トップ :: A 生活必需品 :: A23 食品または食料品;他のクラスに包含されないそれらの処理




【発明の名称】 豆乳の製造方法および豆乳パックの製造方法ならびに豆腐の製造方法
【発明者】 【氏名】今村 勝彦

【氏名】永田 幸生

【氏名】今村 一彦

【要約】 【課題】保存によっても劣化が少なく、高品質の豆腐の原料としても、飲料としても可能な高品質の豆乳およびこのような豆乳を封入した長期保存が可能で、取り扱いが容易な豆乳パックならびにこのような豆乳および豆乳パックの製造方法、およびまろやかで保水性のよい高品質の豆腐を簡単に作ることができ、熱々の作りたての豆腐を食卓に提供することができる豆腐の製造方法を提供する。

【解決手段】溶存酸素が極めて少ないまたは実質的にない大豆蛋白を懸濁する豆乳およびこの豆乳をパック容器に封入した豆乳パックならびに水に浸した膨潤大豆を摩砕し、摩砕大豆を脱酸素過熱蒸気によって所定時間煮沸して大豆蛋白を抽出して煮呉を得、煮呉から冷却することなく脱酸素状態でおからを分離することにより、また、豆乳に適量の凝固剤を添加して充分に混合し、混合液に非腐食性電極を設置し、これらの電極間に電流を印加し、混合液を加熱して大豆蛋白を凝固させて豆腐を製造することにより、上記課題を達成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】大豆蛋白を懸濁する、非熱処理状態において、溶存酸素が、5ppm以下であることを特徴とする豆乳。
【請求項2】前記溶存酸素が、実質的に含有されていない請求項1に記載の豆乳。
【請求項3】溶存酸素が、5ppm以下である熱処理されていない大豆蛋白を懸濁する豆乳と、この豆乳を封入するパック容器とを有し、1℃〜10℃の温度で保存されることを特徴とする豆乳パック。
【請求項4】前記溶存酸素および前記封入時の混入酸素が、実質的に含有されていない請求項3に記載の豆乳パック。
【請求項5】大豆を所定時間水に浸し、得られた膨潤大豆を摩砕し、得られた摩砕大豆を酸素含有量が脱酸素処理水の過熱蒸気(以下、脱酸素過熱蒸気という)によって所定時間煮沸して大豆蛋白を抽出し、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を得、得られた煮呉から冷却することなく脱酸素状態で固型分であるおからを分離して、溶存酸素が、5ppm以下である大豆蛋白を懸濁する豆乳を製造することを特徴とする豆乳の製造方法。
【請求項6】前記脱酸素過熱蒸気中の酸素および前記溶存酸素が、実質的に含有されていない請求項5に記載の豆乳の製造方法。
【請求項7】大豆を所定時間水に浸し、得られた膨潤大豆を摩砕し、得られた摩砕大豆を前記脱酸素過熱蒸気によって所定時間煮沸して大豆蛋白を抽出し、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を得、得られた煮呉から冷却することなく脱酸素状態で固型分であるおからを分離して、溶存酸素が、5ppm以下である大豆蛋白を懸濁する豆乳を製造し、製造された豆乳を熱処理および冷却することなくパック容器に、好ましくは脱酸素環境下で封入することを特徴とする豆乳パックの製造方法。
【請求項8】請求項7に記載の豆乳パックの製造方法であって、前記封入工程の後、前記豆乳パックを冷却して、1℃〜10℃以下の温度で保存することを特徴とする豆乳パックの製造方法。
【請求項9】前記脱酸素過熱蒸気中の酸素、前記溶存酸素および前記封入時の混入酸素が、実質的に含有されていない請求項7または8に記載の豆乳パックの製造方法。
【請求項10】請求項5または6に記載の豆乳の製造方法によって製造された豆乳をそのまま豆腐製造用絶縁性容器に入れ、もしくは請求項7または8もしくは9に記載の豆乳パックの製造方法によって製造された豆乳パックを開封して豆乳を前記豆腐製造用絶縁性容器に入れ、この豆腐製造用絶縁性容器内の豆乳に適量の凝固剤を添加して充分に混合し、この豆腐製造用絶縁性容器の両側において前記凝固剤と豆乳との混合液に非腐食性電極を設置し、これらの非腐食性電極間に前記混合液の電気分解を生じさせない条件下で位相波電流を印加し、前記混合液を加熱して前記大豆蛋白を凝固させて豆腐を製造することを特徴とする豆腐の製造方法。
【請求項11】前記豆乳を製造するための煮呉を得るための、前記摩砕大豆の前記脱酸素過熱蒸気による煮沸は、一端近傍に設けられた注入口および他端近傍に設けられた注出口を備え、両端が閉塞された円筒形の煮沸釜本体と、この煮沸釜本体内に取り付けられ、複数の蒸気噴射口を前記煮沸釜本体の長手方向に沿って設けた少なくとも1本の蒸気噴射管と、蒸気発生手段とを有し、前記蒸気噴射口から噴射される前記脱酸素過熱蒸気が前記煮沸釜本体内の円周方向に送られるように前記脱酸素過熱蒸気の噴射方向を斜めとした煮釜を用い、前記注入口から前記摩砕大豆を注入し、前記蒸気発生手段において発生した前記脱酸素過熱蒸気を前記蒸気噴射管に供給し、この蒸気噴射管の前記複数の蒸気噴射口から前記脱酸素過熱蒸気を噴射して前記煮沸釜本体内の円周方向に送り、前記摩砕大豆を流動化しながら、前記脱酸素過熱蒸気と混合、攪拌して前記摩砕大豆を煮沸して大豆蛋白を抽出して、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を前記注出口から注出することによって行う請求項10に記載の豆腐の製造方法。
【請求項12】前記蒸気噴射管の前記複数の蒸気噴射口から噴射される前記脱酸素過熱蒸気は、前記煮沸釜本体内の同一円周方向、または前記複数の蒸気噴射口の一部および残りでそれぞれ前記煮沸釜本体内の互いに異なる同一円周方向に送られる請求項11に記載の豆腐の製造方法。
【請求項13】前記煮釜は、さらに、前記煮沸釜本体の前記注出口側に設けられ、前記煮沸釜本体内の煮沸原料および残留蒸気を冷却する冷却手段を有する請求項11または12に記載の豆腐の製造方法。
【請求項14】前記蒸気発生手段は、脱酸素手段を有する請求項11〜13のいずれかに記載の豆腐の製造方法。
【請求項15】前記脱酸素過熱蒸気は、実質的に酸素を含有しない過熱蒸気である請求項11〜14のいずれかに記載の豆腐の製造方法。
【請求項16】前記凝固剤は、ニガリである請求項10〜15のいずれかに記載の豆腐の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新鮮度が劣化せず、長期間の保存が可能な豆乳および豆乳パック、このような豆乳および豆乳パックの製造方法ならびにこのようにして製造された豆乳および豆乳パックを用いてどこでも、素人でも容易に安定して失敗無く、風味があり、まろやかな豆腐を造ることができ、作りたての熱々の豆腐を飲食に提供できる豆腐の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、大豆蛋白を固めた栄養価の高い豆腐は、多くの人々に食されてきた食品である。このため、豆腐は、専門業者によって、大量に造られ、パック詰めされて、スーパーマーケットなどで安価で量販されている。しかしながら、量販さているパック詰め豆腐は、製造されてから時間が経ってから食されるため、味や風味や香りや歯ざわりや舌ざわりなどの食感が、町の豆腐屋の作りたての豆腐に比べて劣るものであった。このため、昔ながらの町々の小規模の豆腐屋においても、作りたての美味しい豆腐を家庭の食卓に提供するため、少量ではあるが、従来の手作り製法で造られている。
