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【発明の名称】 わさび風味練り製品の製造方法
【発明者】 【氏名】後藤 知郎

【要約】 【課題】わさび粉末を糖アルコールと混合したものを、練り製品へ添加したわさび風味練り製品である。

【解決手段】わさび粉末と糖アルコールの混合物を、水分濃度45〜65%となるように調製した練り製品原料へ、添加したわさび風味練り製品である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】わさび混合物を常法により魚肉、澱粉、糖質原料等を混合し、水分濃度を45〜65%に調整したわさび風味練り製品の製造方法。
【請求項2】水分濃度を50〜55%に調整した特許請求項1記載のわさび風味練り製品の製造方法。
【請求項3】わさび混合物が、わさび粉末1重量部に対して糖アルコールを1〜3重量部の配合とする特許請求項2記載のわさび風味練り製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はわさびを含有する練り製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】練り製品は魚肉を主成分とし、各種食品素材を混合撹拌した後、座り及び加熱工程を経て、製造されている古くからの日本の特徴ある食品である。またこの練り製品へ副原料として、唐辛子等の香辛料を添加することによって、独特な辛み成分を味付けしている製品も多く見られる。例えばわさびを混合した練り製品等が見られるが、この場合の欠点は、辛みの主成分であるアリルカラシ油が、揮発し易いことである。そこでわさびの揮発成分を保存するために、多くの試みがなされている。
【0003】例えば特開平9−154542のように、蒲鉾にわさび香味を生かすために、わさびをサイクロデキストリンで包摂したものを、蒲鉾原料へ練り込む方法が開示されている。しかしこの方法の欠点は、サイクロデキストリン等の添加物を用いていること、辛み風味の持続期間が短いことである。特にサイクロデキストリンは、使用量が多くなると甘みと渋味等が、感じられることが欠点である。また練り製品以外の市販のねりわさびの中には、わさび粉末と糖アルコールであるソルビトールを、混合することによって、揮発成分の防止対策を行っているものがある。しかしこの製品の欠点は、わさび粉末と糖アルコールの混合物を、容器に封じ込めることにより、香りの揮発を防止するもので、従って空気にふれると、香りが消失し易くなることである。すなわち解決すべき課題は、空気中においてもわさびの香りの生成する成分を、化学的に安定させることにある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明では練り製品について、わさびの辛み成分を保持するための種々の試験を行う中で、糖質原料と適正な水分濃度の組み合わせによって、その保持効果が高まることを知見したものである。従来糖質原料であるブドウ糖、砂糖、水あめ、糖アルコール等は、食品の水分活性を高める食品素材として、一般的に多く使用されている。例えば糖類のもつ化学的作用、すなわちその分子内に有する反応性に富む、官能基であるアルデヒド基及び水酸基は、原料中の水分を結合水として保持すること、あるいは食品素材中の官能基と、結び付くことにより、香り及び味等の品質保持効果を、高めることが知られている。本発明ではわさびの辛み主成分である、アリルカラシ油と糖アルコールの混合物が、適正な水分濃度の練り製品の中で、安定化することを見いだしたものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下本発明を実施例について述べる。
【実施例1】わさび粉末10gへ蔗糖、デキストリン、ソルビトール及びマルチトールをそれぞれ10gずつ混合し、さらに蒸留水20gを添加して、乳鉢にて均一に混合撹拌した。これらの混合物40gを100ml容ビーカへ入れ、蓋をせずに30℃で恒温槽中1週間保持した。また別に、対称区としてわさび粉末10gへ、糖質原料でない小麦粉を10g、さらに蒸留水20gを添加した試料について、同様な保持試験を行った。その後1週間後及び1カ月後に、これらの混合物の香りの官能評価を行った。その結果を表1に示した。

