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【発明の名称】 洗浄具
【発明者】 【氏名】小野 陽二

【氏名】中川 潤洋

【氏名】伊藤 裕

【要約】 【課題】焼却時に有害な塩素系ガスを発生することなく、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感に優れた洗浄具を提供する。

【解決手段】スチレンから誘導される重合体ブロックAとイソプレンから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体とポリプロピレンとの混合物からなるフィラメントを構成繊維として用いた洗浄具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕との混合物からなるフィラメントを構成繊維として用いた洗浄具。
【請求項2】 芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕とが複合紡糸され、ブロック共重合体〔I〕が繊維表面の少なくとも一部に存在するフィラメントを構成繊維として用いた洗浄具。
【請求項3】 ブロック共重合体〔I〕が、スチレンからなる数平均分子量2500〜40000の重合体ブロックAとイソプレンもしくはイソプレン−ブタジエン混合物からなり、数平均分子量が10000〜200000で3,4結合および1,2結合の合計含有量が40%以上である重合体ブロックBより構成され、水添率が60%以上である数平均分子量が30000〜300000のブロック共重合体である請求項1又は2に記載の洗浄具。
【請求項4】 他の熱可塑性重合体がポリプロピレンである請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄具。
【請求項5】 芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕との混合物からなることを特徴とするフィラメント
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感に優れ、焼却時に環境に優しい洗浄用ブラシ、タワシ、スポンジ等の洗浄具に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属、ガラス、陶器、プラスチック、木材等からなる食器類やその他製品の洗浄には、海綿、樹脂発泡体、繊維積層体、織り編み物あるいは不織布等が主に用いられていた。それらの材料としては、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感、熱融着加工の容易さなどから塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体繊維(ビニリデン繊維)が多く用いられているが、このビニリデン繊維は、焼却時に人体に有害な塩素系ガスを発生するため、近年注目されている環境保護の観点から好ましいとはいえず、これを代替する材料が要望されている。従来のビニリデン繊維の持つ長所である耐ヘタリ性、ワイピング性や触感のよい弾力性等を保持しつつ、焼却時にも環境に優しく安価な材料はなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、焼却時に有害な塩素系ガスを発生することなく、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感に優れ、熱融着加工が容易な洗浄具を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のブロック共重合体と熱可塑性重合体を混合または複合紡糸したフィラメントを洗浄具の構成繊維として用いることにより上記目的が達成されることを見出し本発明に到達した。
【0005】すなわち、本発明は、芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕との混合物からなるフィラメントを構成繊維として用いた洗浄具であり、また、芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕とが複合紡糸され、ブロック共重合体〔I〕が繊維表面の少なくとも一部に存在するフィラメントを構成繊維として用いた洗浄具である。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の洗浄具には、芳香族ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックAとジエン系ビニルモノマーから誘導される重合体ブロックBとからなり、水添率が60%以上であるブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕とを混合又は複合溶融紡糸して得られるフィラメントが含まれていることが重要である。
【0007】ブロック共重合体〔I〕と塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕との混合あるいは複合比率は、本発明の目的が達成される範囲であれば、格別限定されないが、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感のよい弾力性等のすべての特性をバランスよく発揮させるためには〔I〕:〔II〕=10〜95:90〜5が好ましく、特に、15〜70:85〜30が好ましい。特にフィラメントにおいてブロック共重合体〔I〕の割合が多いほど耐ヘタリ性、ワイピング性、触感に優れるが、ブロック共重合体〔I〕が繊維表面に顕れないような複合形態では、ワイピング性向上の効果を期待することはできない。
【0008】本発明において、上記のブロック共重合体〔I〕は特定量以上水素添加されていることが必要であるが、水添反応を施す前のブロック共重合体〔I〕としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン等の芳香族ビニルモノマーからなる数平均分子量が2500〜40000程度の重合体ブロックAと、イソプレン、またはイソプレン−ブタジエンを併用したジエン系ビニルモノマーからなる数平均分子量が10000〜200000程度の重合体ブロックBより構成される数平均分子量が30000〜300000程度のブロック共重合体を挙げることができる。
【0009】このブロック共重合体〔I〕の分子量が低い場合、フィラメントの機械的性質が不十分となりやすく、分子量の高すぎるものは溶融粘度が高いためか紡糸性が低下する傾向にある。さらに好ましくは80000〜250000の範囲がよい。
【0010】また、ブロック共重合体〔I〕における重合体ブロックAの割合は、10重量%〜50重量%の範囲のものが好ましく用いられる。この割合が10重量%未満の場合、ブロック共重合体の成形性、耐熱性、機械的性質が不充分となる場合があり、逆に50重量%を越えると粘度が高くなるため紡糸調子が悪くなり、フィラメントの巻取が不能となる場合がある。
【0011】一方、重合体ブロックBの数平均分子量が上記範囲より小さい場合には、弾性的性質を損なうことがあり、逆に、分子量が大きすぎる場合にはブロック共重合体〔I〕の溶融粘度が高くなり、紡糸不調の原因となることがある。なお、重合体ブロックBがイソプレンからなる場合、重合条件等によって1,4結合主体のものとなったり、1,2結合や3,4結合が多くなったりするが、耐熱性の点からは1,4結合が70%以上、特に80%以上のイソプレンブロックであることが望まれ、洗浄具としての耐ヘタリ性及び触感を重視する場合は1,2結合及び3,4結合の割合が40%以上であることが好ましい。
【0012】ブロック共重合体〔I〕は、水素添加によってジエンに基づく脂肪族二重結合の60%以上、好ましくは80%以上を飽和結合としたものであり、水素添加率(水添率)が60%未満の場合は、溶融紡糸時に熱劣化を生じやすくなり、また、得られる繊維の耐候性も劣り、洗浄具が経時的に硬化し、弾力性も低下するので好ましくない。
