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【発明の名称】 固形状食品のレトルト滅菌方法
【発明者】 【氏名】鈴木 敏一

【氏名】柴内 好人

【要約】 【課題】固形状食品のレトルト滅菌処理に際して、固形状食品を液体(調味液等)に浸漬しなくても、風味の劣化が抑制され、かつ処理時間の短縮を図ることができる固形状食品のレトルト滅菌方法の提供。

【解決手段】固形状食品のレトルト滅菌処理に際して、固形状食品が入れられている耐熱性容器内に、気体と共に加熱処理時に容器内が湿熱状態になるような少量の水を、中仕切り構造等の分離手段を介して固形状食品に接触しないように配置して加熱処理する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 耐熱性容器内で固形状食品を滅菌処理するレトルト滅菌方法において、固形状食品が入れられている耐熱性容器内に、気体と共に加熱処理時に該耐熱性容器内を湿熱状態とするための水を該固形状食品に接触しないように配置した状態で密封して加熱処理することを特徴とする固形状食品のレトルト滅菌方法。
【請求項2】 前記耐熱性容器が、添加する水と被滅菌処理物である固形状食品を分離する分離手段を有しており、かつ該耐熱性容器の内部全体が添加した水の蒸気によってレトルト滅菌処理時に湿熱状態になる請求項1に記載のレトルト滅菌方法。
【請求項3】 固形状のレトルト滅菌食品を製造するための包装用耐熱性容器であって、少なくとも固形状食品、気体及び水を内封した状態での加熱処理が可能な外装部を有し、該外装部内に、前記固形状食品と水とを分離する分離手段を配置したことを特徴とする耐熱性容器。
【請求項4】 前記分離手段が、中仕切り、スペーサーまたは隔壁である請求項3に記載の耐熱性容器。
【請求項5】 固形状のレトルト滅菌食品を包装してなるレトルト食品包装体において、請求項3又は4に記載の耐熱性容器と、該耐熱性容器内に密封された少なくとも固形状のレトルト滅菌食品と、気体と、凝縮水とからなり、請求項1または2に記載の方法でレトルト滅菌したことを特徴とするレトルト食品包装体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は固形状食品の含気式レトルト滅菌処理方法に関するものである。本発明の含気式レトルト滅菌処理方法によると、加熱処理時間を短縮させることができると共に、加熱処理の際に起こる固形状食品の品質劣化が抑制されるものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、液体状食品や固形状食品の滅菌処理に定圧式レトルト滅菌装置が用いられてきた。この定圧式レトルト滅菌装置によって、トレー等の容器に食品を充填し、空気を含んだままシール包装してレトルト滅菌処理をすると、容器内部の空気がレトルト滅菌処理中に膨張して、容器が破損したり、また変形する等の問題があって、空気を含んだ状態でレトルト滅菌処理することはできなかった。このため、一般的には、容器内を真空状態にしてレトルト滅菌処理することが行われている。しかし、真空状態でのレトルト滅菌処理を行う際の容器として合成樹脂製フイルム等により構成されたレトルトパウチを用いた場合には、形状を有する被処理物における破損や変形が避けられないといった問題がある。
【0003】このような定圧式レトルト滅菌装置の問題点を解決したレトルト滅菌装置として、近年、定差圧式レトルト滅菌装置が開発されている。この定差圧式レトルト滅菌装置によれば、容器内に気体を含んだ状態でレトルト滅菌処理しても容器の破損や変形がなくなり、また気体を含んだ状態を保持させることによって容器内の形状物の変形を防止したり、品質が維持されたレトルト滅菌製品の製造が可能となる。このようなことから、例えばプラスチックトレー等の容器に赤飯のような米飯類、あるいは焼き魚やひじきといった惣菜類を充填し、空気を含んだままシール包装してレトルト滅菌処理を行った製品が上市されるようになってきた。しかも、これらの製品は、電子レンジやオーブン等で加熱調理することによって簡単に利用できたり、トレー容器がそのまま食器として使用できるといった利便性の高い製品であるため、レトルト滅菌製品市場において、これら米飯類や惣菜類の消費は、増加傾向にある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の定圧式レトルト滅菌装置や定差圧式レトルト滅菌装置を用いた固形状食品の従来のレトルト滅菌方法は、液体(調味液等)に浸漬して加熱処理するのが一般的な処理方法である。しかし、上記のような米飯類、あるいは惣菜類中には、従来のレトルト滅菌製品とは異なり、製品の特性上、液体に浸漬して加熱処理ができず、固形状食品単独でレトルト滅菌処理しなければならない製品がある。このように液体に浸漬せずに固形状食品のみを空気を含む容器中でレトルト滅菌処理すると、熱伝達率が悪くなって処理時間が長くなり、生産性が低下するといった問題や焙焼風味が出て、本来の風味と異なるものになるといった問題、あるいは酸化や褐変による変色等の問題が発生する場合が多い。この酸化や褐変の問題に対して、空気を窒素ガス等の不活性ガスに置換することも行われているが、この方法ではある程度の酸化や褐変を抑制できたとしても、不十分なものである。
