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【発明の名称】 展示ケース
【発明者】 【氏名】中村 郁雄

【氏名】滝沢 剛

【要約】 【課題】戸板の鉛直精度を高めて外観を向上させ、地震等にも強い展示ケースを提供する。

【解決手段】ケース本体1と、閉止位置においてケース本体1の前面開口部1aを面一に閉止する位置に配設されるガラス板等の透明剛体を主体として構成される固定戸板2及び可動戸板3とを具備してなるものにおいて、ケース本体1に、可動戸板3の上縁3aを幅方向に沿って移動可能に懸吊支持する上部支持機構5と、この上部支持機構5を介して可動戸板3の上縁3aを、その下縁3bと同期させて前後方向に駆動する駆動機構7とを設け、閉止位置からこの駆動機構7を介して前方に引き出した可動戸板3を、引き続き上部支持機構5を介して隣接する固定戸板2に重合する位置にまで移動させ得るように構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ケース本体と、閉止位置において該ケース本体の前面開口部を面一に閉止する位置に配設されるガラス板等の透明剛体を主体として構成される複数の戸板とを具備してなる展示ケースにおいて、ケース本体に、相隣接する戸板のうち一方の戸板の上縁を幅方向に沿って移動可能に懸吊支持する上部支持機構と、この上部支持機構を介して戸板の上縁を、該戸板の下縁と同期させて前後方向に駆動する駆動機構とを設け、閉止位置からこの駆動機構を介して前後何れかの方向に移動させた前記戸板を、引き続き上部支持機構を介して隣接する戸板に重合する位置にまで移動させ得るように構成してなることを特徴とする展示ケース。
【請求項2】ケース本体に、戸板の下縁を幅方向に沿って移動可能に添接支持する下部支持機構を上部支持機構と対をなして設け、これら両支持機構を駆動機構により同期して駆動し得るように構成するとともに、前後何れかの方向に移動させた戸板を、両支持機構を介して隣接する戸板に重合する位置にまで移動させ得るようにしていることを特徴とする請求項1記載の展示ケース。
【請求項3】上部支持機構を、前後移動可能な上可動レールと、この上可動レールに配設される移動体とを具備してなるものにし、この移動体に懸吊杆を介して戸板の上縁を懸吊支持させていることを特徴とする請求項1又は2記載の展示ケース。
【請求項4】下部支持機構を、前後移動可能な下可動レールと、この下可動レールに配設される添接体とを具備してなるものにし、この添接体を戸板の下縁に垂設していることを特徴とする請求項3記載の展示ケース。
【請求項5】上可動レールが、中央に連続開口を有する上向面を備え、移動体がその上向面に沿って水平軸回りに転動可能な車輪を具備していることを特徴とする請求項3又は4記載の展示ケース。
【請求項6】下可動レールが、上方に開口するチャネル状のものであり、添接体がその下可動レールの側壁に沿って鉛直軸回りに転動可能なローラであることを特徴とする請求項5記載の展示ケース。
【請求項7】上可動レール及び下可動レールを、リニアモーションガイドに支持させていることを特徴とする請求項4記載の展示ケース。
【請求項8】駆動機構が、戸板の上縁近傍及び下縁近傍に配設されて前後方向に移動可能なラダーチェーンを具備してなり、このラダーチェーンに戸板の上縁及び下縁の一部を直接又は間接に接続していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の展示ケース。
【請求項9】ラダーチェーンを繰り出し又は巻き取る位置に配設される回転部材と、長手方向に進退移動可能な可撓性のある長尺伝達部材と、この長尺伝達部材の進退移動力を回転部材の回転力に変換する変換部とを備え、この長尺伝達部材の伝達始端を駆動源に接続していることを特徴とする請求項8記載の展示ケース。
【請求項10】駆動源が手動操作可能な操作ハンドルであり、この操作ハンドルを戸板の下縁近傍に配設していることを特徴とする請求項9記載の展示ケース。
【請求項11】戸板の上下両縁近傍を隠蔽する位置に化粧カバーを、戸板と共に前後移動し得るように取り付けて配設していることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10記載の展示ケース。
