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【発明の名称】 新規な発酵調味料及びその製造方法
【発明者】 【氏名】辻村 恒

【氏名】林 貢

【氏名】伊藤 芳直

【氏名】今井 照夫

【要約】 【課題】酒類製造において発生する蒸留残液から製造される新規な発酵調味料及びその製造方法を提供する。

【解決手段】本製造方法は、穀類より作られる酒類のアルコール発酵液からアルコール分を回収した後のアルコール蒸留残液を、アルコール発酵の仕込水として再循環使用して繰り返しアルコール発酵を行い、アルコール蒸留残液を得、該アルコール蒸留残液より製造される。これにより得られた本発酵調味料は、固形分当たりの重量%として、主要成分であるアミノ酸及びペプチドを5〜60%、オリゴ糖類を3〜50%、有機酸類を10〜25%、多価アルコールを10〜50%含有する。本発酵調味料は、天然調味料の持つ複雑微妙な味質を有することから、様々な調理において利用することができると共に、蒸留残液を有効に再利用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 穀類より作られる酒類のアルコール発酵液からアルコール分を回収した後のアルコール蒸留残液より製造されることを特徴とする発酵調味料。
【請求項2】 上記アルコール蒸留残液が、焼酎、ウイスキー、スピリッツまたは原料アルコール製造の蒸留残液である請求項1記載の発酵調味料。
【請求項3】 固形分当たりの重量%として、主要成分であるアミノ酸及びペプチドを5〜60%、オリゴ糖類を3〜50%、有機酸類を10〜25%、多価アルコールを10〜50%含有する請求項1又は2のいずれかに記載の発酵調味料。
【請求項4】 穀類より作られる酒類のアルコール発酵液からアルコール分を回収した後のアルコール蒸留残液を、アルコール発酵の仕込水として再循環使用して繰り返しアルコール発酵を行い、アルコール蒸留残液を得、該アルコール蒸留残液より製造されることを特徴とする発酵調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な発酵調味料及びその製造方法に関し、更に詳しくは、本発明は、蒸留酒製造における蒸留残液から製造される新規な発酵調味料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ここに言う発酵調味料とは、味噌、醤油、魚醤、食酢、酒類(清酒、ワイン、味醂等)、調理用酒、味醂風調味料等に代表されるものであり、食品製造、調理の分野においてその食品・料理の味付け、味の調和、テクスチャーの保持改善、保存性の改善、不快臭の改善等その目的に応じて広く利用されている。そして、従来より化学的に合成された調味料が食品添加物として使用されているが、人工的に作り出した単一成分のみでは天然調味料の持つ複雑微妙な味質に欠けるという問題点がある。また、近年、毎日食べる食品における人工的な化学物質の影響に対する一般需要者の関心が高いことから、食品製造業、調埋分野においては長期的視野に立った健康志向に基づき、従来の化学合成物である食品添加物と同等の機能を持つ天然調味料が求められている。
【0003】一方、我国の蒸留酒製造業(焼酎、ウイスキー、スピリッツ、原料アルコール等)の現状における最大の問題点は、アルコール蒸留残液(以下、単に「蒸留残液」という。)の処理にある。この蒸留残液はその製造する酒類、製造方法にもよるが、製品lキロリットル当たり0.5〜3キロリットル、特に焼酎の製造においては製品1キロリットル当たり1〜2キロリットルも発生する。また、これらの蒸留残液には原料穀物などに由来する不溶性の固形物が含まれているので、その取り扱いが非常に困難であり、現状ではこれらの蒸留残液の大部分が畑地還元、海洋投棄されている実情にある。しかし、その処理には多大の経費を要し、しかも、海洋汚染を防止するために今後これら蒸留残液の海洋投棄は不可能となることから、蒸留残液の処理は蒸留酒製造事業の存続上重大な問題となっている。
【0004】そこで従来より、この蒸留残液の処理方法、有効利用について幾多の研究がなされている。例えば、これら蒸留残液を乾燥して固形化し、肥料又は飼料として利用したり、あるいはこれら蒸留残液の全体をメタン発酵菌等で処理しエネルギーの回収と廃水処理の完全化を図ろうとするものである。その他にも種々試みられているが、いずれもまだ実用化の段階には至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、酒類製造において副生する蒸留残液から製造される新規な発酵調味料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、蒸留酒製造コストの低下、迅速かつ安定な発酵及びアルコール蒸留残液の量の発生量削減のため、コーンスターチ工場でとうもろこしを軟化させるための浸漬工程より得られるコーン乳酸発酵抽出液(コーンスティープリカ)を、デンプンの酵素糖化液に添加・混合したものを主原料としてアルコール発酵を行い、蒸留酒を製造する方法を以前に開発して出願している(特願平9−322013号)。そして、その後さらに研究を進めた結果、この蒸留残液が酸剤としての機能、湿潤剤としての機能、食品の味の調和剤としての機能、食品等の不快臭の隠蔽剤としての機能、食品等の微生物による変質抑止剤としての機能を有することなどを見出した。そこで、穀類(米、麦、そば、とうもろこし等)を原料として、種々の方法により製造された焼酎の蒸留残液の有効利用について鋭意研究した結果、発酵調味料として有効利用できることを見出して本発明を完成するに至ったものである。焼酎の蒸留残液の一般性状としての分析例を表1に示す。尚、表1中、麦焼酎(1)とは、社団法人日本機械工業連合会調査研究資料によるものであり、麦焼酎(2)及び米焼酎とは、本発明者等が自己で分析したものである。また、とうもろこし焼酎とは、とうもろこしを原料として、特願平9−322013号に記載の方法により製造した焼酎の分析結果である。更に、表1中、「N.A.」は、社団法人日本機械工業連合会調査研究資料において、分析していないという意味である。
【0007】
【表1】

