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【発明の名称】 もち類または団子類の製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 隆章

【要約】 【課題】もち類や団子類の味や食感を損なわず、調味液と共にレトルト保存、冷蔵保存をしても、溶け崩れや食感の低下のないもち類または団子類の製造方法を提供する。

【解決手段】澱粉質原料に、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを添加することを特徴とするもち類または団子類の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 澱粉質原料に、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを添加することを特徴とするもち類または団子類の製造方法。
【請求項2】 澱粉質原料に、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを中和したものを添加することを特徴とするもち類または団子類の製造方法。
【請求項3】 カードランが加熱凝固性β−1,3−グルカンであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のもち類または団子類の製造方法。
【請求項4】 カードランを、もち類または団子類当たり0.1〜2重量%添加することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のもち類または団子類の製造方法。
【請求項5】 請求項1ないし4のいずれか1項の記載により得られたもち部と、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを含むゼリー部とよりなることを特徴とするもち入りゼリー食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レトルト耐性等の優れたもち類または団子類の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】もち類または団子類は、そのままでも食されるが、それらを使用したお汁粉、ぜんざい、雑煮、力うどん等の数多くの食品が存在し、多くの人に好まれている。
【0003】近年、調理の時間短縮、簡便性の指向が高まり、加熱殺菌処理されたレトルトのもち、団子入り食品や、それらのチルド食品が数多く市場に供給されている。しかしながら、もちまたは団子入りのお汁粉等のレトルト食品は、保存中に調味液がもちや団子に浸透し、もちや団子が溶けくずれ、もちや団子の食感が損なわれるという欠点があった。
【0004】もちや団子入りのレトルト食品において、もちや団子のレトルト耐性を改善するために、もちや団子にジェランガムとミネラル分を配合したもの(特開平5−236892号)や、LMペクチン、アルギン酸ナトリウムとカルシウム塩を配合したもの(特公平4−40979号)がある。
【0005】また、加熱凝固性β−1,3−グルカンを主体とするカードランを用いて、もちや団子を得る方法も知られている(特開平3−87146号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ジェランガムやアルギン酸ナトリウム、LMペクチンはカルシウム塩等のミネラル分の存在下で十分その効力を発揮するため、ミネラル分の使用が避けられない。しかし、カルシウム塩等のミネラル分は食品の味に影響を及ぼしてしまう。また、カードランは食感、味の点で他の増粘多糖類に比較して、もちや団子の品質改良に適しているが、通常カードランは粉末であり、水に難溶性のため、カードランを均一に分散させるためには、強力な攪拌混合機が必要であった。
【0007】本発明が解決しようとする課題は、もち類や団子類の味や食感を損なわず、調味液と共にレトルト保存、冷蔵保存をしても、溶け崩れや食感の低下のないもち類または団子類の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意研究を重ねた結果、カードランがアルカリに溶解もしくは膨潤することに着目し、本発明を完成するに至った。
