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【発明の名称】 飲食物および薬品
【発明者】 【氏名】岡田 茂孝

【氏名】米谷 俊

【氏名】西村 隆久

【氏名】中江 貴司

【氏名】滝井 寛

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】生理活性フラボノイド(この請求項において、生理活性フラボノイドAと称する)に、生理活性フラボノイドAの誘導体を共存させること、または、生理活性フラボノイドAに別の生理活性フラボノイド(この請求項において、生理活性フラボノイドBと称する)あるいは別の生理活性フラボノイドBの誘導体を共存させることにより、生理活性フラボノイドAの吸収性を向上させたことを特徴とする飲食物および薬品【請求項2】生理活性フラボノイドの誘導体が生理活性フラボノイドの糖転移化合物であることを特徴とする請求項1記載の飲食物および薬品【請求項3】生理活性フラボノイドの誘導体が生理活性フラボノイドのメチル化物であることを特徴とする請求項1記載の飲食物および薬品【請求項4】生理活性フラボノイドがヘスペリジン、ディオスミン、ナリンジン、ネオヘスペリジン、ダイジン、ダイゼイン、ゲニスチン、ゲニステインであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の飲食物および薬品【請求項5】生理活性フラボノイドの糖転移化合物がヘスペリジン配糖体、ディオスミン配糖体、ナリンジン配糖体、ネオヘスペリジン配糖体のうちのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の飲食物および薬品
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高血圧、アレルギー、ガン、高コレステロール症、高脂血症などを予防、または、治療するために、飲食物、または、薬品として利用する。
【0002】
【従来の技術】天然にはさまざまな生理活性を持ったフラボノイド化合物が数多く知られている。しかしながら、フラボノイド化合物の一つであるバイカレインは投与量の約300万分の1しか吸収されないといったように体内への吸収効率が極めて悪いことが知られていた(Y.Wakui,et al.,J.Chromatog.,575,131−136(1992))。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため、フラボノイド化合物の持つ生理活性が生体内で充分発揮されない。そこで、吸収効率がよいフラボノイド化合物が切望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の出願者は鋭意研究の結果、生理活性フラボノイドに糖が結合した生理活性フラボノイドの糖転移化合物と生理活性フラボノイドを共に生体に投与することにより、生理活性フラボノイドの生体への吸収効率が大きく改善されることを見出した。つまり、低吸収性の生理活性フラボノイド化合物であっても、糖転移化合物と共に生体に投与することにより、高率でしかも速やかに体内に吸収されることが初めて明らかになった。
【0005】したがって、従来吸収率が低くて十分な生理活性が得られなかった生理活性フラボノイドも、本願の技術を用いれば顕著な効果が期待できる。
【0006】具体的な効果としては、血圧降下作用、抗炎症作用、抗腫瘍作用等があげられる。そして、それを応用した飲食物、薬品を開発し、本発明を完成することができた。以下、この発明について詳細に述べる。
【0007】本発明においては、生理活性フラボノイド化合物およびその誘導体の体内吸収を以下のようにして測定した。1週間予備飼育した5週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一昼夜絶食させ、所定濃度の生理活性フラボノイド化合物同士、あるいは、その誘導体を共存させた溶液300μlをゾンデを用いて胃に直接投与した。対照には蒸留水を投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法(The American society for Pharmacology and Experimental Therapeutics,21,1157−1166(1993))により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれる生理活性フラボノイド化合物あるいは、その誘導体を定量した。
