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【発明の名称】 カーペット
【発明者】 【氏名】掘田 繁光

【要約】 【課題】製品仕様が同じであっても製法の相違によってカーペットのパイル面に外観上の差異が生じないようにすること、特に、同じ図柄で上下2枚同時に織成される上布ダブルウイルトンと下布ダブルウイルトンのパイルの方向性をなくし、見る方角によるパイル面の濃淡光沢差を解消し、両者を同じフロアーに並べて敷詰施工し得るようにする。

【解決手段】下撚方向を同じくする複数本の混紡単糸11・12・13を、その下撚方向と同じ方向に上撚を掛けて撚り合わせた合撚糸14がカットパイル15に使用する。混紡単糸11・12・13には、熱融着性繊維を7〜20重量%、非熱融着性繊維を80〜93重量%混用する。カットパイル15の先端では、下撚の解撚トルクと上撚の解撚トルクが同じ方向に作用して各混紡単糸毎にまとまった複数個のカットパイル片21・22・23に分れ、それらの傾き方向がランダムになるので、見る方角によるパイル面の濃淡光沢差が解消される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下撚方向を同じくする複数本の混紡単糸(11・12・13)を、その下撚方向と同じ方向に上撚を掛けて撚り合わせた合撚糸(14)がカットパイル(15)に使用されており、その混紡単糸(11・12・13)の7〜20重量%に熱融着性繊維が使用されており、その熱融着性繊維が混紡単糸(11・12・13)の80〜93重量%を占める他の非熱融着性繊維に融着していることを特徴とするカーペット。
【請求項2】 前掲請求項1に記載の混紡単糸(11・12・13)の7〜20重量%を熱融着性繊維が占め、混紡単糸(11・12・13)の80〜93重量%を羊毛繊維が占めていることを特徴とする前掲請求項1に記載のカーペット。
【請求項3】 前掲請求項1と請求項2に記載のカーペットが、ダブルフェースウイルトンカーペットであることを特徴とする前掲請求項1と請求項2に記載のカーペット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カットパイルを有するカーペット、特に、ダブルフェースウイルトンカーペットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ウイルトンカーペットは、地経糸と地緯糸で構成される地織組織にパイル糸を織り込んで織成され、その使用する織機の種類によって、ダブルフェースウイルトンカーペット(以下、ダブルウイルトンとも言う。)とシングルフェースウイルトンカーペット(以下、シングルウイルトンとも言う。)に大別される。ダブルウイルトンは、上布と下布を上下二重に同時に織成する過程において、パイル糸を織り込んで上布と下布を連結し、その後、その連結するパイル糸を上布と下布の間でカット(所謂センターカット)し、上布と下布に切り離して上下2枚同時に織成され、そのセンターカット面がパイル面となり、上布と下布はパイルを係止する地織組織を構成することになる。このようにパイルはセンターカットによって形成されるので、ダブルウイルトンのパイルはカットパイルとなる。
【0003】シングルウイルトンは、地織組織を織成する過程において、パイル糸を地織組織に織り込むと共にワイヤーをも織り込み、そのワイヤーの上にパイル糸をループ状に浮き上がらせ、その後ワイヤーを引き抜くと、ループ状に地織組織から浮き上がっていたループ状のパイル糸はパイルを形成することになる。その引き抜くワイヤーの先端にナイフを装着すると、そのナイフによってループ状のパイル糸は上端がカットされてカットパイルとなる。一方、ナイフを有しないワイヤーを使用すると、ループ状のパイル糸はループパイルとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ダブルウイルトンでも、シングルウイルトンでも、カットパイル面にはシャリングを施して仕上げられる。しかし、カットパイルによってパイル面が構成されたダブルウイルトンとシングルウイルトンとは、それらのパイル糸の素材や太さ、パイル密度、地糸の素材や太さ、地織組織等の製品仕様が全く同じであっても、それらのカットパイルの先端の断面での毛羽立ち具合やパイル面の濃淡光沢差等が微妙に異なり、それらはパイル面の外観によって見分けられる。
【0005】例えば、シングルウイルトンのカットパイルは、ワイヤーによってカットされるまでループ状を成し、その幅方向での配列状態が地織組織とワイヤーによって一直線にセットされており、ワイヤーを引き抜いてループ状になっているパイル糸の先端をカットするときはカットパイル片の上端は僅かながらも彎曲したものとなって、引き抜いたワイヤーの跡が僅かながらも一直線状にパイル面に残り、又、ループ状のパイル糸の上端をワイヤーでカットするときはカットパイル片が2個1組(一対)に向かい合って出来、その向き合う2個1組のカットパイル片の上端のカット断面は、僅かながらも地織組織に対して傾斜したものとなり、その傾斜した2個1組のカット断面がワイヤーの引き抜き跡に沿って並んで微かなV字状溝を形成する。そして、この彎曲したカットパイル片の形状や、一直線状になったワイヤーの引き抜き跡、傾斜したカットパイル片の上端のカット断面、微かなV字状溝は、シャリング後も僅かにパイル面に残る。
