株式会社アドバンテスト製、ユニバーサルカウンターTR5822)で計測し、GP−IBインターフェイスを介してパーソナルコンピュータ17に取り込んだ。
【0046】取り込まれたデータは、ディスプレイ上にリアルタイムに表示され、視覚的に捉えることが可能である。例えば、対象物質が硬い場合にはプラス側に、柔らかい場合にはマイナス側にグラフ表示するように構成することで、対象物質の物理的な性質を直感的に把握することが可能である。
【0047】また、得られたデータは、パーソナルコンピュータ17により演算処理やファイル管理が行われる。センサーの接触荷重データについても同様であり、RS−232インターフェースを通して周波数データと並行して処理を行うようにしている。
【0048】これらとフィルターFを組み込んだ増幅器Aを接続して、システムを構成した。
【0049】上記計測システムにおいて、センサーの基本特性について、以下のような測定を行った。
【0050】先ず、センサーの周波数−出力電圧特性を測定した。これによりPZTの自由振動時における共振周波数の値を決定した。
【0051】測定モデルとしては、工業用シリコーン(信越シリコーン社製、KE−116)を専用シンナー、専用硬化液と共に使用した。これら溶質と溶媒の混合比を変化させ、重量パーセント濃度で50%〜100%の範囲で6種類の異なった濃度のものを用意した。
【0052】そして、測定モデルに対する接触荷重、スティフネス及び周波数変化量のシリコーン濃度の違いによる影響について検討した。
【0053】上記計測システムにおけるPZTの周波数−出力電圧特性を測定した結果を図4に示す。
【0054】グラフは、接触子先端を対象物に接触させず、PZTの自由振動時における共振周波数と出力電圧の関係の推移を示している。出力電圧が高く、安定している共振周波数を242.6kHzと決定し、以後の測定における基本共振モードとして用いた。
【0055】次に、6種類の異なる濃度に調整したシリコーンの濃度別にセンサーで測定し、荷重とΔfとの特性をデータより解析した結果を図5に示す。
【0056】どの荷重値においても、シリコーン濃度が低くなっていくほど、Δfはマイナス側にシフトする傾向を示した。また、荷重の増加と共にΔfはマイナス側にシフトする傾向を示した。
【0057】次に、シリコーン濃度とスティフネスの特性について、得られたデータより解析した結果を図6に示す。スティフネスの単位は、g/mmであり、1mmの定歪みを与えるのに必要な荷重を示している。スティフネスは、材料が変形されうる難易さを示す指標であり、与えられた変形を生ずるのに必要な応力によって示される。例えば、シリコーン濃度100%はスティフネス値で15.7g/mmと示され、1mmの定歪みを与えるのに15.7gの荷重が必要であることを示す。
【0058】シリコーン濃度が高くなるほど各濃度に応じたスティフネスは比例し、増加傾向を示している。また、これらは高い相関関係(r=0.984)を示している。
【0059】さらに、センサーのシリコーンに対する応力歪み特性から得られるスティフネスとΔfとの特性を解析した結果を図7に示す。
【0060】Δfはシリコーン濃度が高くなるにしたがって、またスティフネスの増大とともにプラス側に増大している。そして、これらも高い相関関係(r=0.989)を示している。
【0061】以上の測定で得られた結果をもとに、システム全体をより小型化し、診療室のチェアサイドへ移動可能となるように改良を行った。
【0062】図8に、作製した歯科用ハンドピース型触覚センサーの外観を示す。また、この歯科用ハンドピース型触覚センサーを用いた計測システムを図9に示す。
【0063】ここでは、センサー部に先の計測システムと同様のPZTを使用し、長さ29mm、直径1.5mmのSK鋼を固定し、接触子21とした。
【0064】接触子21は、ケース22から外部に20mm出し、徐々にテーパーを付け、先端を直径0.5mmの球面状に加工した。
【0065】これを歯科用ハンドピース型のケース22内部に直径12mm、厚さ4mmのひずみゲージ式変換器(ロードセル)と共に組み込んだ。
【0066】また、歯科用ハンドピース型のケース22の取っ手の部分22aには、ロードセルと連動し、コンピュータのビープ音と共に接触子21の対象物質に対する荷重の程度を測定者に3段階で知らせるLED23を組み込んだ。
【0067】これに加えてカウンターボード24、パーソナルコンピュータ25、アンプユニット及びI/O拡張ユニットを接続して、計測システムを構成した。
【0068】この計測システムでは、測定者がフットスイッチ26にてシステムの作動制御を行うことができる。
【0069】ヘッド部22bには、センサー部27やロードセル28が組み込まれているが、センサー部27は、先の計測システムと同様、PZTを使用したものである。これらセンサー部27やロードセル28には、それぞれアンプ29,30が接続され、V−fコンバーター31やバンドパスフィルター32を通してカウンターボード24へと出力される。
【0070】この歯科用ハンドピース型の計測システムは、歯科医師が違和感なく使えるものとして形状を選択したものであり、コントラアングルも多くのハンドピースと同様、165°とした。
【0071】また、ケース22のヘッド部22bは、左右に約30°ずつ水平に動かすことが可能なようにスライド機構を設けたが、これは実際の測定時に有効であった。
【0072】上記LED23は、接触荷重が4g以上で緑、5g以上で黄色、6g以上で赤が発光すると同時にビープ音がなるように設定したが、測定の際に不快感の訴えを聞くことはなく、同時に、無駄なデータ量の減少と、解析処理の時間短縮が可能となった。
