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【発明の名称】 ゼリー状食品
【発明者】 【氏名】佐々木 淳

【氏名】池内 義弘

【氏名】塩谷 敏明

【要約】 【課題】

【解決手段】好ましくは、0.01〜0.5 重量%の、アミノ酸類、D−マンニトール、エタノール、D−ソルビトール、ビタミンB2、パーオキシダーゼ類、カタラーゼ、2−オキソグルタル酸、亜硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の混合物よりなるラジカル消去剤をビタミンC含有ゼリー状食品に添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラジカル消去剤を含有することを特徴とするビタミンC含有ゼリー状食品。
【請求項2】 0.01〜0.5 重量%のラジカル消去剤を含有することを特徴とするビタミンC含有ゼリー状食品。
【請求項3】 ラジカル消去剤が、アミノ酸類、D−マンニトール、エタノール、D−ソルビトール、ビタミンB2、パーオキシダーゼ類、カタラーゼ、2−オキソグルタル酸、亜硫酸ナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のビタミンC含有ゼリー状食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビタミンCに起因するゲル強度低下の抑制された新規なビタミンC含有ゼリー状食品に関する。
【0002】
【従来の技術】ゼリー状食品は、寒天、ゼラチン、カラギーナン等のゲル化剤と、果汁や糖液等を混合して得られるゾル状の液を冷却し、固化させて得られる食品で、デザート食品等として提供されている。一般の食品と同様に、ゼリー状食品においても、劣化が起こり問題になっている。このようなゼリー状食品の劣化の例としては、ゲル強度低下による食感の劣化、及び果汁等の酸化による色調の劣化等が挙げられる。
【0003】ゼリー状食品のゲル強度低下の度合いは配合されたゲル化剤の安定性に依存している。ゼラチンは水溶性の蛋白質で、溶解性、口どけの良さ等からゼリー状食品に適したゲル化剤である。しかし、ゼラチンゲルは夏期における高温下では溶解しやすく、経時変化しやすいという欠点を有している。このため、寒天にキサンタンガム及びローカストビーンガムを添加し、ゼラチンゲルと同等な食感を有する経時変化が少ないゼリー状食品を実現する方法が提案されている(特開平3-191759号公報)。しかし、寒天等の多糖類に果汁や有機酸を加えて調製されたいわゆる酸性ゼリーでは、酸によるゲルの加水分解が起こる。加水分解は加熱工程中、高温殺菌中、保存期間中に起こり、ゲル強度低下の原因となる。
【0004】キサンタンガム及びローカストビーンガムによるゲルは耐酸性を有しており、加水分解を受けにくいが、糊状感が強く、フレーバーリリース性に劣る欠点がある。また、酸性ヘテロ多糖類を含んだ耐酸性に優れた食品用増粘剤が提案されているが、これはゲル化しないためゼリー状食品に用いることはできない(特開昭58-156253 号公報)。また、加水分解による多糖類の分解を防ぐ方法として、酸性物質としてラクトン類を併用する方法が提案されている(特公昭47-28093号公報)。ラクトン類は徐々に加水分解されてオキシ酸を生成するので、クエン酸のような他の酸性物質を用いた場合と比較して多糖類が分解されにくい。
【0005】一方、食品に自然な色調や食感、呈味等を付与する目的で天然素材を利用した場合には、酸化による退色が問題となる。この退色は、酸素によりフレーバー、果汁及び色素が酸化されることにより起こる。このため、製造にあたっては酸素除去に十分注意を払う必要がある。しかし、微量の酸素混入や溶存酸素等を完全に除去することは困難であるため、一般には風味や色調を保持するために抗酸化剤が使用される。抗酸化剤は一般に油溶性抗酸化剤と水溶性抗酸化剤に分けられ、ゼリー状食品には後者が使用される。特に、後者の一種であるビタミンCは、果実や野菜等広く天然に存在しており、不安定で容易に酸化され不活性化されるので、この特性を利用して食品の酸化防止剤として広く用いられている。なお、ビタミンCの通常の添加量は0.01〜0.3 重量%程度である。また、原料として例えば柑橘類果汁のようにビタミンCを含有する原料を用いた場合も、ビタミンCを含有したゼリー状食品が得られる。
【0006】また、ラジカルは遊離基とも呼ばれ、不対電子を持ち電荷のない化学種である。ラジカルは極めて化学的活性に富むため、食品中の他の物質と反応しやすく、食品を劣化させる原因になる。このラジカルと速やかに反応してラジカルを捕捉し、ラジカルとの結合後は自らも不活性になる物質をラジカル消去剤( ラジカルスカベンジャ−; free radical scavenger) と呼ぶ。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、安定性に富んだビタミンC含有ゼリー状食品を提供することを目的とする。すなわち、本発明は、ビタミンCに起因するゲル強度低下の抑制されたビタミンC含有ゼリー状食品を提供することを課題とする。ビタミンCの添加によって、ゼリー状食品のゲル強度が低下することは従来知られておらず、この新知見に基づく本発明によって、ゲル強度低下の抑制された安定なビタミンC含有ゼリー状食品が得られる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、ビタミンCを含有するゼリー状食品において、ビタミンCが原因となってゼリー状食品のゲル強度が低下すること、すなわち、ビタミンCが自動酸化される過程で発生するラジカルの作用によりゲルを形成している多糖類が分解されることを新規に見いだした。