【0008】J.A.Boutinらの方法は以下のとおりである。採取された血液500μlにアセトニトリル1000μlを添加し、充分振とうした後、15分間静置した。5500rpmで20分間遠心した後、その上清をとり、凍結乾燥した。凍結乾燥した試料をアセトニトリル/蒸留水(20/80;V/V,0.01MNaOH)溶液100μlで溶解し、HPLCで分析した。HPLCの条件は、測定するフラボノイド配糖体およびフラボノイドにより若干の違いはあるが、基本的な条件は以下のとおりである。カラム:ODS、カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/蒸留水(20/80;V/V)、流速:0.5ml/min、検出:UV 280nm。またイソフラボン化合物を分析するHPLCの条件は以下のとおりである。カラム:ODS、カラム温度:40℃、溶離液:アセトニトリル/蒸留水(15/85;v/v)からアセトニトリル/蒸留水(40/60;v/v)のグラジェント、流速:0.5ml/min、検出:UV 280nm。血液中の生理活性フラボノイド化合物あるいは、その誘導体濃度は濃度既知の生理活性フラボノイド化合物あるいは、その誘導体を用いて検量線を作成し求めた。なお、実験動物としてはマウスのほか、ラットなどを用いることもできる。
【0009】本発明において、生理活性フラボノイドとしては、生理活性を報告されているフラボノイド類を指す。すなわち、フラボンとしてアピゲニンおよびそのグリコシド、フラボノールとしてケルセチンやミリセチンやカンフェロールおよびそれらのグリコシド、フラバノンとしてヘスペレチンやナリンゲニンおよびそれらのグリコシド、アントシアニジンとしてペラルゴニジンやシアイジンやデルフィニジンおよびそれらのグリコシド、カルコンとしてネオヘスペリジンヂヒドロカルコン、イソフラボンとしてダイゼインやゲニステインおよびおよびそれらのグリコシドなどいわゆるフラボノイド類にイソフラボンを含めたものである。
【0010】これらフラボノイド類は、例えば、以下のような生理活性が知られている。ヘスペリジンやルチンは古くからビタミンPとして血圧を下げる作用が知られている(神谷真太郎、新ビタミン学、(日本ビタミン学会)1969、p439)。
【0011】また、ヘスペリジンは抗アレルギー作用(松田英秋et al.;薬学雑誌、111、193−198(1991)、J.A.Da Silva Emim et al.;J.Pharm.Pharmacol.,46,118−712(1994))、LDL−コレステロールを減少させ血中コレステロール値を改善する作用(M.T.Monforte et al.;Il Farmaco,50,595−599(1995))、抗癌作用(T.Tanaka,et al.;Cancer Research,54,4653−4659(1994)、T.Tanaka,et al.;Cancer Research,57,246−252(1997)T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,761−769(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,957−965(1997))などの生理作用も報告されている。さらに、最近の研究では、ヘスペリジンは前駆脂肪細胞の分化を促進し、糖尿病などの症状を改善する作用も期待されている。
【0012】ディオスミンは強い抗酸化活性に加えてヘスペリジンと共存させた薬剤が、静脈不全や痔疾などの治療薬として利用されている(C.Labrid;Angiology,45,524−530(1994))。さらに、ヘスペリジン、ディオスミン単独およびその混合物が口腔ガン、食道ガン、大腸ガンなどを抑制することも報告されている(T.Tanaka,et al.;Cancer Research,54,4653−4659(1994)、T.Tanaka,et al.;Cancer Research,57,246−252(1997)T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,761−769(1997)、T.Tanaka,et al.;Carcinogenesis,18,957−965(1997))。
【0013】ナリンジンやネオヘスペリジンは柑橘類の苦味物質として知られており、苦味の付与を目的に食品・飲料などに用いられている。さらに最近では、イソフラボンが骨密度の向上に有効であること、乳ガンの発生を抑制することなどが明らかにされてきている(戸田et al.;食品と開発)。
【0014】生理活性フラボノイド化合物誘導体としては、糖転移物とメチル化物がある。糖転移反応、メチル化反応は通常の条件で行なうことができる。例えば、糖転移反応は糖転移酵素であれば、いずれのものでも利用できる。つまり、サイクロデキストリン合成酵素、アミラーゼなどを用いて行なうことができ、フラボノイド配糖体を得ることができる(T.Kometani,et al,Biosci.Biotech.Biochem.,58,517−520(1994).T.Kometani,et al,Biosci.Biotech.Biochem.,58,1990−1994(1994).T.Kometani,etal,Biosci.Biotech.Biochem.,60,645−649(1996).)。また、この時、酵素の起源などは問わない。