【0013】上記のようなブロック共重合体〔I〕は、公知の方法で重合することができ、例えば、(イ)アルキルリチウム化合物を開始剤として芳香族ビニル化合物、イソプレンまたはイソプレン−ブタジエンを逐次重合体させる方法、(ロ)芳香族ビニル化合物、次いで、イソプレンまたはイソプレン−ブタジエンを重合し、これをカップリング剤によりカップリングする方法、あるいは(ハ)ジリチウム化合物を開始剤としてイソプレンまたはイソプレン−ブタジエン、次いで芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法等が挙げられる。アルキルリチウム化合物の例としては、メチルリチウム、エチルリチウム、ペンチルリチウム、ブチルリチウムが好ましい。カップリング剤としてはジクロロメタン、ジブロムメタン、ジクロロエタン、ジブロムエタン、ジブロムベンゼン等が用いられる。ジリチウム化合物の例としては、ナフタレンジリチウム、ジリチオヘキシルベンゼン等があげられる。使用量は求める分子量により決定されるものであるが、重合に用いられる全モノマー100重量部に対し、概ね開始剤0.01〜0.2重量部、カップリング剤0.04〜0.8重量部程度の範囲で用いられる。
【0014】イソプレンまたはイソプレン−ブタジエン部分のミクロ構造として1,2結合及び3,4結合を40%以上にするためにはイソプレンまたはイソプレン−ブタジエンの重合の際に共触媒としてルイス塩基が用いられる。ルイス塩基の例としてはジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、トリエチルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、N−メチルモルフォリン等のアミン系化合物等があげられる。これらのルイス塩基の使用量は重合触媒のリチウムのモル数に対し概ね0.1〜1000倍の範囲で用いられる。重合の際には制御を容易にするために溶媒を使用するのが好ましい。溶媒としては重合触媒に対し不活性な有機溶媒が使用される。特に、炭素数が6〜12の脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素が好ましく用いられる。その例としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン等があげられる。重合はいずれの重合法による場合も、0〜80℃の温度範囲で0.5〜50時間の範囲で行われる。
【0015】また、ブロック共重合体を水素添加する方法としては、公知の水添触媒により分子状態の水素を反応させる方法が好ましく用いられる。使用される触媒としては、ラネーニッケル、あるいはPt,Pd,Ru,Rh,Ni等の金属をカーボン、アルミナ、硅藻土等の単体に担持させたもの等の不均一触媒または遷移金属とアルキルアルミニウム化合物、アルキルリチウム化合物等の組合わせからなるチーグラー系の触媒等が用いられる。反応は、水素圧が常圧ないし200Kg/cm2、反応温度が常温ないし250℃、反応時間が0.1〜100時間の範囲で行われる。反応後のブロック共重合体は、反応液をメタノール等により凝固させた後、加熱あるいは減圧乾燥させるか、反応液を沸騰水中に注ぎ溶剤を共沸させ除去した後、加熱あるいは減圧乾燥をすることにより得られる。
【0016】なお、このようにして得られるブロック共重合体〔I〕は、例えば、株式会社クラレより「セプトン」、「ハイブラー」の商標名で上市されている。
【0017】次に、ブロック共重合体〔I〕と混合又は複合される塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕について説明すると、かかる熱可塑性重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール系共重合体等を挙げることができるが、ブロック共重合体〔I〕と親和性の良いポリオレフィン系重合体、特に混合時の相溶性に優れるという観点からポリプロピレンが好ましく使用される。
【0018】本発明に使用されるフィラメントは、上記のようなブロック共重合体〔I〕及び塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕の混合物からなるか、両者が複合紡糸されたものであるが、紡糸技術としては従来公知の溶融紡糸技術を採用することが可能である。フィラメントにおける混合または複合形態は特に限定されないが、ブロック共重合体〔I〕が有するタック性によって、ワイピング効果を発揮するため、複合紡糸の場合は、ブロック共重合体〔I〕がフィラメント表面の少なくとも一部、好ましくは20%以上、特に好ましくは30%以上存在することが必要であり、かかる条件を満たすならば、芯鞘型、サイドバイサイド型、多層貼り合わせ型など種々の複合形態が可能である。また、混合紡糸の場合は、該重合体同士が相溶化していてもよいし、相溶化せずに例えば海島状態で存在してもよいが、フィラメントの機械的性質を考慮すると重合体同士が相溶化しているフィラメントが好ましい。
【0019】また、フィラメントの断面形状は丸断面、偏平断面、三角断面、多枝形断面、L字断面、T字断面等任意に選択することができる。また、フィラメント直径も特に限定されないが、細すぎると耐ヘタリ性、触感のよい弾力性が不十分となりやすく、太すぎる場合は、ワイピング性、手触り感などに問題が生じる場合がある。その好適範囲は、使用目的、使用形態等により種々変化するので一義的に設定できないが、強いて目安を言えば、10μm〜1mmの範囲が好ましい。
【0020】本発明のフィラメントは、その効果を損なわない範囲で、各種着色剤、セラミックス、難燃剤、抗菌剤、防臭剤などを必要に応じて含有することができる。
【0021】本発明の洗浄具は、例えば丸編み地、トリコット編み地などの通常の編物や平織物、朱子織物、メッシュ織物など任意の織物等の形態として使用したり、また、不織布等の形態として使用してもよい。さらに、フィラメントをブラシとして洗浄具を構成してもよい。織編物として用いる場合は、織編物単独品でも、その織編物の中に海綿、スポンジ等が挿入された物でもよく、耐ヘタリ性、ワイピング性、触感に優れ、使用済み後の焼却においても有毒な塩素系ガスを発生することなく環境に優しいと言う特徴がある。
【0022】
【実施例】以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0023】実施例1ブロック共重合体〔I〕として、スチレンからなる重合体ブロックAとイソプレンからなる重合体ブロックBとがABAのトリブロック構造をとり、重合体ブロックの含有率が30%、水添率が95%である数平均分子量50000のブロック共重合体(クラレ製、「セプトン」登録商標)を用い、塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕としてエチレン−ビニルアルコール系共重合体(クラレ製、エバールE105登録商標)を用い、これらを重量比1:1で混合し紡糸用のチップを調整した。
【0024】その後該紡糸用ポリマーチップを押出し機で溶融混練し、1.0mmφ×10ホールの丸孔ノズルを通して260℃で溶融紡糸し、巻取り速度20m/分で巻き取った。次いで、70℃の水浴延伸槽で4倍に延伸し、120℃の乾熱槽を用いて1段延伸、1段収縮処理を行って直径100μmのモノフィラメントを得た。
【0025】引き続き、上記モノフィラメントを使用して、平織り及び横二重織の織布を作成し、平織り、横二重織、横二重織、平織りの順に4枚重ね、熱圧着により接着して裁断し、厚さ5mmの洗浄用クロスを作成した。
【0026】該クロスを用いて、無作為に抽出した10人による洗浄モデル試験を行った。
「洗浄モデル試験法」直径10cmのガラス板に1ccの食用油を滴下する。これを常温水を用いて洗い流しながら洗浄用クロスで洗浄し、目視によって洗浄が完了したと判断されるまでの時間を測定した。これを1日1回、30日繰り返し、ワイピング性能を評価した。また、30日後の該クロスの厚みを測定した。以上の試験結果(10人の単純平均値)を表1に示した。
【0027】
【表1】