【0009】すなわち、本発明は、(1) 澱粉質原料に、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを添加することを特徴とするもち類または団子類の製造方法、(2) 澱粉質原料に、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを中和したものを添加することを特徴とするもち類または団子類の製造方法、(3) カードランが加熱凝固性β−1,3−グルカンであることを特徴とする前記(1)項または前記(2)項に記載のもち類または団子類の製造方法、(4) カードランを、もち類または団子類当たり0.1〜2重量%添加することを特徴とする前記(1)項または前記(2)項に記載のもち類または団子類の製造方法、(5) 前記(1)項ないし前記(4)項のいずれか1項の記載により得られたもち部と、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを含むゼリー部とよりなることを特徴とするもち入りゼリー食品、に関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明におけるカードランとは、β−1,3−グルコシド結合を主体とする加熱凝固性の多糖類であり、水に不溶性である。加熱凝固性β−1,3−グルカンはD−グルコースを構成糖とし、β−1,3−グルコシド結合してなり、加熱凝固性を有する多糖類で、その起源は微生物、動物、植物などには限定されない。該多糖類としては、たとえば、アルカリゲネス属またはアグロバクテリウム属の微生物により産生される多糖類が挙げられる。より具体的には、カードランはアルカリゲネス・フェカリス・バールミクソゲネス(Alcaligenese faccalis var.myxogenes)菌株10C3K[アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー vol.30,p196(1966)]、アルカリゲネス・フェカリス・バールミクソゲネス(Alcaligenese faccalis var. myxogenes)菌株10C3Kの変異株NKT−u(IFO 13140)、アグロバクテリウム・ラジオバクター(IFO 13127)およびその変異株U−19(IFO 13126)等により産生される多糖類である。
【0011】本発明におけるもち類または団子類の品質改良剤は、カードランをアルカリ水溶液に溶解または膨潤させたもの(以下、「アルカリ溶解カードラン」と略称する)であるが、、カードランを溶解または膨潤させるアルカリ水溶液のアルカリは特に限定されず、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
【0012】アルカリ水溶液に溶解させるカードランの濃度も特に限定されないが、例えば0.01〜15重量%程度であればよい。
【0013】カードランをアルカリ水溶液に溶解または膨潤させる方法も特に限定されないが、例えばアルカリを溶解した水にカードランを加えるか、カードランを分散させた水にアルカリを加えて攪拌すればよい。カードランがアルカリ水溶液に容易に溶解しないときは、カードランが熱凝固しないような温度(40℃程度)まで加熱すればよい。
【0014】本発明の品質改良剤剤は、カードランアルカリ水溶液をそのまま用いてもよいが、カードランアルカリ水溶液を中和してゲル化させ、中和ゲルとして用いてもよい。中和に用いる酸も特に限定されないが、例えば、乳酸、クエン酸、酢酸などの各種有機酸や、塩酸や硫酸、さらに酸性を示す食品である醤油、酢などが挙げられる。カードランのアルカリ水溶液を中和するとゲル状となるが、攪拌機等で粉砕して添加すればよい。
【0015】カードランをアルカリ溶解もしくは膨潤しておくことにより、雑菌の繁殖を防ぐことができるので、食品へ使用するのに好適である。
【0016】本発明によるもち類、団子類の原材料に使用される澱粉質原料は特に限定されないが、例えば、もち米、うるち米、ひえ、あわ、アマランサス、キヌア等が挙げられる。さらに好みに応じて、果実類(桃、杏、梅、みかん等柑橘類、柿、林檎、イチゴ、メロン、梨、ブドウ等)、野菜類(ニンジン、カボチャ、芋、アロエ、ほうれん草、モロヘイヤ、ヨモギ等)、茶葉(日本茶葉、烏龍茶葉、紅茶等)、花弁(桜、ミント、ジャスミン、バラ、菊等)、種子類(アーモンド、ピーナッツ、胡麻等)を加えてもよい。
【0017】さらに、必要であれば、寒天、カラギーナン、ファーセレラン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、プルラン、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム等の増粘多糖類を加えてもよい。
【0018】また、本発明によるもち類、団子類をお汁粉や雑煮に入れる場合、必要であればもち類、団子類と調味液の浸透圧を等しくさせるためにブドウ糖、果糖、麦芽糖、ソルビット、ショ糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン等の糖類を加えてもよい。
【0019】本発明によるもち類、団子類の製造方法は特に限定されないが、例えば、澱粉質原料にアルカリ溶解カードランと水およびその他の副原料を加え、混和し、成形もしくは容器に充填した後、加熱すればよい。加熱温度は特に限定されないが、例えば80℃〜125℃とすればよい。
