| 【発明の名称】 |
食品の殺菌方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】リチャード エス マイヤー
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| 【要約】 |
【課題】高い初期温度と高加圧下で自然に起る瞬間的な均一断熱圧縮工程及び加圧を止めた時の断熱冷却工程とを組合せ、食品の微細な香気に悪影響を与えることなく且つ食品の食感及び色調の変化を最小限にとどめ得る、商業的な食品の殺菌方法を提供する。
【解決手段】食品を、(a)少なくとも70℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)少なくとも50000psiで加圧する第1加圧工程、(c)加圧を緩める休止工程、(d)少なくとも50000psiで再加圧する第2加圧工程、及び(e)加圧を止め、冷却する工程を含み、且つ、初期温度、第1加圧工程の圧力、第2加圧工程の圧力及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法(なお、(c)及び(d)工程は任意工程である)。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 pHが4.5又はそれ以上(pHが4.5よりもアルカリ側)の低酸性食品を、(a)少なくとも70℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)少なくとも50000psiで加圧する加圧工程、及び(e)加圧を止め、冷却する工程を含み、且つ、初期温度、加圧工程の圧力、及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法。 【請求項2】 pHが4.5又はそれ以上(pHが4.5よりもアルカリ側)の低酸性食品を、(a)少なくとも70℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)少なくとも50000psiで加圧する第1加圧工程、(c)加圧を緩める休止工程、(d)少なくとも50000psiで再加圧する第2加圧工程、及び(e)加圧を止め、冷却する工程を含み、且つ、初期温度、第1加圧工程の圧力、第2加圧工程の圧力及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法。 【請求項3】 加圧工程の圧力が、50000〜140000psiである請求項1に記載の方法。 【請求項4】 第1加圧工程と第2加圧工程の圧力が、それぞれ50000〜140000psiである請求項2に記載の方法。 【請求項5】 第1加圧工程と第2加圧工程の圧力が、実質的に同じである請求項4に記載の方法。 【請求項6】 (c)の休止工程が圧力をほぼ大気圧まで緩める工程である請求項2に記載の方法。 【請求項7】 初期温度を70〜100℃とする請求項1〜2に記載の方法。 【請求項8】 低酸性食品を(b)工程、(c)工程及び(d)工程の間、少なくとも初期温度に維持する請求項2に記載の方法。 【請求項9】 低酸性食品の(b)工程での加圧及び(d)工程での再加圧を少なくとも初期温度が維持されるように加熱されている耐圧容器(pressure vessel)中で実施する請求項8に記載の方法。 【請求項10】 耐圧容器を、初期温度と低酸性食品の加圧により発生する断熱温度の増加分との合計とほぼ等しい温度に維持するように加熱する請求項9に記載の方法。 【請求項11】 pHが4.5又はそれ以上の低酸性食品の殺菌方法であって、次の(a)、(b)及び(c)工程の間、該低酸性食品の温度を少なくとも70℃に維持し、(a)が該低酸性食品を少なくとも50000psiで加圧する第1加圧工程、(b)が加圧を緩める工程、及び(c)が該低酸性食品を少なくとも50000psiで再加圧する第2加圧工程であり、引き続き、加圧を止め、該低酸性食品を冷却し、且つ、温度、圧力及び(加圧)時間を選択して、非調理の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする低酸性食品の殺菌方法。 【請求項12】 食品を70〜100℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)予備加熱した該食品を50000〜140000psiで加圧する第1加圧工程、(c)圧力をおよそ大気圧まで緩める工程、(d)該食品を少なくとも50000〜140000psiで加圧する第2加圧工程、及び(e)加圧を止め、該食品を冷却する工程を含み、且つ、初期温度、第1加圧工程の圧力、第2加圧工程の圧力及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、加熱及び加圧を伴う、食品の商業的な殺菌を達成するための方法に関する。