【0005】上記のように、容器内に空気を残存させてレトルト処理すると、熱伝達率が悪く、風味が低下する等の問題もあって、定差圧式レトルト滅菌装置を用いたレトルト滅菌方法においても、容器としてレトルトパウチを用い、真空状態で処理することも行われている。しかし、真空状態とすることにより、定圧レトルト滅菌装置を用いたレトルト滅菌方法と同じように、容器にピンホールが発生したり、容器内で固形状食品が変形したり、容器の表面にシワがよって外観が悪くなる等の問題が生じることが避けられない。
【0006】本発明の目的は、含気状態でレトルト滅菌処理することよって容器や固形状食品の形状を変形させることなく、かつ滅菌処理時間を短縮でき、更には固形状食品の酸化や褐変による風味の劣化等のない固形状食品のレトルト滅菌方法を提供することを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、定差圧式レトルト滅菌装置を用いた固形状食品のレトルト滅菌方法について検討した結果、容器内に気体とともに適量の水を固形状食品と共存させた状態で加熱処理して容器内を湿熱状態とすることで、熱伝導率を高めて滅菌及び調理効果を高め、しかも、固形状食品の破損や変形を防止できるという新たな知見を得るに至り、かかる知見に基づいて本発明を完成した。すなわち、本発明は、上記の課題を解決するために次のような固形状食品のレトルト滅菌に必要な技術を提供するものである。本発明の固形状食品のレトルト滅菌方法は、耐熱性容器内で固形状食品を滅菌処理するレトルト滅菌方法において、固形状食品が入れられている耐熱性容器内に、気体と共に加熱処理時に該耐熱性容器内を湿熱状態とするために必要な量の水を該固形状食品に接触しないように配置した状態で密封して加熱処理することを特徴とする。本発明の耐熱性容器は、固形状のレトルト滅菌食品を製造するための包装用耐熱性容器であって、少なくとも固形状食品、気体及び水を内封した状態での加熱処理が可能な外装部を有し、該外装部内に、前記固形状食品と水とを分離する分離手段を配置したことを特徴とする。更に、本発明のレトルト食品包装体は、固形状のレトルト滅菌食品を包装してなるレトルト食品包装体において、前記した耐熱性容器と、該耐熱性容器内に密封された少なくとも固形状のレトルト滅菌食品と、気体と、凝縮水とからなり、前記したレトルト滅菌方法で処理したことを特徴とする。本発明によれば、容器内を湿熱状態とするための水と、気体とが共存する状態で固形状食品を加熱処理するので、固形状食品への熱伝導率を高めて効果的な滅菌及び調理が行え、しかも、固形状食品の破損や変形、更には固形状食品の酸化や褐変等による風味の劣化などの問題の発生を効果的に防止することが可能となる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、定差圧式レトルト滅菌装置を用いた固形状食品のレトルト滅菌方法であって、レトルト滅菌処理の対象となる固形状食品としては、煮豆、豆腐、ひじき、シュウマイ等が挙げられる。これらの固形状食品のレトルト滅菌処理に際して、容器内に、固形状食品である被滅菌処理物を、レトルト滅菌処理時に内部が湿熱状態になるような適量の水と共に充填して密封後、レトルト滅菌処理するものである。また、このレトルト滅菌処理方法に用いられる耐熱性容器は、少なくとも固形状食品、気体及び水を内封し得る構造の外装部有し、その外装部内に、固形状食品と水とを分離するための分離手段を配置したものが好ましい。なお、容器内に内封する気体としては、加熱処理時に所定の湿熱状態と内圧が得られ、レトルト滅菌食品の製造目的に適合した気体であればどのようなものでも使用でき、取扱性、経済性等を考慮すれば空気を用いるのが好ましいが、酸化防止等の点からは窒素ガス等を用いることもできる。