【0028】実施例2ブロック共重合体〔I〕として、スチレンからなる重合体ブロックAとイソプレンからなる重合体ブロックBとからなり、重合体ブロックAの含有率が30%、1,2結合及び3,4結合の含有量が80%、水添率が85%である数平均分子量100000のブロック共重合体(クラレ製ハイブラー登録商標)を用い、塩素原子を有さない他の熱可塑性重合体〔II〕として、日本ポリケム社製ポリプロピレンSA03Aを用い、これらを1:1の重量比で混合し、紡糸用のチップを調整し、実施例1と同様にして厚さ5mmの洗浄用クロスを作成した。該クロスを実施例1と同様にして洗浄モデル試験を行った。その結果を表1に示す。
【0029】比較例1宇部興産社製ナイロン6SF−1013Dを押出し機を用いて溶融し、1.0mmφ×10ホールの丸孔ノズルを通して265℃で溶融紡糸し、巻取り速度20m/分で巻き取った。次いで、98℃の水浴延伸槽で3.6倍に延伸し、引き続き200℃の乾熱槽を用いて1.2倍に延伸し、200℃で2%の収縮処理を行って直径100μmのモノフィラメントを得た。その後、実施例1と同様に厚さ5mmの洗浄用クロスを作成し、洗浄モデル試験を行った。その結果を表1に示す。
【出願人】 【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
【出願日】 平成11年2月8日(1999.2.8)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−225083(P2000−225083A)
【公開日】 平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願番号】 特願平11−29896