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【発明の名称】 ササ抽出液及びその製法
【発明者】 【氏名】山田 学

【氏名】佐藤 伸好

【氏名】大泉 高明

【氏名】越智 泰子

【要約】 【課題】水溶媒を使用して、ササ葉より鉄クロロフィリン類を高濃度で含有し、緑色の色調を有するササ抽出液を得る方法を提供する。

【解決手段】1.塩基性化合物水溶液中でササ葉を加熱処理した後、処理葉を鉄塩水溶液中で加熱処理し、ついで処理葉を塩基性化合物水溶液中で加熱処理して鉄クロロフィリン化合物含有ササ抽出液を得る。2.得られたササ抽出液を2分割し、一方の抽出液から酸析で鉄クロロフィリン成分の沈殿物を得、該沈殿物を他方の抽出液に混合溶解せしめ、該溶解液をイオン交換樹脂(H)で中和して析出シリカを濾去し、鉄クロロフィリン成分濃度を高めたササ抽出液を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 塩基性化合物水溶液中でタケ科ササ属のササの葉を加熱処理する工程、該加熱処理葉を無機鉄塩及び/又は有機鉄塩の水溶液中で加熱処理して該ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属を鉄イオンに置換する工程、該置換工程からの処理葉を塩基性化合物水溶液中で加熱処理して鉄クロロフィリン化合物含有成分を抽出する工程、を含むことを特徴とする鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【請求項2】 前記ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属を鉄イオンに置換する工程において、酸化防止剤又は還元剤を共存させることを特徴とする、請求項1記載の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【請求項3】 前記ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属を鉄イオンに置換する工程において、該工程の途中又は終了時に、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ピリジン、アニリン、イミダゾール及びエチルアミンからなる群から選ばれる化合物を添加することを特徴とする、請求項1又は2に記載の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれか1項記載の方法によって得られたササ抽出液を2分割する工程、一方のササ抽出液に無機酸又は有機酸を加えて析出する鉄クロロフィリン成分を濾取する工程、該析出鉄クロロフィリン成分を他方のササ抽出液に混合溶解せしめる工程、該混合溶解工程からのササ抽出液をイオン交換樹脂を用いて中和する工程、該中和工程で析出するシリカを主成分とする析出物を濾過除去する工程、からなることを特徴とする、鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【請求項5】 前記請求項4に記載の方法によって製造された、高濃度の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、様々な生理活性機能を備えていることから、医薬品、医薬部外品、化粧品、健康食品等に使用される、クロロフィリン類を含有するササ抽出液に関するものである。より詳細には、本発明は主成分として鉄クロロフィリンを含有し、その他多糖体、リグニン、ビタミン、有機酸等の生体にとって重要な生理活性成分を含有しており、疲労回復、消化機能促進、血液浄化作用、抗アレルギー作用、細胞賦活作用等を有する医薬品、健康食品等に使用されるササ抽出液とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、鉄クロロフィリン塩の製造法は、例えば、茶葉や蚕糞等の原料からアセトン、メタノール等の有機溶媒を使用してクロロフィルを抽出した後、メタノール等にアルカリ金属水酸化物を溶解した溶液中で該クロロフィルを鹸化して粗クロロフィリンを得、該粗クロロフィリンに塩酸等を加えることによってクロロフィリンを得、これをメタノール等を溶媒として塩化第一鉄と反応させて、粗鉄クロロフィリンを得る。ついで、この粗鉄クロロフィリンに、エーテル等を溶媒としてアルカリ金属水酸化物のメタノール等の溶液を加えて、pH10前後としたのち、溶媒を留去し、エーテル、ヘキサン等で洗浄して鉄クロロフィリンアルカリ金属塩とするという方法等が知られている。