【0003】ところで、豆腐は、水に浸した大豆を摩り潰し、得られた摩砕大豆を煮沸し、大豆蛋白を抽出して「ご」(「豆汁」、以下呉と称する)を得、この呉(または煮呉)から固形分のおからを分離して豆乳を得、得られた豆乳を冷却した後、ニガリ(苦汁)などの凝固剤(通常は水溶液として用いる)を混合して豆乳とニガリとの混合物を得、この混合物を加熱して大豆蛋白を凝固させることにより、造られている。豆乳の凝固剤としては、ニガリ(塩化マグネシウム)の他、硫酸カルシウムなどが用いられている。上述のように、豆腐は、極めて人気の高い食品であるが、味や香りの良い豆腐を造るためには、その原料として品質の高い豆乳を造る技術および豆乳をニガリを加えて凝固させる技術に高い専門性が要求されるばかりか、豆腐の原料となる豆乳は、品質の劣化が早いため、摩砕大豆の煮沸から豆乳の凝固までの豆腐の全製造工程を連続して行う必要がある。このため、小規模の豆腐屋は、作りたての美味しい豆腐を家庭の朝食に間に合わせるために、早朝から休むことなく労働を強いられていた。
【0004】このような豆腐の原料となる豆乳を製造するために、従来より摩砕大豆は専用の呉製造用煮釜で煮沸されている。このように、豆乳や豆腐や湯葉などの製造に用いられている呉製造用煮釜は、上下の両端を閉塞した円筒形の煮沸釜本体の下部に、摩砕大豆に水を加えたものまたはその加熱物などの呉の原料の注入口を設け、煮沸釜本体の上部にその注出口を設け、単に複数の噴射口を穿孔しただけの蒸気噴射管を煮沸釜本体の内部に取り付けたものである。また、このような従来の呉製造用煮釜に用いられている蒸気は、単に水を加熱して得た空気が含まれる蒸気である。通常の水は8〜10ppmの酸素を含有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の呉製造用煮釜では、蒸気噴射管の噴射口より噴射された蒸気は半径方向に噴射される。半径方向に噴射された蒸気は、煮沸釜本体の内周壁に衝突してその運動エネルギを失い、蒸気の流速は減少する。従って、失速した蒸気は、煮沸釜本体内の噴射口の背後の空間に充分に回り込こむことができずに煮沸釜本体内を上昇することになる。このため、蒸気は、噴射口からの噴射方向である半径方向の近傍にある呉の原料またはその加熱物(以下、呉の原料と総称する)とはよく接触し、呉の原料を蒸気熱によって充分に加熱するが、煮沸釜本体内の噴射口後側の空間にある呉の原料に接触する蒸気の量が少ないため、蒸気熱が呉の原料に充分に伝達されず、必要な熱量で呉の原料を加熱することができない。その結果、呉の原料には、よく加熱された部分と不充分な部分が生じて、呉の原料は、ムラ炊きの状態となり、ムラ炊きの呉からは品質のよい豆乳が得られないという問題があった。
【0006】また、従来の呉製造用煮釜では、蒸気を呉の原料へ均一、かつ充分に供給できないため、蒸気は、その蒸気熱を呉の原料に充分に伝熱できず、多量の蒸気は、充分なる熱量を持った高温のまま煮沸釜本体の上部に溜まり、残留蒸気となり煮沸釜本体上部の圧力を高める。この高圧力により、呉の原料は、煮沸釜本体の注出口に必要以上に押し出され、煮沸釜本体内の呉の原料の送りを適切にコントロールできず、呉の原料に蒸気熱が良く伝達され充分に加熱された部分と不良加熱の部分が生じ、呉の原料がムラ炊きの状態となり、品質の良い呉が製造できず、品質の良い豆乳が製造できないという問題点があった。
【0007】ところで、豆乳に凝固剤としてニガリ(塩化マグネシウム)を加えて凝固させて豆腐を製造する場合、ニガリが大豆の甘味や風味をうまく引き出すことができるが、凝固反応が早く、失敗が多いため、豆乳へのニガリの混合に高度な技術が要求されるばかりか、凝固状態を細かく監視し、温度の制御を行って凝固反応の速度をコントロールする必要があった。このため、従来は、豆乳を冷却して凝固反応を遅くし、ニガリを豆乳に良く混合した後、得られた混合液を蒸気や湯せんでゆっくりと加熱している。このため、加熱に1〜2時間を要し、極めて非効率であるという問題があった。また、加熱に時間がかかることから、豆腐外部が内部に比べて常に高い温度に晒され、豆腐外部に熱がかかり過ぎるため、豆腐外部が2次、3次の加熱の状態となり、保水性の悪い豆腐ができてしまうという問題があった。
【0008】このように高度の技術が必要となる豆乳とニガリなどの凝固剤との混合において、充分に加熱されていない(品質の良くない)呉からおからを分離して得られた豆乳を使うと、豆乳にもムラがあるため、高品質の豆腐を製造するのはますます困難になる。その理由は、このようなムラのある豆乳に比べ均一かつ充分に加熱された(品質の良い)呉から得られた豆乳は、凝固剤との凝固反応が早いのみならず、凝固剤との混合速度も早いためである。すなわち、豆腐を製造する際にムラ炊きの状態の呉から造った豆乳にニガリなどの凝固剤を添加すると、豆乳全体の凝固反応が生じる前に、呉の充分に加熱された部分から得られた豆乳部分に凝固剤が集まり、凝固剤との凝固反応が急速に進行するため、凝固剤を豆乳全体に均一に混合できない。その結果、ますます、保水性に富んだ弾力のある品質の良い豆腐が製造できないという問題点があった。
【0009】ところで、従来の呉製造用煮釜では、単に水を加熱して得た蒸気であるため、蒸気生成に際し空気が混入することが避けられず、蒸気中に酸素が含まれることになる。このような酸素が混入した蒸気で呉の原料を煮沸すると、得られた呉中にも酸素が混入したり、溶存したりするため、呉からおからを分離して得られた豆乳にも酸素が混入したり、溶存したりすることになり、豆乳が極めて短期間で劣化し、品質の良い豆腐を製造できないし、豆腐に溶存酸素に起因する多数の巣ができてしまい、豆腐の味が落ちてしまうという問題があった。このため、新鮮な豆乳すぐに豆腐製造に使用する必要があるため、品質の良い豆腐は専門の業者でしか製造することができず、飲食店や家庭で作りたての豆腐を提供することができないという問題があった。また、豆乳は、牛乳と同じく栄養価の高く、しかも安価な飲料であるにもかかわらず、牛乳と異なりアトピーやアレルギー症状を生じさせることがない優れた飲料であるが、従来の呉製造用煮釜で得られた呉から造られた新鮮な豆乳は、高温加熱殺菌しないかぎりそのまま所定期間保存することができない。しかし、高温加熱殺菌すると、豆乳自体が多少変性してしまい、豆乳本来の風味を失ってしまう。このため従来、新鮮で、風味があり、美味しい豆乳は、専門の小規模の豆腐屋の周辺で細々と販売されているにすぎず、市場に自由に流通させることができないという問題もあった。
【0010】本発明の主課題は、上記従来技術の問題点を解消し、新規な煮釜を用いて得られたムラ炊きのない高品質の呉から固形分を分離して得られ、高温殺菌することなく、豆乳本来の甘味のある味や香りや風味や新鮮さを維持したまま保存が可能で、保存によっても劣化が少なく、高品質の豆腐の原料としてだけでなく、そのまま飲料として飲用可能な高品質の豆乳およびこのような高品質の豆乳を封入した長期保存が可能で、取り扱いが容易で、一般家庭にも飲食店にも豆腐製造の専門業者にも供給可能な豆乳パック、ならびにこのような高品質な豆乳および豆乳パックを製造することができる豆乳の製造方法および豆乳パックの製造方法を提供することにある。また、本発明の他の課題は、このような高品質な豆乳および豆乳パックを用いて、豆腐製造の専門業者に限らず、一般家庭でも飲食店でも素人が容易かつ短時間で、新鮮で美味しく味や風味や食感の良い、巣がなく、まろやかで保水性のよい高品質の豆腐を簡単に作ることができ、熱々の作りたての豆腐を食卓に提供することができる豆腐の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、大豆蛋白を懸濁する、非熱処理状態において、溶存酸素が、5ppm以下であることを特徴とする豆乳を提供するものである。ここで、前記溶存酸素が、実質的に含有されていないことが好ましい。また、本発明の第2の態様は、溶存酸素が、5ppm以下である熱処理されていない大豆蛋白を懸濁する豆乳と、この豆乳を封入するパック容器とを有し、1℃〜10℃の温度で保存されることを特徴とする豆乳パックを提供するものである。ここで、前記溶存酸素および前記封入時の混入酸素を、実質的に含有されていないことが好ましい。
