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【発明の名称】 座 席
【発明者】 【氏名】藤岡 秀彦

【氏名】堀江 雅人

【要約】 【課題】シートバックを前後に傾動可能に支持した座席において、コストの低減を達成しつつ、シートバックを所望する角度位置に確実に保持できるようにする。

【解決手段】フロアパネル3に固定された係止部材10の係止溝25に係合するロックピン28を有するコントロール部材23をシートバック2に揺動自在に枢支し、そのロックピン28の各端部を、シートバック2に固定した2枚の保持部材12,13によって保持する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 着座者の尻部を支えるシートクッションと、着座者の背部を支えるシートバックとを有し、該シートバックは、座席支持体又は前記シートクッションに対して前後方向に傾動可能に支持されている座席において、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちのいずれか一方に固定され、かつ少なくとも1つの係止溝を有する係止部材と、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちの他方に揺動可能に枢支されたコントロール部材と、該コントロール部材に直接又は中間部材を介して取付けられ、前記係止溝に係合してシートバックを所定の角度位置に保持するための少なくとも1つのロックピンと、該ロックピンが前記係止溝に係合する向きに前記コントロール部材を回動付勢する付勢部材と、前記係止部材を挟んだ状態で、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちの他方に固定され、かつ前記係止溝に対する前記ロックピンの係合又は係脱動作を許容する状態で、当該ロックピンの軸方向各端部をそれぞれ保持する第1及び第2の保持部材とを具備することを特徴とする座席。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、着座者の尻部を支えるシートクッションと、着座者の背部を支えるシートバックとを有し、該シートバックは、座席支持体又は前記シートクッションに対して前後方向に傾動可能に支持されている座席に関する。
【0002】
【従来の技術】上記形式の座席は、自動車、鉄道車両、航空機、船舶、劇場、一般住宅又はオフィスなどにおいて、従来より広く使用されている。ところが、従来のこの種の座席においては、そのシートバックを所望する角度位置に確実に保持できるように、板厚が大きく、しかも熱処理を施した高強度な部材を多数用いる必要があったため、座席のコストが上昇する欠点を免れなかった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記従来の欠点を除去した座席を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、冒頭に記載した形式の座席において、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちのいずれか一方に固定され、かつ少なくとも1つの係止溝を有する係止部材と、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちの他方に揺動可能に枢支されたコントロール部材と、該コントロール部材に直接又は中間部材を介して取付けられ、前記係止溝に係合してシートバックを所定の角度位置に保持するための少なくとも1つのロックピンと、該ロックピンが前記係止溝に係合する向きに前記コントロール部材を回動付勢する付勢部材と、前記係止部材を挟んだ状態で、前記座席支持体又はシートクッションとシートバックとのうちの他方に固定され、かつ前記係止溝に対する前記ロックピンの係合又は係脱動作を許容する状態で、当該ロックピンの軸方向各端部をそれぞれ保持する第1及び第2の保持部材とを具備することを特徴とする座席を提案する。
【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例を図面に従って詳細に説明する。
【0006】図1は、自動車の車室内に設けられた座席の概略図であり、ここに示した座席は、図示していない着座者の尻部を支えるシートクッション1と、同じく着座者の背部を支えるシートバック2とを有している。座席は座席支持体の一例である車体のフロアパネル3に支持されている。すなわち、シートクッション1は、フロアパネル3に固定された支持ブラケット4に枢ピン4Aを介して枢着され、矢印A,B方向に揺動可能にフロアパネル3に支持され、またシートバック2も、後に詳しく説明するように、フロアパネル3に対して、矢印C,Dで示す如く前後方向に傾動可能に支持されている。