【0008】蒸留残液を発酵調味料として利用する場合の問題点としては、表1の分析結果からも明らかなごとく、蒸留残液には全固形分に対して10〜20%程度の不溶性固形分が不純物として含まれること及びペプチド、アミノ酸含量の多いことにある。この蒸留残液中の不溶性固形物は原料からの繊維類、不溶性蛋白質及びアルコール発酵中に増殖した酵母に由来するものである。一方、ペプチド及びアミノ酸含量の多いことはアミノ酸系発酵調味料としての利用価値は高いが、その独特の味質のため用途が限定されるという問題点がある。従って、発酵調味料として利用するためには、蒸留残液より不溶性固形物を除去し、ペプチド及びアミノ酸含量等を調整して適度な味質を有するようにする必要がある。
【0009】本第1発明の発酵調味料は、穀類より作られる酒類のアルコール発酵液からアルコール分を回収した後のアルコール蒸留残液より製造されることを特徴とする。上記「アルコール発酵液」の製造方法は、上記特願平9−322013号に記載された蒸留酒の製造方法の他、従来の製造方法によるものでもよい。尚、このアルコール発酵の条件は特に制限はなく、必要に応じて様々な酵母及び発酵条件で行うことができる。上記「アルコール蒸留残液」とは、酒類製造において製造されるアルコール発酵液からアルコール分を回収した蒸留残液であり、これは本第2発明のように、焼酎、ウイスキー、スピリッツ又は原料アルコール製造において生じる蒸留残液を用いることができる。また、このアルコール発酵液からアルコール分を回収して蒸留残液を得る方法については特に制限はなく、従来より行われている方法でよい。
【0010】また、麦、米等を原料とする焼酎の製造においては、一般的にアルコール発酵液をろ過してそのろ液を蒸留する方法(この方法により得られた蒸留残液を、以下「既ろ過蒸留残液」という。)と発酵液全部を蒸留する方法(この方法により得られた蒸留残液を、以下「未ろ過蒸留残液」という。)が採られている。本発明においてはそのいずれの蒸留残液も、本発明の発酵調味料として使用できるが、好ましくは未ろ過蒸留残液である。未ろ過蒸留残液には様々な浮遊物質が含まれているが、既ろ過蒸留残液においてはこのような浮遊物質は廃棄物として廃棄される。しかし、このような未ろ過蒸留残液を酵母細胞壁溶解酵素、プロテアーゼ、ペクナーゼを含むセルラーゼ等で同時又は段階的に処理することにより、これらの浮遊物質が分解される。その結果、分解により生じた各種オリゴ糖、酵母エキス等の有効成分が蒸留残液に溶出し、味質改善を図ることができると共に、このような浮遊物質を廃棄することなく有効に利用することができる。
【0011】このようにして得られた蒸留残液から製造される発酵調味料は、本第3発明のように、固形分当たりの重量%として、主要成分であるアミノ酸及びペプチドを5〜60%、オリゴ糖類を3〜50%、有機酸類を10〜25%、多価アルコールを10〜50%含有するのが好ましい。上記「アミノ酸及びペプチド」とは、穀類のアルコール発酵により生じるタンパク質の加水分解物である遊離アミノ酸及びアミノ酸の縮合物であり、香味成分、着色性成分として重要である。上記「オリゴ糖類」とは、穀類のアルコール発酵の過程でアルコール発酵されない糖類であり、ブドウ糖等の単糖類及び、2〜15個程度、ブドウ糖等の単糖類が縮合した糖類の総称で、発酵調味料の甘味成分として、その風味の調和に重要な役割を果たしている。上記「有機酸類」とは、穀類のアルコール発酵過程で生成する酸類であり、乳酸、クエン酸、酢酸、コハク酸等の総称である。上記「多価アルコール」とは、穀類のアルコール発酵で生成される、水酸基を2以上有する化合物で、主としてグリセリンが挙げられる。そして、固形分当たりの重量%として、上記有機酸類を10〜25%、上記多価アルコールを10〜50%含有する場合、酸剤、湿潤剤及び味の調和剤としての機能を有することから好ましい。
【0012】そして、上記蒸留残液をそのまま発酵調味料とすることもできるが、その他、既知の方法による濃縮、ろ過精製、更に必要に応じて二次濃縮、脱色ろ過等を経ることにより、発酵調味料製品とすることもできる。
【0013】本第4発明の発酵調味料の製造方法は、穀類より作られる酒類のアルコール発酵液からアルコール分を回収した後のアルコール蒸留残液を、アルコール発酵の仕込水として再循環使用して繰り返しアルコール発酵を行い、アルコール蒸留残液を得、該アルコール蒸留残液より製造されることを特徴とする。通常の方法により得られた蒸留残液の場合は、原料に由来する独特の味質により用途が限定される場合がある。これに対し本第4発明の製造方法によれば、蒸留残液の成分を一定の範囲でコントロールすることが可能になり、発酵調味料の味質を改変できる結果、用途が更に広がり、汎用性のある発酵調味料を製造することができる。