【0012】また、本発明第3の態様は、大豆を所定時間水に浸し、得られた膨潤大豆を摩砕し、得られた摩砕大豆を脱酸素処理水の過熱蒸気(以下、脱酸素過熱蒸気という)によって所定時間煮沸して大豆蛋白を抽出し、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を得、得られた煮呉から冷却することなく脱酸素状態で固型分であるおからを分離して、溶存酸素が、5ppm以下である大豆蛋白を懸濁する豆乳を製造することを特徴とする豆乳の製造方法を提供するものである。ここで、前記脱酸素過熱蒸気中の酸素および前記溶存酸素が、実質的に含有されていないことが好ましい。
【0013】また、本発明第4の態様は、大豆を所定時間水に浸し、得られた膨潤大豆を摩砕し、得られた摩砕大豆を脱酸素過熱蒸気によって所定時間煮沸して大豆蛋白を抽出し、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を得、得られた煮呉から冷却することなく脱酸素状態で固型分であるおからを分離して、溶存酸素が、5ppm以下である大豆蛋白を懸濁する豆乳を製造し、製造された豆乳を熱処理および冷却することなくパック容器に、好ましくは脱酸素環境下で封入した後、冷却して1℃〜10℃以下の温度で保存することを特徴とすることを特徴とする豆乳パックの製造方法を提供するものである。ここで、前記脱酸素過熱蒸気中の酸素、前記溶存酸素および前記混入酸素が、実質的に含有されていないことが好ましい。
【0014】さらに、本発明の第5の態様は、上記の本発明の第3の態様の豆乳の製造方法によって製造された豆乳をそのまま豆腐製造用絶縁性容器に入れ、もしくは上記の本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法によって製造された豆乳パックを開封して豆乳を前記豆腐製造用絶縁性容器に入れ、この豆腐製造用絶縁性容器内の豆乳に適量の凝固剤を添加して充分に混合し、この豆腐製造用絶縁性容器の両側において前記凝固剤と豆乳との混合液に非腐食性電極を設置し、これらの非腐食性電極間に前記混合液の電気分解を生じさせない条件下で位相波電流を印加し、前記混合液を加熱して前記大豆蛋白を変性して豆腐を製造することを特徴とする豆腐の製造方法を提供するものである。
【0015】ここで、前記豆乳を製造するための煮呉を得るための、前記摩砕大豆の前記脱酸素過熱蒸気による煮沸は、一端近傍に設けられた注入口および他端近傍に設けられた注出口を備え、両端が閉塞された円筒形の煮沸釜本体と、この煮沸釜本体内に取り付けられ、複数の蒸気噴射口を前記煮沸釜本体の長手方向に沿って設けた少なくとも1本の蒸気噴射管と、蒸気発生手段とを有し、前記蒸気噴射口から噴射される前記脱酸素過熱蒸気が前記煮沸釜本体内の円周方向に送られるように前記脱酸素過熱蒸気の噴射方向を斜めとした煮釜を用い、前記注入口から前記摩砕大豆を注入し、前記蒸気発生手段において発生した前記脱酸素過熱蒸気を前記蒸気噴射管に供給し、この蒸気噴射管の前記複数の蒸気噴射口から前記脱酸素過熱蒸気を噴射して前記煮沸釜本体内の円周方向に送り、前記摩砕大豆を流動化しながら、前記脱酸素過熱蒸気と混合、攪拌して前記摩砕大豆を煮沸して大豆蛋白を抽出して、抽出された大豆蛋白を含有する煮呉を前記注出口から注出することによって行うことが好ましい。
【0016】また、前記蒸気噴射管の前記複数の蒸気噴射口から噴射される前記脱酸素過熱蒸気は、前記煮沸釜本体内の同一円周方向に送られることが好ましい。また、前記蒸気噴射管の前記複数の蒸気噴射口の一部および残りから噴射される前記脱酸素過熱蒸気は、それぞれ前記煮沸釜本体内の互いに異なる同一円周方向に送られることが好ましい。また、前記煮釜は、さらに、前記煮沸釜本体の前記注出口側に設けられ、前記煮沸釜本体内の煮沸原料および残留蒸気を冷却する冷却手段を有することが好ましい。また、前記蒸気発生手段は、脱酸素手段を有することが好ましい。また、前記脱酸素過熱蒸気は、実質的に酸素を含有しない過熱蒸気であることが好ましい。また、前記凝固剤は、ニガリであることが好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に係る豆乳、豆乳パックおよびその製造方法ならびにこれらを用いる豆腐の製造方法を添付の図面に示す好適実施例に基づいて以下に詳細に説明する。
【0018】まず、本発明の第1の態様の豆乳は、呉(煮呉)からおからなどの固形分を分離して得られたままの大豆蛋白が懸濁した状態で、すなわち高温殺菌処理などの熱処理をしない状態で、溶存酸素が、5ppm以下である、好ましくは実質的に0ppmである、すなわち含有されていないことを特徴とするものである。ちなみに、普通の水は8〜10ppmの酸素を含有する。ここで、本発明の豆乳中の大豆蛋白の濃度は、特に制限的ではないが、呉(煮呉)からおからなどの固形分を分離して得られたままの状態で、すなわち濃縮処理などの熱処理をしない状態で、好ましくは12以上、より好ましくは13%以上であるのがよい。濃度の上限は、特に制限はなく、高いほうが好ましいが、現実に濃縮処理なしで達成できる濃度は、約15、16%である。
【0019】このような本発明の豆乳は、大豆の持つ風味や甘味を持ち、豆乳としての新鮮さや味や香りや風味などがよく、味や風味があり、しかも溶存酸素に起因する巣のない美味しい豆腐の原料として優れているばかりか、そのまま飲料として飲用しても美味しいもので、アトピーやアレルギーなどの体質の人でも牛乳の代わりに飲用することができる。なお、呉からおからを分離して得られた豆乳に高温殺菌処理や濃縮処理などの熱処理を行うと、溶存酸素を低減したり、実質的に0ppmにすることもでき、濃度も濃縮できるが、熱処理を行うと、豆乳としての新鮮さや味や香りや風味などが失われてしまうし、豆腐を製造しても味や風味が失われてしまい、美味しい豆腐とならないので、好ましくない。本発明の豆乳は、空気などの酸素含有雰囲気に接触させなければ、好ましくは、1〜10℃の温度範囲で低温保存すれば、豆乳中の溶存酸素が、5ppm以下では製造から1周間、2ppm以下では製造から3周間、実質的に0ppmでは製造から1ヶ月間に渡って、新鮮なまま味やうま味や風味を、すなわち品質を劣化させずに高品質のまま保存できる。なお、本発明の豆乳は、2〜5℃のより好ましい温度範囲で保存すれば、さらに長期間の保存が可能である。
【0020】また、本発明の第2の態様の豆乳パックは、本発明の第1の態様の豆乳を呉(煮呉)からおからなどの固形分を分離して得られたままの大豆蛋白が懸濁した状態のまま、すなわち高温殺菌処理も冷却もしない状態で、混入酸素が、好ましくは実質的に0ppmである、すなわち含有されないようにパック容器に封入し、1〜10℃、より好ましくは2〜5℃の温度範囲で低温保存するようにしたものであることを特徴とするものである。本発明の豆乳パックは、1〜10℃、より好ましくは2〜5℃の温度範囲で低温保存することにより、豆乳中の溶存酸素および容器中に混入した混入酸素が、5ppm以下では製造から1周間、2ppm以下では製造から3周間、実質的に0ppmでは製造から1ヶ月間に渡って、新鮮なまま味やうま味や風味を、すなわち品質を劣化させずに保存できる。