【0003】この従来法は、植物葉等の原料から、鉄クロロフィリン塩を生成するまでの一連の反応に、有機溶媒を使用することが不可欠の方法である。その理由は、クロロフィルや、分子構造中のカルボン酸がH型となっているクロロフィリンが疎水性であり、水に溶解しないことのほかに、水溶媒中では鉄置換の反応が進みにくいこと、及び酸素等の攻撃によって鉄クロロフィリン塩が分解されやすく、生成した鉄クロロフィリン塩の色調や安定性が悪くなるということにある。しかし、有機溶剤を使用する方法は、溶剤自体のコストや危険性がともなう等の理由から、製造コストが高くなるという欠点を有している。
【0004】これらの欠点を克服するため、これまでに各種の別法が提案されている。例えば、クマザサ、糸瓜の葉等を水溶性第2銅塩溶液中で処理してクロロフィルの中心金属のマグネシウムを銅で置換した上、希薄アルカリ水溶液中で加熱処理し、銅クロロフィリンを生成させると同時にこれをアルカリ金属塩とした後、カルシウム塩を加えて銅クロロフィリンカルシウムを生成させ、塩酸で沈澱させ、アルカリにてアルカリ金属塩とする方法( 特開昭57−177064号公報) が提案されている。
【0005】又、野菜生葉の搾液より葉緑素を得る方法( 特公昭27−2685号公報) も提案されているが、本発明に使用されるササは、水分含有率が低く、葉質も堅牢である為、搾液を得ることは不可能に近い。
【0006】また、特開昭50−49328号公報には、有機溶媒による抽出法で蚕糞等から得たクロロフィルを鹸化後、塩酸処理を行いフィトクロリンを得、有機溶媒中で還元剤又は酸化防止剤の存在下で、鉄錯体化し、さらにアルカリ金属塩とし、鉄クロロフィリンアルカリ金属塩を得る方法が提案されている。
【0007】しかしながら、ササ葉より、直接水溶媒中での操作により、鉄クロロフィリン類を含有し、緑色の色調を有するササ抽出液を得る方法は、溶媒が水であること、クロロフィリンに錯体化させる金属が鉄であること等のために発生する様々な困難のために、未だ確立されていない。クロロフィリン類の骨格に配位可能な金属中、鉄は錯体化されにくく、水溶媒中ではさらにその反応速度は遅い。その上本発明で原料とするササは、葉質が堅牢にできているため、そのまま水溶媒中で鉄化合物と共に加熱しても錯体化させることは殆ど不可能に近い。
【0008】一方、銅錯体化物の場合、銅イオンは金属種としてクロロフィリン骨格に非常に取り込まれ易いため、生葉をそのまま銅塩水溶液中で加熱することで、置換が可能である。さらに、銅錯体は鉄錯体に比べて非常に安定であり、色調も鮮明な明るい緑色であることから、最終的に緑色抽出液を得易い。これに対して、水溶媒中で一連の反応を行って鉄置換されたクロロフィリンを含有するササ抽出液を得ようとする場合、鉄イオンが配位されにくいという問題の他に、水のような高極性溶媒中ではクロロフィリンが不安定であり、銅クロロフィリンに比べて、緑色化力とでもいうべき性質が弱い鉄クロロフィリンは色調の悪い、褐色の溶液となってしまうという問題もある。
【0009】これは、鉄錯体化する際に2価の鉄を使用しても容易に溶媒及び空気中の酸素等により、3価鉄に酸化され、これがクロロフィリンに作用するなどして鮮明な緑色のクロロフィリンが得られないということに加えて、ササ葉中に含まれるほかの物質も、鉄イオン共存下での高温加熱というクロロフィリンの鉄錯体化を行うための苛酷な反応条件で褐変を引き起こしてしまうためと考えられる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、水溶媒を使用した一連の反応工程に従ってササを処理することにより、鉄クロロフィリン類を含有するササ抽出液を、色調のよい緑色で、しかも安定な状態でササ葉から直接得る方法を提供することを目的とするものである。また水のみを溶媒として使用することで、消費者側、製造側双方に安全であり、有機溶媒の使用に伴う設備を必要とせず、コストを抑えて製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【0011】さらに、水溶性成分である糖類、リグニン等のような生体に重要な生理活性機能を有する物質も共に抽出することができることから、疲労回復、消化機能促進、血液浄化作用、抗アレルギー作用、細胞賦活作用等生体にとって重要な生理活性機能を有するクロロフィリン類含有ササ抽出液を広く消費者に提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の問題を解決するために鋭意研究を行った結果、ササの葉を塩基性化合物水溶液中で加熱処理を行った後、中性下で鉄塩と反応させると、容易に鉄置換されることを見いだし、本発明に到達した。本発明は、以下の各発明を包含する。
