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【発明の名称】 加工香辛料の製造方法
【発明者】 【氏名】永留 佳明

【氏名】安田 一江

【要約】 【課題】フェヌグリークを含有する香辛料のソトロン含量を効率的に増大させることができる方法の提供。

【解決手段】フェヌグリークを含有する香辛料を、乾熱加熱処理し、加湿処理及び/又は湿熱加熱処理し、次いで必要により熟成して3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンの含有量を増大させることを特徴とする加工香辛料の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フェヌグリークを含有する香辛料を、乾熱加熱処理し、加湿処理及び/又は湿熱加熱処理し、次いで必要により熟成して3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンの含有量を増大させることを特徴とする加工香辛料の製造方法。
【請求項2】 乾熱加熱処理を100℃以上の温度で、香辛料中の水分が40%以上減少する時間行う請求項1記載の方法。
【請求項3】 湿熱加熱処理を100℃以上の温度で30秒間以上行う請求項1又は2のいずれか1項記載の方法。
【請求項4】 熟成を室温〜70℃の温度で行う請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】 熟成を10時間〜90日間行う請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カレー等に用いられる加工香辛料の製造方法、特に3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノン(以下ソトロンという)の含有量が顕著に高められた加工香辛料の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】本発明者らは、カレー用香辛料などにおいて、そのソトロンの含有量を高めて、熟成感のある香りを有する製品を得るための種々の試みを行っている。例えば、カレーパウダーにおいては、粉砕直後のソトロン含有量は1ppm程度であるが、2年程ねかせることにより熟成させてソトロン含有量を20ppm程度にすることができる。しかしながら、熟成期間として長い年月を費やすと、ソトロン含有量は高まるものの、カレーパウダーの品質が劣化するので望ましくない。また、その熟成方法では、2年もの長い年月を費やしたとしても、そのソトロン含有量がほんの20ppm程度にしか達しないのが現状である。従って、従来よりも非常に短時間で、ソトロン含有量が顕著に高められる香辛料の処理方法が求められる。
【0003】一方、ソトロンが香辛料に熟成感を付与して香りを向上させる物質であることは本発明者らにより近年見いだされたものであるが、従来から香辛料に何らかの処理を施して香りを高めることが行われていた。例えば、特公昭59−53018号公報には、フェヌグリークシードを粉砕して粉末状とし、これを0.2〜8.0kg/cm2 の加圧下で湿熱加熱処理した後、冷却するか、または冷却することなく再び粉末化することを特徴とするフェヌグリークシードの処理方法が開示されている。具体的には、5〜120分間湿熱加熱処理を行い、香りを向上することができるが、上記の処理だけでソトロン含有量は顕著に高まらない。特に、フェヌグリークシード単独ではある程度熟成感を付与できるが、このように処理したフェヌグリークシードを他の香辛料と混合すると、混合香辛料としてはソトロン含量が低くなるため、熟成感が減少し十分な香りの向上を図るのが困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、フェヌグリークを含有する香辛料のソトロン含量を効率的に増大させることができる方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、フェヌグリークを含有する香辛料を、乾熱と湿熱の両方の条件下で加熱処理し、次いで熟成すると、上記課題を効率的に解決できるとの知見に基づいてなされたものである。