【0015】本発明で用いるフラボノイド配糖体とフラボノイドとの混合物において、フラボノイド配糖体の含有量は混合物全体に対して10%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは50%以上である。
【0016】
【実施例】以下、本願の実施例を記載する(実施例1)1週間予備飼育した5週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一昼夜絶食させ、15%(w/v)ヘスペリジンに5%(w/v)ヘスペリジン配糖体を共存させた溶液300μlをゾンデを用いて胃に直接投与した。対照には蒸留水単独、または、20%(w/v)ヘスペリジン溶液を投与した。そして、投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれるヘスペリジンを定量した。その結果、図1に示したように、ヘスペリジン+ヘスペリジン配糖体投与区の血中ヘスペリジン濃度は投与後15分でピークに達し、その後徐々に減少していった。一方、ヘスペリジンはヘスペリジン配糖体と同様の挙動を示したが、血中濃度はヘスペリジン配糖体の約1/10以下であった。すなわち、総濃度が同じであれば、ヘスペリジンにヘスペリジン配糖体を共存させた場合にはヘスペリジン単独投与の場合に比べ、大幅に吸収性が向上することがわかった。
【0017】(実施例2)1週間予備飼育した5週齢のオスのラット(体重、約300g)を一昼夜絶食させ、麻酔下において総濃度5%(w/v)のヘスペリジン配糖体とヘスペリジンを1:1で共存させた溶液300μlを十二指腸に直接投与した。対照には蒸留水を投与した。投与後、門脈より経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれるヘスペリジンを定量した。その結果、ヘスペリジン+ヘスペリジン配糖体投与区は投与後20分で血中濃度7.0μg/mlとなり、その後徐々に減少していった。この時、比較のために同濃度のヘスペリジン溶液を投与したが、血中にヘスペリジンは検出されなかった。
【0018】(実施例3)1週間予備飼育した5週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一昼夜絶食させ、5%(w/v)ヘスペリジン配糖体を共存させた15%(w/v)ヘスペリジン溶液300μlをゾンデを用いて胃に直接投与した。対照には蒸留水を投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれるヘスペリジンを定量した。その結果、図2に示したように、ヘスペリジン配糖体を共存させた試験区では、ヘスペリジン配糖体およびヘスペリジンは投与後急速に吸収され、15分後には血中濃度は最大となり、その後徐々に代謝されていった。これに対し、ヘスペリジン単独投与の場合は極めて吸収されにくく、血中には微量しか検出されなかった。
【0019】(実施例4)1週間予備飼育した5週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一昼夜絶食させ、15%(w/v)のディオスミンに5%ヘスペリジン配糖体を共存させた溶液300μlをゾンデを用いて胃に直接投与した。対照には蒸留水を投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれるディオスミンを定量した。その結果、血中ディオスミンは投与後15分でピークに達した。この時のディオスミンの血中濃度は3.0μg/mlであった。一方、ディオスミンを単独投与した時は血中にディオスミンは確認されなかった。すなわち、ディオスミンにヘスペリジン配糖体を共存させた場合(異種のフラボノイド配糖体との共存)もヘスペリジンにヘスペリジン配糖体を共存させた場合(同種のフラボノイド配糖体との共存)と同様の吸収性の向上を示すことがわかった。
【0020】(実施例5)1週間通常の固形飼料で予備飼育したSHRラットに5%ヘスペリジン配糖体を共存させた15%ヘスペリジンを含む同組成の飼料を与えて8週間飼育した。対照区のラットには通常の固形飼料を継続して与えた。また、もう一方の試験区には同濃度のヘスペリジンを添加した同組成の飼料を与えた。8週間後、それぞれの試験区のラットの血圧を測定したところ、対照区のラットでは高血圧の改善効果は示されなかったが、ヘスペリジン+ヘスペリジン配糖体添加試験区のラットの血圧は対照区に比べて5%減少していた。ヘスペリジン添加区では、ほとんど血圧降下は見られなかった。なお、3つの試験区の体重増加率や飼料摂取量には有意な差はなかった。