本発明は、好ましくは少なくとも2つの加圧工程を採用し、該加圧工程間には休止工程を伴う。予備加熱された食品は、それぞれの工程において、断熱加圧(断熱圧縮)による瞬間的な均一加熱及び断熱減圧(断熱膨張)による瞬間的な均一冷却が施される。 【0002】 【従来の技術】食品の商業的殺菌方法としては、食品滅菌装置(レトルト)による容器内での緩慢加熱とそれに続く緩慢冷却を採用した加熱方法が一般的である。この方法は、常温流通食品において、食品の腐敗を引き起こす微生物、酵素及び胞子を不活性化する上で極めて有効である。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、容器中心部への緩慢な熱の伝達と緩慢な冷却によって、加熱工程が長くなるため、野菜や肉は食感が過度に軟弱化したり、香気が極端に変質する。パスタ及び米飯は弾力性を失って軟らかくなり、肉も弾力性がなくなり、食感が軟らかくなる。野菜もパリパリ感を失い軟弱化する。乳製品は褐変し、野菜は褪色する。チーズと乳製品とを含むような扱いが難しい食品、例えば、マカロニとチーズを含む食品は、褐変したり、香気の著しい変質が生じ喫食不可となるため、通常のレトルト処理を適用することは不可能である。アセプティック加熱のような急速加熱システムにおいても、商業的無菌状態を得るための、長い加熱時間と保持時間及びそれに伴う長い冷却時間の間に、褐変や香気の変質が生じる。 【0004】近年、一般的な加熱処理に代わり、食品の腐敗を引き起こす微生物や内生酵素を超高圧を用いて破壊する方法が開発されている。食品加工への超高圧の適用は、近年、商業的に有効な量の食品の加工に必要な圧力を発生し得る機器技術の進歩により可能となってきた。工業的な食品の高圧殺菌機器は、例えば、フロー・インターナショナル社(Flow International Corp.)、三菱重工業、神戸製鋼所、アーベーベー・オートクレーブ・システム社(ABB Autoclave System,Inc.)及びエンジニアード・プレッシャー・システム社(Engineered Pressure System,Inc.)から入手できる。 【0005】超高圧と高温とを組合せることにより、低酸性食品を殺菌し得ることは公知である。国際出願公開WO97/21361号は、缶詰にした低酸性食品を80〜99℃で加熱し、それから50000〜150000psiに加圧し、引き続いて減圧し、冷却槽へ移し替える方法を開示する。この方法は、100000psiの加圧により食品中に生じる断熱的温度上昇は約20℃であり、それと共に減圧により断熱的な温度低下が起ることを利用して、予備加熱や後冷却の時間を短縮している。しかしながら、この方法では、実際のところ商業的に有効な加圧時間で殺菌することが出来ない。例えば、該公報に開示されている90000psi、85℃、30分という加圧工程では、致死率が不十分になる。即ち、前記加圧工程では、ボツリヌス胞子1012の減少(12D減少)が不十分になる。また、該公報には、90000psi、98℃、5分という別の加圧工程が記載されている。これによれば計算上、標準的な12D要件を超えた致死率が得られるが、本発明者は、B.cereusの殺菌には不十分であり、加圧処理後1週間以内に許容できないレベルまで増殖することを確認した。この公報に開示の中で唯一完全な殺菌工程は、90000psi、98℃、30分であるが、これは商業的利用には時間が長すぎ、極めて過度に調理された食品が得られる。 【0006】他にも、微生物の減少に有効な超高圧波を食品に照射して、冷蔵時の微生物安定性を増加させることが提案されている(Torres,J.A.及びAleman、Pressure Pulsing:Improving UHP Effectiveness, OSU Food Process Engineering and Flow International Corp.)。しかしながら、超高圧波によって商業的な殺菌が達成されるとの示唆はない。 【0007】更に、加熱と超高圧との組合せでは、細菌の胞子が生き残るため、商業的な殺菌には有効ではないことが確認されている(Mallidis,C.G.