【請求項12】可動レールを前後方向に移動させた際に該可動レールの端部が合致することとなる補助固定レールを、隣接する戸板の上縁近傍及び下縁近傍に配設していることを特徴とする請求項3、4、5、6又は7記載の展示ケース。
【請求項13】上可動レールの端部及び上補助固定レールの端部に、レールに直交する方向に対して傾斜した傾斜端面を形成しておき、前後方向に移動した上可動レールの傾斜端面を隣接する上補助固定レールの傾斜端面に当接ないし極近接させて、レール同士を連続させるようにしていることを特徴とする請求項12記載の展示ケース。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、展示品等を陳列し、観覧に供するために使用される展示ケースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】美術館や博物館等で陳列ケースとして、或いは、展示場や百貨店等でショーケースとして使用される展示ケースは、少なくとも前面に透明なガラス板等を装着し、その戸板を引戸式に開閉し得るようにしたものが一般的である。その際、単なる引戸式のものにしておくと、隣接する戸板の側縁部同士を重合させる必要が生じるため、構造上、複数の戸板を面一に配置して閉止することができず、格調を損ねる上に視界が部分的に遮られ、観覧者に良い印象を与えることができないという不具合を生じる。
【0003】そこで、戸板を面一に配設し、相隣接する戸板の一方の戸板の下端を前後移動可能な下可動レール上に移動可能に接地させるとともに、戸板の上縁を前後移動可能な上可動レールに転倒し得ないように保持させておき、戸板を吸着把手等を介して前後方向に移動させ、引き続きその位置から幅方向に沿って隣接する戸板の前方又は後方に重合する位置にまで移動させることによって、ケース本体の前面を開放し得るようにした展示ケースが開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような構成は、戸板の姿勢が上、下可動レールの支持位置に大きく依存するので、両可動レールが完全に合致した位置にないと戸板を鉛直姿勢で保持することができない。また、戸板は下可動レールからの反力を受けて随所に圧縮力が作用するので、面方向に撓みが生じ易く、戸板がガラス製である場合等には地震時等に割れてしまう恐れもある。したがって、戸板に高い鉛直精度をだして面一に配置することや、その面一度を維持することが難しく、展示ケースの格調を高める上で困難を伴うものであった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記の問題点を解消するために、本発明は、戸板を圧縮力が作用しないように保持し、しかも戸板の前後移動に支障が生じないように構成して、展示ケース全体の格調を有効に高めることとしている。
【0006】
【発明の実施の形態】すなわち、本発明の展示ケースは、ケース本体と、閉止位置において該ケース本体の前面開口部を面一に閉止する位置に配設されるガラス板等の透明剛体を主体として構成される複数の戸板とを具備してなるものにおいて、ケース本体に、相隣接する戸板のうち一方の戸板の上縁を幅方向に沿って移動可能に懸吊支持する上部支持機構と、この上部支持機構を介して戸板の上縁を、該戸板の下縁と同期させて前後方向に駆動する駆動機構とを設け、閉止位置からこの駆動機構を介して前後何れかの方向に移動させた前記戸板を、引き続き上部支持機構を介して隣接する戸板に重合する位置にまで移動させ得るように構成してなることを特徴とする。
【0007】このように構成しておけば、戸板は上縁を上部支持機構に懸吊支持されるため、自重により、重心が上縁の直下に位置することとなる鉛直姿勢で最も安定な状態となる。このため、戸板に高い鉛直精度をだすことができ、また戸板に圧縮力が作用することがないので、面方向に撓んだり、地震時等にガラスが割れてしまうといった不都合も有効に回避することができる。なお、単に上縁を懸吊支持しただけでは、戸板を前後移動させようとして戸板の上縁よりも下方を押圧又は牽引した際に、戸板が上縁を支点にして暖簾を押し引きしたときのように傾倒し、大きな転倒モーメントが生じる恐れがある。しかしながら、本発明は、駆動機構を設けて戸板の上縁と下縁を同期して前後駆動するようにしているので、戸板を懸吊してもこのような傾倒状態を回避することができ、展示ケースの開閉操作を安定して安全に行わせることができる。