【0013】(1)一価強塩基性化合物を、好ましくは0.01〜1モル/リッターの濃度で含有する塩基性化合物水溶液中でタケ科ササ属のササ葉を加熱処理する工程、該加熱処理葉を無機鉄塩又は有機鉄塩の水溶液中で加熱処理して、該ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属のマグネシウムイオンを鉄イオンに置換する工程、該置換工程からの処理葉を、好ましくは一価強塩基性化合物を0.1〜10モル/リッターの濃度に調整した塩基性化合物水溶液中で加熱処理して鉄クロロフィリン化合物を抽出する工程、を含むことを特徴とする鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【0014】(2)前記ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属のマグネシウムイオンを鉄イオンに置換する工程に、酸化防止剤又は還元剤を共存させることを特徴とする、前記1項記載の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【0015】(3)前記ササ葉中に含まれるクロロフィリン化合物の中心金属のマグネシウムイオンを鉄イオンに置換する工程に、該工程の途中又は終了時に、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ピリジン、アニリン、イミダゾール及びエチルアミンからなる群から選ばれるアミノ酸又はアミン化合物を添加することを特徴とする、前記1項又は2項に記載の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【0016】(4)前記1〜3項のいずれか1項記載の方法によって得られた鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液を2分割する工程、一方のササ抽出液に無機酸又は有機酸を加えて析出する鉄クロロフィリン成分を濾取する工程、該鉄クロロフィリン成分を他方のササ抽出液に混合溶解せしめる工程、該混合溶解工程からのササ抽出液をイオン交換樹脂を用いて中和する工程、該中和工程で析出したシリカを主成分とする析出物を濾過除去する工程、からなることを特徴とする、鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液の製造方法。
【0017】(5)前記4項に記載の方法によって製造された、高濃度の鉄クロロフィリン成分を含有するササ抽出液。
【0018】
【発明の実施の形態】以上の本発明においては、タケ科ササ属のササの葉を塩基性化合物水溶液で加熱処理すると、鹸化によってクロロフィルがクロロフィリン塩となって分子自体の極性が高くなり、次工程で加えられる極性の高いFeイオンが近づき易くなると同時に、ササ葉の繊維が軟化し、鉄塩が葉全体のクロロフィル分子に接し易くなることによってクロロフィリン類への水溶媒中での完全な鉄置換が可能となっているものと考えられる。この際塩基性化合物濃度を変化させたり、或いは塩基性化合物水溶液による処理時間を変化させることで置換率をコントロールすることも可能である。
【0019】本発明の方法で使用するササ葉は、生葉及び乾燥葉のいずれであってもよく、葉そのままでも、カッティングされた状態であってもよい。さらに茎を含んだものであってもよい。また、予め酵素処理、微粉化処理をしていてもよい。
【0020】本発明の方法では、塩基性化合物として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、アンモニア水、アニリン、アルギニン等が使用される。中でも、加水分解効率、コスト等を考慮すると水酸化ナトリウムが最も好ましい。水溶液としては一価の強塩基性化合物を0.01〜1mol/lの濃度で含有する水溶液が使用される。
【0021】本発明の方法の第1工程である塩基性化合物水溶液中での加熱処理工程は、ササ葉1重量部に対して、一価の強塩基性化合物の場合、濃度を0.01〜1mol/lに調整した水溶液3〜100重量部を使用して行われる。塩基性化合物水溶液の使用量が少ないと処理時間の増加や、次工程での鉄イオン置換が不完全となる結果を招く。塩基性化合物水溶液中での加熱処理は、温度60〜100℃の範囲で行われるが、処理時間を短縮させることができることから100℃での処理が好ましい。低温では、処理に長時間を要する結果、多種のクロロフィリンが生成する。また、塩基性化合物濃度を高くして長時間加熱処理を続けると、クロロフィリン類が溶出してしまうため、収率低下を招く。塩基性化合物水溶液中での加熱処理の終点は、溶出してくるクロロフィリンの量を定量して一定量の溶出を指標に見極めるという方法で決定することもできる。