及びDrizou,D.,Effective Simultaneous Application of Heat and Pressure on the Survival of Bacteria Spores,Journal of Applied Bacteriology,71,p.285−88(1991))。この文献によれば、胞子は熱と圧力に対して極めて異質な感受性を示すため、圧力と熱との組合せは、液状食品の保存には有効でないと結論している。超高圧に短時間晒すことにより、食品の香気及び食感を保持しつつ、商業的に有用な、低酸性食品の殺菌方法は未だ確立されていない。 【0008】本発明の課題は、高い初期温度と高加圧下で自然に起る瞬間的な均一断熱圧縮工程及び加圧を止めた時の断熱冷却工程とを組合せ、食品の微細な香気に悪影響を与えることなく且つ食品の食感及び色調の変化を最小限にとどめ得る、商業的な食品の殺菌方法を提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は食品を、(a)少なくとも70℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)少なくとも50000psiで加圧する第1加圧工程、及び(e)加圧を止め、冷却する工程を含み、且つ、初期温度、加圧工程の圧力、及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法に係る。 【0010】また本発明は食品を、(a)少なくとも70℃の初期温度で予備加熱する工程、(b)少なくとも50000psiで加圧する第1加圧工程、(c)加圧を緩める休止工程、(d)少なくとも50000psiで再加圧する第2加圧工程、及び(e)加圧を止め、冷却する工程を含み、且つ、初期温度、第1加圧工程の圧力、第2加圧工程の圧力及び加圧時間を選択して、殺菌前の香気及び食感を実質的に保持した殺菌食品を得ることを特徴とする食品の殺菌方法に係る。 【0011】本発明の好ましい態様は以下の通りである。 1.(c)の休止工程を瞬時〜5分又はそれよりも長い時間行う食品の殺菌方法。 2.(c)の休止工程を1秒〜5分行う食品の殺菌方法。 3.初期温度を85〜100℃とする食品の殺菌方法。 4.(b)工程の加圧時間及び(d)工程の再加圧時間をそれぞれ瞬時〜200分又はそれ以上とする食品の殺菌方法。 5.(b)工程の加圧時間及び(d)工程の再加圧時間をそれぞれ10秒〜10分とする食品の殺菌方法。 6.(b)工程、(c)工程及び(d)工程の総所要時間を5分又はそれ未満とする食品の殺菌方法。 7.請求項1〜2の方法で製造された、殺菌された低酸性食品。 【0012】本発明方法によれば、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)の胞子を完全に死滅させ得るので、特にpH4.5又はそれ以上(pHが4.5よりもアルカリ側)の食品の殺菌に有効である。驚くべきことに、加熱の効果よりも2倍以上の相乗的効果が圧力と加熱との組合せによりもたらされる。即ち、加熱単独の場合に比べて2倍以上の胞子を死滅させ得る。短い休止期間を伴う、加熱された食品への断熱加圧を繰り返すことにより、初期加圧工程で生き残った胞子を死滅させることができる。 【0013】 【発明の実施の形態】本発明の好ましい実施態様は、(1)食品を予め設定された初期温度に予備加熱する工程、(2)予め設定された加圧時間、予備加熱された食品を断熱的温度上昇を伴って加圧(超高圧で加圧)する第1加圧工程、(3)加圧を止め、該食品を低圧力下、好ましくは大気圧下に戻し、且つおよそ初期温度まで断熱的に温度を低下させる工程、(4)予め設定された加圧時間、該食品を加圧する第2加圧工程、及び(5)加圧を止めて該食品を冷却し、商業的に殺菌された食品を得る工程からなる。予備加熱温度、超高圧の程度、加圧時間及び各工程の時間的な間隔を適宜選択することにより、商業的無菌状態の製品、特にC.botulinum及びB.Cereusが殺菌され、且つ殺菌前の香気及び食感が実質的に保持された製品が得られる。なお本発明では上記のうち(3)及び(4)の工程を省略することもできる。 【0014】本発明の方法では、殺菌には第1加圧工程及び第2加圧工程で充分であり、他の工程を付加する必要はなく、特に有利な点もないが、全体的な温度及び圧力の設定が良好な香気及び食感を有する商業的な無菌製品を得るのに適したものであれば、2以上の加圧工程が含まれていてもよい。 【0015】第1加圧工程と第2加圧工程との間の休止工程は、瞬時〜5分又はそれ以上、好ましくは少なくとも1秒〜5分、より好ましくは少なくとも5秒〜1分とすればよい。後記実施例においては、第1加圧工程及び第2加圧工程では同じレベルの最高圧を採用している。