【0009】尚、本発明でいうレトルト滅菌処理とは、一般的に定義されている121 ℃で4分間の加熱処理(F値4)を含むそれ以上の処理であって、芽胞形成細菌等の耐熱性細菌を含めすべて殺滅した無菌状態にする殺菌をいうが、本発明では耐熱性細菌等をすべて殺滅しないが食品衛生上安全な状態にする殺菌も含むものとする。またF値とは、食品をある温度で、ある時間加熱したときの微生物の死滅効果を、121 ℃で加熱した場合の時間に換算した値(単位は分)である。これらの微生物の加熱による死滅温度と時間、および致死率については、 [レトルト食品の基礎と応用(1995 年 6月10日 株式会社幸書房発行 73 〜78頁)]に詳細に記載されている。
【0010】本発明のレトルト滅菌処理において、固形状食品と、一緒に充填される水の量(以下、添加水という。)は、容器の容量や食品が本来含有している含水量、あるいは食品の特性に依存するが、例えば、内容量200mlの容器であれば、その内部がレトルト滅菌処理時に飽和蒸気圧になるのに必要な水は1g程度である。この添加水は、レトルト滅菌処理後に冷却すると凝縮するが、本発明が対象とする食品は元来含水量が高いので、この程度の水は問題とならない。しかし、もし固形状食品の品質に影響を与えるような場合には、容器底部や側部等の蓄水部に吸水紙や吸水剤を設置し、凝縮水が固形状食品に直接触れないような処置を講じることで品質上の問題を回避できる。
【0011】このような定差圧式レトルト滅菌処理方法においては、容器内の圧力は水の蒸気圧および気体の膨張によって発生するが、固形状食品のみでレトルト滅菌処理すると、その表面から水分の蒸発が起こる。固形状食品の表面から水分が蒸発すると、食品の表面は高温になり、それが原因となって褐変や特有の風味が付く原因となる。このようなことから、本発明では、固形状食品と一緒に添加水を容器に入れるものであるが、この添加水は、レトルト滅菌処理時に発生する容器内の水蒸気圧を補うものである。このように添加水を固形状食品と一緒に容器に入れることによって、レトルト滅菌処理時には、添加水が蒸発するので容器内の雰囲気は湿熱状態になり、固形状食品の表面からの水分は蒸発しないか、蒸発したとしても抑制されてごく少量である。このため固形状食品の表面の褐変や焦げ臭の発生を防止できる。
【0012】また添加水の存在によってレトルト滅菌処理時間の短縮も図ることができるといった効果も奏する。すなわち、固形状食品を調味液等の液体に浸漬してレトルト滅菌処理した場合と、固形状食品のみでレトルト滅菌処理した場合とを比較すると、固形状食品のみでレトルト滅菌処理した場合の方が昇温速度が遅く、同等の滅菌効果を得るのに長時間を要するのが一般的である。しかし添加水を入れてレトルト滅菌処理時の容器内の雰囲気を湿熱状態にすることによって、初期の加熱速度が速くなる上、熱伝達率も上昇して、液体中で加熱されている状態に近くなる。このようなことから、固形状食品のみでレトルト滅菌処理した場合に比較して本発明のレトルト滅菌処理方法は、処理時間が短縮され、同時に、上記したように固形状食品の品質(風味、食感、栄養素の低減防止等)の向上が図れるといった効果を奏するものである。
【0013】上記したように、本発明の固形状食品のレトルト滅菌処理方法にあっては、調味液のような液体に浸漬して処理できない固形状食品に有効に活用できるものである。特にレトルトパウチのような容器に入れ、真空状態でレトルト処理すると、型崩れによって商品価値が低下する商品に有効である。本発明のレトルト滅菌処理に利用し得る耐熱性容器の一例を、図1(a)〜(e)にそれぞれ示す。図1に示す耐熱性容器は、少なくとも固形状食品、水及び気体を内封し得る構成を有する外装部1と、固形状食品の設置位置2と添加水の注入領域3とを分離する分離手段4a〜4eとを有する。分離手段4a〜4cは中仕切り構造からなるもので、分離手段4aは網状の円板状部材から、分離手段4bは多数の貫通孔を設けた円板状部材からそれぞれ構成され、これらは外装部1の内壁の底部から所定の距離をとる位置に固定されている。分離手段4cは、円板状部材に底部との距離を保持するための所定の長さの脚を設けた構造を有するものである。分離手段4dは容器底部に突起状の底上げを施し、これをスペーサーとして利用する構造を有するものである。更に、分離手段4eは、外装部1内に挿入固定された内筒状部材からなり、外装部1と内筒状部材との間に添加水を配置して滅菌処理を行うものである。なお、分離手段4a〜4cは外装部1に一体化された構造のものでも良いし、外装部1から着脱可能な構成としてもよい。外装部1及び分離手段4a〜4cの構成材料としては、これらの部材が、加熱処理時に必要な機械的な強度、耐熱性及び食品用の包装材料としての安全性等を持たすものであれば特に限定されない。例えば、ポリプロピレン等の樹脂を挙げることができる。
【0014】