すなわち、本発明は、フェヌグリークを含有する香辛料を、乾熱加熱処理し、加湿処理及び/又は湿熱加熱処理し、次いで必要により熟成して3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンの含有量を増大させることを特徴とする加工香辛料の製造方法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で対象とするフェヌグリークを含有する香辛料としては、フェヌグリーク単独、又はこれと他の香辛料、例えば、ターメリック、コリアンダー、黒胡椒、桂皮、クローブ、ナットメグ、陳皮等の一種又は二種以上の混合物があげられる。これらの他の香辛料としては、ターメリック、コリアンダー、クローブ、ナットメグが好ましい。特に、好ましい配合としては、フェヌグリーク、クローブ及びナットメグを主体とするもの、あるいはフェヌグリーク、コリアンダー及びターメリックを主体とするものが挙げられ、特にこのような配合の香辛料混合物が好ましい。尚、フェヌグリークを含有する香辛料中のフェヌグリークの含有割合は、添加を目的とする最終食品に応じて任意に決定することができるが、香辛料全体の1重量%以上であるのが好ましく、特に3重量%以上であるのが好ましい。又、本発明で対象とする香辛料としては、水分含量が0.1〜15%のものが好ましく、より好ましくは6〜12%のものである。
【0007】本発明では、まず、フェヌグリークを含有する香辛料を乾熱加熱処理する。ここで、香辛料としては、粉末香辛料ホール、粗砕物などのいずれの形態のものを用いてもよい。乾熱加熱処理は、香辛料中の水分を蒸発させることができる加熱方法であればいずれのものであってもよく、例えば、オーブンでの加熱、平釜での加熱、恒温乾燥器を用いる加熱や熱風乾燥などがあげられる。パドル式加熱装置やクッカーなどのたき上げ用機器を用いてもよい。加熱温度は、100℃以上であるのが好ましく、特に105℃〜香辛料が過度に焦げたり、変質しない温度、例えば250℃であるのが好ましく、より好ましくは、105〜220℃である。又、加熱時間は、加熱温度との相関で、香辛料中の水分(初期水分量)が40%以上減少する時間であるのが好ましく、より好ましくは水分が60〜95%減少する時間である。具体的には、30秒間以上、好ましくは、1分〜30時間である。具体的には、オーブン加熱のように急速に水分が揮散する場合には、110〜250℃、好ましくは150〜220℃で1〜30分間、好ましくは2〜10分間、クッカーなどの炊上げ用機器では、110〜250℃、好ましくは130〜200℃で20分間〜5時間、好ましくは30分間〜3時間、また、恒温乾燥機を用いて静置状態で加熱処理を行う場合には、110〜130℃、好ましくは105〜120℃で1〜30時間、好ましくは2〜20時間夫々処理するのが望ましい。
【0008】本発明では、次いで香辛料を湿熱加熱処理する。本発明において湿熱加熱処理とは、前工程の水分の蒸発を積極的に行う乾熱加熱とは異なり、香辛料中の水分を維持しながら、又は水分を加えながら行う加熱を意味する。具体的には、1つの態様として飽和蒸気の存在下で100℃以上の温度で加熱する方法があげられる。この際、水蒸気自体で加熱してもよい。好ましい湿熱加熱である蒸煮は、例えば、平釜に香辛料を入れ、攪拌しかつ水蒸気を吹きかけながら、加熱する方法、蒸し器に香辛料を入れて蒸す方法、圧力釜に所定量の水とともに香辛料を入れて加熱する方法などにより行うことができる。他に、レトルト内部に積重ねた各原料棚に粉末などの香辛料を薄い層状に収納し、レトルト内部に蒸気を導入する方法により行なうことができる。
【0009】又、別の態様としては、香辛料中の水分の減少を防ぎ得る密閉系での加熱があげられる。具体的には、対象とする香辛料をレトルト容器、例えばアルミパウチなどのレトルトパウチに密封収容してレトルト処理する方法やエクストルーダーに通して加熱する方法などがあげられる。本発明では、特に、平釜に水蒸気を併用する方法、蒸し器を用いる方法、圧力釜に所定量の水を組み合わせる方法のいずれか1つの湿熱加熱に続けて、密封してレトルト処理をするのが特に好ましい。本発明において、湿熱加熱は、30秒間以上、100℃以上の温度、好ましくは105℃以上で、香辛料が焦げたり、変質しないような温度で行うのが好ましい。特に105〜125℃で行うのが好ましい。又、1分間を越える時間行うのが好ましく、特に5分以上行うのが好ましく、より好ましくは5分〜3時間である。
