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【発明の名称】 食品保存剤
【発明者】 【氏名】松本 安夫

【氏名】福士 英明

【氏名】平木 純

【要約】 【課題】細菌類、酵母類およびカビ類の増殖抑制効果を有し、食品風味への影響が極めて小さい食品保存剤を提供することである。

【解決手段】炭素数8〜12の脂肪酸とグリセリンから得られる脂肪酸モノグリセリンエステルの中から選ばれる少なくとも2種類、ε−ポリリジン若しくはその塩並びにグリシンを有効成分として食品保存剤を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】炭素数8〜12の脂肪酸とグリセリンから得られる脂肪酸モノグリセリンエステルの中から選ばれる少なくとも2種類、ε−ポリリジン若しくはその塩並びにグリシンを有効成分として成る食品保存剤。
【請求項2】脂肪酸モノグリセリンエステルがモノカプリリン、モノカプリン及びモノラウリンである請求項1記載の食品保存剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、食品保存剤に関する。さらに詳しくは、炭素数8〜12の脂肪酸とグリセリンから得られる脂肪酸モノグリセリンエステルの中から選ばれる少なくとも2種類(以下、複合モノグリと言う)、ε−ポリリジン若しくはその塩(以下、総称してεPLと言う)並びにグリシンを併用した食品保存剤であって、菓子類、麺類及びその他食品に用いると、一般細菌およびかびに対して優れた静菌効果を有する上、用いた食品の風味を損なうことのない食品保存剤に関する。
【0002】
【背景技術】食品の腐敗を引き起こす原因には、細菌類、酵母類、カビ類等がある。中でも20〜30℃の常温域においては、芽胞菌、乳酸菌類等に代表される細菌類は、酵母やカビ類に比べて増殖速度が速いため、通常、食品の腐敗は、この細菌類が原因となることが多かった。そのため、これまでに開発されている各種食品保存剤は、細菌類の増殖を抑制し得る効果、すなわち細菌類に対して静菌効果に優れるものが主流であった。
【0003】これまでは、食品の賞味期限が比較的短かったため、該食品保存剤でも食品の腐敗防止に有効に働いていた。しかし、賞味期限の長期化ニーズや食品を低温で保存する技術の進歩も相まって、長期保存を阻害するカビ類の増殖が問題となってきた。しかし、カビ類に対して静菌効果が有効に働く食品保存剤が見あたらないのが現状であり、前述した既存の食品保存剤においても、細菌類および酵母類には優れた静菌効果を有するが、カビ類に対しては充分な静菌効果を有するものとは言えなかった。
【0004】εPLやグリシンにも、カビ類に対して若干の静菌効果があるものの、実用的な静菌効果を発現させるためには多量に用いなければならず、高価なεPLを多量に用いることは経済的に無理があり、独特の甘みを有するグリシンを多量に用いると食品の持つ風味に悪影響を及ぼしてしまうという問題があった。一方、炭素数8〜12の脂肪酸とグリセリンから得られる脂肪酸モノグリセリンエステルには、カビ類に対して静菌効果のあることが知られている。しかし、該エステルには特有の味と臭いがあるため、食品風味への影響が大きい上、グラム陰性菌に対して効果がないという欠点も有している。
【0005】εPLと他の保存剤とを組み合わせた食品保存剤の検討も進められている。特開平6−225740号公報には、中鎖脂肪酸モノグリセライド、リゾチーム及びεPLを併用した食品保存剤、特開平6−253797号公報には、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びεPLを併用した食品保存剤、特開平6−269265号公報には、A)有機酸モノグリセセライド、B)リゾチーム、C)εPL、D)グリシン、E)有機酸及び/又は有機酸塩、無機酸及び/又は無機酸塩のうちから選ばれた1種又は2種以上、を併用した食品保存剤がそれぞれ開示されており、これらの食品保存剤は、保存効果に優れ、味のバランスの取れたものであることが記載されている。しかし、これらの食品保存剤においても、カビ類に対しての静菌効果という点では、充分な機能を有するものではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、細菌類、酵母類およびカビ類の増殖抑制効果(静菌効果)を有し、食品風味への影響力が極めて小さい食品保存剤を提供することである。
【0007】
【課題を解決する為の手段】本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、複合モノグリ、εPLおよびグリシンとを組み合わせることにより、上記課題を解決し得ることを知り本発明を完成した。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明につき詳細に説明する。本発明は、複合モノグリ、εPLおよびグリシンを有効成分として成る食品保存剤である。本発明の有効成分の1つである複合モノグリは、炭素数8〜12の脂肪酸とグリセリンから得られる脂肪酸モノグリセリンエステルの2種類以上の混合物である。2種類以上の該エステルをεPLおよびグリシンと併用することにより、単一種の該エステル、εPLおよびグリシンを併用した場合よりも静菌効果が高まる。このため、それぞれの該エステルの使用量を低減しながら高い静菌効果が得られ、結果として食品風味を損なうといった悪影響が極めて小さい食品保存剤が得られる。該エステルは、デキストリン等の賦形剤等で粉末化したものであっても良い。該エステルの具体例としては、カプリル酸モノグリセリンエステル(モノカプリリン)、カプリン酸モノグリセリンエステル(モノカプリン)及びラウリン酸モノグリセリンエステル(モノラウリン)を挙げることができる。
【0009】本発明の有効成分の1つであるεPLは、天然系食品保存料であるεPLであれば特に制限はなく、例えば特許1245361号(ポリリジンの製造法)に記載のε−ポリリジンの製造法によって得ることができる。すなわち、ストレプトマイセス属に属するε−ポリリジン生産菌であるストレプトマイセス・サブスピーシーズ・リジノポリメラスを好気的に培養し、その培養液からε−ポリリジンを分離することができる。また、本発明で用いられるε−ポリリジンの入手方法としては例えばチッソ(株)のポリリジン50%粉末を挙げることができる。また本発明にあっては、εPLは遊離の形で用いられる他、有機酸もしくは無機酸の塩の形でも用いることができ、該有機酸の塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、マロン酸塩、グルコン酸塩、マレイン酸塩もしくは乳酸塩等を挙げることができ、該無機酸の塩としては、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩等を挙げることができる。
【0010】本発明の有効成分の1つであるグリシンは、発酵品または合成品等にかかわらず食品に使用できるグレードのものであれば良い。
【0011】本発明の食品保存剤は、εPLを1としたとき、複合モノグリをその0.05〜2重量倍、好ましくは0.15〜0.5重量倍、グリシンをその1〜60重量倍、好ましくは10〜40重量倍配合されたものが望ましい。さらに、本発明においては、静菌効果の増強あるいは風味への悪影響低減を目的として、アルコール、各種有機酸およびその塩類、チアミンラウリル硫酸塩、蔗糖脂肪酸エステル等を用いても良い。
【0012】本発明の食品保存剤は、一般総菜、麺類、菓子類を始め各種食品に利用することができる。例として、サラダ、和え物、煮物、蒲鉾、ハム、ソーセージ、うどん、そば、蒸しパン、スポンジケーキ、おはぎ等を挙げることができるが、これら以外でも、カビがその腐敗原因になる食品については、加熱処理の有無にかかわらず優れた保存効果が得られる。
【0013】
【実施例】以下に実施例にて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0014】(うどんへの応用)
実施例1〜4、比較例1〜5原料として、小麦粉400g、水160gおよび食塩12gを用い、さらに表1に示した保存剤成分を添加して、食品保存剤の異なる8種類のうどんを作製し、下記の賞味可能期限測定1と官能評価測定1を行った。その結果は表2の通りである。
【0015】賞味可能期限測定1実施例1〜4および比較例1〜5で得られた各種うどんを10℃に保ちながら、日々うどん中の細菌数、カビ数および酵母数をペトロフィルム法により測定し、細菌数が10万個/gを越えるか、もしくはカビ・酵母数が1万個/gを越えた時点の前日までの期限を賞味可能期限とした。
官能評価測定1実施例1〜4および比較例1〜5で得られた各種うどんと食品保存剤の入っていないうどんとを10人のモニターが食べ比べ、食品保存剤が添加されることによる風味への影響(異味)を調べた。異味の感じないものを−とし、極僅かに異味を感じるものを±、異味をはっきりと感じるものを+、異味が極めて著しいものを++とし、10人のモニターの平均値を官能評価の結果とした。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】これらの結果から明らかなように、本発明の食品保存剤を用いた実施例1〜4のうどんにおいては、一般細菌およびカビに対して優れた静菌効果を示すとともに風味への影響が僅かであることが確認された。
【0019】(蒸しパンへの応用)
実施例5〜8、比較例6〜10原料として、小麦粉28g、グラニュー糖16g、ベーキングパウダー1.5gおよび水20gを用い、さらに表3に示した保存剤成分を添加して、食品保存剤の異なる9種類の蒸しパンを作製し、下記の賞味可能期限測定2と官能評価測定2を行った。その結果は表4の通りである。
【0020】賞味可能期限測定2実施例5〜8および比較例6〜10で得られた各種蒸しパン(1個約70g)に対し、市販の蒸しパンより分離した3種のカビを胞子状態で各50個/g、計150個/g接種した後、該蒸しパンを30℃で保存し、日々蒸しパン中のカビ数を測定し、カビ数が1万個/gを越えた時点の前日までの期限を賞味可能期限とした。
官能評価測定2実施例5〜8および比較例6〜10で得られた各種蒸しパンと食品保存剤の入っていない蒸しパンとを10人のモニターが食べ比べ、食品保存剤が添加されることによる風味への影響(異味)を調べた。異味を感じないものを−とし、極僅かに異味を感じるものを±、異味をはっきりと感じるものを+、異味が極めて著しいものを++とし、10人のモニターの平均値を官能評価の結果とした。
【0021】
【表3】