【0021】(実施例6)1週間予備飼育した8週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一晩絶食させ、構成比が1:1(w:w)からなるダイジン(daidzin)の糖転移化合物とダイジンの混合物の8%(w/v)溶液(300μl)あるいは、濃度が8%(w/v)のダイジン溶液(300μl)をゾンデを用いて胃に直接投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いて血液中に含まれるダイジンおよびその分解物であるダイゼイン(daidzein)を定量した。その結果、図3に示したようにダイジンの糖転移化合物とダイジンの混合物投与群では血中ダイジン量(ダイジンおよびダイゼインの総和)は投与後15分でピークに達した。その濃度はダイジン投与群の約5倍の濃度であった。
【0022】(実施例7)1週間予備飼育した8週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一晩絶食させ、構成比が1:1(w:w)からなるダイジンの糖転移化合物とダイゼインの混合物の5%(w/v)溶液(300μl)あるいは、濃度が5%(w/v)のダイゼイン溶液(300μl)をゾンデを用いて胃に直接投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いて血液中に含まれるダイゼインを定量した。その結果ダイジンの糖転移化合物とダイゼインの混合物投与群では血中ダイゼイン量は投与後15分でピークに達した。その濃度はダイジン投与群の約5倍の濃度であった。
【0023】(実施例8)1週間予備飼育した8週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一晩絶食させ、構成比が1:1(w:w)からなるゲニスチン(genistin)の糖転移化合物とゲニスチンの混合物の8%(w/v)溶液(300μl)あるいは、濃度が8%(w/v)のゲニスチン溶液(300μl)をゾンデを用いて胃に直接投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いて血液中に含まれるゲニスチンおよびその分解物であるゲニステイン(genistein)を定量した。その結果、図4に示したようにゲニスチンの糖転移化合物とゲニスチンの混合物投与群では血中ゲニスチン量(ゲニスチンおよびゲニステインの総和)は投与後15分でピークに達した。その濃度はゲニスチン投与群の約3倍の濃度であった。
【0024】(実施例9)1週間予備飼育した8週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一晩絶食させ、構成比が1:1(w:w)からなるゲニスチンの糖転移化合物とゲニステインの混合物の2%(w/v)溶液(300μl)あるいは、濃度が2%(w/v)のゲニステイン溶液(300μl)をゾンデを用いて胃に直接投与した。投与後、経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いて血液中に含まれるゲニステインを定量した。その結果、ゲニスチンの糖転移化合物とゲニステインの混合物投与群では血中ゲニステイン量は投与後15分でピークに達した。その濃度はゲニステイン投与群の約5倍の濃度であった。
【0025】(実施例10)1週間予備飼育した5週齢のオスのStd.ddYマウス(体重、約30g)を一昼夜絶食させ、3%(w/v)ヘスペリジンに1%(w/v)ヘスペリジン配糖体を共存させた溶液300μlをゾンデを用いて胃に直接投与した。対照には蒸留水単独、または、4%(w/v)ヘスペリジン溶液を投与した。そして、投与後経時的に採血した。得られた血液はJ.A.Boutinらの方法により、前処理したのち、HPLCを用いてそれに含まれるヘスペリジンを定量した。その結果、ヘスペリジン+ヘスペリジン配糖体投与区の血中ヘスペリジン濃度は投与後15分でピークに達し、その後徐々に減少していった。一方、ヘスペリジン投与区はヘスペリジン+ヘスペリジン配糖体投与区と同様の挙動を示したが、血中濃度はヘスペリジン配糖体投与区の約1/15以下であった。すなわち、総ヘスペリジン濃度が同じであれば、ヘスペリジンにヘスペリジン配糖体を共存させた場合にはヘスペリジン単独投与の場合に比べ、大幅に吸収性が向上することがわかった。
【0026】
【出願人】 【識別番号】000000228
【氏名又は名称】江崎グリコ株式会社
【出願日】 平成11年6月22日(1999.6.22)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−78955(P2000−78955A)
【公開日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願番号】 特願平11−214117