【0073】このようにして作製した歯科用ハンドピース型触覚センサーを用い、先ず、予備試験として工業用シリコンを用いた測定モデルについて、硬さ測定を実施した。
【0074】なお、ここでは、センサー部を自動降下システム(降下速度:1mm/0.5秒)にセットし、接触荷重及びシリコン濃度の違いによる硬さ特性への影響を検討した。
【0075】測定結果を図10に示す。この図10においては、縦軸に周波数変化(Δf)、横軸に接触荷重(単位:g)をとっている。
【0076】この図10を見ると明らかなように、シリコン濃度が低いほど、周波数変化(Δf)はマイナス側にシフトし、軟らかい状態であることを示している。また、濃度別のラインが全く交差していないことは、計測装置(触覚センサー)の硬さ特性の判別度の安定性を示している。
【0077】この結果より、試作した触覚センサーを用いた歯肉炎の客観的評価法への可能性が示唆された。
【0078】そこで、上記歯科用ハンドピース型触覚センサーを用い、臨床測定を行った。被験者は、口腔内診査において臨床的に正常な歯肉を有し、歯肉退縮、歯列不整が認められず、被験歯に補綴物や不良修復物の装着、う歯のない者とした。
【0079】被験者は、歯肉の状態を可能な限り良好にすべく1週間のプロフェッショナル・トゥース・クリーニング(PTC)の後、1回目の測定を開始した。実験的歯肉炎は、10日間に亘ってプラークコントロールを中断することによって惹起させた。また、その後、PTCを再開し、1週間後に最後の測定を実施して終了した。各診査とも、期間中5回(0日目、3日目、7日目、10日目、17日目)実施した。
【0080】先ず、7人の被験者に対する触覚センサーによる臨床測定(TS)の測定結果より、歯間乳頭のデータを抽出し、各診査期間毎のΔfを求めた。結果を図11に示す。
【0081】プラークコントロールの中断期間では、数カ所で逆転が認められるものの、経時的にΔfはマイナス側にシフトする傾向を示している。そして、プラークコントロール再開後には、Δfはプラス側に戻っていく傾向を示した。
【0082】ただし、17日目のΔf(平均−111.4Hz)は、0日目のΔf(平均−100.9Hz)と同じレベルにまでは戻らなかった。
【0083】また、7人のΔfは、平均25.8Hz(22〜33Hz)のレンジ幅をもって、0日目のΔf(最大値−94Hz)から10日目のΔf(最小値−152Hz)まで、58Hzの範囲内で変化を示した。
【0084】以上の結果に対して二次元配置分散分析の検定をしたところ、TSのΔfには患者の個体間に有意差(p<0.01)があり、診査期間の間にも有意差(p<0.001)があることが認められた。
【0085】次に、7人の被験者に対するTSの測定値より、辺縁歯肉のデータを抽出し、各診査期間毎のΔfを調べた。結果を図12に示す。
【0086】Δfは、スタート値のレベルがプラス側にシフトしていたが、経時的には歯肉乳頭で観察された状態とほぼ同様のシフト傾向を示した。
【0087】以上、7人の被験者におけるTS測定値は、歯肉乳頭においても辺縁歯肉においても、経時的な歯肉炎の変化に対応して有意な変化を示した。
【0088】特に、7人のデータが、歯間乳頭、辺縁歯肉とも一定の分散幅を持ちながらも、プラークコントロールの中断により歯肉の炎症状態が進むにつれてΔfがマイナス側にシフトしていくことは、歯肉の軟らかさが増していることを示している。
【0089】また、プラークコントロール再開後には、Δfはプラス側にシフトし、歯肉の硬さの回復傾向を示していると考えられる。
【0090】また、歯間乳頭の方が辺縁歯肉より約10Hz広い範囲で変化しながら、個体間でより大きな有意差を示していることは、元々軟らかい歯間乳頭の方が辺縁歯肉よりもさらに軟らかくなり易い可能性を示している。
【0091】したがって、歯肉炎の状態を示すパラメータとしては、歯間乳頭の方がわかりやすく、炎症の有無の検証に適しているものと考えられる。
【0092】以上の検討により、次のような結果が得られた。
【0093】先ず、試作した触覚センサーの基本特性に安定性が認められた。また、触覚センサーの測定値は、経時的な歯肉炎の変化に相応して、有意な変化を示した。また、隣接面歯肉と辺縁は肉において群間に有意差が認められた。さらに、プラーク及び歯肉炎に対するインデックスと、触覚センサーの測定値には、経時的に類似した傾向と相関関係が認められた。
【0094】これらの結果から、本発明の触覚センサーは、実験的歯肉炎に対する有用性が認められ、歯肉の炎症を対象とした定量的評価が可能であることが実証された。
【0095】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発明の触覚センサーによれば、歯肉炎や歯周炎について定量的、客観的な測定が可能であり、且つ生体に非侵襲的で2次感染の虞れも皆無である。
【0096】さらに、従来不可能であったインプラント周囲炎の診査にも応用可能である。歯肉炎、歯周炎と比較して、インプラント周囲炎の場合、炎症の波及速度が速いため、術後の定期的な診査は欠かすことができない。また、メンテナンス期に行う検査において、仮に炎症状態が軽度なものであっても、正確に把握できれば早期に対応することが可能となる。したがって、本発明の触覚センサーによるインプラント周囲組織における炎症の早期発見の意義は非常に大きい。
【出願人】 【識別番号】598081780
【氏名又は名称】藤井 誠一
【出願日】 平成10年6月19日(1998.6.19)
【代理人】 【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃 (外2名)
【公開番号】 特開2000−5170(P2000−5170A)
【公開日】 平成12年1月11日(2000.1.11)
【出願番号】 特願平10−173459