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【発明の名称】 低温加熱殺菌したイクラ製品の製造方法
【発明者】 【氏名】高根 俊一

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 高濃度の糖および/または糖アルコールを含有する漬込液に漬込む工程、増粘剤溶液処理する工程、および、低温殺菌する工程からなる低温加熱殺菌したイクラ製品の製造方法。
【請求項2】 さらに冷凍工程を含む請求項1の低温加熱殺菌した冷凍イクラの製造方法。
【請求項3】 請求項1または2の方法で製造されたイクラ製品。
【請求項4】 電子レンジでまたは熱湯中で解凍・加熱することができる請求項2の製造方法で製造した冷凍イクラ製品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は低温加熱殺菌により安全性が高く、しかも熱安定性、卵の保型性の良い低温加熱殺菌したイクラ製品の製造方法に関する。さらに本発明は、電子レンジまたは熱湯中で加熱して解凍・加熱が可能な低温加熱殺菌した冷凍イクラ製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】イクラはロシア語で魚卵を指すが、我が国ではサケ・マス類の卵巣から分離した卵粒の塩蔵品をイクラという。すじこの場合よりも成熟の進んだサケ・マス類の卵巣を用いるが、産卵のため川に上る時期の卵は適当ではない。飽和食塩水中で12〜18分塩漬けするが、製品の塩分はすじこより低い。原料卵の鮮度が品質に大きく影響するため、通常漁獲後6〜7時間以内の新鮮な卵粒が原料になる。品質は薄いピンク色で光沢があり、卵の張った感じのするもの、卵粒が破損していないものがよい。
【0003】この塩蔵イクラは一般的にはすし種、茶漬、おかずとして消費されるが、消費者の傾向として、年々甘塩(塩濃度5%以下)のものが好まれてきている。塩濃度が高い製品は保存性が高いが、塩濃度が低くなるほど保存性は悪くなる。冷凍することで保存性は増すが、冷凍保存は菌の増殖を抑えるだけなので、より安全な製品を得るためには冷凍前の製品の菌数を低くする必要がある。しかし、通常イクラは加熱すると白濁してしまうため、加熱殺菌はできず、その使用態様に制約を受ける等の支障があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】近年、病原性大腸菌O-157、腸炎ビブリオ、サルモネラなどに起因する食中毒が日本のみならず世界的な規模で猛威を振るい、食品衛生への関心が国際的にも高まってきている。食品を取り扱う者にとっては特に留意しなければならない点はこれら食中毒がこれまでの常識とは異なり極めてわずかな細菌数で発病してしまう危険性があるということである。このことは「食する時点で病原菌が増殖していなければ良い」という概念ではなく、「食品中に病原菌を存在させない」という衛生管理が必要であることを意味している。食品衛生法においては、冷凍食品のうち無加熱摂取冷凍食品については細菌数が検体1gにつき100,000以下で、かつ、大腸菌群が陰性でなければならないと定めており、魚介類についても無加熱摂取冷凍食品に分類されるものについてはこの基準を満たすものでなければならない。本発明者らはすでに耐熱性イクラを開発したが(特開平9−271364)、冷凍前に加熱殺菌すること、その際さらに高い耐性を付与する必要があることを見出し本発明を完成した。本発明は低温加熱殺菌処理したイクラ製品を提供することを目的とする。さらに電子レンジでまたは熱湯中で加熱してももとの形状、色彩、触感を維持しつづけている低温加熱殺菌処理した冷凍イクラ製品を提供することを目的とする。また本発明は、低温加熱殺菌処理した、イクラ製品または冷凍イクラ製品の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は高濃度の糖および/または糖アルコールを含有する漬込液に漬込む工程、増粘剤溶液処理する工程、および、低温殺菌する工程からなる低温加熱殺菌したイクラ製品の製造方法である。また、電子レンジでまたは熱湯中で加熱解凍しても、もとの形状、色彩、触感を維持しつづけている低温加熱殺菌した冷凍イクラ製品の製造方法である。