【実施例】以下に実施例を示して本発明を詳細に説明すると共に、比較例を示して、本発明の効果を明瞭にする。
(実施例1)150ml容ポリプロピレンカップ(直径70mm、高さ44mmの円筒容器)に、底部から2cmの所に20メッシュの網状の中仕切りで仕切りを施し、中仕切りの上部に2cm角に切り出したダイコン4個を設置し、底部に10mlの水を添加して、シール包装した。尚、包装時に酸化による変色を防止するため、容器内の空気は窒素ガスで置換した。これを定差圧式レトルト滅菌装置((株)日坂製作所製;型式RCS-40RTGN)を用いてダイコンの中心部のF値が10になるように120 ℃で加圧加熱してレトルト滅菌処理を行った。
【0015】(比較例1)一方対照として、同一の150ml 容ポリプロピレンカップに、底部から2cmの所に20メッシュの網状の中仕切りで仕切りを施し、中仕切りの上部に2cm角に切り出したダイコンを4個設置し、底部に水を添加せず、シール包装した。尚、包装時に酸化による変色を防止するため、容器内の空気は窒素ガスで置換した。これを実施例1と同様にダイコンの中心部のF値が10になるように120 ℃で加圧加熱してレトルト滅菌処理を行った。
【0016】比較例1における滅菌処理時の温度履歴を図2に、実施例1における滅菌処理時の温度履歴を図3にそれぞれ示す。また、2cm角のダイコンの滅菌処理において、F値が積算される100 ℃に至るまでの昇温時間、120 ℃における加熱時間の結果を表1に示す。なお、図2及び図3において、破線■はレトルト温度(加熱釜内の温度)を、破線■はポリプロピレン容器内の温度を、実線■は固形状食品の中心部の温度を、実線■はF値をそれぞれ示す。
【0017】
【表1】

【0018】これらの表1および図2、図3から明らかなように、実施例1では、昇温速度が速くなり、比較例1に比較して、120 ℃における加熱時間を16分短縮することができた。また、加熱処理によって発生する焙焼風味について官能評価したところ、比較例1のものより、実施例1で得られたものの方が、レトルト滅菌処理した食品特有の焙焼風味が少なく、風味が良好であった。
【0019】(実施例2)144ml容ポリプロピレン容器(縦6cm×横6cm×高さ4cm)に、底部から1cmの所に穿孔した中仕切りで仕切りを施し、仕切りの下部に10mlの水を添加して、上部にシュウマイを4個並べ、シール包装した。尚、シュウマイの調製は、表2に示す配合表によって原材料を混合した後、常法に従って調製した。また、包装時に酸化による変色を防止するため、容器内の空気は窒素ガスで置換した。実施例1で用いたのと同じ定差圧式レトルト滅菌装置を用いて、シュウマイの中心部のF値が10になるように120 ℃で加圧加熱してレトルト滅菌処理を行った後、風味の官能評価を行った。
【0020】
【表2】

【0021】(比較例2)一方、対照として、同一の144ml容ポリプロピレン容器(縦6cm×横6cm×高さ4cm)に、底部から1cmの所に穿孔した中仕切りで仕切りを施し、仕切り下部に水を添加せず、上部にシュウマイを4個並べ、シール包装した。尚、シュウマイは実施例2と同様に調製したものを用い、包装時に酸化による変色を防止するため、容器内の空気を窒素ガスで置換した。シュウマイの中心部のF値が10になるように120 ℃で加圧加熱してレトルト滅菌処理を行った後、風味の官能評価を行った。
【0022】上記の実施例2および比較例2の官能評価の結果、本発明における処理をしたものの方が、レトルト滅菌処理した食品特有の臭気が少なく、しかもシュウマイとしての食感も好ましく、風味が良好であった。
【0023】
【発明の効果】本発明は、固形状食品の滅菌処理に際して、容器内が湿熱状態になるように添加水を一緒に入れて処理するものであるが、この添加水を入れることによって、熱伝達率が向上して被滅菌処理物である固形状食品の加熱処理時間が短縮されるといった効果を奏するものである。また、滅菌処理中における固形状食品の表面からの水分蒸発が抑制されることから、得られた固形状食品の褐変やレトルト滅菌処理した食品特有の焙焼風味が抑制され、品質の向上を図ることができるものである。
【出願人】 【識別番号】000006699
【氏名又は名称】雪印乳業株式会社
【出願日】 平成10年9月30日(1998.9.30)
【代理人】 【識別番号】100070219
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 忠 (外4名)
【公開番号】 特開2000−102368(P2000−102368A)
【公開日】 平成12年4月11日(2000.4.11)
【出願番号】 特願平10−277850