【0010】本発明では、上記の湿熱加熱に代えて、あるいはその前後に加湿処理を行うことができる。ここで、加湿処理とは、香辛料に水分をスプレーしたり、香辛料を高湿度の雰囲気に放置することなどにより、香辛料の水分を高めるための処理をいう。前記の乾熱加熱で香辛料の水分が過度に失われる場合があるが、これらの場合に、加湿処理により香辛料の水分を少なくとも2重量%以上、好ましくは6%以上とすれば、続く湿熱加熱や熟成工程でソトロン含量を一層増大させることができるので好ましい。
【0011】本発明では、湿熱加熱及び加湿処理についで、必要に応じて熟成を行う。熟成は、室温〜70℃、特に40〜70℃で行うのが好ましい。又、10時間〜90日間行うのが好ましい。特に、55〜65℃で24時間〜20日間行うのが好ましい。具体的には、加熱処理した香辛料をトレイなどの容器に入れて、室温〜70℃の温度条件下で所定時間保持することにより行うのが好ましい。熟成処理は、前記の加湿処理と併行することもできる。
【0012】本発明の方法によりフェヌグリーク単独を処理すると、ソトロン含有量を広範囲で増大することが可能となり、50ppm以上、好ましくは100〜500ppmまで増大することが可能となる。熟成条件にもよるが、24時間〜30日間程度で上記のソトロン含有量を達成することが可能となる。従って、フェヌグリークを含有する香辛料を本発明の方法によって処理すると、香辛料中のソトロン含量が高められているので、熟成感のある香りを有した高品質のものとなり、カレー、ハヤシライス、シチューなどの香辛料として用いると、これらの高品質のルウを提供することができる。本発明の方法で処理した香辛料を用いてカレー(ルウを含む)を製造する場合、その添加量は、0.1〜5部、好ましくは1〜2部とするのがよい。特に、本発明の香辛料は、カレールウなどに、上記香りを効率的に付与するのに有効である。また、本発明の香辛料は、焙煎玉葱をコロイドミルで処理して粘性を調整したペーストカレーに用いた場合に特に優れたペーストカレーを得ることができる。そのようにして製造されたペーストカレーは、良好な風味・十分な粘性をもつ上に更に、熟成感のある香りを有した高品質のものとなる。
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、フェヌグリークを含有する香辛料中のソトロンの含有量を効率的に増大させることができ、熟成感を付与して、香りを向上させ、高品質の香辛料を得ることが可能となる。かかる香辛料は、例えば、高品質のカレールウの製造等に用いることができる。次に実施例により本発明を説明する。
【0014】
【実施例】実施例1天日乾燥した生のフェヌグリークシードを、オーブンを用いて200℃で5分間焼成した。この焼成フェヌグリークをスタンプミルで粉砕し、篩別して平均粒度300μmのものを調製した。この粉状フェヌグリークを次の条件で蒸煮した:〔レトルト内部の原料棚に薄い層状に収納し、レトルト内に蒸気を導入しながら105〜110℃で6分間湿熱加熱した〕。このようにして処理したフェヌグリーク中のソトロンの含量を、GC−MS(ガス・クロマトグラフ質量分析計)あるいはHPLC(高速液体クロマトグラフ)で測定したところソトロンを75ppm含んでおり、豊かな熟成香を有するものであった。また、天日乾燥した生のフェヌグリークシードのソトロン含量は5ppmであった。
【0015】実施例2実施例1と同様に処理した湿熱加熱後のフェヌグリークをトレイにあけ、60℃で3日間熟成させた。実施例1と同様にして測定したところ、ソトロンを230ppm含んでいた。
【0016】実施例3湿熱処理に代えて、フェヌグリークに水を霧状にスプレーして加湿処理した以外は、実施例1と同様に処理して得たフェヌグリークをトレイにあけ、60℃で6日間熟成させた。実施例1と同様にして測定したところ、ソトロンを316ppm含んでいた。
【出願人】 【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品株式会社
【出願日】 平成10年9月25日(1998.9.25)
【代理人】 【識別番号】100059959
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 稔 (外7名)
【公開番号】 特開2000−93118(P2000−93118A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−271264