【0008】戸板の下縁をも的確に支持するためには、ケース本体に、戸板の下縁を幅方向に沿って移動可能に添接支持する下部支持機構を上部支持機構と対をなして設け、これら両支持機構を駆動機構により同期して駆動し得るように構成するとともに、前後何れかの方向に移動させた戸板を、両支持機構を介して隣接する戸板に重合する位置にまで移動させ得るようにしていることが望ましい。
【0009】上部支持機構の具体的な実施の態様としては、前後移動可能な上可動レールと、この上可動レールに配設される移動体とを具備してなるものにし、この移動体に懸吊杆を介して戸板の上縁を懸吊支持させているものが挙げられる。また、下部支持機構の具体的な実施の態様としては、前後移動可能な下可動レールと、この下可動レールに配設される添接体とを具備してなるものにし、この添接体を戸板の下縁に垂設しているものが挙げられる。
【0010】簡易な支持構造としては、上可動レールが、中央に連続開口を有する上向面を備え、移動体がその上向面に沿って水平軸回りに転動可能な車輪を具備しているものや、下可動レールが、上方に開口するチャネル状のものであり、添接体がその下可動レールの側壁に沿って鉛直軸回りに転動可能なローラであるものが挙げられる。
【0011】上可動レール及び下可動レールを前後に円滑に移動させるためには、これらをリニアモーションガイドに支持させておくことが望ましい。駆動機構をコンパクトで軽量なものにするためには、戸板の上縁近傍及び下縁近傍に配設されて前後方向に移動可能なラダーチェーンを具備してなり、このラダーチェーンに戸板の上縁及び下縁の一部を直接又は間接に接続していることが好ましい。
【0012】このラダーチェーンを駆動するための構成としては、ラダーチェーンを繰り出し又は巻き取る位置に配設される回転部材と、長手方向に進退移動可能な可撓性のある長尺伝達部材と、この長尺伝達部材の進退移動力を回転部材の回転力に変換する変換部とを備え、この長尺伝達部材の伝達始端を駆動源に接続していることが有効となる。また、駆動源としては手動操作可能な操作ハンドルが簡易であり、この操作ハンドルを戸板の下縁近傍に配設していることが望ましい。
【0013】開閉操作性を有効に向上させるためには、戸板の上下両縁近傍を隠蔽する位置に化粧カバーを、戸板と共に前後移動し得るように取り付けて配設していることが好都合である。可動レールを前後方向に移動させた後に隣接する戸板に重合する位置にまで移動させるための構成としては、前後方向に移動した可動レールの端部が合致することとなる補助固定レールを、隣接する戸板の上縁近傍及び下縁近傍に配設しておくようにしたものが挙げられる。
【0014】この場合、移動を円滑に行わせるためには、上可動レールの端部及び上補助固定レールの端部に、レールに直交する方向に対して傾斜した傾斜端面を形成しておき、前後方向に移動した上可動レールの傾斜端面を隣接する上補助固定レールの傾斜端面に当接ないし極近接させて、レール同士を連続させるようにしていることが望ましい。
【0015】
【実施例】以下、本発明の一実施例を、図面を参照して説明する。この実施例の展示ケースは、美術館等に設置されるもので、図1に示すように、ケース本体1の前面開口部1aにガラス製の固定戸板2及び可動戸板3を相隣接して面一に配設してなるものである。そして、可動戸板3を前後方向及び幅方向に移動可能に支持しておき、この可動戸板3を図2に矢印Aで示すように閉止位置から前方に引出した後、引き続き幅方向に沿って同図中矢印Bで示すように隣接する固定戸板2の前面に重合する位置にまで移動させることによって、ケース本体1の前面開口部1aを開成させ得るようにしている。
【0016】具体的に説明すると、ケース本体1は、図2及び図4に示すように、床面11、側面12、背面13及び天井面14によって囲繞される位置に展示品を陳列するための展示空間Sを形成し、その前面を開口部1aとしているもので、その前面開口部1aの上方及び下方にそれぞれ化粧カバー15、16を配設して戸板2、3の上下両縁近傍を隠蔽している。
