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【発明の名称】 嚥下困難者用粉末栄養組成物
【発明者】 【氏名】伊藤 美月

【氏名】岩村 貞明

【要約】 【課題】高齢者や嚥下障害をもった患者などの栄養補給に用いられ、かつ水の添加量を調節することで、種々の形態をもつ食品の調製が可能な優れた保形性と食感を有する上、高カロリーで栄養的にバランスのとれた嚥下困難者用粉末栄養組成物を提供する。

【解決手段】(A)タンパク質及び/又はその分解物5〜50重量%、(B)糖質20〜80重量%、(C)脂質5〜50重量%、(D)ゼラチン、ペクチン及びアルギン酸の中から選ばれる少なくとも1種からなるゲル化剤1〜10重量%、(E)ビタミン類0〜10重量%及び(F)ミネラル類0〜15重量%を含有する嚥下困難者用粉末栄養組成物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】(A)タンパク質及び/又はその分解物5〜50重量%、(B)糖質20〜80重量%、(C)脂質5〜50重量%、(D)ゲル化剤1〜10重量%、(E)ビタミン類0〜10重量%及び(F)ミネラル類0〜15重量%を含有する粉末栄養組成物であって、該(D)成分のゲル化剤として、ゼラチン、ペクチン及びアルギン酸の中から選ばれる少なくとも1種を用いたことを特徴とする嚥下困難者用粉末栄養組成物。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は嚥下困難者用粉末栄養組成物に関し、さらに詳しくは、高齢者や嚥下障害をもった患者などの栄養補給に用いられ、タンパク質やその分解物、糖質、脂質、ゲル化剤及び場合によりビタミン類やミネラル類を含有する嚥下困難者用粉末栄養組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、嚥下障害をもった患者などに対する栄養補給の方法としては、経管栄養組成物を用いる経腸的栄養補給法及び経静脈栄養組成物を用いる非経腸的栄養補給法が知られている。前者の経腸的栄養補給法で用いられる栄養組成物は、栄養成分のバランスがとれ、かつ高カロリーであるとともに、消化吸収が良好で、下痢や腹部膨張感を起こさないことが必要であることから、通常天然食品やその分解物などの種々の栄養剤を混合したものである。一方、高齢化社会の進展により、脳卒中の後遺症や痴呆症などで、嚥下障害をもった患者が増えている。また、重症心身障害者の場合にも嚥下障害に対する適切な対応が望まれている。このような患者は堅い食品を噛むことができず、また液状食品は、誤飲による肺炎などの呼吸器障害や窒息による事故を起こすことがある。それに伴い、体力は低下し、ますます嚥下機能の低下を来すという悪循環が起こる。近年、このような患者の生活を向上させようという動きが社会的にも高まり、経口摂取が可能で、確実に食べる楽しみを与え、摂取機能を向上させることのできる栄養組成物の開発が望まれている。また、このような患者に適当な食品として、タンパク質成分、食用油脂及び野菜や果実を主要成分に用いて、栄養価が高く栄養バランスのとれた固形食品(特公平4−34388号公報)が知られている。しかしながら、これは形態がすでに固化(クッキー状化)しているため、保存や流通に制限があったり、患者にあった固さにコントロールすることができないなどの問題があり、実用的ではなかった。また、水を加えた場合、ペースト状になる易嚥下性の粉末栄養組成物が提案されているが(特開平10−182478号公報)、さらにバラエテーに富んだ食感のものが望まれている。そこで、簡単に調製でき、適当な保形性を有する高カロリーで栄養的にバランスのとれた様々な形態の栄養食を開発することが課題となってきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情のもとで、高齢者や嚥下障害をもった患者などの栄養補給に用いられ、かつ水の添加量を調節することで、容易にペースト状、ゼリー状、シャーベット状などの種々の形態をもつ食品の調製が可能な優れた保形性と食感を有する上、高カロリーで栄養的にバランスのとれた、嚥下困難者用粉末栄養組成物を提供することを目的としてなされたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の好ましい性質を有する粉末栄養組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、タンパク質やその分解物、糖質、脂質、特定のゲル化剤及び場合によりビタミン類やミネラル類を、それぞれ所定の割合で含有する粉末栄養組成物が、水を加えた場合、適当な保形性と軟らかさを有し、かつ該水の添加量を調節することにより、易嚥下性のペースト状、ゼリー状、シャーベット状となり、その目的に適合しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、(A)タンパク質及び/又はその分解物5〜50重量%、(B)糖質20〜80重量%、(C)脂質5〜50重量%、(D)ゲル化剤1〜10重量%、(E)ビタミン類0〜10重量%及び(F)ミネラル類0〜15重量%を含有する粉末栄養組成物であって、該(D)成分のゲル化剤として、ゼラチン、ペクチン及びアルギン酸の中から選ばれる少なくとも1種を用いたことを特徴とする嚥下困難者用粉末栄養組成物を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】本発明の嚥下困難者用粉末栄養組成物において、(A)成分として用いられるタンパク質やその分解物としては、例えば鶏卵タンパク質、乳タンパク質、大豆タンパク質、魚タンパク質、肉タンパク質などのタンパク質及びこれらの分解物、アミノ酸などが挙げられる。これらのタンパク質やその分解物は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このタンパク質やその分解物の配合量は、カロリーや栄養バランスなどの面から、粉末組成物の重量に基づき、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%の範囲である本発明の粉末栄養組成物において、(B)成分として用いられる糖質としては、例えばデキストリンや、ブドウ糖及び果糖などの単糖類、マルトース及び乳糖などの二糖類、グラニュー糖、オリゴ糖などが挙げられる。