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【発明の名称】 浮き合羽
【発明者】 【氏名】春日 憲一

【要約】 【課題】作業性・運動性を損なわず、しかも保温性を有し、船上や岸壁からの海中転落といった突発的事故の際には体を海上に浮かせるといった救命胴衣の性能も有する合羽を提供する。

【解決手段】本発明に係る合羽の中に配設される浮力材は、独立微細発泡3次元構造ポリエチレンbをプラスチックフィルムa、cで完全に密閉され、空隙部分も浮力材の一部とすることで薄くても大きな浮力を得ることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 表地と裏地で構成される合羽の間に配設される、ポリエチレンの独立微細気泡で構成された空隙を有する3次元構造発泡体であり、前記3次元構造発泡体は軟質プラスチックフィルムで全面を完全に密封した積層体とし、この積層体を浮力材として少なくとも一層以上が配設された合羽。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は浮力材を装着した合羽に関するもので、合羽を着用し、釣りもしくは漁業における船上作業等で海中に転落などしておきる溺死事故を最小限に留めることを目的に開発したものである。
【0002】
【従来の技術】海中転落による溺死等の海難事故を防止する目的で、釣り等においてはライフジャケットが用いられ、また漁業における船上作業等では救命胴衣の着用が義務づけられているが、救命胴衣においては20mmほどもある厚い発泡体が使用されているために著しく作業性が劣り、現実には常備はされているがほとんど着用されず、転落による溺死等の海難事故は後を絶たない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような船上作業等の不慮の事故に備えて、従来の救命胴衣等を常時着用することは前述の通り作業性の面からみても絶望的であるし、むしろ作業性の悪さから転落等の危険を増すことにもなりかねない。本発明は日常的に着用されている合羽とほとんど変わりなく、軽く柔らかい感触で且つ優れた防寒、保温性を有し、作業性を阻害することなく、有事には救命胴衣と同じ浮力効果を持つ浮き合羽について検討を加えたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち浮力材装着合羽については船上作業性を考慮すれば、厚さは10mm以内が限界であることから独立微細気泡を有し、厚さ1〜10mmの範囲であって、比重が0.01〜0.1である空隙を有する発泡ポリエチレンの3次元構造体、好ましくは厚みが1〜6mmの範囲であって比重が0.01〜0.02であることを特徴とするものである。
【0005】しかし、厚さ5mmで比重が0.02であると合羽の前部、背部に配設するだけでは十分な浮力を得ることは難しい。そこでその発泡ポリエチレンを比重が1.3以下の軟質プラスチックフィルムで完全に被覆密閉することにより、空隙部分も浮力材の一部となり、さらには空気の比重が0であることにより大きな浮力を得ることができ、5mm程度の厚さでも十分に船上作業等で転落した人間を水上に浮かせるための浮力が得られる。
【0006】ここで3次元構造を有するポリエチレン発泡体を被覆する軟質プラスチックとしては、当然低比重のものが望ましいが、厚さを極力薄くすることで1.3程度の比重までは問題なく十分な浮力が得られる。
【0007】ポリエチレン発泡体を被覆する軟質プラスチックの材質としては、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン等があげられるが、好ましくは感触、比重、ガスバリアー性等から考慮してエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニルなどが好ましい。
【0008】また、より浮力を増すための軟質プラスチックで被覆された発泡ポリエチレンとの空隙を浮力材の一部とするため、軟質プラスチックフィルムは完全に接着し、水の侵入を防ぐことが必要であり、その方法としては接着剤塗布によるものや高周波ウェルダー溶着等様々あるが、作業性や接着強度の面から高周波ウェルダー溶着やヒートシール等で、発泡ポリエチレンを被覆した独立した空隙部を設けることが望ましい。
【0009】発泡体は連続気泡であっても本発明の浮力材の構造上問題ないが、被覆フィルムの一部に損傷が生じた場合でも良好な浮力を維持するためには、独立気泡であることが望ましい。そのためには発泡剤としては液体プロパンガス(LPG)等のハロゲン化炭化水素の他、アゾジカルボンアミド、クエン酸ソーダなどが有効で、厚みは1〜10mm好ましくは1〜6mmであり、比重は0.01〜0.1好ましくは0.01〜0.02である。
【0010】また、浮力材を1つの大きなフィルムで全体を1個として成形しても良いが、フィルムの損傷等で中の空隙中の空気が漏れては浮力材として予定通りの十分な効果が得られないので、浮力材は分割して配置され、それぞれ独立に前述の高周波ウェルダーやヒートシール等で完全に溶着密閉されていることが好ましい。
【0011】このことにより、さらに作業に適した浮力材の分割配設により屈曲時の抵抗が減り、作業性、運動性が良好となる。尚、作業中などに合羽の中で浮力材のズレが生じることも考えられるので、浮力材を表地に接着や縫製などの方法で固定することが望ましい。
【0012】空隙を生むための発泡体の3次元構造については、棒状の発泡体を2層に重ね直角に交差する格子状のものや、バイアスに積層された主に果実保護用途に使われるものがあるが、伸縮性を考慮すればバイアスに積層されたものが好ましい。
【0013】このようにして作製された浮力材を合羽に装着するのであるが、特に漁業用として利用されれば、冬季は浮力材が防寒にも有効に作用し、厳寒の船上作業においても軽く暖かい安全性の高い防寒合羽の機能も期待できる。
【0014】浮力材装着の仕方としては、合羽の表地と裏地の間にその形状にそった形に成形された浮力材を装着する。装着口はファスナーで浮力材を着脱式にするか、あるいは縫製するなどしてしっかり閉じ、浮力材が外に飛び出さないようにする。
【0015】
【発明の実施の形態】図2は、本発明がかかる浮力材の一例を示す分解斜視図であり、bの3次元構造独立微細ポリエチレン発泡体は図1にその拡大図を示してある。この場合bはバイアスに棒状のものが交差して3次元構造を形成しているが、棒状でなくともかまわないし、またバイアスでなく格子状であってもよい。
【0016】図3は図2のaとcによりbを完全に被覆した浮力材の完成した形状であり、図5はその断面図である。bは3次元構造をしているため空隙が多く、従って発泡ポリエチレンの空間に占める割合はほぼ50%であり、残りは空気である。ここにおいて発泡ポリエチレン被覆材として使用したのは70ミクロン厚のエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)であり、ウェルダー溶着で密閉してあるが、これに限らず被覆材としてはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等軟質プラスチックフィルムであれば差し支えない。図4に示したのは浮力材で1枚の構造体とするのではなく、多数の独立したセルの集合体としたものであり、この形状に関しては合羽のサイズや体の動きにあわせ自由な形状とすることができる。
【0017】図6は本発明にかかる浮力材を合羽に装着した例の背面図であり、図7はその前面図である。本発明による浮力材を用いれば、胸、腹、背中の部分のみに薄い浮力材を配することのみで十分な浮力が得られ、作業性を損なう腕の部分に配することは必要ない。
【0018】本発明に使用される二重構造となる合羽の表地と裏地の材質について、ここにおいては表地にナイロン織布に塩化ビニルを0.2mmの厚さでラミネートしたものを、裏地には薄いナイロンメッシュ生地を用いたが特に限定するものではない。一般的にはビニルクロス、塩化ビニルシート、ポリウレタン引き織布等であるが特に材質は問わない。表地と裏地についても、同材質でも異なる材質でも良いが、重くなり作業性を損ねることを考えれば裏地は薄いメッシュ生地のようなものが好ましい。
【表1】