【0017】固定戸板2は、図6及び図7に示すように、ガラス製の戸板本体21の上、下に該戸板21の上縁2a及び下縁2bとなる保護枠22、23を設けてなるもので、上保護枠22を懸吊杆24を介してケース本体1に設けた上部支持体17に固定し、下保護枠23をケース本体1に設けた下部支持体18に台座18aを介し固定して、全体を鉛直に配設している。また、この固定戸板2には、前方へ所定距離離間した位置に、前記上部支持体17及び下部支持体18にそれぞれ支持させて上下の補助固定レール41、42を付帯して設けている。上補助固定レール41は、中央に連続開口41aを有する底壁41bを下縁側に連接した下向チャネル状をなし、台座41cを介して前記上部支持体17に固定されている。また、下補助固定レール42は、上向チャネル状をなし、台座42aを介して前記下部支持体18に固定されている。
【0018】一方、可動戸板3は、図3、図4、図5、図8及び図9に示すように、ガラス製の戸板本体31の上、下に該戸板3の上縁3a及び下縁3bとなる保護枠32、33を設けてなるもので、上保護枠32をケース本体1に設けた上部支持機構5に支持させ、下保護枠33をケース本体1に設けた下支持機構6に支持させている。上部支持機構5は、中央に連続開口51aを有する底壁51bを下縁側に連接してなる下向チャネル状の上可動レール51と、この上可動レール51を取り付けたベース51xを前記上支持部材17を足場にして前後移動可能に支持するリニアモーションガイド52と、その上可動レール51内において底壁51bの上向面51cに車輪53aを介して水平軸m回りに転動可能に配設される移動体53とを具備してなるもので、この移動体53に懸吊杆54を介して前記可動戸板3の上保護枠32を懸吊支持している。下部支持機構6は、上方に開口するチャネル状の下可動レール61と、この下可動レール61を取り付けたベース61xを前記下支持部材18を足場にして前後移動可能に支持するリニアモーションガイド62と、その下可動レール61内において側壁61a間にローラ63aを介して鉛直軸n回りに遊転可能に配設される添接体63とを具備してなるもので、この添接体63を前記可動戸板3の下保護枠33に垂設している。前記リニアモーションガイド52、62は、基台52a、62aに対してスライド自在にガイド部材52b、62bを嵌装した構成からなる一般的なものである。
【0019】そして、前記可動戸板3の上縁3a及び下縁3bを同期して前後方向に駆動すべく、図3、図4、図5、図8〜図11に示すように、ラダーチェーン71と、回転部材72を収容したチェーンケース73と、可撓性のある長尺伝達部材74と、変換部75と、駆動源たるハンドル76とからなる駆動機構7を設けている。ラダーチェーン71は、チェーンケース73に一部収容された状態で可動戸板3の上縁3a近傍及び下縁3b近傍の各左右2箇所に配設されているもので、図10及び図11に示すように多数のチェーン要素71aを連結部材71bで連結した構造をなしており、チェーンケース73から後方に繰り出されたときは直線状をなしてその直線方向に付勢力を伝達することができ、チェーンケース73内に引き込まれるときは直線方向に牽引力を伝達しながら一方向へ湾曲して巻き取ることができるものである。回転部材72は、前記ラダーチェーン71と噛合するスプロケット状のもので、前記チェーンケース73内に軸着されており、この回転部材72の正逆回転によってラダーチェーン71をチェーンケース73から繰り出し、又は巻き取ることができる。長尺伝達部材74は、チューブ74a内にねじ溝を有するワイヤケーブル74bを長手方向に進退可能に収容したもので、この長尺伝達部材74を、図3及び図4に示すように上化粧カバー15内に配設された各チェーンケース73を通過させて引き回した後、下化粧カバー16の一部に設けた開閉扉16xの背後にまで引き込み、引き続き下化粧カバー16に配設された各チェーンケース73を通過させて引き回している。チューブ74aはチェーンケース73、73間又はチェーンケース73と後述するハンドルボックス76aとの間に配設されてワイヤケーブル74bの軌道距離を一定に保ち、ワイヤケーブル74bの長手方向の移動力が途中で撓み変形に終わることを防止しているものである。チェーンケース73内及びハンドルボックス76a内においては、長尺伝達部材74はチューブ74aが除去され、ワイヤケーブル74bが剥き出しにされている。変換部75は、前記回転部材72に軸心oを合致させて一体回転可能に軸着したギヤ75aと前記ワイヤケーブル74bとをラックピニオン状に噛合させて構成したもので、ワイヤケーブル74bがチューブ74a内で長手方向に進退移動すると、その移動力をギヤ75aの回転力に変換してラダーチェーン71の繰り出し又は巻取りを行うものである。