【0021】ここで、本発明の豆乳を封入するパック容器は、50〜99℃の高温でも1〜10℃の低温でも、もちろんその中間の温度でも有害でない食料品用に用いられるパック容器であれば、特に制限はないが、抗菌性パック容器などの酸素を透過させることがないものが好ましく、例えば、ポリオレフィン樹脂製の容器や袋やこれらの樹脂フィルムをコーティングしたパック容器や袋、ビニル容器などを挙げることができる。本発明の豆乳パックは、長期間保存が可能であるばかりか、容器の容量も運搬や容易であるため、一般家庭や飲食店を始めとして、豆腐製造の専門業者にも、溶存酸素に起因する細菌の繁殖や巣のない美味しい豆腐の原料として、あるいはそのまま飲用する美味しい豆乳飲料として提供できるし、家庭用および業務用の冷蔵庫に保存も可能である。
【0022】このような豆乳および豆乳パックは、それぞれ以下に示す本発明の第5の態様の豆腐の製造方法を適用する豆腐製造システムにおいて、本発明の第3および第4の態様の豆乳および豆乳パックの製造方法によって製造することができる。図1に本発明の第3、第4および第5の態様の豆乳、豆乳パックおよび豆腐の製造方法を適用する豆腐製造システムの概略説明図を示す。まず、本発明の豆腐製造システムにおいては、本発明第3の態様の豆乳の製造方法を行う。この豆乳の製造方法では、始めに、原料となる大豆を所定時間水に浸して、大豆を膨潤させる。次に、得られた膨潤大豆を摩砕する。ここで、膨潤大豆を摩砕する方法および手段は特に制限的ではなく、従来公知の摩砕方法および手段を用いればよい。ここでは、水に浸した大豆を摩砕しているが、本発明はこれに限定されず、乾燥したまま摩砕した大豆を水に浸して膨潤させてもよい。
【0023】こうして得られた摩砕大豆を好ましくは、実質的に酸素を含有しない脱酸素処理水の過熱蒸気によって所定時間煮沸して大豆蛋白をうま味や風味を失わしめることなく抽出し、抽出された大豆蛋白を含有する高品質の呉(煮呉)を得る。ちなみに、普通の水は8〜10ppmの酸素を含有するため、極力酸素を除去した水で蒸気をつくるのがよい。ここで、このような高品質の呉は、図2〜図8に示す新規な呉製造用煮釜によって始めて連続的に製造することができる。なお、ここでは、呉製造用煮釜に注入する呉の原料として、膨潤摩砕大豆をそのまま用いているが、本発明はこれに限定されず、予め膨潤摩砕大豆を予備加熱しておいて呉製造用煮釜での大豆蛋白の抽出を促進して煮沸を容易にしてもよいし、乾燥したまま粉砕または摩砕した大豆と水とを混合して膨潤させることなく直ちに呉製造用煮釜に注入しても良い。
【0024】ここで、呉の原料を煮沸するのに用いられる脱酸素過熱蒸気の供給温度は、大豆蛋白を抽出できれば、特に制限はなく、通常110℃以上であれば良いが、大豆の風味を出したい場合には150〜190℃とするのがよく、大豆の風味を特に強くしたい場合には180〜190℃とするのがよい。しかし、あまり高温にすると抽出された大豆蛋白が変質することも考えられるので、通常の煮沸であれば、蒸気の温度は、110〜120℃とするのがよく、大豆の状態や好みに応じて適宜設定すればよい。また、脱酸素過熱蒸気の供給圧力は、大豆をムラなく煮沸できれば、特に制限はないが、効率的に行うためには、例えば5〜7kg/cm2 とするのがよい。こうして新規な呉製造用煮釜によってムラなく均一かつ充分に煮沸された高品質の呉を得ることができる。本発明の煮沸工程に用いられる新規な呉製造用煮釜に付いては後述する。
【0025】こうして新規な呉製造用煮釜を用いて得られた呉は、90〜99℃の高温で呉製造用煮釜から注出されるが、この高温の呉をそのまま冷却することなく、例えば、80〜95℃の温度範囲で、好ましくは脱酸素状態で、固型分であるおからを分離して、本発明の第1の態様の豆乳、すなわち溶存酸素が、5ppm以下である、好ましくは実質的に0ppmである(溶存酸素を含有しない)大豆蛋白を懸濁する豆乳を製造することができる。ここで、本発明で得られる高品質の呉から固形分であるおからを分離する分離工程に用いられる分離方法および手段は、特に制限的ではなく、従来公知の分離方法および手段やろ過方法および手段を用いることができるが、好ましくは、実質的に酸素を含有しない脱酸素環境下で行うのが好ましい。
【0026】こうして得られる豆乳は、高温殺菌処理などの熱処理をしなくても、溶存酸素が極めて少ない、または実質的に含まれていないので、細菌の繁殖がなく長期間の保存が可能であり、豆乳の味や風味などの劣化がなく、豆乳の新鮮さが失われない。さらに、こうして得られた豆乳の濃度は、濃縮処理などの熱処理をしなくても、従来より、高い濃度、例えば、従来の豆乳が10〜12%程度であるのに対し、13〜16%に達する。本発明の第3の態様の豆乳の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0027】次に、本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法について説明する。本態様の豆乳パックの製造方法においては、上述した本発明の第3の態様の豆乳の製造方法に従って、本発明の第1の態様の豆乳が製造される。従って、豆乳が製造される工程については、その説明を省略する。本発明の第3の態様の豆乳の製造方法に従って製造された豆乳を高温殺菌処理や濃縮処理などの熱処理および冷却処理をすることなく、80〜95℃の温度のままパック容器に、好ましくは混入酸素が、好ましくは実質的に酸素を含まない脱酸素環境下で封入する。こうして、本発明の第2の態様の豆乳パックを製造することができる。なお、こうして得られた豆乳パックは、仮に酸素含有環境下で豆乳を容器に封入され、細菌などが混入したた場合であっても、封入直後のパック容器の内部の豆乳の温度は80〜95℃の高温であるので、高温殺菌されてしまうし、例え完全に殺菌されなくて残ったとしても、豆乳パック内の溶存酸素および封入時の混入酸素の含有量は極めて少ない、もしくは実質的に0であるので、細菌が繁殖できない。従って、本発明の第2の態様の豆乳パックは、長期間の保存が可能である。
【0028】なお、本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法においては、パック容器に豆乳を封入後、直ちに、冷却、好ましくは急冷して、1℃〜10℃以下、より好ましくは1〜5℃、さらに好ましくは2〜5℃の温度にして、保存するのがよい。こうすることにより、本発明の豆乳パック内の豆乳中に、仮に高温封入によっても殺菌されなかった細菌があったとしても、低温保存されている間に低温殺菌されるし、低温殺菌されなくて残ったとしても、溶存酸素および混入酸素が少ないまたは実質的に存在しないことから、繁殖も活動もできない。従って、本発明の豆乳パックは、長期間の保存が可能である。こうして、長期間の保存が可能で、家庭や飲食店や豆腐製造の専門業者などの用途に応じた分配、運搬が可能で、保存も容易な豆乳パックを製造することができる。本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0029】次に、本発明の第5の態様の豆腐の製造方法について説明する。