しかしながら、当業者であれば、本明細書の記載に基づき、第1加圧工程及び第2加圧工程において異なる圧力を採用しても、商業的な無菌状態を実現でき、且つ香気及び食感を保持できる。更に、後記実施例においては、第1加圧工程及び第2加圧工程では加圧時間を変更し、第1加圧工程の加圧時間を第2加圧工程のそれよりも長くしているが、第1加圧工程と第2加圧工程の加圧時間が同じ場合、第2加圧工程の加圧時間が第1加圧工程のそれよりも長い場合も本発明に包含される。 【0016】本発明においては、殺菌すべき食品を、好ましくは70℃(158°F)以上、より好ましくは少なくとも85℃、更に好ましくは90℃(194°F)〜100℃(212°F)又はそれ以上に予備加熱する。第1及び第2(更にそれ以上)の加圧工程では、好ましくは少なくとも1秒〜200分の間、好ましくは約50000〜140000psi又はそれ以上、より好ましくは60000〜120000psiの圧力を課する。食品の予備加熱は、好ましくは、それ自体が食品の予備加熱温度と同等又はそれ以上の温度、好ましくは食品が晒されるのと同じ温度、即ち初期温度に断熱圧縮による温度の上昇分を足した温度に加熱された耐圧容器内で実施される。 【0017】初期温度と断熱圧縮工程とを組合せると、その相乗効果により、FDA(U.S.Food and Drug Administration)が推奨する安全係数の2倍の率でクロストリジウム ボツリヌスを死滅させることができる。FDAの基準は、Fo値6.0又は食品に250°F(121.1℃)で6分間加熱を施すことである。この2倍の安全係数は“ツ−12Dプロセス”又は“2bot killプロセスとして知られており、FDAが推奨する非酸性食品の缶詰のミニマムプロセスの2倍となっている(A Complete Course in Canning,p.46,48(1996))。表1に、各加圧下での断熱圧縮の増加を示す。 【0018】 【表1】
註:Fo値6は、250°Fで6分間殺菌するのに相当し、FDAによって、加熱工程のみで商業的に殺菌品を製造するのに充分な条件と規定されている。 【0019】表1から明らかなように、断熱圧縮による温度の上昇には、食品の初期温度と圧力の大きさという2つの要因がある。即ち、加圧下では、加圧前の初期温度が高くなるにつれて、断熱圧縮温度が上昇すると考えられる。 【0020】本発明は、加熱と超高圧加圧とを組合せて食品を商業的に殺菌し得る方法を提供する。本発明の方法は、4.5又はそれ以上のpHを有し、潜在的にボツリヌス菌(Clostridium botulinum)又はB.Cereusによって汚染される可能性の有る食品に特に有効である。 【0021】本発明の方法によれば、まず食品を、初期温度が70℃(158°F)以上、好ましくは少なくとも85℃、より好ましくは90℃(194°F)〜100℃(212°F)又はそれ以上となるように予備加熱する。次いで、第1加圧工程は、食品の予備加熱温度又はそれ以上の温度、好ましくは初期温度(予備加熱温度)に断熱温度を加えた温度に加熱された耐圧容器内にて、50000〜140000psi又はそれ以上、好ましくは約60000〜120000psiの加圧下に、少なくとも約1秒未満〜200分、好ましくは10秒〜10分、最も好ましくは1〜5分実施される。食品への予備加熱と加圧とを組合せることにより、食品の温度は瞬間的に均一に殺菌温度まで上昇し、この状態が一定時間保持される。次いで、圧力を緩め、第1加圧工程で加えられた圧力よりも低い圧力、好ましくは大気圧とすることにより、食品を瞬間的且つ均一に予備加熱温度付近まで冷却する。この加圧を緩める休止工程を瞬時〜5分又はそれ以上、好ましくは5秒〜1分で終了した後、引き続いて該食品を第2加圧工程で加圧する。該工程は、50000〜140000psi、好ましくは60000〜120000psiの圧力下に少なくとも1秒未満〜200分、好ましくは10秒〜10分、最も好ましくは1〜5分行われる。第2加圧工程の後、再び圧力を緩め、該食品を常温まで冷却する。第1加圧工程、加圧を緩める工程及び第2加圧工程に要する時間を合計すると、通常30分未満、好ましくは5分未満、より好ましくは1分以下とするのがよく、これに別途圧力の上昇及び下降に要する約2分を含む。加圧下に発生する瞬間的な断熱圧縮及び断熱冷却によって、食品への熱の暴露を最小限にとどめるにもかかわらず(食品が長時間熱に晒されると、その香気、食感及び色調が劣化する)、2つの加圧工程とその間の加圧を緩める休止工程を含む殺菌を実施する場合には、商業的な殺菌が充分に達成される。食品は、耐圧容器に設置される前に、例えば湯浴中で予備加熱される。