【0009】さらに本発明者らは、上記の新規な課題を解決するために鋭意検討を行い、ビタミンCを含有する多糖類ゲル又は多糖類溶液に、ラジカル消去剤を添加することによって、ビタミンCに起因する多糖類ゲル中又は多糖類溶液中の多糖類の分解が抑制されることを見いだし、本発明を完成するに至った。本発明では、ラジカル消去剤として、食品添加物として利用できる物質を用いて、多糖類の分解を抑制する。このような物質としては、アミノ酸類、D−マンニトール、エタノール、D−ソルビトール、ビタミンB2、パーオキシダーゼ類、カタラーゼ、2−オキソグルタル酸、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。なお、前記アミノ酸類の具体例としては、例えば、シスチン、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、リジン等を用いることができる。また、前記パーオキシダーゼ類としては、例えば、ラクトパーオキシターゼ(LPO)、ホースラディッシュパーオキシダーゼ等を用いることができる。
【0010】多糖類が分解されると、ゾル粘度やゲル強度が低下する。そこで、本発明では、ゾル粘度又はゲル強度を測定し、下記の数式1で定義される低下率αを求めることで、ラジカル消去剤の添加によるゲル化剤分解抑制効果を評価した。
【0011】
【数1】α〔%〕=(1−St/S0)×100S0:保持時間0 における粘度又はゲル強度St:保持時間t における粘度又はゲル強度αが小さいほど粘度低下又はゲル強度低下が小さく、ラジカル消去剤の添加により得られる効果が大きいことを意味する。
【0012】本発明者らは、pH一定の酸性条件下でビタミンC添加系と無添加系におけるゲル強度又はミックス粘度の経時変化を比較した。その結果、ビタミンC添加系では経時的なゲル強度又はミックス粘度の低下が顕著であり、ビタミンCの添加によりゲル化剤が分解されることがわかった。
【0013】
【試験例1】(ビタミンCによるカラギーナンの分解)カラギーナン(κ−カラギーナン)2.0 重量%を純水に分散し加熱溶解してミックスを調製した。ミックスをクエン酸及びクエン酸ナトリウム緩衝液でpH5.4に調整し、ビタミンC0.05重量%を添加した。このミックスを60℃に保持し、所定時間毎にサンプリングして冷却しゲルを調製して、各保持時間におけるゲル強度を圧縮破壊試験機(レオナー33005 、山電製)で測定した。図1にミックスを60℃に保持したときの保持時間とゲル強度との関係を示す。ビタミンC無添加系(対照)ではゲル強度がほとんど低下しないのに対して、ビタミンC添加系ではゲル強度低下が顕著であった。これは、ビタミンCがカラギーナンを分解していることを表している。すなわち、ビタミンCが自動酸化の過程で発生するラジカルによりカラギーナンが分解されることがわかった。
【0014】
【試験例2】(ビタミンCによるキサンタンガムの分解)キサンタンガム0.5 重量%を純水に分散し加熱溶解してミックスを調製した。ミックスをクエン酸及びクエン酸ナトリウム緩衝液でpH5.4 に調整し、ビタミンC0.1 重量%を添加した。このミックスを60℃に保持し、所定時間毎にミックスの粘度を回転粘度計(RV2 、HAAKE 製)で測定した。図2にミックスを60℃に保持したときの保持時間と粘度との関係を示す。ビタミンC無添加系(対照)では粘度が低下しないのに対して、ビタミンC添加系では粘度が顕著に低下した。このことから、試験例1と同様に、ビタミンCによりキサンタンガムが分解されることがわかった。
【0015】また、本発明者らは、このビタミンCに起因するゲル化剤の分解が、ラジカル消去剤を添加することにより抑制されることを見いだした。すなわち、ビタミンCが自動酸化される過程で発生するラジカルによりゲル化剤が分解されることを見いだした。さらに本発明者らは、ビタミンC添加系において、食品添加物リストに収載されているラジカル消去剤を対象としてゲル化剤分解抑制効果を調べ、ゲル化剤分解抑制効果があることを見いだした。このことによって、本発明者らはラジカル消去剤をビタミンC含有ゼリー状食品に添加することで、加熱工程中、高温殺菌中、保存期間中におけるビタミンCに起因するゲル強度低下が抑制されたビタミンC含有ゼリー状食品を得ることに成功した。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明においては、ビタミンC含有ゼリー状食品中にラジカル消去剤を添加し、ビタミンCに起因する多糖類の分解を抑制することで、ゼリー状食品のゲル強度の低下を抑制し、ゲルの安定なビタミンC含有ゼリー状食品を製造する。本発明でビタミンC含有ゼリー状食品中に添加して用いるラジカル消去剤としては、食品添加物として利用できる物質を用いるとよい。