本態様の豆腐の製造方法においては、上述した本発明の第3の態様の豆乳の製造方法に従って、本発明の第1の態様の豆乳が製造され、上述した本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法に従って、本発明の第2の態様の豆乳パックが製造される。従って、豆乳が製造される工程および豆乳パックが製造される工程については、その説明を省略する。本発明の第3の態様の豆乳の製造方法に従って製造され、必要に応じて低温保存された本発明の第1の態様の豆乳を直接、溶液加熱豆腐製造装置の豆腐製造用絶縁性容器に入れ、もしくは本発明の第4の態様の豆乳パックの製造方法に従って製造されて、分配され、必要に応じて低温保存された本発明の第2の態様の豆乳パックを開封して、内部の豆乳を豆腐製造用絶縁性容器に入れる。続いて、この豆腐製造用絶縁性容器内の豆乳に適量の凝固剤、好ましくは塩化カルシウムまたはこれを主成分とするニガリ(苦汁)を適量添加して充分に混合する。充分両者を混合した後、この豆腐製造用絶縁性容器の両側において凝固剤と豆乳との混合液に溶液加熱豆腐製造装置の非腐食性電極を設置する。次いで、これらの非腐食性電極間に両者の混合液に電気分解を生じさせない条件下で溶液加熱豆腐製造装置の電源から位相波電流を印加して、混合液を加熱して大豆蛋白を凝固させて豆腐を製造することができる。この豆乳を凝固させるため工程に用いられる豆腐製造用絶縁性容器、非腐食性電極および電源を持つ溶液加熱豆腐製造装置については、後述する。
【0030】本態様においては、豆腐製造用絶縁性容器には、冷却した低温の豆乳を入れるのが好ましい。その理由は、本発明の豆乳は、ムラのない高品質の豆乳であるため、温度が高いと、凝固剤との凝集、凝固反応が早いため、容器内の全豆乳にニガリを均一に混合できないからである。本発明の豆乳とニガリの混合量は、特に制限的ではなく、従来通りの混合量とすることができる。例えば、豆乳濃度12〜15%では、塩化マグネシウムの量として約3〜4%のニガリを混合するのがよい。また、加熱温度および時間は、豆乳の初期温度が約10℃とすると、加熱必要温度が、75〜90℃であるので、約15分程度で豆乳を凝固させ、豆腐を製造することができる。
【0031】こうして、本発明の第5の態様の豆腐の製造方法においては、本発明の高品質な豆乳および豆乳パックを用いることにより、豆腐製造の専門業者に限らず、一般家庭でも飲食店でも素人が容易かつ短時間で、新鮮で美味しく味や風味や食感の良い、巣がなく、まろやかで保水性のよい高品質の豆腐を簡単に作ることができ、熱々の作りたての豆腐を食卓に提供することができる。こうして得られた豆腐は、たとえ素人が作ったものであっても、溶存酸素が極めて少ないまたは実質的にないので、巣ができることがない。ここでは、この豆乳を凝固させるため工程に、豆腐製造用絶縁性容器、非腐食性電極および電源を持つ溶液加熱豆腐製造装置を用いているが、本発明はこれに限定されず、従来の如く外部から加熱する方式でなく、直接容器内の豆乳と凝固剤との混合液を加熱するものであれば、どのような加熱方式でもよく、例えば、電磁加熱方式や高周波加熱方式なども適用可能である。本発明の第5の態様の豆腐の製造方法は、基本的に以上のように構成される。
【0032】次に、本発明の第3、第4および第5の豆乳、豆乳パックおよび豆腐の製造方法の煮沸工程に用いられる新規な呉製造用煮釜について以下に説明する。図2は、本発明の煮沸工程に適用される呉製造用煮釜の一実施形態の線図的正面図である。ここでは、鉛直設置された呉製造用煮釜を代表例として説明するが、これに限定されるわけではない。
【0033】図2に示す呉製造用煮釜10は、鉛直設置された円筒形の煮沸釜本体12と、この煮沸釜本体12内の下部中央に直立して取り付けられた蒸気噴射管14(または15)と、冷却手段として煮沸釜本体12の上部外周に取り付けられた環状の水冷ジャケット16と、蒸気噴射管14(または15)と水冷ジャケット16との間において煮沸釜本体12内に設けられるオリフィス板18と、煮沸釜本体12の外部に設けられ、蒸気噴射管14(または15)に過熱蒸気を供給する蒸気発生手段20とを有する。ここで、図2に示す呉製造用煮釜10は、種々の蒸気噴射管が交換可能に取り付けられるようになっており、例えば後述する図4に示す構造の蒸気噴射管14および図8に示す構造の蒸気噴射管15もしくはこれらと異なる構造のその他の蒸気噴射管を取り替えて、それぞれ本炊きおよび追い炊きもしくはその他の煮沸などの種々の用途に用いることができる。なお、以下では、先ず、図4に示す蒸気噴射管14を適用した図3に示す煮釜10について説明する。
【0034】図3は、図2に示す呉製造用煮釜10の線図的縦断面図である。図2および図3において、煮沸釜本体12は、蒸気噴射管14から噴射される蒸気S(図5および図6参照)で呉の原料Gやその加熱物(以下、呉の原料で総称する)を煮沸するためのもので、円筒形のステンレス鋼管からなり、その両端が半球状をなして閉塞され、その半球状底部に呉の原料またはその加熱物が送り込まれる注入口22およびその半球状頂部に呉の注出口24が設けられている。煮沸釜本体12内は、蒸気噴射管14から噴射された蒸気が呉の原料Gを煮沸した後、上部の水冷ジャケット16で冷却されて、液化凝縮することにより減圧される。このように、煮沸釜本体12内の下部では蒸気噴射管14から円周方向に噴射される蒸気によって流動化され、上部が冷却凝縮によって減圧されることにより、連続的に注入された呉の原料が下部の注入口22から上部の注出口24まで煮沸されながら流動し、円滑にらせん状に上昇する。こうして充分かつ均一に煮沸された呉を注出口24から連続的にかつ円滑に注出することができる。
【0035】蒸気噴射管14は、煮沸釜本体12内の注入口22から注入された呉の原料Gを煮沸するとともに、煮沸釜本体12内を回転移動させる、すなわちらせん状に上昇させるための過熱蒸気を煮沸釜本体12内に噴出するためのもので、図示例では、煮沸釜本体12内にその下部側に中央まで直立して取り付けられたステンレス鋼管からなる。図4に示すように、蒸気噴射管14の上端は閉塞され、蒸気噴射管14の上下方向に延びた各同一直線上にそれぞれ複数の噴射口26および28が穿設されている。
【0036】図5に示すように、蒸気噴射管14の下部の噴射口26の図中左側近傍には噴射口26から噴射された蒸気Sが半径方向から図中右側に傾斜した方向、例えば、接線方向右側に向かうように蒸気噴流の方向を変えるための下部偏向板30が取り付けられている。ここで、下部偏向板30は、その左側部が噴射口28の図中左側近傍に、下部の噴射口26を近接した位置で斜めに、図示例では接線方向に覆うように取り付けられた構成となっている。一方、図6に示すように、蒸気噴射管14の上部の噴射口28の図中右側近傍には上部の噴射口28を近接した位置で斜めに、図示例では接線方向に覆うように上部偏向板32がその右側部で取り付けられた構成となっている。その結果、上部偏向板32は、噴射口28から噴射された蒸気Sが半径方向から図中左側に傾斜した方向、例えば、接線方向左側に向かうように蒸気噴流の方向を偏向する。
