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【発明の名称】 食物繊維からなる飲食品
【発明者】 【氏名】押田 喜昭

【要約】 【課題】飲用し易くかつ、体内での作用が期待できる食物繊維からなる飲食品を提供する。

【解決手段】多価金属イオンにより架橋可能な酸性多糖類を用いて食物繊維からなる飲食品を構成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多価金属イオンにより架橋可能な酸性多糖類を用いたことを特徴とする食物繊維からなる飲食品。
【請求項2】 酸性多糖類が実質的に未架橋の状態である請求項1記載の食物繊維からなる飲食品。
【請求項3】 酸性多糖類の0.5%水溶液の粘度が2〜10mm2 /sである請求項2記載の食物繊維からなる飲食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食物繊維からなる飲食品に関する。
【0002】
【従来の技術】食物繊維を用いた飲食品が、栄養補助食品として公知である。食物繊維は、ヒトの消化酵素で消化されない食品中の難消化性成分の総体と定義され、その性質から、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維に分類されている。食物繊維は従来不要なものとされていたが、近年、便秘を予防したり、食物中の有害物質を吸着して体外に排泄する作用等により、糖尿病や大腸がんの予防効果などが認められている。
【0003】食物繊維の具体的な生理作用として、主に消化管機能に対して、消化管内容物の増加と消化管通過時間の変化、栄養成分や有害物質の消化吸収などの影響、さらに脂質などの代謝、腸内細菌叢への影響など多くの作用が報告されている。これらの生理作用から、肥満、糖尿病、高脂血症、動脈硬化、大腸疾患、便秘、胆石、胆嚢炎など、非常に多種類の疾病に対する応用が期待されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】食物繊維の生理作用の多くは、より高分子で、高い粘性を有する水溶性食物繊維に認められる。しかしながら、水溶性食物繊維の分子量が大きく、水溶液の粘性が高いことは、飲食品として利用する場合に、非常に利用しにくいという欠点となってしまい、水溶性食物繊維の応用が困難となっているのが現状である。
【0005】例えば水溶性食物繊維を粉体の状態で飲用する場合は、口の中で高粘度の塊となってしまい、上記の体内での作用が期待できない。また、水溶液として飲料する場合は、粘性が高いため非常に飲用しにくく、また、実用的な粘性の範囲の水溶液では濃度を高くすることができない為、食物繊維の持つ効果が期待できなくなってしまう。
【0006】また、現在、栄養補助食品として市販されている水溶性食物繊維は、水に対する溶解性は良好であるが、50%エタノール水にも溶解する。このような物質は高分子ではなく、粘性も低いことから上記のような生理作用は期待できない。