【0007】シートクッション1が図1に示すようにほぼ水平な使用位置にあるとき、その後部が、硬質ゴムなどから成る台座5を介してフロアパネル3上に載置される。そのシートクッション1を矢印A方向に回動させて図2に示すように上方に立上がらせた後、シートバック2を矢印C方向に回動させて図2に示す格納位置にもたらすことができる。またシートバック2とシートクッション1をそれぞれ矢印D,B方向に回動させることによって、これらを図1に示した使用位置に戻すことができる。
【0008】図3はシートバック2の概略斜視図であり、その一方の側部には上下のカバー6,7が、また他方の側部にも他のカバー8がそれぞれ着脱可能に取付けられていて、これらのカバーによって後述する各要素が覆われている。
【0009】図4は、上記カバー6,7を外した状態でのシートバック下部の側面図であり、図5は図4のV−V線断面図、図6は図4及び図5に示した要素のうちの一部の要素の分解斜視図である。図4及び図5に示すように、フロアパネル3には、支持ブラケット9が固定され、このブラケット9にリベット11によって板材より成る係止部材10が強固に固定されている。このように、図示した例では係止部材10が支持ブラケット9を介してフロアパネル3に固定されているが、この係止部材10をフロアパネル3に直に固定してもよい。
【0010】また上記係止部材10は、第1及び第2の保持部材12,13によって挟まれ、これらの保持部材12,13は、図5に示すようにその上部が互いに重ね合されて一体化され、その重ね合せ部がリベット14によってシートバック2のフレーム15に固定されている。このようにして、第1及び第2の保持部材12,13はシートバック2に強固に固定される。
【0011】図4乃至図6に示すように、係止部材10と、第1及び第2の保持部材12,13には、それぞれ貫通孔16,17,18がそれぞれ形成され、これらの貫通孔にヒンジピン19が挿入されている。その際、このヒンジピン19は、第1及び第2の保持部材12,13に対しては相対回転が不能となるように互いに固定され、係止部材10に対しては相対回転可能に、その貫通孔16に嵌合している。これにより、シートバック2は、ヒンジピン19の軸線X1のまわりに前後方向に傾動することができる。
【0012】また、第1及び第2の保持部材12,13には、他の貫通孔20,21がそれぞれ形成され、これらの貫通孔20,21には枢ピン22が相対回転自在に嵌合している。さらに、第2の保持部材13の外側にはコントロール部材23が設けられ、これに形成された孔24が枢ピン22に相対回転不能に嵌合している。このようにして、コントロール部材23は、枢ピン22と、第1及び第2の保持部材12,13とを介してシートバック2に揺動可能に枢支されている。
【0013】係止部材10には少なくとも1つの係止溝が形成され、図示した例では第1乃至第3の3個の係止溝25,26,27が形成されている。一方、コントロール部材23には、少なくとも1つのロックピンが直接又は中間部材を介して取付けられており、図示した例では、第1及び第2の2つのロックピン28,29が設けられ、その第1のロックピン28は、その先端部がコントロール部材23に直に固定され、第2のロックピン29は中間部材30を介してコントロール部材23に取付けられている。すなわち、この第2のロックピン29は、その先端部が中間部材30の一方の端部に固定され、該中間部材30の他方の端部が取付ピン31(図6)を介してコントロール部材23に相対回転自在に枢着されている。また第1及び第2のロックピン28,29は、第1及び第2の保持部材12,13に形成された第1の長孔32,32Aと第2の長孔33,33Aにそれぞれ摺動可能ではあるが、ガタ付くことなく嵌合している。かかる第1及び第2のロックピン28,29は、図4に示すように、係止部材10に形成された第1及び第2の係止溝25,26にそれぞれ係合することができる。また第2の保持部材13の耳部13Aとコントロール部材23の耳部23Aには、引張ばねより成る付勢部材34の各端部が係止され、この付勢部材34は、ロックピン28,29が係止溝25,26,27に係合する向きにコントロール部材23を回動付勢する用をなす。
【0014】また、ヒンジピン19の係合溝19Aと係止部材10の突部10Aには、スパイラルスプリングとして構成された付勢部材35の各端部が係止され、これによって、第1及び第2の保持部材12,13を介してヒンジピン19に一体に連結されているシートバック2が、前方C(図1)に向けて回動付勢される。
【0015】なお、以下の説明では、必要に応じて、一方の付勢部材34を第1の付勢部材と称し、他方の付勢部材35を第2の付勢部材と称することにする。
【0016】また、コントロール部材23には、操作部材の一例である可撓性の帯より成るストラップ36(図4)の一端が連結され、このストラップ36は、前述の上方のカバー6内を通って上方に延び、その他端が図3に示すように、カバー6の外部に突出し、ここに把手37が固定されている。
【0017】以上、シートバック2の一方の側部に設けられた各要素の構成を説明したが、シートバックの他方の側部にも、ストラップ36を除く上述の各要素と同様の要素(図示せず)が左右対称に配置されている。そして、図5に示すように、枢ピン22は、シートバック2のフレーム15に回転自在に支持されて、シートバックの幅方向に長く延びた連結部材38の一端に相対回転不能に嵌合し、この連結部材38の他端には、シートバックの他方の側に設けられた枢ピンが相対回転不能に嵌合している。これによって、一方の側の図示したコントロール部材23の作動が、連結部材38を介して他方の側の図示していないコントロール部材に伝えられ、他方の側の各要素が、図示した一方の側の各要素と同期して作動することができる。