【0037】こうして、蒸気噴射管14に逆向きに傾けて取り付けられている下部偏向板30および上部偏向板32によって、蒸気噴射管14の上半分および下半分の各々における噴射口26および28からの蒸気の噴射方向を相反する円周方向とすることができる。その結果、図示例の煮釜10においては、蒸気噴射管14の噴射口28から噴射された蒸気Sを呉の原料Gと充分かつ均一に接触させることができ、蒸気熱を充分に伝達できるので、呉の原料Gは均一かつ充分に煮沸される。従って、煮沸釜本体12の上部に達した蒸気Sはすべて、その温度を充分に低下させ、一部または全部の蒸気Sは液化凝縮させることができるので、煮沸可能な充分な熱量を持った高温のままの残留蒸気として残存する蒸気Sをほとんどなくすことができる。また、図2、図3および図4に示すように、蒸気噴射管14の下端も閉塞され、この下端近傍には、蒸気噴射管14に垂直に蒸気供給管34が接続される。この蒸気供給管34は、煮沸釜本体12の下部の蒸気供給口36aを持つ取付部36に煮沸釜本体12を貫通して外部に延在するように固定される。煮沸釜本体12の外部に延在する蒸気供給管34は、過熱蒸気を発生するボイラなどの蒸気発生手段20に接続される。
【0038】水冷ジャケット16は、呉の原料を充分に煮沸して呉とする機能を果たして温度低下した蒸気Sを充分に液化凝縮させることにより、煮沸釜本体12上部の圧力を低下させ、好ましくは減圧雰囲気とするもので、煮沸釜本体12の上部の外周壁に取り付けられ、円環形を有し、その上下は閉塞されて内部は環状冷却室38となっており、環状冷却室38には冷水Wを充填でき、水冷ジャケット16の上下の側部には各々、冷却水排出口40と冷却水注入口42が設けられた構成となっている。このように水冷ジャケット16を設けることにより、煮沸釜本体12上部に達して温度低下した蒸気を充分に液化凝縮させることができ、たとえ煮沸可能な熱量を持った高温の残留蒸気が煮沸釜本体12上部に達しても充分に冷却でき、液化凝縮できるので、従来の煮釜のように、高温の残留蒸気がそのまま煮沸釜本体12の上部に溜まり、煮沸釜本体12上部の圧力を高め、呉の原料を煮沸釜本体12の注出口24に必要以上に押し出し、煮沸釜本体12内の呉の原料の送りを適切にコントロールできないという残留蒸気の悪影響を除去することができ、その結果、呉の原料にムラ炊きを生じることがない。
【0039】オリフィス板18は、煮沸釜本体12上部に達して温度低下した蒸気が注出口24に吹き抜けるのを防止し、蒸気を滞留させて水冷ジャケット16による冷却を充分に行い、温度低下した蒸気も残留蒸気も充分に液化凝縮させるとともに、呉を水冷ジャケット16によって冷却された煮沸釜本体12の上部内壁面と接触させて効率よく冷却するためのもので、煮沸釜本体12上部の水冷ジャケット16取付部分下端近傍に設けられ、周辺部に、図示例では4つのオリフィス(開口)18aが形成されている。こうして、温度低下した蒸気のみならず、仮に煮沸可能な熱量を持った高温のまま煮沸釜本体12上部に達した残留蒸気が残った場合であってもその残留蒸気と煮沸された呉とは共に、オリフィス板18によって堰止められ、所定時間オリフィス板18の下に滞留し、水冷ジャケット16によって充分に冷却される。その結果、残留蒸気があっても蒸気は、その大部分が、好ましくはすべてが液化凝縮される。一方、煮沸された呉は、その上昇をオリフィス板18によって止められ、オリフィス板18の周辺部のオリフィス18aを通過する。その結果、オリフィス18aを通過した呉は、強制的に煮沸釜本体12の上部の冷却内壁面と接触させられるので、効率よく冷却されるばかりか、呉の中にたとえ未液化蒸気が含まれていたとしても、その未液化蒸気は直ちに液化凝縮する。従って、煮沸釜本体12内の蒸気が注出口24から吹き抜けることはない。
【0040】蒸気発生手段20は、煮沸釜本体12内に設置される蒸気噴射管14に供給する過熱蒸気を発生するためのもので、特に制限はなく、従来公知のボイラなどを用いることができるが、好ましくは、蒸気噴射管14に供給する過熱蒸気を、好ましくは実質的に酸素を含有しない過熱蒸気(以下脱酸素過熱蒸気という)とするために、脱酸素手段44を有していることが好ましい。図示例において、蒸気発生手段20に脱酸素手段44を備えることにより、脱酸素過熱蒸気を蒸気噴射管14に供給して、その複数の噴射口26および28から煮沸釜本体12内に噴射することができる。このため、煮沸釜本体12内の呉の原料を脱酸素過熱蒸気で煮沸することができ、呉の原料を酸化させることなく煮沸することができる。従って、得られる呉の液体成分中に溶存する酸素を極限まで低減させることができる。その結果、こうして得られた呉から固型分(おから)を分離して得られる本発明の豆乳中の溶存酸素を極めて少なく、好ましくは実質的になくすことができ、豆乳を新鮮な状態で従来より極めて長期間保存することができる。
【0041】図示例において、蒸気発生手段20に備える脱酸素手段44は、好ましくは実質的に酸素を含有しないようにできれば、特に制限的ではないが、例えば、蒸気発生手段20の蒸気発生部に空気や酸素が混入しないようにするために減圧する手段のみならず、蒸気発生手段20の蒸気発生部に供給する水の中に溶存する酸素を除去するために事前に減圧したり、減圧加熱したりして脱酸素する手段であってもよいし、蒸気発生部に供給する水に脱酸素剤を添加して溶存酸素を除去するようにしてもよいし、この他従来公知の脱酸素手段を用いてもよいし、従来公知の脱酸素方法を行ってもよい。
【0042】図示例の煮釜は、基本的に以上のように構成されるが、以下に、図示例の煮釜の作用および本発明の豆乳の製造方法の煮沸工程ついて図2〜図7に示す呉製造用煮釜を参照して説明する。先ず、蒸気発生手段20から脱酸素過熱蒸気が蒸気噴射管14に供給されると、蒸気噴射管14の下部では蒸気噴射口26から半径方向に噴射された蒸気は、下部偏向板30により煮沸釜本体12内を左回りの円周方向に偏向され、噴射口26の後側に回り込むように作動する。一方、蒸気噴射管14の上部では蒸気噴射口28から半径方向に噴射された蒸気は、上部偏向板32により煮沸釜本体12内を右回りの円周方向に偏向され、噴射口28の後側に回り込むように作動する。
【0043】この時、煮沸釜本体12の下部の注入口22から呉の原料が供給ポンプ(図示せず)等で注入されると、蒸気噴射管14の複数の噴射口26および28から噴射され、下部偏向板30により図中右方に偏向される蒸気によって蒸気噴射管14の下部の周囲の呉の原料は左回りの円周方向に動かされ、上部偏向板32により図中左方に偏向される蒸気によって蒸気噴射管14の上部の周囲の呉の原料は右回りの円周方向に動かれる。噴射口26および28から新たな蒸気が噴射される部分には、先に噴射された蒸気と接触していない呉の原料部分が、次々と連続して移動してきて高熱エネルギおよび高運動エネルギを持つ新たな蒸気と接触する。こうして、蒸気は、煮沸釜本体12内をらせん状に上昇するので、まんべんなく呉の原料と接触しながら煮沸釜本体12内に長く留まる。同時に、蒸気噴射管14の上下の中間部の周囲では呉の原料は蒸気噴射管14の上部と下部で相反する円周方向に動く対流となる。
【0044】ここで、煮沸釜本体12内の蒸気噴射管14の下部で左回りに動いている呉の原料は、図示しない供給ポンプ等で押し上げられ、右回りに反転されながら複雑な乱流となるため、蒸気は呉の原料にさらによく接触する。これにより、蒸気熱は呉の原料に均一かつ充分に伝達され、蒸気は呉の原料にその蒸気熱を奪われ気体より液化凝縮してその容積を減少させ、煮沸釜本体12内の圧力を下げる。その結果、呉の原料は、煮沸釜本体12内の圧力により必要以上に注出口24より押し出されることがなく、呉の原料はムラ炊きがないように加熱される。