【0006】本発明のイクラ製品は塩味だけの塩イクラでも、味付けしたイクラでもよい。味付けは糖および/または糖アルコールの漬け込みと同時に行うのが効率的であるが、どの段階で行ってもよい。糖および/または糖アルコールの糖鎖数は1〜10である。糖および/または糖アルコールの糖鎖数は好ましくは6〜7である。上記糖はオリゴ糖であって、ブドウ糖が6または7個結合したマルトオリゴ糖を40%以上含有し、甘味度が砂糖の1/5以下のものである。漬込液の糖および/または糖アルコールの濃度は40〜60%である。糖および/または糖アルコールの効果は漬け込み液中の濃度だけでなく、イクラに対する漬け込み液の使用量にも影響されるため、より高い耐熱性が必要な場合には十分な量の漬け込み液を使うことが好ましい。本発明の耐熱性イクラ製品は好ましくは冷凍品であることができ、電子レンジでまたは熱湯中で解凍・加熱することができる。増粘剤としては、キサンタンカ゛ムク゛アカ゛ムタマリント゛カ゛ム等の増粘多糖類、ゼラチン、大豆等の水溶性食物繊維等が上げられ、単独でまたは組み合わせて使用できる。増粘剤は調味液に添加しても、調味液漬け後、液きりした後に添加してもよい。増粘剤の濃度は適宜定めることができるが、調味液中には0.1〜10%、調味漬け後に添加する場合は1〜10%、好ましくは調味液漬け後、液切りしたイクラ100に対し5〜10%の増粘剤溶液を添加するのがよい。低温加熱殺菌は使用目的により、適宜定めることができるが、好ましくは65℃30分間〜70℃40分間くらいが適当である。
【0007】
【発明の実施の形態】筋子がバラになったのがイクラであり、生イクラは水分53%、蛋白質25%、脂肪15%、その他の成分7%とから成る液状の組成物を比較的強靭な卵膜で包被して成る球体であり、魚種により卵巣粒、色沢が異なる。本発明で使用する筋子は魚種を選ばない。ベニサケは卵巣の型が扁平であり、卵粒は小さく、色沢は鮮紅色である。シロサケは卵巣の型がやや丸く、卵粒は大きく、色沢は黄赤色である。カラフトマスは卵巣の型は細長く、卵粒数が少なく色沢は黄赤色である。ギンサケは卵巣の型は扁平でベニザケに似ていて、卵粒は小さく、色はベニザケよりやや紫がかっている。マスノスケは卵巣の型は大型で卵粒はシロサケと同じく大きい。色はややくすんだ黄赤色である。一般にイクラは市場では高価であるが、ロシア産冷凍カラフトマスの筋子が比較的安価に手に入りやすい。
【0008】また、本発明で使用する原料筋子は形態を問わない。生筋子、冷凍の生筋子、塩蔵筋子、冷凍の塩蔵筋子のいずれの形態であってもよい。筋子からイクラを作るには、例えば飽和食塩水で3〜5分撹拌した後にザルで揉んでイクラにする。その場合イクラ内部の塩分はいわゆる塩蔵イクラと同様に3〜4%になっている。
【0009】塩蔵筋子の通常の生産工程は採卵→洗浄(塩水)→撹拌(飽和塩水+亜硝酸)→等級選別→函詰ふり塩→脱水→熟成→検査→凍結保存の流れであり、現在は冷凍の塩蔵筋子が原料として入手しやすい。塩蔵イクラの品質保存期間として、チルドものは0〜−5℃にて保存すれば約1カ月以内が目安であるが、時間とともに品質は劣化する。長期の保存では酸化が進む。原料の出発点は生もしくは冷凍筋子が好ましい。さらに筋子として成熟が進んで各球体の卵膜が強靭になりすぎているものも、熱湯処理をして卵膜を変成させて使用することにより本発明の原料とすることができる。