【0014】アルコール発酵の仕込水として再循環使用する上記「蒸留残液」は、上記の未ろ過蒸留残液又は既ろ過蒸留残液いずれも使用することができる。また、上記製造工程中、アルコール発酵、アルコール蒸留残液を得るためのアルコール回収の方法及び条件については特に制限はない。例えばアルコール発酵の場合、通常のアルコール発酵法によるものの他、特願平9−322013号に記載の方法によって行ってもよい。更に、上記アルコール蒸留残液の再循環使用の回数には特に制限はないが、あまり回数が多すぎると、製造される蒸留酒の品質にも影響し、また、発酵調味料そのものの成分バランスが崩れて風味に影響が現れるので、再循環使用の回数は2〜6回が好ましい。上記「アルコール蒸留残液より製造される」の意味は、前述のように、蒸留残液をそのまま発酵調味料とする場合の他、既知の方法による濃縮、ろ過精製、更に必要に応じて二次濃縮、脱色ろ過等を経ることにより、発酵調味料製品とすることを含む【0015】本第4発明にあたっては、上記蒸留残液を酵母細胞壁溶解酵素、プロテアーゼ、ペクナーゼを含むセルラーゼ等で同時又は段階的に処理し、その後この処理液を加熱し、酵素作用を失活させたものを仕込水として再循環使用することができる。これにより、発酵工程の効率化と蒸留残液の成分に変化を与えて味質を改善を図ることができる。よって、アルコール発酵工程の管理方法と、この蒸留残液の再循環法とを組み合わせることにより、成分及び味質が改善された新しいタイプの蒸留残液を得ることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の発酵調味料及びその製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。
(1)実施例1アルコール発酵を1回行って得られた蒸留残液と、その蒸留残液を仕込水として再度利用してアルコール発酵を行い、得られた蒸留残液との性質の違いを検討するため、以下の試験を行った。
■ 発酵原液の調製試験例1の発酵原液は、デンプン糖化液(濃度30%、TG96.4%、サンエイ糖化株式会社製)を2.6l、とうもろこし乳酸発酵液(濃度50%、サンエイ糖化株式会社製)を175g用い、これに水道水を2.3l添加して合計を5.0lとしたものである。試験例2の発酵原液は、上記デンプン糖化液を2.7l、上記とうもろこし乳酸発酵液を150g用い、これに、上記試験例1の発酵原液をアルコール発酵させた時に生じた蒸留残液を2.2l添加して合計を5.0lとしたものである。試験例3の発酵原液は、上記デンプン糖化液を2.7l、上記とうもろこし乳酸発酵液を150g用い、これに、上記試験例2の発酵原液をアルコール発酵させた時に生じた蒸留残液を2.2l添加して合計を5.0lとしたものである。上記配合で調製した原料を各々5lの三角フラスコに入れて、湯浴中で60℃、30分間加熱殺菌した後、水冷して、品温をほぼ26℃として、試験例1〜3の発酵原液とした。
【0017】■ アルコール発酵予め試験例1と同一組成の培地で培養した後、遠心分離して回収した生酵母(協会2号)を、上記試験例1〜3の発酵原液に添加して発酵を行った。発酵条件は、恒温器を用いて26±1℃の発酵温度で、初期の酵母数4〜5×107個/mlで、培養時間は試験例1の場合は48時間、試験例2及び3の場合は72時間である。
■ 酵母除去上記発酵が終了後、試験例1〜3の発酵原液の全量を、各試験例ごとに200ml遠心沈殿管を用いて遠心分離を行い、酵母を分離除去して上澄液を得た。遠心分離の条件は、9000G、20分間、15℃である。
■ 蒸留残液(調味原料)の調製酵母を除去した上記各上澄液の全量を、各試験例ごとに単式蒸留器(10l容、直火型、ステンレス(SUS304)、自家製)で蒸留し、アルコール含有区分とアルコール蒸留残液区分に分けて、アルコール蒸留残液を調製した。
【0018】試験例1〜3の製造実験の結果である数量収支と主要分析値を以下の表2に示す。そして、この試験例1〜3の蒸留残液(調味原料)の成分分析結果を以下の表3に、有機酸組成の分析結果を表4に、アミノ酸組成を表5に示す。尚、表3中、糖分は、固形分から粗タンパク、脂質、灰分、有機酸及びグリセリンの合計値を引いて求め、結合アミノ酸は、全アミノ酸から遊離アミノ酸の値を引いて求めた。また、表5中、全アミノ酸はTAAと略し、遊離アミノ酸はFAAと略した。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】
【表5】