【0018】図4及び図5に示した状態では、第1及び第2のロックピン28,29が、第1の付勢部材34による加圧下に、第1及び第2の係止溝25,26にそれぞれ係合している。これにより、シートバック2は、図4に示した所定の角度位置、すなわちシートバックの使用位置に保持される。この状態で、着座者はその座席に着座することができる。
【0019】ここで、シートバック2を図2に示した格納位置に前傾させるときは、ストラップ36の上端に固定された把手37(図3)を手で掴んで、これを矢印Pで示すように上方に持ち上げる。これにより、コントロール部材23は、第1の付勢部材34の作用に抗して、枢ピン22と共に、その軸線X2のまわりに図4における反時計方向に回動し、第1及び第2のロックピン28,29が第1及び第2の係止溝25,26から外れる。その際、第1のロックピン28はコントロール部材23の回動に伴って、その第1の長孔32,32Aに沿ってそのまま第1の係止溝25から外れ、コントロール部材23に枢着された中間部材30を介してコントロール部材23に連結された第2のロックピン29も、コントロール部材23の回動に伴って、第2の長孔33,33Aに案内されながら滑らかに第2の係止溝26から外れる。
【0020】上述のように、第1の付勢部材34の付勢作用に抗してロックピン28,29を係止溝25,26から外すと、シートバック2に対する拘束が解除されるので、シートバック2は、第2の付勢部材35による回動付勢作用によって、第1及び第2の保持部材12,13、コントロール部材23、ロックピン28,29、中間部材30及び第1の付勢部材34と共に、図1に矢印Cで示した前方に傾動し、図2に示した格納位置まで回動する。このとき、シートバック2は図示していないストッパによってその格納位置に止められる。シートバック2が前方に傾動するとき、ストラップ36から手を離しても、ロックピン28,29が係止部材10の上縁部110A(図4)を摺動するので、シートバック2は円滑に前方に傾動する。
【0021】再びシートバック2を手で掴んで、これを図2の矢印D方向に回動させると、上述したところと逆の動作が行われ、ロックピン28,29は係止溝25,26にそれぞれ係合し、シートバック2は図4に示した使用位置に保持される。
【0022】また図示した例では、係止部材10にもう1つの第3の係止溝27が形成されており、前述のようにストラップ36を上方に引いてロックピン28,29を係止溝25,26から外した後、第2の付勢部材35の付勢作用に抗してシートバック2を後方に傾動させ、これを図1に破線で示す位置まで倒すと、第1及び第2のロックピン28,29が、第1の付勢部材34の作用で第2及び第3の係止溝26,27にそれぞれ係合する。これにより、シートバック2は図1に破線で示したもう1つの使用位置に保持され、着座者は楽な姿勢でその座席に着座することができる。
【0023】上述のように本例の座席によれば、そのシートバック2を前後に傾動させ、これを所望する角度位置に保持することができる。その際、ロックピン28,29は、その軸方向各端が、係止部材10を挟んだ状態で、シートバック2に固定された第1及び第2の保持部材12,13によってそれぞれ保持されているので、ロックピン28,29を安定状態で強固に保持することができる。このため、ロックピン自体や保持部材自体の剛性ないしは強度を特に高めなくとも、シートバック2を確実に所定の角度位置、例えば図1に実線又は破線で示した使用位置に保持し、そのシートバック2に着座者の体重をかけることができる。例えば、係止部材10だけを、熱処理によって強度を高めた板厚の大なる金属板によって構成し、他の部材については、かかる熱処理の施されていない比較的板厚の薄い金属板によって構成することができ、その全体のコストを効果的に低減することができる。
【0024】また、ロックピン28,29が係止溝25,26,27に係合又は係脱することを許容するように、各保持部材12,13には、ロックピン28,29が摺動可能に嵌合する長孔32,32A,33,33Aが形成されているので、第1及び第2の保持部材12,13によって、ロックピン28,29の係止溝25,26,27への係合、係脱動作が邪魔されることはない。
【0025】また本例の係止部材10に形成された各係止溝25,26は、図7に誇張して示すように、その両側壁が底部に向けて幅を漸次縮小したテーパ状に形成され、ロックピン28,29の直径が係止溝25,26の底部の径よりも大きく形成されている。各係止溝25,26の両側壁が、各係止溝の開口側に向けて開拡したテーパ状に形成されているのである。このため、係止溝25,26に係合したロックピン28,29は、第1の付勢部材34の付勢作用により、図7に符号Tで示すように、各係止溝25,26の両側壁に点状に圧接して係合する。また、係止溝25,26の各側壁のテーパ角度θを小さな値に設定することにより、シートバック2に対して荷重が作用した場合でも、ロックピン28,29と、係止溝25,26の側壁とに作用する摩擦力によって、ロックピン25,26が係止溝25,26から抜け出る不具合を阻止できる。これは、図7に鎖線で示すように、係止溝27にロックピン29が係合したときも同様である。