このような物質としては、例えば、アミノ酸類、D−マンニトール、エタノール、D−ソルビトール、ビタミンB2、パーオキシダーゼ類、カタラーゼ、2−オキソグルタル酸、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。なお、前記アミノ酸類としては、例えば、シスチン、メチオニン、ヒスチジン、アルギニン、リジン等を用いることができる。また、前記パーオキシターゼ類としては、例えば、ラクトパーオキシダーゼ(LPO)、ホースラディッシュパーオキシダーゼ等を用いることができる。ビタミンC含有ゼリー状食品中にラジカル消去剤を添加するには、多糖類等の原材料に加えてラジカル消去剤を添加配合したミックスを調製し、次いでこのミックスを固化させて、ラジカル消去剤を含有するビタミンC含有ゼリー状食品を製造する。なお、本発明におけるビタミンC含有ゼリー状食品中のラジカル消去剤の含有量としては0.01〜0.5 重量%が好ましい。ラジカル消去剤の含有量が0.01重量%未満では顕著な効果が得られず、また0.5 重量%を越えると風味的な問題が生じる。
【0017】次に、実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
【実施例1】(ビタミンC共存下におけるラジカル消去剤のカラギーナン分解抑制効果)カラギーナンにビタミンCとあわせてラジカル消去剤としてシスチン、メチオニン、エタノール、ラクトパーオキシダーゼ(LPO)、亜硫酸ナトリウムをそれぞれ添加してゲルを調製し、試験例1と同様にして保持温度60℃でゲル強度低下の度合いを調べた。各ラジカル消去剤の添加量は、エタノールは0.5 重量%、LPOは0.3 重量%、その他は10mMとした。図3にカラギーナン2.0 重量%にビタミンCを0.1 重量%及び上記のラジカル消去剤を添加して調製したゲルのゲル強度を測定した結果を示す。なお、ミックスはクエン酸とクエン酸ナトリウムでpH 5.4に調整し、60℃で60分間保持した。図3によれば、ラジカル消去剤無添加の系に比べ、ラジカル消去剤を添加した系ではゲル強度低下が抑制され、ビタミンCに起因するカラギーナンの分解が抑制されていることがわかった。
【0018】
【実施例2】(ビタミンC共存下におけるラジカル消去剤のキサンタンガム分解抑制効果)キサンタンガムにビタミンCとあわせてラジカル消去剤としてメチオニン、D−マンニトール、エタノール、ビタミンB2、ラクトパーオキシダーゼ(LPO)、カタラーゼ、2−オキソグルタル酸をそれぞれ添加して、試験例2と同様にして保持温度40℃で粘度低下の度合いを調べた。なお、各ラジカル消去剤の添加量は、エタノール及びカタラーゼは0.5 重量%、LPOは0.3 重量%、その他は10mMとした。図4にキサンタンガム0.5 重量%にビタミンCを0.1 重量%及び上記のラジカル消去剤を添加して調製した溶液の粘度を測定した結果を示す。なお、ミックスはクエン酸とクエン酸ナトリウムで、pH 5.8に調製し、40℃で30時間保持した。ラジカル消去剤無添加の系に比べ、ラジカル消去剤を添加した系では粘度低下が抑制され、ビタミンCに起因するキサンタンガムの分解が抑制されていることがわかった。
【実施例3】(ビタミンC含有ゼリ−状食品へのラジカル消去剤添加による効果)
【表1】
─────────────────────────────── 従来品 本発明品 ─────────────────────────────── カラギ−ナン 0.7 0.7 異性化糖 18.0 18.0 リンゴ果汁 5.0 5.0 クエン酸 0.2 0.2 リン酸水素2ナトリウム 0.3 0.3 リンゴ香料 0.1 0.1 ビタミンC 0.1 0.1 シスチン − 0.15 水 75.6 75.45 ─────────────────────────────── (単位:重量%)
上記の表1の配合に従って原料を攪拌混合、加熱して溶解し、ミックスを調製した。次に、このミックスを110gずつカップ状容器に充填し、5℃まで冷却してゲル化させ、ビタミンC含有ゼリ−状食品を製造した。得られた各ゼリ−状食品のゲル強度を、試験例1と同様にして測定した。その結果を図5に示す。ラジカル消去剤としてシスチンを添加した本発明品は、従来品(ラジカル消去剤無添加の対照)に比べ、ゲル強度の低下が抑制され、風味も良好であった。
【0019】
【発明の効果】本発明では、ビタミンC含有ゼリー状食品にラジカル消去剤を添加することで、ビタミンCの抗酸化効果を維持しながら、ビタミンCに起因するゲル化剤の粘度低下及びゲル強度低下を抑えることができ、良好なゲル組織をもつビタミンC含有ゼリー状食品が得られる。
【出願人】 【識別番号】000006699
【氏名又は名称】雪印乳業株式会社
【出願日】 平成10年9月21日(1998.9.21)
【代理人】 【識別番号】100105061
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 喜博
【公開番号】 特開2000−93096(P2000−93096A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−266229