【0023】(2)実施例2様々な原料を用いて得られた蒸留残液を仕込水として再度利用してアルコール発酵を行い、得られた蒸留残液との性質の違いを検討するため、以下の試験を行った。
■ 製造原料製造原料として、試験例4は麦焼酎蒸留残液を、試験例5は米焼酎蒸留残液を、試験例6はとうもろこし焼酎蒸留残液を使用した。試験例4は、大麦麹と大麦を使用して作った大麦100%の麦焼酎を製造した際に生じた蒸留残液を用いて再度アルコール発酵を行って得た蒸留残液と、この蒸留残液を用いてもう一度アルコール発酵を行って得た蒸留残液との1:1の混合物である。試験例5は米麹と米を使用して作った米100%の米焼酎を製造した際に生じた蒸留残液を用いて再度アルコール発酵を行って得た蒸留残液と、この蒸留残液を用いてもう一度アルコール発酵を行って得た蒸留残液との1:1の混合物である。試験例6は、特願平9−322013号に記載の製造方法により生じた蒸留残液である。即ち、原料として、コーン乳酸発酵抽出液(サンエイ糖化株式会社製、濃度50%)を3〜12重量部、酵素糖化液(コーンスターチに液化酵素〔大和化成製〕を添加し、液化終了後、糖化酵素〔ノボ・デキストロザイム〕を添加して糖化を行ったもので、Bx30)を100重量部及び添加水(繰り返し後は蒸留残液)を65〜75重量部を用いた。そして、この発酵液を60℃で20分間加温殺菌後、冷却し、焼酎酵母(協会2号)を5×107個/ml添加し、25〜28℃で48〜95時間アルコール発酵を行う。その後、発酵終了液を遠心分離して酵母を分離した後、ステンレス製(10l容)の直火型常圧蒸留器で蒸留し、蒸留残液を得る。そして、この蒸留残液を用いて再度アルコール発酵を行って得た蒸留残液と、この蒸留残液を用いてもう一度アルコール発酵を行って得た蒸留残液との1:1の混合物である。
■ 処理方法上記試験例4〜6の各原料300gを各々100mlの遠心分離容器に入れて遠心分離することにより、各々の原料液中の不溶性固形物を除去した。遠心分離条件は、試験例4及び5では12000G、40分間、15℃であり、試験例6では9000G、20分間、15℃である。そして、遠心分離操作を行った後上澄液を採取し、各々の上澄液を、500mlのロータリーエバポレーターを用いて90℃湯浴により加熱し、真空度720mmHgの条件で、仕上げ濃度をBx25.0となるように真空濃縮した。
【0024】試験例4〜6の製造実験の結果である数量収支と主要分析値を以下の表6に示す。そして、この試験例4〜6の蒸留残液の成分分析結果を以下の表7に、有機酸組成の分析結果を表8に、アミノ酸組成を表9に示す。尚、表7中、糖分は、固形分から、粗タンパク、脂質、灰分、有機酸及びグリセリンの合計値を引いて求めた。また、表7中の()は対固形分%を示す。更に、表8中、全アミノ酸はTAAと略し、遊離アミノ酸はFAAと略した。
【0025】
【表6】