これらの糖質は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この糖質の配合量は、カロリーや栄養バランスなどの面から、粉末組成物の重量に基づき、20〜80重量%、好ましくは25〜65重量%の範囲である。本発明組成物において(C)成分として用いられる脂質としては、例えば大豆油、綿実油、サフラワー油、米油、コーン油、ナタネ油、パーム油、シソ油、エゴマ油、ヤシ油、魚油、ボラージ油、ラード、牛脂などの動植物性油脂、合成トリグリセリド類である中鎖脂肪酸トリグリセリド、その他の合成トリグリセリドなどが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この脂質の配合量は、カロリーや栄養バランスなどの面から、粉末組成物の重量に基づき、5〜50重量%、好ましくは5〜25重量%の範囲である。本発明の粉末栄養組成物においては、(D)成分としてゲル化剤が用いられる。このゲル化剤としては、ゼラチン、ペクチン及びアルギン酸が挙げられ、これらの中から1種選び用いてもよいし、2種以上を選び併用してもよい。これらのゲル化剤は、公知の方法で製造されたものを用いることができるが、製剤化された市販品を用いてもかまわない。このゲル化剤は、粉末栄養組成物の調製後の保形性に関与するため、その配合量は、食感の面から、粉末組成物の重量に基づき、1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%の範囲である。この量が1重量%未満では所望の保形性が得られないし、10重量%を超えるとゲル化し、固くなりすぎて食感が悪くなる。本発明の粉末栄養組成物においては、必要に応じ、(E)成分としてビタミン類を、また(F)成分としてミネラル類を配合することができる。上記(E)成分のビタミン類としては、従来栄養食品に慣用されているもの、例えばビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEなどが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0006】このビタミン類の配合量は、栄養バランスなどの面から、粉末組成物の重量に基づき、0〜10重量%、好ましくは0.05〜2重量%の範囲である。一方、(F)成分のミネラル類としては、従来栄養食品に慣用されているもの、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウムなどが挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。このミネラル類の配合量は、栄養バランスなどの面から、粉末組成物の重量に基づき、0〜15重量%、好ましくは0.5〜8重量%の範囲である。また、その他の成分として、セルロース、ガラクトマンナンなどの不溶性食物繊維、グアガム分解物、難消化性デキストリン、コーンファイバーなどの水溶性食物繊維などを配合することができる。この水溶性食物繊維は、1日の摂取量として20〜30gになるように配合することができる。これらの食物繊維の配合量は、粉末組成物の重量に基づき、通常1〜20重量%、好ましくは3〜7重量%の範囲である。本発明の粉末栄養組成物には、所望により、塩化ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、アスコルビン酸、果汁などの呈味物や、コーヒー粉末、抹茶粉末、ココア粉末などのフレーバー物質などを適宜添加することができる。さらに、安定剤として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、リン脂質やキラヤサポニンなどのサポニン類、アラビアガム、キサンタンガム、トラガントガム、グアガム、ローカストビーンガムなどのガム質などを単独あるいは2種以上組み合わせて含有させることができる。本発明の粉末栄養組成物は、前記配合材料を水に加えて乳化したのち、この乳化液を噴霧乾燥法などにより乾燥して、粉末状にすることにより調製することができる。この際、安定剤をあらかじめ脂質に溶解させておいて用いてもよいし、水に溶解させて用いてもよい。また、本発明の粉末栄養組成物は、あらかじめ粉末油脂をつくり、これとその他の粉末材料を粉体混合して調製するのが有利である。すなわち、脂質、安定剤とタンパク質及び糖質の一部とを用い、これらを水に加えて乳化処理したのち、噴霧乾燥などで乾燥して粉末油脂を得る。このようにして得られた粉末油脂と残りの粉末配合材料とを粉体混合することにより、本発明の粉末栄養組成物が得られる。本発明の粉末栄養組成物は、使用時に固形分濃度を変えることにより、保形状態を変化させることできる。通常、固形分濃度25〜60重量%、好ましくは25〜55重量%、より好ましくは30〜50重量%になるように、水や温湯を加えることでペースト状食品として使用することができる。また、固形分濃度が、通常15〜40重量%、好ましくは20〜35重量%になるように水を加え、冷蔵することでゼリー状食品、冷凍することでシャーベット状食品として使用することができる。本発明の粉末栄養組成物は、易嚥下性であって、特に高齢者や嚥下障害をもった患者などに対する医療用として好適である。
【0007】
【実施例】次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例1第1表の配合組成(I)の材料100重量部に対し、水150重量部を加え、70℃に昇温した。この際、レシチンはあらかじめ大豆油に溶解させたのち加えた。この混合液を75℃で15分間予備乳化したのち、1段目150kg/cm2、2段目50kg/cm2の2段均質化法で均質化処理を行い乳化液を得、次いでこの乳化液を噴霧乾燥機で乾燥し、粉末油脂を得た。次に、この粉末油脂26重量部に対し、第1表の配合組成(II)の粉末材料74重量部を粉体混合により配合して、粉末栄養組成物を調製した。なお、ビタミンミックスとミネラルミックスは第2表に示す割合で配合したものを用いた。このようにして得られた粉末栄養組成物50gに、水を60g加えて混合し、ペースト状の食品を調製した。
【0008】
【表1】