【0006】一方、ダブルウイルトンでは、カット面となる上布と下布の中間部分でパイル糸がワイヤーや定規等によってセットされずフリーの状態におかれており、それが上布と下布に対して直角に起立した状態で上布と下布に平行に移動するナイフによってカットされるので、上布と下布に分かれたカットパイルが形成され、それらのカットパイルの上端のカット断面は地織組織である上布と下布に対して平行になって傾斜することなく、上下2枚同時に織成されるダブルウイルトンのパイル面は平滑なものとなる。このため、カットパイルの上端の形状や、幅方向でのカットパイルの並び方、ワイヤーの引き抜き跡やV字状溝の有無、パイル面の平滑度合い等によって、シングルウイルトンとダブルウイルトンが見分けられる。
【0007】同様に、上布と下布に切り離されて上下同時に織成される2枚のダブルウイルトンも、そのパイル面の外観の僅かな相違によって見分けられる。尚、以下の説明において、上下に切り離されて同時に織成される2枚のダブルウイルトンの中、上側に出来るダブルウイルトンを「上布ダブルウイルトン」と称し、下側に出来るダブルウイルトンを「下布ダブルウイルトン」と称することにする。
【0008】パイルは一定方向に傾斜する方向性を有している。この方向性はカットパイルに強く現れるので、カットパイル布帛のパイル面は、それを見る方角によっては濃くも淡くも見える。上布ダブルウイルトンと下布ダブルウイルトンは、それらのパイル面を上下向かい合わせに織成されるので、それらを同一平面上に並べると、それらのパイルの傾斜方向が左右又は前後対称になり、それらのパイル面に濃淡光沢差が生じる。このようにパイル面に濃淡光沢差が生じるので、構図が前後左右対称で並べる方向によって変わらない図柄を描出したものであっても、上布ダブルウイルトンと下布ダブルウイルトンを同じフロアーに並べて敷詰施工することはなく、誤って両者を並べて敷詰施工されることがないようにするため、両者にはそれぞれを識別するための識別表示が付けられ、時として上布ダブルウイルトンと下布ダブルウイルトンの一方を使用し、他方を在庫品とせざるを得なくなる場合も多々生じる。
【0009】
【発明の目的】そこで本発明は、カーペットの製品仕様が同じであっても製法の相違によってパイル面に外観上の差異が生じないようにすること、特に、同じ図柄で上下2枚同時に織成される上布ダブルウイルトンと下布ダブルウイルトンのパイルの方向性をなくし、両者を同じフロアーに並べて敷詰施工し得るようにすることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明に係るカーペットは、下撚方向を同じくする複数本の混紡単糸11・12・13を、その下撚方向と同じ方向に上撚を掛けて撚り合わせた合撚糸14によってカットパイル15が形成されており、その混紡単糸11・12・13の7〜20重量%に熱融着性繊維が使用されており、その熱融着性繊維が混紡単糸11・12・13の80〜93重量%を占める他の非熱融着性繊維に融着していることを第1の特徴とする。
【0011】本発明に係るカーペットの第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、混紡単糸11・12・13の7〜20重量%を熱融着性繊維が占め、混紡単糸11・12・13の80〜93重量%を羊毛繊維が占めていることにある。
【0012】本発明に係るカーペットの第3の特徴は、上記第1と第2の何れかの特徴に加えて、上記のカーペットがダブルフェースウイルトンカーペットであることにある。
【0013】
【発明の実施の形態】通常カーペットのパイルには、2〜5メートル番手の単糸を2〜5本合撚して使用されている。その在来のカーペットに準じて、混紡単糸11・12・13の太さを2〜5メートル番手とするときは、その下撚回数を150〜250回/mとし、それを2〜5本合撚する上撚回数は、その下撚回数と同等、または、それ以下となる100〜220回/mにするとよい。
【0014】
【発明の作用と効果】本発明(請求項1)では、合撚糸14の下撚と上撚が同じ方向であり、カットパイル15の先端16では下撚の解撚トルクと上撚の解撚トルクが同じ方向に作用するので各混紡単糸毎にまとまった複数個のカットパイル片21・22・23に分離することになる。その各カットパイル片21・22・23の非熱融着性繊維間は融着した熱融着性繊維に接合されているので、各カットパイル片の先端17・18・19では、下撚の解撚トルクによっては繊維間が解れず、収束した下撚状態に維持される。このように混紡単糸内に熱融着性繊維が混在するので、合撚糸14の各混紡単糸間も融着して接合されることになるが、その混紡率が20重量%以下と少ない熱融着性繊維の接合力は弱く、又、混紡単糸内の細い繊維間に作用する下撚の解撚トルクよりも太い混紡単糸間には上撚の解撚トルクが強く作用するので、熱融着性繊維によっては、カットパイルの先端16での個々のカットパイル21・22・23への分離が妨げられない。