ハンドル76は、固定戸板2の右側に隣接する戸板2x(この実施例では固定の戸板)の下化粧カバー近傍に配設されているもので、ハンドルボックス76a内に図示しないスプロケットを軸着するとともに、このスプロケットを前記ワイヤケーブル74bに噛合させてあり、ハンドル76の把手76bを正逆回転させると、ワイヤケーブル74bをチューブ74a内で長尺方向に進退移動させ得るようにしている。この場合、ハンドル76の操作により、ワイヤケーブル74bの上部引き回し部分と下部引き回し部分とは図3及び図5に矢印で例示するように逆方向の進退動作を行うこととなるが、ラダーチェーン71は上部と下部で合致した繰り出し、巻き取り動作を行うように変換部75の変換方向が規定されている。しかして、ラダーチェーン71の繰り出し端71cは、駆動力伝達部材71xを介して可動レール51、61やリニアモーションガイド52、62など前後可動な適宜部位に連結してある。
【0020】なお、駆動機構7を操作した場合、上下の可動レール51、61はその端部が隣接する補助固定レール41、42の端部に合致する位置で停止するように、ストッパなどの適宜の規制手段が設けてある。その際、上可動レール51の端部及び補助固定レール41の端部に、図12に示すようにレールに直交する方向に対して傾斜した傾斜端面51m、41mを形成しておき、前方に移動した上可動レール51の傾斜端面51mを隣接する補助固定レール41の傾斜端面41mに当接ないし極近接させて、レール同士を連続させるようにしている。また、前記上下の化粧カバー15、16は、図8及び図9に示すように、可動戸板3と共に前後方向に移動し得るよう、リニアモーションガイド52、62によって駆動されるベース51x、61xに取り付けてある。これらの化粧カバー15、16は、固定戸板2と可動戸板3を同時に目隠しし得るような2枚分の幅寸法を備えたもので、上記のように可動戸板3と共に前後移動するものであるが、片持ち的な支持状態となることを回避するために、図3に示すように固定戸板2側にも上下各1箇所に可動戸板3に対すると同様のリニアモーションガイド152、162及びラダーチェーン171を設けて化粧カバー15、16のガイド及び駆動のみを行わせるようにしている。勿論、これらの化粧カバー15、16は可動戸板3と共に前後可動な部位であれば他の部位に取り付けておくこともできる。
【0021】次に、本実施例の取扱方法について説明する。先ず、図1に示すように固定戸板2と可動戸板3とが面一に連続する閉止位置から、図2に示すようにカバー16xを開けてハンドル7の把手76bを操作すると、その回転動力により長尺伝達部材74内のワイヤケーブル74bが図3及び図5に矢印で示す方向に移動し、このワイヤケーブル74bに関連づけられたラダーチェーン71がチェーンボックス73内に引き込まれる。その結果、図5、図8及び図9に矢印及び想像線で示すように上可動レール51及び下可動レール61がそれらの端部を隣接する補助固定レール41、42(図5及び図6参照)の端部に合致する位置にまで可動戸板3を保持したままで引き出される。このとき、上下の化粧カバー15、16も連動して引き出される。そして、その位置から可動戸板3に吸着把手等を介して正面視右方向への付勢力を付与すると、可動戸板3は移動体53の車輪53aを上可動レール51の上向面51c上において転動させながら、また添接体63のローラ63aを必要に応じて下可動レール61の側壁61aに転接させながら、上下の可動レール51、61に沿って移動し、図6及び図7に想像線で示すように隣接する補助固定レール41、42に進入する。そして、可動戸板3が隣接する固定戸板2の前面に略合致する位置にまで移動した図2に示す状態で、可動戸板3が配設されていた部分に対応するケース本体1の前面開口部1aが開成する。また、上記と逆の操作を行えば、再び展示ケースは図1に示す閉止状態に復帰する。