【0010】本発明の低温加熱殺菌したイクラ製品は高濃度の糖および/または糖アルコールを含有する漬込液に漬込んで調味したものであり、漬込液に使用する糖および/または糖アルコールとしては、コーヒー、紅茶、スープ類、野菜ジュースなどの粉末化基材、スナック菓子などの皮膜・つやだし剤、アイスクリームなどの凍結温度調節剤など食品一般に広く使用されている、甘味の少ないオリゴ糖または還元オリゴ糖が使用される。本発明で使用される糖および/または糖アルコールとしてはマルトトリオース、ラクチトール、ショ糖、マルトース、ソルビトール、マンニトール、グルコース、マンノース、フルクトース、キシリトール、キシロース、ソルビタンなどが例示できる。熱による変性を抑えるという目的のためには糖鎖数1〜10の単糖またはオリゴ糖であれば何でも使用できるが、糖鎖数の小さいものは甘味を有するため、甘味がないことが望まれる場合には、糖鎖数6〜7のオリゴ糖または還元オリゴ糖が好ましい。
【0011】具体的には、甘味度が砂糖の1/5以下のものであり、ブドウ糖が6または7個結合したマルトオリゴ糖を40%以上含有するオリゴ糖、フジオリゴG67〔オリゴ糖、日本食品加工(株)〕やソルビトール4糖以上のオリゴ糖アルコールを75%以上含むPO−20〔還元澱粉糖化物、東和化成工業(株)〕が市販されている。 両者ともに甘味度が10〜20と糖および/または糖アルコールでもっとも低く、本発明で使用される糖として、具体的には、甘味度が砂糖の1/5以下のものであり、ブドウ糖が6または7個結合したマルトオリゴ糖を40%以上含有するオリゴ糖が例示される。使用する漬込液中の糖および/または糖アルコール濃度は40〜60%特に甘味の面からは通常は50%が好ましいが、甘味を呈するブドウ糖が3個以下結合した糖を実質的に含まないオリゴ糖の場合は50%以上で使用することができる。
【0012】例えば漬け込み液のオリゴ糖の含有量を変化させて試験を行った、オリゴ糖を0、20、40、50、70、80%重量比になるように漬け込み液を加え熱耐性の試験を行ったところ、電子レンジでは40%以下のオリゴ糖では白くなる傾向があり、70%以上では甘くなり、食感は40%以下では硬くなってしまった。100℃での加熱(ボイル)についても同じ結果であった。白くならないためには約50%以上、甘みの面では約70%以下であることが好ましい。
【0013】使用する漬込液は、上記糖および/または糖アルコールのほかに食塩および水を含んでいる。例えば、塩蔵イクラを用いる場合、50%オリゴ糖、4%食塩および46%水を含む漬込液を使用する。4%食塩および46%水の一部分を醤油に変えることができる。水の代わりまたはその一部分を日本酒で置き換えることもできる。そのほか調味料、香辛料を適宜配合することができる。醤油漬けの漬け込み液の処方例としては、醤油1、日本酒1、みりん0.1、水0.3の割合で加えたものが例示される。醤油漬けの場合、食塩は省いてもよいが、味の面から見て日本酒にたいして0.3くらいの割合で水を加えたほうが味がまろやかになる。
【0014】漬込時間は24時間〜48時間で時間が長いほど良好である。均一、短時間での漬込には真空度0mmHgで1〜10時間の範囲で行うことができるが、この場合でも完全に漬込むには10時間程度の漬け込みが必要である。増粘剤としては前記した物質が使用できるが、ゼラチンを使用するのが好ましい。ゼラチン溶液による漬け込みは好ましくはゼラチン濃度5〜10%、食塩濃度2%程度の溶液を漬け込み液を液切りした後に添加し、混合する。低温加熱殺菌処理は65℃30分〜70℃40分くらいが好ましい。
【0015】本発明の低温加熱殺菌した冷凍イクラ製品は電子レンジによる解凍・加熱、または袋のまま熱湯中での解凍・加熱が可能であり、冷凍調理品の形態で市場に提供することができる。
【0016】本発明の低温加熱殺菌したイクラ製品は、袋に入れたボイルでは100℃で10分加熱しても白く濁らず透明感がある。500Wの電子レンジでの加熱は冷凍米飯上では1分30秒くらいでイクラは解凍でき、3分ぐらいが限界であり、4分で全体の30〜40%程度白く濁ることがわかった。丼にはいった200gのごはんは500Wで2分30秒〜2分50秒で芯温(丼の中央)が90℃くらいになる。