【0006】表1の結果より、糖質原料が小麦粉よりも、わさびの香りを強く保持することを認めた。また糖アルコールであるソルビトール及びマルチトールが、蔗糖及びデキストリンよりも、香りの保持効果が強かった。これらの傾向は、1カ月後においても認められた。一方小麦粉を添加した対称区については、1週間後においてわさびの香りが消失した。以上の結果より、わさびの香りの保持効果は、糖質原料が良好でかつその中で、糖アルコールの保持効果が、強いことが認められた。ここで糖アルコールの使用例について、市販練りわさび製品の中に、その辛み成分の保持を目的として利用されている報告がある。例えば市販品の練りわさびの一部に、わさび粉末へソルビトールを添加したものが見られる。しかしこれらの製品は、ソルビトールの外に植物性油脂を、相当量(わさび粉末の10%以上)添加しているものが多い。この理由は辛み成分の長期保持の目的に、油脂の安定剤としての機能を利用したものである。
【0007】すなわち油脂併用の糖アルコールの、保持効果に関する報告例は多いが、油脂を使用しない糖アルコールの、保持効果に関する報告例はみられない。一方練り製品の原料として、油脂の利用は好ましくない。そこで練り製品について、原料に油脂を利用しない、すなわち油脂を含まない糖アルコールを主とする、辛み成分保持効果の試験が、重要な課題となる。さらに練り製品の場合は、ゲル化した魚肉により、辛み成分を封じ込めているため、その揮発防止対策は必要でない。すなわち油脂の利用は必要でなく、むしろ練り製品のゲル状態、特に練り製品中の水分濃度と物性が、辛み成分の保持にとって重要な因子である。
【0008】
【実施例2】実施例1により、糖アルコールの添加効果が認められたので、香りの一層の保持効果を目的として、糖アルコールの添加量を増加した場合について検討した。すなわちわさび粉末へ、糖アルコールとしてソルビトールを選定し、その添加割合がわさび粉末の0.5〜3.5倍量となるように、ソルビトール及び水道水を用いて調製した。これらの混合物を実施例1と、同様な処理により保持試験を行い、官能評価について、1週間後及び1カ月後の結果を、表2に示した。

【0009】表2の結果より、試験区■〜■が1カ月後においても、わさびの香りを保持することが認められた。すなわちソルビトールの添加量が、わさび粉末の1〜3.5倍量の試験区が、最も良好であった。しかし試験区■は、香りは強く感じられるものの、水分が少ないためパラツキ性等、物性面で問題が残された。従って商品性の面から、試験区■〜■である、わさび粉末に対するソルビトールの、1〜3倍量添加区が最も良好であった。このことから水分濃度の違いが、辛み成分の保持効果があることを推測させた。そこで水分濃度が異なる練り製品原料(魚すりみ主体)を調製し、辛み成分の保持効果を検討した。すなわちわさび粉末へ、ソルビトールを3倍量添加したわさび混合物10gを、魚すりみ(スケソー)100g、食塩3g、卵白5g、ミリン5gと混合し練り製品原料とした。ここでの50%以下の練り製品の水分濃度の調製方法について、魚すりみの水分濃度が、75%前後であるため、魚すりみの一部を乾燥したものを用いて、水分が目標となる水分濃度まで水道水を加えた。
【0010】その後各水分濃度に調製した練り製品原料を、40℃−2時間の座り処理と、90℃−1時間の蒸煮処理を行って、練り製品を製造した。このわさびを混合した練り製品を、サランラップで包装し、実施例1と同様に、30℃で恒温槽中で1週間及び1カ月間保持した。香りの官能評価には、試料を1週間後、1カ月後及び3カ月後に恒温槽より取り出し、サランラップを開封後包丁により、練り製品を上下に幅5mmで断面的にカットした。カットしたものを口に含み、わさびの香りの保持効果について官能評価した。表3にその保持効果を示した。

【0011】表3の結果より、練り製品の水分70%以上に調製した試験区は、1週間後でわさびの風味は感じられなかった。一方45〜65%に調製した試験区は、1カ月後においても明らかに、わさび特有の辛みの香りが感じられた。特に50〜55%に調製した試験区は、3カ月後においても、わさび特有の辛みの香りが残存した。ここで水分を65%以上に調製した試験区が、香りの消失した原因として、わさびの主成分であるアリルカラシ油が、1カ月以上の長期間に錬り製品中の水分へ、序々に溶出拡散していくものと思われた。一方水分65%以下に調製した試験区は、拡散すべき水分が少ないため、わさびの香りの成分が、練り製品の中へ溶出する程度が小さく、従って1カ月の長期間においても、香りが残存しているものと思われた。
【0012】
【発明の効果】ここで練り製品を水分45%以下に設定した場合、その弾力性は非常に堅いため、通常の練り製品特有のコシのある弾力性は、得られにくい欠点がある。また本特許における辛み成分の保持効果は、水分65%以上の通常の蒲鉾では不適である。従って水分が65%以下のテンプラ、チクワ等の練り製品には有効である。またわさび粉末の色調は、グリーン系統で食欲を促進させる好ましいものである。本特許では、このグリーンの色調が香りと同様に、長期間保持できることが特徴である。あるいはこの色調を強調するために、他の色素の添加を行ってもよい。またわさびの混合物の練り製品中での封入状態を、棒状の形態とするならば、より一層のグリーンの色調の保持、及び部分的な香りの増強を保持することができる。
【出願人】 【識別番号】599045202
【氏名又は名称】後藤 知郎
【出願日】 平成11年2月28日(1999.2.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−245387(P2000−245387A)
【公開日】 平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願番号】 特願平11−97982