【0022】以上のようにして、この実施例の展示ケースは、平素は可動戸板3を固定戸板2に対し面一なる閉止位置に保持して観覧の便を向上させることができ、必要時にはハンドル操作により可動戸板3を引き出して幅方向に移動させることにより、簡単に展示品の出し入れが可能な状態にすることができるものである。そして、本実施例は、可動戸板3を上部支持機構5によって幅方向に移動可能に懸吊支持し、また上部支持機構5を介して可動戸板3の上縁3aを下縁3bと同期させて前後方向に駆動するようにしているため、可動戸板3は自重により重心が上縁3aの直下に位置することとなる鉛直姿勢で最も安定した状態をとる。このため、可動戸板3に高い鉛直精度をだすことができ、安全な保持状態を確保すると同時に展示ケースの外観もより良好なものにすることができる。また、このように可動戸板3を懸吊支持しておけば、該戸板3に圧縮力が作用することがないので、面方向に撓んだり、地震時等にガラスが割れてしまうといった不都合も有効に回避して、信頼性も向上させることができる。さらに、駆動機構7を設けて可動戸板3の上縁3aと下縁3bを同期して前後駆動するようにしているので、可動戸板3が暖簾を押し引きした時のような傾倒状態となることがなく、展示ケースの開閉操作を安定して安全、円滑に進めることができる。
【0023】加えて、この実施例は可動戸板3の下縁3bをも下部支持機構6によって支持し、この下部支持機構6を上部支持機構5と連動して駆動機構7により同時に駆動するようにしているので、高い精度で同期をとることができ、上記の効果を実効あらしめることができる。具体的には、上部支持機構5を上可動レール51及び移動体53から構成し、その移動体53に懸吊杆54を介して可動戸板3の上縁3aを懸吊支持させているので、可動戸板3の懸吊構造と移動性とを好適に両立させることができる。また、下部支持機構6を下可動レール61及び添接体63から構成し、この添接体63を可動戸板3の下縁3bに垂設しているので、可動戸板3の移動性を損なうことなくその下縁3bの支持状態を確実なものにすることができる。
【0024】特に、これらの更に具体的な構造として、上可動レール51に上向面51cを形成し、移動体53にその上向面51cに沿って水平軸m回りに転動可能な車輪53aを設けているとともに、下可動レール61をチャネル状のものとし、添接体63にその側壁61aに沿って鉛直軸n回りに遊転可能なローラ63aを設けているため、簡易な構造によって可動戸板3の支持状態を実現することができる。
【0025】さらに、上、下の可動レール51、61をリニアモーションガイド52、62に支持させているため、それら可動レール51、61の前後移動を極めて円滑に行わせることができる。一方、本実施例は駆動機構7をラダーチェーン方式のものとし、このラダーチェーン71を可動戸板3の上縁3a近傍及び下縁3b近傍に前後移動可能に配設して上、下の支持機構5、6の可動部分を駆動するようにしているので、駆動系を軽量なものにしてケース本体1内にコンパクトに取り付けることができる。
【0026】また、このラダーチェーン71を駆動するために、巻き取り、繰り出し用の回転部材73を備える一方、可撓性のある長尺伝達部材74を採用して駆動力を長尺方向の進退動作を通じて伝達し、その伝達端で変換部75を介して回転部材73の回転動作に変換するようにしているため、長尺伝達部材74をケース本体1内に自在に引き回すことができ、設計の自由度を飛躍的に高めることができる。また、駆動源に手動操作可能な操作ハンドル76を用い、この操作ハンドル76を戸板2の下縁2b近傍に配設しているため、展示ケースが大型のものであっても、手近な位置から操作して可動戸板3全体を簡単かつ確実に前後動させることができる。
【0027】さらに、可動戸板3の上縁3a及び下縁3bの各近傍を隠蔽する位置に化粧カバー15、16を、可動戸板3と共に前後移動し得るように取り付けて配設しているため、干渉防止のために可動戸板3の移動前後に別途に化粧カバー15、16を開閉する手間が省け、操作性をより有効に向上させることができる。また、可動レール3を前後方向に移動させた後に隣接する固定戸板2に重合する位置にまで移動させるための構成として、前後方向に移動した可動レール51、61の端部が合致することとなる補助固定レール41、42を隣接する固定戸板2の上縁2a及び下縁2bの各近傍に配設しているため、構造が簡素であり、特に、可動戸板3の荷重が主として作用する上可動レール51の端部及び上補助固定レール41の端部を、傾斜端面51m、41mを介して連続させるようにしているため、レール方向に対して直交端面とする場合に比べて、移動体53の車輪53aにレール継目を徐々に通過させることができ、継目に多少の隙間や変位があっても走行を安定化して作動不良の原因となることを効果的に回避することができる。