【0026】
【表7】

【0027】
【表8】

【0028】
【表9】

【0029】(3)実施例3本発明の発酵調味料について、脱色のし易さを調べるため、以下の脱色試験を行った。
■ 脱色前液の調製試験例4〜6の製造原料である蒸留残液を、Bx5.0に調製した後(試験例5については、濃縮後Bx調製)、遠心分離を行い(分離条件:12000G、30分間、15℃)、その上澄液を更にTOYONo.5ろ紙でろ過して脱色試験用のサンプルである脱色前液とした。
■ 脱色試験100ml密栓付き三角フラスコに、上記方法により調製した試験例4〜6の脱色前液50gを入れ、次に活性炭(武田薬品工業株式会社製の脱色用活性炭)を、試験1として0.03g、試験2として0.13g添加した。次いで、上記脱色前液及び活性炭の入った三角フラスコを30分間、60℃の恒温湯浴中に浸して、脱色を行った。そして、上記脱色操作を終了した液はTOYONo.5ろ紙でろ過し、そのろ液(脱色液)及び脱色前液について、着色度を次の方法により測定した。
■ 着色度の測定方法と脱色率の計算各測定用サンプル10gを100mlに希釈し、その溶液について10mm石英ガラスセルを使用して、420nm及び720nmの吸光度を分光光度計(日立製作所製)で測定した。着色度及び脱色率(%)は次式により計算し、その結果を表10に示した。
着色度=420nmでの吸光度−720nmでの吸光度脱色率=(脱色前液着色度−脱色液着色度)×100/脱色前液着色度【0030】
【表10】