【0017】
【作用】イクラを、上記の糖および/または糖アルコールを多く含んだ漬込液中に浸漬して所要時間放置したものは耐熱性が付与されており、さらに、増粘剤処理することにより、低温殺菌処理を施しても、形状、色彩、食感を維持できる。したがって、微生物制御の面においてより安全なイクラ製品を得ることができる。また、電子レンジによる適度の加熱または熱湯中での加熱によっても卵粒内の組成物を白色に凝固させることなく、したがって該組成物は生のままの状態でもとの形状、色彩、触感を維持しつづけている。糖および/または糖アルコールと増粘剤を併用することにより、耐熱性の点で糖および/または糖アルコールの使用量を減少することも可能となり、製品の幅が広がる。
【0018】イクラ製品の原料である鮭鱒卵の卵粒の脂質の多い油滴状の部分(俗に目玉と呼ばれている部分)は、冷凍履歴のない生卵では透明で濁りがなく、1つにまとまって存在しているが、冷凍卵ではしばしばこれが数個の部分に分離し、その間隙に白濁したエマルジョン状の物質が見られる場合がある。このような状態の原料を解凍し、いくら製品を製造した場合、特に醤油漬け等の調味液に漬け込まれた状態では、この白濁した部分が非常に目立ち、透明感をそこねて外観を著しく劣化させることがある。本発明の一連の工程を経ることにより、前述した効果を得ると同時にこの油滴状の部分の分裂と白濁した物質の存在をかなり生卵に近い状態に戻すことが可能である。本発明により得られたイクラ製品は生原料から製造したものと同等の外観であった。
【0019】
【実施例】本発明を実施例で説明する。本発明はこれらの実施例で何ら限定されることがない。
【0020】実施例1よく洗浄したイクラのバラコを水切りし、醤油37%、調味料17%、オリゴ糖液43%,食塩3%の漬け込み液(イクラ:液=100:46)に一晩漬け込み、液切り後、ゼラチン液(10%)(イクラ:液=100:3)を添加混合する。容器に詰め、真空パックし低温加熱殺菌(70℃、40分間)し、冷却後急速凍結した。オリゴ糖は“PO−20”〔東和化成(株)製〕を用いた。凍結品を容器に入れ冷凍保管後、自然解凍した。解凍後も、生のイクラと同様に透明感をあり、形状、色彩、触感ともにもとの状態を維持していた。本発明品の低温加熱殺菌前後の細菌検査の結果(3検体)と参考に市販品(イクラの醤油漬け)の細菌検査の値を表1に示した。低温加熱殺菌により製品の初期菌数を抑えることができた。
【0021】
【表1】

【0022】実施例2よく洗浄したイクラのバラコを水切りし、水31%、醤油15%、オリゴ糖液(“PO−20”〔東和化成(株)製〕)50%,食塩4%の漬け込み液(イクラ:液=1:1)に一晩漬け込み、液切り後、ゼラチン液(10%)(イクラ:液=100:3)を添加混合する。容器に詰め、真空パックし低温加熱殺菌(70℃、40分間)し、冷却後急速凍結した。凍結品を電子レンジで加熱解凍しても、しょう油漬けイクラの色、艶、透明感、形状、触感をもったもとの状態に復元した。
【0023】
【発明の効果】安全性が高く、しかも熱安定性、卵の保型性の良い低温加熱殺菌したイクラ製品を提供することができる。電子レンジまたは熱湯中で加熱して解凍・加熱が可能な低温加熱殺菌した冷凍イクラ製品を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000004189
【氏名又は名称】日本水産株式会社
【出願日】 平成11年3月18日(1999.3.18)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−262253(P2000−262253A)
【公開日】 平成12年9月26日(2000.9.26)
【出願番号】 特願平11−74445