【0045】続いて、煮沸釜本体12の上部では、オリフィス板18によって煮沸された呉および残留蒸気(温度低下した蒸気に高温のままの蒸気も含まれていてもよい)は、その上昇を妨げられ、一時滞留し、残留蒸気の液化凝縮が促進される。一方オリフィス板18によって滞留する残留蒸気は、水冷ジャケット16の環状冷却室38内を流れる冷水により強制冷却され、気体より液化凝縮してその容積を減少し、煮沸釜本体12内の上部の圧力を下げる。一方、オリフィス板18の周辺部のオリフィス18a通過する呉は、水冷ジャケット16の環状冷却室38によって冷却されている煮沸釜本体12内壁面と強制的に接触するので、効率よく冷却される。こうして、呉は、煮沸釜本体12内の残留蒸気の圧力により必要以上に注出口24から押し出されることがない。
【0046】こうして得られた呉は、脱酸素過熱蒸気によって均一かつ充分に煮沸されているので、ムラ炊きがなく、酸化がなく、溶存酸素が極めて少ないまたは実質的にない、従来に比べて極めて高品質の呉である。このような高品質の呉からおからを分離することにより、従来に比べて高濃度であり、溶存酸素が極めて少なくまたは実質的になく、極めて鮮度のよい本発明の豆乳を得ることができる。こうして得られた豆乳は、溶存酸素が実質的にないので、細菌の繁殖を極力抑制できて鮮度を維持できる期間が従来より極めて長く、従って、従来より長期間に渡って味や風味の劣化を防止でき、従来より長期間の保存が可能である。
【0047】図4に示す蒸気噴射管14は、下部および上部の各蒸気噴射口26および28から噴射された蒸気の流動方向をそれぞれ互いに逆円周方向に偏向する2枚の偏向板30および32が取り付けられたであるものであるが、本発明ではこれに限定されず、蒸気噴射管から噴射される蒸気の流動方向およびそのための手段は、どのようなものであってもよい。
【0048】例えば、複数の蒸気噴射口からの噴射蒸気の流動方向を1枚の偏向板によって同一円周方向に偏向してもよいし、3つ以上の偏向板を用いてそれぞれ逆円周方向に偏向してもよい。また、1枚の偏向板および2枚以上のそれぞれの偏向板に対応する複数の蒸気噴射口を設ける位置も、各偏向板に対して同一直線上である場合に限定されず、全ての偏向板に対して同一直線上であってもよいし、各偏向板毎にもしくは1個1個の噴射口毎に、蒸気噴射管の円周方向に所定角度ずつ、例えば、90°または180°ずつずらしてもよいし、設置間隔も均等であっても、全くランダムであってもよい。もちろん、噴射蒸気の流動方向の同一、非同一に係わらず1個の噴射口に対して1枚の偏向板を設けてもよいし、同一の流動方向となる複数の噴射口に対して1枚の偏向板を設けてもよい。また、ここで用いられる偏向板は、図示例の平板に限定されず、その一部または全部が、煮釜本体12の円周方向に湾曲していてもよい。さらに、偏向板による蒸気の流動方向も完全に円周方向に限定されず、上方または下方に傾斜していてもよい。また、蒸気噴射管の全ての噴射口に偏向板を設けるのが好ましいが、偏向板を設けない噴射口があってもよい。また、蒸気噴射管に穿孔する噴射口の向きは、半径方向に限定されず、傾斜していてもよい。さらに、1本の蒸気噴射管に設ける噴射口の数およびサイズも、特に制限的ではなく、煮釜の特性に合わせて適宜選択すればよい。
【0049】図2に示す煮釜10に用いられる、1枚の偏向板を有する蒸気噴射管15を図8に示す。この蒸気噴射管15は、上下方向に延びた同一直線上に複数の噴射口46を設けるとともに、噴射口46の図中左側近傍には噴射口46を近接した位置で斜めに、図示例では接線方向に覆うように取り付ける構成を有する。図8に示す実施形態では、偏向板48は、噴射口46から噴射された蒸気が半径方向から図中右側に傾斜した方向、例えば、接線方向右側に向かうように蒸気噴流の方向を偏向する。その結果、噴射口46から噴射された蒸気は、偏向板48によって半径方向から図中右側に傾斜した方向に偏向され、煮沸釜本体12内を左回りの円周方向に流動する。
【0050】図8に示す蒸気噴射管15を図4に示す蒸気噴射管14の替わりに取り付けた場合、煮沸釜本体12の下部の注入口22より呉の原料が供給ポンプ等で注入されると、偏向板48によって偏向されて噴射される蒸気は、蒸気噴射管15の上下において周囲の呉の原料を左回りの円周方向に動かし、上述したように、呉の原料とともに煮沸釜本体12内を螺旋状に上昇する。このため、蒸気は、上述したように、呉の原料にまんべんなく接触し、より長い時間煮沸釜本体12内に留まり、蒸気熱は呉の原料に均一かつ充分に伝達され、熱エネルギを失い、気体より液化凝縮してその容積を減少させ、煮沸釜本体12内の圧力を下げる。その結果、上述したように、呉の原料が煮沸釜本体12内の圧力により必要以上に煮沸釜本体12の注出口24より押し出されることが抑制されるので、呉の原料はムラ炊きのないように加熱される。このような蒸気噴射管15は、蒸気と呉の原料との混合や蒸気による呉の原料の流動および攪拌が乱流によって強力に行われる図4に示す蒸気噴射管14に比べて、一つの円周方向に穏やかに行われる。このため、図4に示す蒸気噴射管14を備えた煮釜10は、本炊き用として用いるのが好ましく、図8に示す蒸気噴射管15を備えた煮釜10は、追い炊き用として用いるのが好ましいが、本発明ではこれには限定されず、蒸気噴射管14を追い炊き用としてもよいし、蒸気噴射管15を本炊き用としてもよい。
【0051】図示例の呉製造用煮釜10においては、蒸気噴射管14、15の噴射口26、28、46から噴射される蒸気の噴射方向を煮釜本体12内の円周方向に傾ける手段として、噴射口に近接した位置で傾けて取り付けた偏向板30、32、46を用いているが、本発明ではこれに限定されず、蒸気の噴射方向を煮釜本体12内の円周方向にすることができればどのような手段を用いてもよい。例えば、蒸気の噴射方向を煮釜本体12内の円周方向にするために、キャップを噴射口に被せるようにしてもよいし、噴射口にノズルを取り付けてもよいし、また、蒸気噴射管に厚みのある部材を用い、蒸気噴射管自体に斜めに穿孔したものなどを用いてもよい。なお、上述したように、蒸気噴射管14、15の噴射口26、28、46から噴射される蒸気の噴射方向は、煮沸釜本体12内の円周方向であるが、その向きは制限的ではなく、右回りまたは左回りのどちらか一方でもよいが、1個の噴射口毎または数個の噴射口毎にその向きを右回りから左回りまたはその逆に偏向するようにしてもよいし、全く規則性を持たせずにランダムに設定してもよい。
【0052】図示例の呉製造用煮釜10においては、蒸気噴射管として、1本の蒸気噴射管14または15を用いているが、本発明はこれに限定されず、2本以上の蒸気噴射管を用いてもよい。また、本発明に用いられる蒸気噴射管の形状は、図示例の円筒状管が好ましいが、これに限定されず、楕円筒管、角筒管、異形状筒管などを用いてもよく、また、そのサイズも特に限定的ではない。図示例の呉製造用煮釜10においては、冷却手段として、煮沸釜本体12の上部水冷ジャケット16を設けているが、本発明はこれに限定されず、冷却手段自体を設けなくても良いし、冷却手段を設ける場合にも従来公知の冷却手段を用いてもよく、例えば、煮沸釜本体12の上部にらせん状にパイプを巻きつけ、このパイプに井戸水などの冷水をポンプなどで供給するようにしてもよい。また、冷却手段に用いる冷却媒体も、冷水に限定されず、従来公知のどのような冷媒を用いてもよい。