【0031】(4)実施例4下記の方法によりいわし団子を作り、5人のパネルを選定して、その除臭効果及び味について官能試験を行った。
■いわし団子の調製法下記の(A)基本配合材料及び(B)被検液の配合品を各々フードプロセッサーで充分混合した後、団子(約20g)にして沸騰水中にいれて約3分間ゆでた後、皿に取り出し、放冷後、官能試験に供した。尚、(B)の被検液は、いずれも濃度25%に調製したものを使用した。
(A)基本配合材料 いわし(市販品、頭及び内臓を除去したもの) 1500g 塩(市販品) 15g 卵(市販品、卵殻を除去したもの) 150g コーンスターチ(市販品) 300g 合計 1965g (B)被検液 試験例7:上記試験例4の麦焼酎蒸留残液 40g 試験例8:上記試験例5の米焼酎蒸留残液 40g 試験例9:上記試験例6のとうもろこし焼酎蒸留残液 40g 比較例1:市販品(イチビキ製「味みりん」)の味醂 40g■官能試験法官能試験用パネル5名(全員女性、パネル1〜5)を選定し、前記各いわし団子を食べさせ、順位法により得点化を行った。即ち、各試験例及び比較例について、臭い及び味の最も好ましいものを1点とし、順次2、3、4点と得点化した。その結果を集計し、クレイマー検定表による有意差検定を行った。また、各試験例及び比較例を10日間冷凍保存したものについて、自然解凍後煮沸し、同一パネルによる風味試験を行った。その結果を以下の表11に示す。
【0032】
【表11】