【0009】
【表2】

【0010】この栄養食は、良好な保形性を示した。また、室温で8時間及び5℃で1日間放置した場合でも良好な保形性を示し、これらの保存品は調製直後のものと栄養的及び品質的に差がなく、栄養食として用いることができた。また、得られた粉末組成物50gに水120gを加えて混合したものについて、5℃で1日間保存したゼリー状食品と、−15℃で2時間冷凍したシャーベット状食品について食感を評価したところ、いずれも異和感がなく良好に嚥下できた。
実施例2〜6、比較例1〜9第3表に示すゲル化剤を用いて実施例1と同様にして粉末油脂及び粉末組成物を得、実施例1と同様に評価した。第4表にそれらの嚥下性の評価を実施例1の評価と共に示した。なお、実施例及び比較例のゲル化剤の配合量による全配合量が100gになるようにするための調整は、デキストリンの量を調整することによって行った。ただし、比較例9はゲル化剤を配合しない場合の例である。
【0011】
【表3】

【0012】
【表4】

【0013】[注]
(1)形態L:液状P:ペースト状J:ゼリー状S:シャーベット状Z:固化あるいはもち状(2)嚥下性(食感)
○:異和感がなく、良好に嚥下できる。
△:口にざらつきが残る。
×:固くて食べにくいか、液状で誤飲の危険がある。
第4表の結果から本発明に係るゲル化剤を使用した実施例のものは、1〜10重量%の配合割合において、粉末栄養組成物の保形性及び軟らかさの安定性が著しく優れ、かつすべての形態で嚥下性が良好であることが明らかである。これに対し、比較例のものは、ゲル化剤が少ないと水分が多い場合冷しても液状となり、ペースト状やゼリー状にならず、逆に多いと冷してゼリー状やシャーベット状にしようとしても固化してしまう。また、他のゲル化剤でも固化してシャーベット状のものが得られない。
実施例7実施例1において、第1表の配合組成(II)の粉末材料に代わり、第5表の配合組成(III)の粉末材料を用いた以外は同一の方法で粉末栄養組成物を調製した。
【0014】
【表5】

【0015】この栄養食は、良好な保形性を示した。また、室温で8時間及び5℃で1日間放置した場合でも良好な保形性を示し、これらの保存品は調製直後のものと栄養的及び品質的に差がなく、栄養食として用いることができた。
実施例8第6表の配合組成(IV)の材料100重量部に対し、水350重量部を加え、70℃に昇温した。この際、モノグリセリドをあらかじめパーム油に溶解させたのち加えた。この混合液を75℃で15分間予備乳化したのち、1段目150kg/cm2、2段目50kg/cm2の2段均質化法で均質化処理を行い乳化液を得、次いでこの乳化液を噴霧乾燥機で乾燥し、粉末油脂を得た次に、この粉末油脂80.6重量部に対し、第6表の配合組成(V)の粉末材料19.4重量部を粉体混合により配合して、粉末栄養組成物を調製した。なお、ビタミンミックスとミネラルミックスは第2表に示す割合で配合したものを用いた。このようにして得られた粉末栄養組成物50gに、水を60g加えて混合し、ペースト状の食品を調製した。
【0016】
【表6】

【0017】この栄養食は、良好な保形性を示した。また、室温で8時間及び5℃で1日間放置した場合でも良好な保形性を示し、これらの保存品は調製直後のものと栄養的及び品質的に差がなく、栄養食として用いることができた。
【0018】
【発明の効果】本発明の粉末栄養組成物は、タンパク質やその分解物、糖質、脂質、及び場合によりビタミン類やミネラル類などを含有し、高カロリーで栄養的にバランスが良い上、特定のゲル化剤を配合することにより、水を加えるだけで容易にペースト状、ゼリー状、シャーベット状食品を調製することができる。この調製物は、優れた保形性を有し、高齢者や嚥下障害をもった患者などに対し、経口摂取する場合に、嚥下性が良好である。
【出願人】 【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日本油脂株式会社
【出願日】 平成10年10月30日(1998.10.30)
【代理人】 【識別番号】100075351
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 充
【公開番号】 特開2000−135070(P2000−135070A)
【公開日】 平成12年5月16日(2000.5.16)
【出願番号】 特願平10−311297