【0007】本発明は上記従来技術の欠点を解決するためになされたものであり、飲食がし易く、かつ、体内での作用が充分期待できる食物繊維からなる飲食品を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)多価金属イオンにより架橋可能な酸性多糖類を用いたことを特徴とする食物繊維からなる飲食品、(2)酸性多糖類が実質的に未架橋の状態である上記(1)記載の飲食品、(3)酸性多糖類の0.5%水溶液の粘度が2〜10mm2 /sである上記(2)記載の食物繊維からなる飲食品、を要旨とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において酸性多糖類とは硫酸基やカルボキシル基等の酸性基を含む多糖類をいう。酸性多糖類は構造、分子量等は特に限定されず、植物又は動物より抽出されたもの及びその分解物等の天然物、あるいは合成物のいずれでもよい。
【0010】酸性多糖類として具体的には、カルボキシル基を含むものとしてアルギン酸、ペクチン酸等、硫酸基を含むものとして、カラゲナン、コロイダン等、ヘキソサミンとウロン酸からなるヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸や、合成の硫酸化多糖類としてデキストラン硫酸やセルロース硫酸、キトサン等が挙げられる。上記のなかでも、安価であることからアルギン酸又はペクチン酸が好ましい。アルギン酸は、D−マンヌロン酸及びL−グルロン酸とで構成される直鎖型ポリマーである。
【0011】酸性多糖類の溶解性、粘性、ゲル化性、凝固性等は、その構成糖や結合様式,、分子量、酸性基の置換の程度により様々であるが、一般的には、その水溶液の粘度は高い。上記の酸性多糖類はいずれも高分子化合物であり、粘度が高いので、飲用の際に飲みやすさを考慮した場合、粘性の低い水溶液となるように、上記酸性多糖類を原料として構造を変化させて用いるのが好ましい。とくに酸性多糖類は、0.5%水溶液の粘度(25℃、オストワルド粘度計で測定)が、2〜10mm2 /sであることが、更に飲食品としての利用が容易になり好ましい。
【0012】酸性多糖類は、加水分解を行うことで低分子化し、粘性の低い水溶液が得られる。加水分解は、酸、アルカリ、酵素、分解剤等を用いた分解、その他の分解に必要な操作を利用できる。分解条件の具体例を以下の実験例で示す。
【0013】実験例1〔ペクチンのアルカリ加水分解〕ペクチン30gを0.1mol/リットルの水酸化ナトリウムに溶解し、80℃で4時間加熱した。冷却後、等量のエタノールを加え、生じた沈澱物をロ別した。沈澱物はエタノールで洗浄後、乾燥させ、低分子化ペクチン21.3gを得た。
【0014】実験例2〔アルギン酸のアルカリ加水分解〕アルギン酸30gを0.1mol/リットルの水酸化ナトリウムに溶解し、80℃で4時間加熱した。冷却後、等量のエタノールを加え、生じた沈澱物をロ別した。沈澱物はエタノールで洗浄後、乾燥させ、低分子化アルギン酸25.1gを得た。
【0015】〔粘度及びゲル形成量の測定〕実験例1及び実験例2で用いたペクチン及びアルギン酸、ならびに実験例1及び実験例2で得られた低分子化ペクチン及び低分子化アルギン酸を試料として、動粘度及びゲル形成量を測定した測定結果を表1に示す。粘度の測定方法は、試料0.5%水溶液の粘度をオストワルドの粘度計を用いて25℃で測定した。またゲル形成量は、試料各々500mgを精製水100mlに溶解し、等量の塩化カルシウムを加えゲルを形成させ、ろ紙上で自然ろ過し、ろ液量を測定し、下記の〔数1〕式からゲル形成量を求めた。
【数1】
ゲル形成量(ml)=100−ろ液量(ml)
【0016】
【表1】