【0022】
【表4】

【0023】これらの結果から明らかなように、本発明の食品保存剤を用いた実施例5〜8の蒸しパンにおいては、カビに対して優れた静菌効果を示すとともに風味への影響がないかもしくは僅かであることが確認された。
【0024】(ビーフシチューへの応用)
実施例9〜12,比較例11〜15材料として、ビーフシチューの素、牛スネ肉300g、玉葱300g、人参200g、じゃがいも200gおよび水1500mLを用い、さらに表5に示した保存剤成分を添加して、食品保存剤の異なる8種類のビーフシチューを作製し、下記のカビ発生測定を行った。その結果は表6の通りである。
【0025】カビ発生測定実施例9〜12および比較例11〜15で得られた各種ビーヒシチュ−を15℃に保ちながら、日々蒸しパン中のカビ数を測定し、カビ数が1万個/gを越えた時点をカビ発生日とした。
【0026】
【表5】

【0027】
【表6】

【0028】これらの結果から明らかなように、本発明の食品保存剤を用いた実施例9〜13のビーフシチューにおいては、カビの発生が長期に渡り抑制されていることが確認された。
【0029】
【発明の効果】本発明の食品保存剤は各種食品に対して優れた静菌効果を有し、特にカビ類による腐敗抑制に高い効果を示すとともに食品風味への影響の少ない新規な食品保存剤として好適に使用できる。
【出願人】 【識別番号】000002071
【氏名又は名称】チッソ株式会社
【出願日】 平成11年3月23日(1999.3.23)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−270821(P2000−270821A)
【公開日】 平成12年10月3日(2000.10.3)
【出願番号】 特願平11−77301