また、プレート式熱交換器や表面掻き取り式熱交換器で予備加熱することもできる。更に、耐圧容器に装備された加熱器で予備加熱することもできる。耐圧容器として使用できる、加熱及び冷却機能を備えた加圧装置としては、例えば、アーベーベー・オートクレーブ・システム社やエンジニアード・プレッシャー・システム社等の加圧装置等を挙げることができる。 【0022】各加圧工程において、断熱圧縮(及び加圧を緩める際の断熱冷却)の原理により、食品の温度は60〜90°F(圧力120000psi以上ではそれ以上)上昇(又は低下)する。実際の昇温は、初期温度と課せられる圧力の大きさという2つの要因によって決まる。例えば、210°Fに予備加熱された食品に60000psiの圧力をかけると、断熱圧縮により温度は約77°F上昇する。また、100000psiの圧力をかけると、温度の上昇は約88.6°F又はそれ以上である。即ち、予備加熱を施した食品に超高圧をかけると、実際の殺菌温度は、食品の予備加熱温度よりも約60〜85°F上昇する。断熱圧縮による温度上昇を適宜変更することにより、食品を高温に晒す時間を最小限にし、秒単位での制御が可能になる。従って、食品が高温及び殺菌温度に長時間且つ過度に晒されることによって損傷を受けることがなく、その香気、食感及び色調の変化が最小限にとどめられるか又は変化がないように保護できる。本発明によれば、予備加熱温度と圧力とを適宜選択することにより、食品の商業的な殺菌に要する総時間を最小限にする時間と温度の組合せが得られる。例えば、210°F及び100000psiでの、商業的殺菌に要する総時間は約22秒以下である。 【0023】本発明では、高圧処理に先立ち、食品容器及び耐圧容器中から空気を除去する。本発明の工程中に空気が存在すると、食品の香気にかかわる成分が酸化を受けたり、更には、空気が高圧で圧縮されるため、耐圧容器中の空気の存在は処理効率の損失を招くことになる。また、空気が包装用のプラスチック素材と反応し、ディーゼルエンジンのような燃焼を引き起こす。 【0024】本発明の各加圧工程では、必要に応じて50000〜140000psi、好ましくは60000〜120000psi、更に好ましくは80000〜100000psiの圧力を課するのがよい。圧力は処理温度にて商業的無菌となり得るに足る時間保持される。 【0025】本明細書においては、「商業的無菌」なる語は一般的な意味で用いられる。すなわち「商業的無菌」とは、加熱処理により、食品を、健康上有害な微生物の発育が認められない状態、また通常の非冷蔵下での保存、流通において健康上無害な微生物が増殖し得る状態にすることを意味する。本発明の方法により処理される食品は、衛生的な環境下で取り扱い並びに処理がなされ、通常は極めて多くの微生物による汚染がないものである。商業的殺菌においては、商業的無菌状態の食品を収納する包装容器中には少数の微生物の生菌が存在する可能性があるが、適切な保存期間中では微生物は増殖せず、食品は安全且つ美味な状態が維持されるという点が重要である。すなわち、商業的無菌の食品とは、病原菌は認められず、常温下での、例えば13〜24ヶ月といった適度な保存期間中では、劣化が軽度で且つ発酵や微生物の増殖は生じない食品と定義される。 【0026】本発明の目的を達成する加圧には、高圧及び高温を発生し得る商業的に入手可能な装置を使用できる。加圧処理に先立ち、食品をプラスチック容器、缶又はその他の適切な容器中に密封する。又は、食品を熱交換器を通して耐圧容器に入れ、加圧処理を施した後に、殺菌済みの容器中へ無菌的に充填される。 【0027】本発明方法は、繊細な香気や食感を要求される保存食品に特に有効である。その具体例としては、例えば、マカロニ&チーズ、野菜、スープ、シチュー、柔らかな牛肉、魚肉、豚肉及びその他の肉類、乳製品、パスタ、米飯、ポテト製品、主食用のアントレ、デザート、非酸性飲料、チョコレートミルク、カッテージチーズ等を挙げることができる。本発明方法による殺菌に適した他の食品類としては、pHが4.5以上よりもアルカリ側の食品であれば特に制限されず、例えば、非酸性缶詰食品、非酸性冷凍食品、非酸性冷蔵食品、非酸性飲料等を挙げることができる。更に本発明の方法は、pHが4.5よりも酸性側のpHの食品の殺菌にも適している。なぜならば、この様な低pH食品は、本発明の方法で採用される高温、高圧等に対する感受性が低いためである。 【0028】選択した圧力と温度との組合せにおいて、最適な殺菌時間を確認するため、Clostridium botulinum(Fennema,1975,part II,p.36;A Complete Course in Canning,第13版,第2巻,第44頁,以下「文献A」という)の代用試験微生物に指定されている微生物を食品に接種する。