【0015】そして、弱い下撚の解撚トルクが作用する各カットパイル片の非熱融着性繊維間は熱融着性繊維によって接合されるので、上撚によって付けられたカットパイル片の螺旋形クリンプは消失し難いものとなる。一方、熱融着性繊維の混紡率が20重量%以下と少ないので、非熱融着性繊維間は熱融着性繊維によって強固に接合されず、熱融着性繊維が混在していてもカットパイル片21・22・23の嵩が格別縮まることもなく、それらが上撚のない下撚だけの混紡単糸なので下撚の解撚トルクによって嵩高に膨らんだものとなる。又、螺旋形を成す各カットパイル片21・22・23の間には、それが螺旋形を成し、カットパイル片の長さ方向に伸縮自在になっているが故に、その伸縮差による僅かな長短差や陰影差が生じ、それがパイル面全体に均一に細かく分布することになる。
【0016】このため、カーペットの表面は、熱融着性繊維によって収束した下撚状態に維持され、嵩高に膨らんで螺旋形にセットされたカットパイル片の先端17・18・19によって構成され、それが螺旋形にセットされているが故にカットパイル片21・22・23の傾倒方向がランダムになり、パイル面には螺旋形を成すカットパイル片の一部曲面が現れて、単糸のカットパイルとループパイルが混在しているかの観を呈し、更に、カットパイル片21・22・23の間に生じた僅かな長短差や陰影差がパイル面全体に均一に細かく分布するので、見る方角によるパイル面の濃淡光沢差が解消される。
【0017】このように見る方角によるパイル面の濃淡光沢差を解消するには、本発明に係る合撚糸14を全てのカットパイルに使用する必要はなく、パイル面に図柄を描出するために部分的に分かれて形成されるカットパイルには通常のパイル糸を使用してもよい。
【0018】パイル面に螺旋形を成すカットパイル片の曲面が現れず、カットパイル片の先端17・18・19のカット断面だけでパイル面を構成するようにするには、パイル密度を高密度にすればよい。しかし、パイル密度が高密度でカットパイル片の曲面が現れないとしても、カットパイル片の先端17・18・19のカット断面はランダム方向に現れるので、見る方角によってパイル面に濃淡光沢差が生じることはない。つまり、本発明によれば、見る方角によるパイル面の濃淡光沢差が解消されると共に、パイル密度を加減してカットパイルとループパイルがランダムに混在しているかの如きカーペットも得られると言うことである。
【0019】カットパイル片の先端17・18・19の収束した下撚状態を維持し、上撚によってカットパイル片21・22・23に付けられる螺旋形クリンプをセットするには、熱融着性繊維の混紡率を少なくとも7重量%とする一方、カットパイル15の先端16が複数個のカットパイル片21・22・23に分離し、それらのカットパイル片21・22・23が下撚の解撚トルクによって嵩高に膨らむようにするためには、熱融着性繊維の混紡率を多くとも20重量%とする。
【0020】混紡単糸の螺旋形クリンプは、合撚糸の染色工程での加熱や、カーペットのバッキング工程での加熱によって熱融着性繊維が融着してセットされる。従って本発明(請求項2)は、単に加熱しただけではセットすることが出来ない羊毛繊維をパイルに使用する場合に好適である。
【0021】そして、パイル面ではカットパイル15の先端が複数個のカットパイル片21・22・23に分かれ、それらの先端17・18・19の傾き方向がランダムになり、而も、螺旋形をなすカットパイル片の一部曲面がパイル面に現れて、見る方角による濃淡光沢差がパイル面に生じないので、上布26と下布27を連結するパイル糸14をそれらの間でナイフ20によってカットして上下2枚同時に織成される上布ダブルウイルトン24と下布ダブルウイルトン25とは見分けのつけられないものとなり、それらを同じフロアーに並べて敷詰施工することも可能となり、それらを区別するために識別表示を付ける手間も省けることになる。
【0022】又、従来、カットパイルとループパイルがランダムに混在しカーペットは、全面がループパイルによって構成されているパイル面にシャリング処理を施し、均一に形成すべきパイル面に長短斑として生じた僅かに長いループパイルの先端を削り取って製造していたが、本発明(請求項3)によると、そのようなカーペットを、シャリング処理を施さずに、又、ループパイルを織成することが出来ないダブルフェースウイルトンカーペット織機によっても得ることも出来るので、本発明(請求項3)は、ダブルウイルトンに頗る好都合である。
【出願人】 【識別番号】395014769
【氏名又は名称】堀田カーペット株式会社
【出願日】 平成10年8月26日(1998.8.26)
【代理人】 【識別番号】100081891
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 茂雄
【公開番号】 特開2000−70104(P2000−70104A)
【公開日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願番号】 特願平10−257548