【0020】本発明によるもち類、団子類に使用するアルカリ溶解カードランの使用量は、0.1〜2重量%、好ましくは0.3〜1重量%がよい。0.1重量%未満ではカードランの効果が充分発揮されず、また2重量%より多く添加すると、固くなり、もち類、団子類本来の食感が損なわれてしまう。
【0021】本発明のアルカリ溶解カードランを使用することにより、ヘラやプロペラ攪拌機等の比較的低速の攪拌でカードランが均一に分散するので、効率よく簡単な作業で経済的にもち類、団子類を製造することができる。
【0022】請求項5に記載したもち入りゼリー食品は、もち部とゼリー部からなるセパレートタイプのゼリー食品であり、もち部は請求項1ないし請求4に記載した方法により得られるもち類である。ゼリー部は、アルカリ水溶液で溶解または膨張させたカードランを用いることにより、もち部およびゼリー部ともに加熱凝固性のカードランを含有するため、加熱してホットゼリーとしてももち部とゼリー部が混ざり合うことがなく、食感も非常に優れている。ゼリー部に加える食材は特に限定されるものではないが、練り餡やこし餡などの餡を加えることにより、ぜんざい風ゼリーとすることができる。
【0023】
【実施例】以下に実施例をあげてさらに本発明を詳しく説明する。なお、以下の実施例および比較例では、粉末カードランは「カードラン」(商品名、武田薬品株式会社製)を、加工澱粉は「オルスターチW−10」(商品名、オルガノ株式会社製)を用いた。またアルカリ溶解カードランは、水98gにカードラン1.5g、リン酸三カリウム0.5gを加え、40℃まで加熱した後、室温に冷却したものを用いた(カードラン含量=0.5wt%、pH=11.5)。
【0024】実施例1,2、比較例1,2,3(白玉団子)
【0025】
【表1】

【0026】表1の配合割合に従って、原材料をヘラでよく練り混ぜた。練り混ぜた後、約10gづつ分取し、団子に形成した。沸騰水中にこの団子を入れて加熱し、団子が浮き上がってきたら冷水に移し入れ、ゆで汁の観察と団子の試食を行い、その評価を表2に示した。
【0027】次いで、レトルトパウチに糖濃度20%の水溶液200gと茹でた団子5個を入れ、121℃、40分間加熱殺菌して、レトルト処理した。レトルト処理時の糖液の観察と団子の試食を行い、その評価を表3に示した。
【0028】レトルトパウチを冷蔵庫で1ヶ月間保存した後、レトルトパウチに入れたまま沸騰水で20分間温めた。温めた糖液の観察と団子の試食を行い、その評価を表4に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】以上の結果より明らかなように、アルカリ溶解カードランを団子に使用することにより、ゆで汁の濁りの軽減、レトルト処理後の食感維持、冷蔵後の再加熱による団子の溶解や食感低下の低減を図ることができることが分かる。また、粉末カードランをそのまま使用するよりも、少ないカードラン含有量で同等の品質改良効果得られる。
【0033】実施例3(ぜんざい風ゼリー)
【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】(ゼリー部)表5に示した配合割合で、練り餡に水、加工澱粉、アルカリ溶解カードランを加え、混ぜ合わせた後、無水クエン酸を添加してよく混ぜ合わせる。
【0037】(もち部)表6に示した配合割合で、水にもち粉、加工澱粉、アルカリ溶解カードラン、無水クエン酸を加え、混ぜ合わせる。
【0038】(ぜんざい風ゼリーの製造)図1に示したように、70mlの耐熱性ゼリーカップ(1)にゼリー部(2)60mlを充填し、その上にもち部(3)を10ml充填し、シール後、121℃、40分間加熱殺菌しぜんざい風ゼリーを調製した。冷却後、冷蔵庫で保存した。
【0039】以上のように調製したぜんざい風ゼリーは、加熱してホットゼリーとしてももちとゼリーが混ざり合うことがなく、食感も非常に好ましかった。
【0040】また1週間冷蔵庫で保存しても、もちは固くならず好ましい歯ごたえであった。
【0041】
【発明の効果】予めアルカリに溶解したカードランを用いてもち類、団子類を製造することにより、非常に簡単に、レトルト処理、冷凍、冷蔵保存後の再加熱処理を行っても、非常に好ましい食感のもち類、団子類を製造することができる。
【0042】また、もち部とゼリー部からなるゼリー食品において、もち部とゼリー部ともにアルカリ溶解カードランを使用することにより、加熱して食するホットゼリーとしても、もち部とゼリー部が混ざりあうことがなく、好ましい触感のセパレートタイプのゼリー食品が得られる。
【出願人】 【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
【出願日】 平成10年9月21日(1998.9.21)
【代理人】 【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行 (外3名)
【公開番号】 特開2000−93102(P2000−93102A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−266703