この微生物は、Clostridium sporogenes PA 3679で、Clostridium botulinumと同様に嫌気性で、胞子を産生し、同定も容易で、適切な耐熱性を有している。120000psi以下の圧力で、できる限り高温短時間処理で最適な商業的無菌の製品が得られる。処理時間が短いほど、香気、食感及び色調が維持され、生産性も高く、一方で装置の損耗は減少する。 【0029】また本発明では、耐圧容器を予め加熱することで、該容器に搬入された予備加熱した食品の温度低下を防止し、また、加圧工程で断熱圧縮により食品を目的の処理温度まで上昇させる場合に、温度低下を防止又は最小限に抑え得る。 【0030】 【実施例】以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明する。 実施例1(加熱加圧工程がそれぞれ1回ずつの場合) 本実施例は、断熱圧縮と断熱冷却と見なされる加圧工程と減圧(加圧を緩める)工程の際に起こる、瞬間的且つ均一な加熱と冷却の優位性を示すことを目的とする。目標温度と時間は、文献A、第62〜102頁に示された式を用いて計算した。更に、加圧時間、温度及び圧力は、完全殺菌や過度の殺菌が起こらないように考慮して選択した。特に、初期温度90℃、95℃又は98.9℃、圧力60000psi、80000psi又は100000psiとし、加圧時間を適宜変更した。 【0031】供試食品としては、冷凍マカロニ&チーズ(商標:Stouffer’s、pH5.87)、スライス牛肉(ニューヨークステーキ・スーパーマーケットで購入、pH5.97)、白飯(水:米=2:1、pH7.06)を用いた。試験は試料100gをパウチに空気のない様に封入し、各試料につきそれぞれ3袋を調製した。試料を封入したパウチを加圧前に約5分間沸騰水中で試験温度まで予備加熱した。 【0032】加圧を、超高圧装置(商品名:Andover,MA unit ♯3、エンジニアード・プレッシャー・システム社製)を用い、ワシントン州立大学食品科学パイロットプラント(Washington State University Food Science Pilot Plant)の管理下に実施した。超高圧装置の耐圧容器に、供試食品を封入したパウチ10〜12袋を一度に投入し、該耐圧容器を満杯状態にした。パウチを入れる前に耐圧容器の壁を、それを取り巻く電熱コイルで設定温度まで予備加熱した。尚、耐圧容器の外壁には、1インチのグラスファイバー製断熱材を貼り巡らした。耐圧容器の壁の厚さは数インチあり、熱を逃がさないので、一度加熱すると、パウチを処理するのに必要な時間中、耐圧容器を一定の温度に維持できる。予備加熱した耐圧容器内に予備加熱したパウチを入れた後、該容器内の空気を除くために、初期の試験温度まで加熱した水−グリセロール液を該容器内に満たした。次いで、試験条件に応じて、圧力を60000、80000又は100000psiまで上昇させ、設定時間中保持した。断熱圧縮と冷却の温度は初期温度(予備加熱温度)と圧力により20〜32℃変化した。この様な瞬間的且つ均一な加熱及び冷却が、食品が破壊を受けるような高温に晒されるのを絶対的最小限にとどめる。コントロールとして、加熱も加圧もしないパウチを用いた。マカロニ&チーズには、Clostridium sporogenesの胞子を3.1×100000個/gの割合で接種した。肉と白飯はClostridium sporogenesの胞子を1.4×100000個/gの割合で接種した。加圧後パウチを全て氷水で急冷し、コントロールに対する風味検査を行うパウチ以外は、細菌検査まで冷凍保存した。冷却後、本発明の方法で処理したパウチのうち2袋を開封して香気と食感とを調べたところ、驚くことに、マカロニ&チーズの香気、色調、食感はコントロールの未処理品と比べて変わりがなかった。これは加圧工程での非常に短時間の高温状態が、食品に損傷や変化を与えないことを示している。従来のレトルト加熱工程では、マカロニ&チーズは褐変や香気の著しい変質が起こる。本発明の方法で処理したスライス肉は柔らかく、豊かなロースト肉の香りだった。米は餅状に固まった以外は炊飯米と同様の食感であった。 【0033】加圧処理の2〜3日後及び1週間後に、冷凍保存パウチの食品中の生存菌数を測定し、加圧処理によって損傷を受けた菌の回復度合を調べた。本実施例及び以後の実施例における細菌検査では、殺菌済0.1%ペプトン水で調製した希釈液を用いた。希釈液をAPCペトリフィルムに平板接種した。