【0026】また、図7に示したように、本例の各係止溝25,26,27は、ヒンジピン19の軸線X1を中心とした放射線方向に形成されているが、その各係止溝の両側壁は、各係止溝の開口側に向けて開拡したテーパ状に形成されているので、図4に示したように、第1のロックピン28が嵌合する第1の長孔32,32Aを、枢ピン22の軸線X2を中心とした円弧状に形成することによって、コントロール部材23の回動に伴って、第1のロックピン28を、第1の長孔32,32Aに沿って円滑に第1の係止溝25から外し、或いはその係止溝25に円滑に嵌合させることができる。また、第2のロックピン29は、コントロール部材23に枢着された中間部材30を介してコントロール部材23に連結されているので、この第2のロックピン29も、コントロール部材23の回動に伴って、第2の長孔33,33Aに沿って円滑に第2又は第3の係止溝26,27から外れ、又は嵌合することができる。このように中間部材30を設ければ、第2の長孔33,33Aを円弧状に形成するほか、図4に示すように直線状に形成することもできる。
【0027】また、図示した例では、ストラップ36によってコントロール部材23を回動させたが、コントロール部材23に操作レバーを固定し、このレバーを操作者が回動操作することによって、コントロール部材23を回動させるように構成することもできる。
【0028】図示した例では、第1の付勢部材34の付勢作用に抗してロックピン28,29を係止溝25,26,27から外したとき、シートバック2が前方に傾動するように、そのシートバック2を回動付勢する第2の付勢部材35を設けたが、かかる付勢部材35を設けずに、シートバック2を手操作によって前方に傾動させるように構成することもできる。
【0029】以上、シートバック2が座席支持体の一例であるフロアパネル3に前後方向に傾動可能に支持された座席を説明したが、本発明は、シートクッションが座席支持体に固定され、或いはシートトラックを介して前後方向に移動可能に座席支持体に支持された座席にも適用できる。この場合には、シートバックをシートクッションに対して前後方向に傾動可能に支持することもできる。このようにシートバックは、座席支持体又はシートクッションに対して前後方向に傾動可能に支持されるものである。
【0030】また、図示した例では係止部材10をフロアパネル3、すなわち座席支持体に固定したが、その係止部材をシートバック又はシートクッションに固定することもできる。係止部材10をシートバック2に固定した場合には、コントロール部材23は座席支持体又はシートクッション1に枢着され、第1及び第2の保持部材12,13も座席支持体又はシートクッション1の側に固定される。
【0031】要するに、本例の座席は、座席支持体又はシートクッション1とシートバック2とのうちのいずれか一方に固定され、かつ少なくとも1つの係止溝25,26,27を有する係止部材10と、座席支持体又はシートクッション1とシートバック2とのうちの他方に揺動可能に枢支されたコントロール部材23と、このコントロール部材23に直接又は中間部材30を介して取付けられ、上記係止溝25,26,27に係合してシートバック2を所定の角度位置に保持するための少なくとも1つのロックピン28,29と、該ロックピン28,29が係止溝25,26,27に係合する向きにコントロール部材23を回動付勢する付勢部材34と、係止部材10を挟んだ状態で、座席支持体又はシートクッション1とシートバック2とのうちの他方に固定され、かつ係止溝25,26,27に対するロックピン28,29の係合又は係脱動作を許容する状態で、当該ロックピン28,29の軸方向各端部をそれぞれ保持する第1及び第2の保持部材12,13とを具備している。
【0032】本発明は、自動車以外の各種の用途に用いられる座席にも広く適用できるものである。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、従来よりも強度の低い部材によってシートバックを傾動させるための部材を構成しても、シートバックを確実に所望する角度位置に保持できるため、そのコストを大幅に低減することができる。
【出願人】 【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
【出願日】 平成10年12月11日(1998.12.11)
【代理人】 【識別番号】100080469
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 則夫
【公開番号】 特開2000−166682(P2000−166682A)
【公開日】 平成12年6月20日(2000.6.20)
【出願番号】 特願平10−352652