【0017】表1に示すように、加水分解を行うことでアルギン酸は動粘度が大きく低下した。またペクチンは加水分解後も、ほとんど動粘度に変化は認められなかったが、溶解性は良好となった。
【0018】酸性多糖類は、分子中の酸性基によって、多価金属イオンの存在により容易にゲル化する。これは多価金属イオンが酸性基と結合して酸性多糖類の分子どうしを架橋するからである。酸性多糖類は、飲食した後、胃内において多価金属イオンの作用でゲル化させることができる。ゲルの形成は、用いる酸性多糖類が高分子であっても、低分子であってもほぼ同様に行われるので、上記の低分子化した物質を用いても高分子化合物と同様の生理作用が期待できる。
【0019】本発明の食物繊維を用いた飲食品は、酸性多糖類が多価金属イオンを含まない未架橋の状態としておくのが好ましい。このように、酸性多糖類が多価金属イオンにより架橋しない状態であれば、飲食の際には粘性の低い状態あるいはゲル状にならず利用し易い状態である。そして酸性多糖類といっしょに多価金属イオンを摂取すれば、消化管内で酸性多糖類が多価金属イオンと反応して架橋し増粘ゲル化するから、食物繊維の持つ作用を充分に発揮することができる。
【0020】上記多価金属イオンとして、上記目的には2価の金属イオンが適当であるが、人体に有害な金属塩は使用できないので、特にカルシウムイオンやマグネシウムイオン等のアルカリ金属塩が適している。またアルカリ金属塩を直接飲用するだけではなく、アルカリ金属塩を多量に含む食品を同時に摂取することでも、胃等の内部で酸性多糖類をゲル化させることができる。
【0021】上記目的の為のアルカリ金属塩含む食品は、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等を多く多量に含有し、液状の飲料物が好ましく、具体的には牛乳、スキムミルク、ヨーグルト(乳精)等の乳製品が挙げられる。牛乳やスキムミルクなどでは、粘度の上昇が見られるがゲル化しないので、好ましくはアルカリ金属塩を添加する。また、ヨーグルトの乳精を用いた場合には、充分なゲルが形成された。
【0022】本発明において酸性多糖類が多価金属イオンを含まない未架橋の状態とは、酸性多糖類が多価金属イオンにより実質的に架橋していないということであって、微量の多価金属イオンの存在をも否定するものではない。例えば水溶液の飲料物として提供する場合に、一般に使用する水の中には微量のカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の多価金属イオンが含まれるが、これらの多価金属イオンが存在していても、その程度であれば、飲料物の粘性に大きく影響を与えることは無いため特に問題はない。
【0023】本発明の飲食品は、少なくとも酸性多糖類からなる食物繊維を含むものであれば、その形態は特に限定されない。具体的には、水溶液状にした飲料水の形態、或いは固体状の食品等の形成のいずれでもよい。また、飲食品には、その他の添加剤などを添加してもよい。
【0024】
【発明の効果】本発明の食物繊維からなる飲食品は、多価金属イオンにより架橋可能な酸性多糖類を用いたことにより、飲食がし易く、かつ、体内での作用が充分期待できるものである。
【0025】食物繊維からなる飲食品は糖尿病の治療に利用できる。糖尿病は、インスリンの不足によりグルコースの利用が障害されて血糖濃度が上昇し、尿糖として排出される疾患であり、糖代謝をはじめとする広範な代謝異常ならびに種々の合併症を引き起こす。糖尿病の治療法として、食事療法、運動療法、経口剤療法、インスリン療法が行われている。特に食事療法は非常に重要であり、基本的な原理は摂取カロリーを必要最小限に制限することで、体内のインスリンの作用の不足を軽減することである。酸性多糖類からなる水溶性繊維は、胃で膨潤することで胃内食物の体積を増加させ、粘性を上昇させる為、食物の胃内滞留時間を延長することで血糖上昇抑制効果がある。その結果インスリンを効率良く働かせることが可能であることが、以前から知られている。
【0026】本発明の食物繊維からなる飲食品について、グルコース負荷試験を行って血糖上昇抑制効果を試験した結果を表2に示す。表2から明らかなように、飲食した場合に明らかな血糖抑制効果が見られた。なお試験方法は、オトコ、43歳を被験者とした、75gグルコース負荷試験において、実験例2で得た低分子化アルギン酸1.5g及び硫酸カルシウム1.0gを直前に経口投与した場合と、両者を未投与の場合について、血糖値の値を測定して比較した。
【0027】
【表2】

【0028】次に上記のグルコース負荷試験において空腹時と負荷30分経過後のインスリン量を比較した結果を表3に示す。
【0029】
【表3】

【0030】また、食物繊維は胆汁酸の排泄を促し、コレステロール値を低下させることから、高脂血症の予防効果が期待できる。また、食物繊維は食品中の重金属類などの有害物質を吸着し体内での吸収速度を低下させることから、その毒性の発現を低下させる為、ダイオキシン等で汚染された食品に対する防御、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患に対する改善作用があると言われる。その為、本発明の食物繊維を用いた飲食品も同様の効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】391046425
【氏名又は名称】押田 喜昭
【出願日】 平成10年9月21日(1998.9.21)
【代理人】 【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
【公開番号】 特開2000−93125(P2000−93125A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−284785