表には乳酸菌の結果を示すが、そのレベルはMRS寒天平板希釈法により28℃で48時間嫌気培養して決定した。また、表にはClostridium sporogenesPA3679(Cl.Spore)の結果を示すが、生菌数は、肝臓と0.3%ビーフエキス及び0.1%酵母エキスを含む溶融寒天培地とをその都度混合し、平板希釈法によって決定した。平板は、37℃で48時間嫌気培養された。胞子としては、1:10希釈液を湯浴中で80℃で10分間ヒートショックを与えたものを用いた。ブランクの試験管の温度が80℃に達したところから、計時を開始した。希釈及び培養は、胞子も生菌と同様に行った。 【0034】上記細菌検査の結果を表2、3に示す。菌の生育は0(生育なし)又は生菌数を示した。「加圧時間」とは、記載の温度と圧力との組合せにおいて、2 bot killを達成し得る時間を意味する。「試験時間」とは実際の試験時間を意味する。また、表3中、「外壁温度」とあるのは、耐圧容器の外壁温度を意味する(以下同じ)。 【0035】 【表2】初期細菌検査の第1回目の試験(試験実施日1998.07.06、初期細菌検査)
【0036】 【表3】1週間保存後の細菌検査の第1回目の試験(加圧処理により損傷した細菌の回復度合を調べる2回目の細菌検査)
【0037】表2は、全サンプル中の菌が死滅するか又は損傷を受け、直ぐには増殖できない状態にあることを示す。しかしながら、1週間保存後の結果を示す表3によれば、多くのBacillus cereusの胞子が、加圧処理を受けても損傷を受けるだけで生き残ることが明らかである。表3中「APC」はBacillus cereusの生菌数を意味する。また表3は、処理温度が高い程、Clostridium sporogenes(PA3679)の胞子が効率良く死滅していることを示している。驚くべきことに、最長時間では、従来の加熱殺菌技術に比べて数倍の、全ての胞子が死滅した。これは、超高圧が、胞子特にBacillus cereusの胞子の高温抵抗性を向上させることを示す。尚、表3〜5において加圧時間とはFo値=6.0に相当する処理時間を意味する。 【0038】実施例2(中間に休止を伴う高温高圧工程) 表4に、実施例2の概要を示す。試料のマカロニ&チーズの一方には添加物を加えず、もう一方には安息香酸ナトリウムを0.1%及びナイシンを0.02%加えた。 【0039】 【表4】(中間に休止を伴う加熱加圧処理により微生物及び胞子を除去する試験)
【0040】2回の高圧加圧工程では、最低温度を90℃とした。2つの加圧工程の間には5分間の休止時間を設定した。休止時間には、圧力をゆるめて減圧したが、温度は初期温度である90℃を保持した。この休止期間の条件は、残存する胞子を活性化し(胞子を発芽させるか又は通常の壊れ易い細胞構造に変化させ)、第2の加圧加熱工程でより大きな損傷を受けるようにするという理論に基づいて選択された。また、胞子の強靭な保護細胞壁を加圧後の減圧と再加圧とによって破壊し、加熱による損傷を受け易くなるようにしている。但し、本発明はこの理論に制約されるものではない。 【0041】表5及び表6から明らかなように、加圧加熱、非加圧加熱及び加圧加熱という工程により、完全な殺菌が達成された。各処理条件において、3つの試料を細菌検査に供し、生菌数を計測して表5及び表6に示した。生菌数30又はそれ未満の場合には生育が認められないため、この場合も無菌状態とした。この一連の処理では、保存料の効果は殆ど認められないようだが、より軽度の処理では、保存料は微生物の生育防止に有効であろう。最高圧力(100000psi)で断熱圧縮を行う場合には、温度降下を減らすために、耐圧容器の外壁温度は90℃又はそれ以上とするのが好ましい。多少の温度降下が予想されるが、好ましくはない。温度降下を最小限にするには、耐圧容器の外壁部分の内側を断熱材で覆うのがよい。 【0042】95℃や98.9℃よりも低い温度、即ち90℃で完全な殺菌を行えるならば、95℃や98.9℃というより高い温度下に2つの加圧工程と加圧工程の間に休止工程を実施すると、より一層の効果が期待される。例えば、第1の加圧工程を98.9℃、100000psiで22秒間実施し、次いで5分間又はたとえ5秒間でも非加圧の休止工程をとり、更に100000psiで22秒加圧すると、90℃で処理し且つ外壁温度が低くなりすぎる場合よりも、ずっと過酷な処理になる。上述の全ての加圧工程で、第1工程及び第2工程の加圧時間は、最高圧力での処理時間であり、昇圧に要する時間(約90秒)と減圧に要する時間(約10秒)とは含まない。実施例1の加圧処理を、非加圧の休止工程の後に再度繰り返すことにより、無菌製品が得られると考えられる。なぜならば、実施例1の加圧処理は、実施例2において、無菌製品を製造するために二度にわたって行われた加圧処理よりも、ずっと過酷な条件だからである。 【0043】表7に、実施例2の処理前の細菌数を示す。マカロニ&チーズ(商標名:Stouffer’s)を再び実施例1と同様にしてプラスチック製パウチに詰め、実施例2の処理を施した。得られたマカロニ&チーズの香気、食感及び色調を、非処理品と比較したところ、変化は認められなかった。 【0044】 【表5】(添加剤を加えた第2試験の結果)