【0033】(5)実施例の効果表3の結果より、試験例1と試験例2(繰り返し数1回)及び試験例3(繰り返し数2回)とを比較すると、試験例2及び3では、蒸留残液中のアミノ酸の含有量が減少していることが分かる。特に遊離アミノ酸は著しく減少していることが分かる。このようなアミノ酸、特に遊離アミノ酸は、調味料成分として必須ではあるが、その含有量が多いと独特の臭い、苦味がするので、調味料としての汎用性の観点から好ましくない。よって、繰り返し利用してアルコール発酵を行った試験例2及び試験例3では、このようなアミノ酸の含有量を減少していることから、調味料としての味質を改善するという効果を奏していることが分かる。一方、表7より、同じように蒸留残液を仕込水として繰り返し利用してアルコール発酵を行った試験例4〜6を比較すると、特願平9−322013号に記載の方法により製造した試験例6では特に全アミノ酸含有量を抑えることができるので、発酵調味料としてより好適に使用することができる。
【0034】また、表3より、試験例1〜3を比較すると、試験例2及び3では蒸留残液中の固形分濃度が増加していくことが分かる。このような発酵調味料は製品化の際、濃度が25〜30%程度になるまで濃縮するのが通常であるが、固形分濃度が高ければ、濃縮工程を短くすることができるので、製品化のコストを低下させることができる。よって、繰り返し利用してアルコール発酵を行った試験例2及び3は、製品化する上で有利であることが分かる。一方、表7より、同じ繰り返しを行った試験例4〜6を比較すると、米焼酎蒸留残液(試験例5)と比べて、麦焼酎蒸留残液(試験例4)と特願平9−322013号の方法により製造した試験例6では固形分濃度が高いので、製品化が容易であることが分かる。
【0035】更に、表3より、試験例1〜3の有機酸とグリセリンの含有量を比較すると、繰り返し利用してアルコール発酵を行った試験例2及び3では、その含有量が増加していることが分かる。また、同じ繰り返し発酵を行った試験例4〜6を比較すると、試験例4及び5よりも、試験例6の方が有機酸とグリセリンの含有量が多いことが分かる。有機酸とグリセリンは、酸剤、湿潤剤及び味の調和剤としての機能を有し、本調味料中の微量発酵生成物と相乗的に食品の不快臭の隠蔽作用を奏することから、その濃度は適度に高いことが望ましい。以上の結果から、繰り返し発酵を行うと、上記効果を奏する上で重要な有機酸とグリセリンが増加するので、発酵調味料として好ましいこと、及び、特願平9−322013号に記載の方法により製造された蒸留残液は、有機酸とグリセリンの含有量が米焼酎、麦焼酎の蒸留残液よりも多いことから、発酵調味料としてより好適であることが分かる。
【0036】表4より、試験例1〜3を比較すると、繰り返してアルコール発酵を行った試験例2及び3では、有機酸成分の中でも特にうま味成分であるコハク酸が増加していることが分かる。よって、繰り返してアルコール発酵を行った蒸留残液は、貝等のうま味成分を含んだ発酵調味料として好適であることが分かる。一方、表8より、試験例4〜6を比較すると、うまみ成分であるコハク酸が試験例6で多く、酢酸の量は大きく減少していることが分かる。このような酢酸は、味としては少ない方が好ましく、多い場合は、製品化において蒸留残液を濃縮する際に飛んでしまい、その結果、凝縮水中に酢酸が出ていくことから、廃水処理費の負担が増えるので好ましくないのに対し、一方、試験例6ではこのようなことがあまりないので、特願平9−322013号により製造された蒸留残液は、発酵調味料として好適であることが分かる。
【0037】また、本試験例の蒸留残液を発酵調味料として使用する場合、その着色度合いが高い場合は、調味料としての用途が制限されるので、着色度合いが低いか、あるいは高くても容易に脱色される方が望ましい。この点につき表10より、米焼酎蒸留残液(試験例5)は、脱色前液の着色度合いが低いので、脱色工程を経なくても調味料として用いることが可能である。一方、麦焼酎蒸留残液(試験例4)は、脱色前液の着色度合いは高いが、脱色率は相当高いことから、活性炭により容易に脱色されて、調味料として用いることができる。更に、試験例6の場合、脱色前液の着色度は麦焼酎蒸留残液(試験例4)よりも低く、脱色率は試験2の場合、米焼酎蒸留残液(試験例5)を上回り、麦焼酎蒸留残液(試験例4)と同じくらいの値を示している。即ち、試験例6の蒸留残液は、そのままでも着色度合いが低く、脱色工程を経なくても調味料として用いることができ、脱色したい場合には活性炭で容易に脱色できることから、発酵調味料としてより好適であることが分かる。
【0038】本試験例4〜6の発酵調味料を実際に料理において使用した結果である表11によれば、とうもろこし焼酎蒸留残液(試験例9)については、最も良好な結果となり、魚臭が消えて良好な風味が得られた。また、麦焼酎蒸留残液(試験例7)及び米焼酎蒸留残液(試験例8)とも、現在広く利用されている味醂(比較例1)と有意差がなかったことから、従来の調味料と比較して遜色のない発酵調味料として利用可能であることが分かる。また、冷凍保存後の順位をみると、味醂(比較例1)の順位が落ちていることから、とうもろこし焼酎蒸留残液(試験例9)及び米焼酎蒸留残液(試験例8)は、冷凍保存しても長く効果を維持できる発酵調味料であることが分かる。
【0039】尚、本発明においては、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【0040】
【発明の効果】本第1発明〜第3発明の発酵調味料によれば、従来は廃棄されていた蒸留残液を利用していることから、安価に製造することができる。また、天然素材から製造した天然調味料の持つ複雑微妙な味質を有すると共に、アミノ酸、ペプチド特有の癖がなくなったことから、様々な調理において利用することができる。更に、本第4発明によれば、蒸留残液を再循環してアルコール発酵を行うことにより、本第1発明〜第3発明の発酵調味料の味質を、需要者の嗜好に合わせて改変することができる。そして、従来よりその取り扱いが非常に困難であった蒸留残液を発酵調味料として有効に再利用することができることから、海洋投棄により廃棄処理する必要がなくなり、その結果、投棄処理による海洋汚染を防止することができると共に、その処理に必要な経費を削減することができる。
【出願人】 【識別番号】595169403
【氏名又は名称】辻村 恒
【出願日】 平成10年10月30日(1998.10.30)
【代理人】 【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
【公開番号】 特開2000−135068(P2000−135068A)
【公開日】 平成12年5月16日(2000.5.16)
【出願番号】 特願平10−311484