【0028】なお、各部の具体的な構成は、図示実施例のものに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。例えば、駆動源に電動駆動機構を採用してもよく、戸板は閉止位置から後方に移動させて開成させるようにすることもできる。レール支持機構の移動体や添接体は他の構成によることも可能である。
【0029】
【発明の効果】本発明は、以上説明したような形態で実施され、以下に記載される効果を奏する。すなわち、本発明の展示ケースは、戸板を上部支持機構によって幅方向に移動可能に懸吊支持し、また上部支持機構を介して戸板の上縁を、下縁と同期させて前後方向に駆動するようにしたため、戸板の自重を利用して高い鉛直精度をだし、保持状態の安定化と外観の向上を果たすことができると共に、戸板に圧縮力が作用することを回避して面方向に撓みの少ない、ガラス製であっても割れにくい信頼性の高い展示ケースを実現することができる。その上、駆動機構を設けて戸板の上下両縁を同期駆動するようにしているので、可動戸板を懸吊支持しても暖簾を押し引きした時のような傾倒状態となることを防止でき、展示ケースの開閉操作時における安全性を確保することができる。
【0030】加えて、可動戸板の下縁をも下部支持機構によって支持し、この下部支持機構を上部支持機構と連動して駆動機構により同時に駆動するようにした場合には、高い精度で同期をとることができ、上記効果の実効を図ることができる。また、上部支持機構を上可動レール及び移動体から構成し、その移動体に懸吊杆を介して戸板の上縁を懸吊支持させれば、戸板の懸吊構造と移動性とを好適に両立させることができ、下部支持機構を下可動レール及び添接体から構成し、この添接体を可動戸板の下縁に垂設すれば、戸板の移動性を損なうことなくその下縁の支持状態を確実なものにすることができる。
【0031】特に、これらの更に具体的な構造として、上可動レールに上向面を形成して移動体の車輪を転動させ、下可動レールを側壁を有するものにして添接体のローラを転接させるようにすれば、簡易な構造によって戸板の良好な支持状態を実現することができる。さらに、上、下の可動レールをリニアモーションガイドに支持させれば、それら可動レールの前後移動を極めて円滑に行わせることができる。
【0032】一方、駆動機構をラダーチェーン方式のものとし、このラダーチェーンを可動戸板の上縁近傍及び下縁近傍に前後移動可能に配設して上、下の支持機構の可動部分を駆動するようにすれば、駆動系を軽量なものにしてケース本体内にコンパクトに取り付けることができ、設計や製造に便ならしめることができる。また、このラダーチェーンを駆動するために、巻き取り、繰り出し用の回転部材を備える一方、可撓性のある長尺伝達部材を採用して駆動力を長尺方向の進退動作を通じて伝達し、その伝達端で変換部を介して回転部材の回転動作に変換するようにすれば、長尺伝達部材をケース本体内に自在に引き回すことができ、設計の自由度を飛躍的に高めることができる。また、駆動源に手動操作可能な操作ハンドルを用い、この操作ハンドルを戸板の下縁近傍に配設しておけば、ランニングコストの削減が図れる上に、展示ケースが大型のものであっても、手近な位置から操作して可動戸板全体を簡単かつ確実に前後動させることができる。
【0033】さらに、戸板の上縁及び下縁の各近傍を隠蔽する位置に化粧カバーを、戸板と共に前後移動し得るように取り付けて配設しておけば、戸板の移動前後に別途に化粧カバーを開閉する手間が省け、展示ケースの開閉操作をより簡単なものにすることができる。また、戸板を隣接する戸板側に移動させるための構成として、前後方向に移動した可動レールの端部が合致することとなる補助固定レールを隣接する固定戸板の上縁両縁近傍に配設しておけば、構造が簡素となり、特に、可動戸板の荷重が主として作用する上可動レールの端部及び上補助固定レールの端部を、傾斜端面を介して連続させるようにすれば、継目に多少の隙間や変位があっても移動体の移動を円滑に行わせて作動不良の原因となることを防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
【出願日】 平成10年9月29日(1998.9.29)
【代理人】 【識別番号】100085338
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 一博
【公開番号】 特開2000−102456(P2000−102456A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−292920