【0045】 【表6】(添加剤を加えない第2試験の結果)
【0046】 【表7】(加圧処理を行わないコントロールの初期及び1週間後の細菌数)
【0047】実施例3(加熱加圧工程の間の休止工程を変化させる) 加熱加圧工程とその間の休止工程のより好ましい条件を決定するために、マカロニ&チーズのA〜Fのロット(各ロットは4個ずつの試料からなる)について、実施例2と同様にして、追加の試験を実施した。マカロニ&チーズの各試料に微生物を接種して、初期値として表8にその生菌数を示した。これらの試料を表8に示す各種の加圧条件によって処理し、処理後の生菌数を非処理品のそれと比較した。尚、生菌数の計測は、ロットの各試料毎に、加圧処理に続いて1週間保存した後に行った。結果を表9に示す。 【0048】 【表8】(生菌数の初期値)
*:1.5Fo、**:2.5Fo【0049】 【表9】(1週間後の生菌数)
*:1.5Fo、**:2.5Fo【0050】全ての試料が良好な香気と食感、所謂マカロニ独特の食感とを有し、煮すぎ等による異臭もなかった。第1加圧工程と第2加圧工程との間の休止工程を5秒〜5分にすると、結果は良好であった。特に、ロットEの条件(1分加圧、1分休止、1分加圧)は、無菌状態を得るのに有効であった。即ち本発明によれば、処理時間が合計3分であり且つ食品の香気と食感が維持される、商業的に利用可能な急速殺菌法が提供される。ロットEとDの結果を総合すると、1分加圧、5秒休止、1分加圧という条件でも無菌状態が得られる。本実施例は、その周囲にヒーターを備え、その外壁が202°Fに維持された耐圧容器中で実施された。本実施例においては、予備加熱温度は90℃であったが、予備加熱温度を100℃に上げても、食品の香気や食感に殆ど影響を及ぼすことなく、効果的な殺菌状態が得られるものと考えられる。 【0051】現行の超高圧装置を用いれば、1ポンドにつき0.002〜0.005ドルのコストで食品を処理できる。これは、従来のレトルトのコストの1/10である。総合的にみて、この超高圧殺菌法は、常温流通食品を製造するのに最も効率的でコストのかからない方法である。更に付言すれば、本発明の方法は、冷凍食品に匹敵するような品質の低酸性常温流通食品を製造するための唯一の方法である。耐圧容器の外壁は、該容器が加圧を受け且つ断熱圧縮が発生する際に、該容器からの熱損失を最小限にするために、好ましくは、断熱材で処理されているのがよい。外壁が断熱材によって処理されてない耐圧容器を用いると、断熱圧縮された食品や外壁から熱が著しく失われる。以上、本発明の好ましい実施態様について記述したが、本発明の技術精神及び範囲から離れなければ、種々の変更が可能である。 【0052】 【発明の効果】本発明によれば、高い初期温度と高加圧下で自然に起る瞬間的な均一断熱圧縮工程及び加圧を止めた時の断熱冷却工程とを組合せることにより、食品の微細な香気に悪影響を与えることなく且つ食品の食感及び色調の変化を最小限にとどめることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000206901 【氏名又は名称】大塚化学株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年3月15日(1999.3.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081536 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 巌
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| 【公開番号】 |
特開2000−83633(P2000−83633A) |
| 【公開日】 |
平成12年3月28日(2000.3.28) |
| 【出願番号】 |
特願平11−68752 |
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