【0019】表1は本発明に係る合羽、従来着られていた水産合羽そして従来の救命胴衣の性能の比較表である。本発明に係る合羽は、例えば表地としてナイロン織布に0.2mm厚の塩化ビニルをラミネートしたものを用い、浮力材は5mm厚のバイアス状2層積層発泡ポリエチレンを70ミクロンの厚さのエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)で被覆したもので裏地はメッシュ生地を使用している。従来の合羽は塩化ビニル引きの水産用汎用合羽である。表に見られるように保温性に関しては作業性を重視するあまり犠牲となっていた従来品に比べ、格段に性能が向上している。浮力性においても、空隙を浮力材の一部としたことにより良好な浮力が得られ、また発泡ポリエチレンを使用しているので緩衝性も高く、衝撃吸収に大いに役立っている。
【表2】

【0020】表2には本発明のような構造をとったものと、芯材となる3次元構造独立発泡ポリエチレンのみの同厚同面積による浮力の比較データである。1m2での比較としたが、本発明の構造の場合は芯材となる発泡ポリエチレンの場合の2.5倍もの浮力が得られているし、JIS F1026「船艇用フローティングジャケット」の試験方法による24時間後の浮力変化率においても、規格内の−5%に収まるものである。
【0021】
【発明の効果】上述のように本発明によれば、作業時においては通常の合羽と同様の運動性、作業性を有するものであるが、船から海中への転落等の突発的事故のさいには救命胴衣と同様に機能し、十分な浮力を得られる。また本発明の構造上、合羽に配設された浮力材が保温材ともなり厳寒期の作業も快適であるのみならず、優れた緩衝性も併せ持っているので作業中の衝撃などによる事故の緩和にも有効に作用するものである。
【出願人】 【識別番号】000167853
【氏名又は名称】弘進ゴム株式会社
【出願日】 平成11年5月11日(1999.5.11)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−328315(P2000−328315A)
【公開日】 平成12年11月28日(2000.11.28)
【出願番号】 特願平11−130079