【0053】図示例の呉製造用煮釜10においては、蒸気および煮呉を一時的に滞留させるオリフィス板として、周辺部にオリフィス18aを有する1枚のオリフィス板18を取り付けているが、本発明はこれに限定されず、オリフィス板を全く用いなくてもよいし、2枚以上のオリフィス板を用いてもよいし、また、各オリフィス板のオリフィスの設置位置、数、サイズ、形状も特に限定的ではなく、煮釜の能力や特性に応じて適宜設定すればよい。図示例の呉製造用煮釜10においては、蒸気発生手段20として、脱酸素手段44を備えた蒸気発生手段20を用いているが、本発明はこれに限定されず、長期間の保存を必要としない豆乳を製造するための呉を製造する場合には、脱酸素手段44を必ずしも備えていなくてもよく、脱酸素手段44を備えていない従来公知のボイラなどの蒸気発生手段20を用いてもよい。もちろん、長期間新鮮な状態で保存可能な本発明の豆乳を製造する場合には、蒸気発生手段20は脱酸素手段44を備える必要がある。図示例の呉製造用煮釜10は、通常では同様の4つ以上の呉製造用煮釜10を直列に接続して用いられるが、本発明の煮釜を他の異なる構造の煮釜と組み合わせて用いてもよい。以上説明した煮釜を用い、減圧により脱酸素した水の過熱蒸気(120℃、5kg)で呉を煮沸して得た煮呉を濾過した豆乳の溶存酸素を厚生大臣指定検査機関(厚生省生衛第923号)(住所:福岡県大野城市白木原3丁目5番11号)財団法人 日本環境衛生センターに依頼して測定した。その結果、豆乳中の溶存酸素は平均して1.4ppmであった。これをポリエチレン製の袋に通常の環境下で封入した処、3週間経っても変化はなかった。これで造った豆腐は温めても巣ができず、なめらかであった。
【0054】次に、本発明の第5の態様の豆腐の製造方法の豆乳の凝固工程に用いられる溶液加熱豆腐製造装置について以下に説明する。図9は、本発明の豆乳の凝固工程に適用される溶液加熱豆腐製造装置の一実施形態の線図的断面図である。本発明は、これに限定されるわけではない。同図に示す溶液加熱豆腐製造装置50は、豆腐を製造するために、豆乳を凝固させる工程に用いられるもので、豆乳と凝固剤との混合液Mのための豆腐製造用絶縁性容器52と、この豆腐製造用絶縁性容器52内の豆乳と凝固剤との混合液Mに電流を流すための2枚の非腐食性電極54と、これらの2枚の非腐食性電極54に位相波電流を印加するための電源56とを有する。豆腐製造用絶縁性容器52は、豆乳を入れ、ニガリなどの凝固剤を混合し、豆乳と凝固剤との混合液Mを凝固させて豆腐を製造するための合成樹脂製の絶縁性容器である。ここで、容器52の材質は、75〜90℃の温度に耐性を持ち、絶縁性であれば、どのような材質でもよいが、例えば、ジュラコンなどの絶縁性を有する合成樹脂などを挙げることができる。また、図示例の容器52は、矩形断面を有するものであるが、本発明はこれに限定されず、どのような形状であってもよい。
【0055】非腐食性電極54は、豆腐製造用絶縁性容器52内の豆乳と凝固剤との混合液M中に沈め、混合液Mに電流を流して、混合溶液M自体を自己発熱させるためのもので、豆腐製造用絶縁性容器52の両側の内壁面に沿って配置される板状電極である。ここで、電極54に通電する際に、電気による電極板の腐食が生じると製造された豆腐に電極板の腐食による汚れ、例えば、黒い斑点ができてしまう。このため、板状電極54は、豆乳と凝固剤との混合液M中に沈めて通電しても腐食を生じない材料で構成する必要があるが、この条件さえ、満足すれば、どのような材質の電極でもよい。例えば、用いられる電極材料としては、チタン鋼材、チタン材などを挙げることができる。電源56は、2枚の非腐食性電極54に位相波電流を印加するための位相波電流電源である。ここで、板状電極54に印加された位相波電流による豆乳の電気分解が生じると大豆蛋白が凝集しなくなってしまい、凝固せず、豆腐を製造できなくなってしまうので、電気分解が生じない条件で位相波電流を印加する必要がある。なお、この条件は、例えば、板状電極54に当たる豆乳の単位面積当たりの電流量を制限することによっても設定することができ、1例としては、50mA/cm2 以下とするのがよい。このように電流の上限を設定する場合には、加熱による電気抵抗変化による過大な電流を防止するため、電流を上限電流以下に保持するため、位相波電力器に定電流装置を使用するのが好ましい。
【0056】本発明の第5態様の豆腐の製造方法においては、豆乳の凝固工程に溶液加熱豆腐製造装置50を用いているので、本発明の第1の態様の豆乳や、本発明の第2の態様の豆乳パックに封入された豆乳のように高品質の豆乳を原料とすることにより、一切の高度な専門的な技術を要せず、すなわち、豆腐製造に熟練技術を持たない一般家庭であっても、飲食店であっても、巣がなく、保水性に富み、味や香りや風味のある高品位の豆腐を短時間で製造することができる。ここで用いる溶液加熱豆腐製造装置50は、無振動で均一な温度上昇を実現できるので、豆乳中の大豆蛋白の結束を密にし、巣がなく、弾力のある豆腐を製造することができる。本発明に用いられる凝固剤も、特に制限的ではなく、例えば塩化カルシウム、塩化カルシウムを主成分とするニガリ(苦汁)、硫酸カルシウム等を挙げることができるが、豆腐に大豆の風味や甘みを引き出すことができる塩化カルシウムまたはこれを主成分とするニガリが好ましい。本発明の第5の態様の豆腐の製造方法の豆乳の凝固工程に用いられる溶液加熱豆腐製造装置は、基本的に以上のように構成される。
【0057】本発明に係る豆乳、豆乳パックおよびその製造方法ならびにこれらを用いる豆腐の製造方法について、種々の実施例を挙げ、詳細に説明したが、本発明は以上の実施例に限定されるわけではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の改良や設計の変更があっても良いことはもちろんである。
【0058】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明の第1の態様によれば、新規な煮釜を用いて得られたムラ炊きのない高品質の呉から固形分を分離して得られ、高温殺菌することなく、溶存または混入酸素を実質的に含有せず、豆乳本来の甘味のある味や香りや風味や新鮮さを維持したまま細菌の繁殖なく保存が可能で、保存によっても劣化が少なく、高品質の豆腐の原料としてだけでなく、そのまま飲料として飲用可能な高品質の豆乳を提供できるという効果を奏する。また、本発明の第2の態様によれば、このような高品質の豆乳を封入した長期保存が可能で、取り扱いが容易で、一般家庭にも飲食店にも豆腐製造の専門業者にも供給可能な豆乳パックを提供できるという効果を奏する。
【0059】また、本発明の第3および第4の態様によれば、このような高品質の豆乳およびこのような高品質の豆乳を封入した豆乳パックを安定して確実に製造できるという効果を奏する。また、本発明の第5の態様によれば、このような高品質な豆乳および豆乳パックを用いて、豆腐製造の専門業者に限らず、一般家庭でも飲食店でも素人が容易かつ短時間で、新鮮で美味しく味や風味や食感の良い、巣がなく、まろやかで保水性のよい高品質の豆腐を簡単に作ることができ、熱々の作りたての豆腐を食卓に提供することができるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】594016344
【氏名又は名称】有限会社ヤヒメ商事
【識別番号】599157387
【氏名又は名称】有限会社逆瀬川本舗
【識別番号】598177256
【氏名又は名称】有限会社田中珍味
【出願日】 平成10年12月24日(1998.12.24)
【代理人】 【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔 (外1名)
【公開番号】 特開2000−189094(P2000−189094A)
【公開日】 平成12年7月11日(2000.7.11)
【出願番号】 特願平10−367185