【0022】本発明の方法の第2工程である鉄イオン置換反応に使用できる鉄塩としては、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、第二鉄アセチルアセトナート、ぎ酸第二鉄、硝酸第二鉄、乳酸第一鉄、鉄カルボニル及びこれらの水和物から選ばれる鉄化合物等を用いることができる。これらの鉄化合物の使用量は、処理前ササ葉50kgに対してFeとして1〜20モル量が好ましい。鉄化合物の使用量が少ないと不完全な鉄置換と、中和後の色調の悪化を招くし、多すぎるとコスト上昇のみならず、水洗によっても鉄イオンが完全に除去されない結果を招くため、好ましくない。
【0023】置換反応は、第二鉄塩によっても行うことは可能であるが、第一鉄塩に比べて反応が遅く、最終抽出液の色調も褐色となる。この第二鉄塩を用いた場合にも、酸化防止剤や還元剤の使用によって第一鉄塩に変えることができるが、最初から第一鉄塩を使用することの方が操作が容易であり、好ましい。
【0024】鉄塩と共に加熱処理する時の温度は、完全な置換、処理時間の短縮を達成するために、沸騰温度、すなわち100℃が好ましい。また、pHが高アルカリ域では置換反応が進行しないので、この時のpHは9以下、好ましくは7以下である。またpHが3以下であると置換はされるものの、最終的に褐色の強いササ抽出液が得られる。これは、主にササ葉中の成分の糖類が強い酸性のため褐変するためと考えられる。このときのpH調整には、前記塩基性化合物や、後述する無機酸及び有機酸が用いられる。
【0025】また、鉄錯体化時に酸化防止剤、還元剤等を共存させることで、最終的に、色調の良い緑色の安定なササ抽出液を得ることができる。これは前記したように鉄が3価に酸化してしまうことを抑え、又は2価鉄に還元し、さらに他物質の褐変をも抑える作用があるためと思われる。
【0026】この酸化防止剤、還元剤としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、没食子酸プロピル、安息香酸ナトリウム、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン、トレハロース、エリソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、等がある。
【0027】使用比率としては、ササ葉50kgに対して、0.05モル〜20モルの使用が好ましい。これより少ないと、後工程で、緑色の抽出液が得られず、多いと、コストの上昇を招き、その作用が強力なものでは、分解を招いてしまう。処理時間は、ササ葉の量、塩基性化合物水溶液処理時の塩基性化合物量、処理時間、鉄塩の種類、酸化防止剤、還元剤の種類、量及び処理温度等によって決められる。通常沸騰下、20分〜120分が好ましい。
【0028】さらに、鉄置換時にアミノ酸やアミン化合物を加えることによっても、鉄クロロフィリンの鉄分子に配位させ、配位鉄の酸化を抑え、最終的に、色調の良い緑色の安定なクマザサ抽出液を得ることができる。アミノ酸やアミン化合物としては、ヒスチジン、トリプトファン、リジン、アルギニン、ピリジン、アニリン、イミダゾール及びエチルアミンからなる群から選ばれるアミノ酸又はアミン化合物等があるが、これらを、鉄置換時に初めから大量に加えると、これまで知られている事項とは逆であるが、鉄置換を阻害するという現象が起きるため、置換途中又は終了時に加えるか、初期に極少量加えることが望ましい。添加量は、ササ葉50kgに対して、0.01モル〜20モル、好ましくは0.1〜10モルである。
【0029】また、全置換工程を通じて酸素や光を遮断した条件で、さらには窒素等不活性ガス雰囲気下で行うことで、より酸化を抑えることもできる。この鉄置換工程の最後には、水洗をし、過剰な鉄イオン、酸化防止剤、還元剤、或いはアミノ酸、アミン化合物等が除去される。
【0030】以上のように、水溶媒中で酸化防止剤、還元剤或いはアミノ酸、アミン化合物の存在下に鉄置換処理されたササ葉は、ついで塩基性化合物水溶液による抽出工程に付される。ここで使用される塩基性化合物の種類は、前述の塩基性化合物水溶液中での加熱処理工程で使用されるものと同様のものであってよい。処理時間の短縮、コスト等の問題から、第1工程と同様に、水酸化ナトリウムが好ましく、このような一価強塩基性化合物の場合、被処理葉1重量部に対して0.1〜10モルの濃度の塩基性化合物水溶液1〜20重量部が使用される。pHは12以上であることが望ましい。
【0031】抽出温度は、時間の短縮等のために、沸騰温度である100℃が好ましい。抽出時間は抽出処理が完全に達成される十分な時間であるべきであり、通常、30〜150分の間である。処理時間が足りないと、抽出が不完全であり、収率の低下をきたすし、余り多すぎると、酸化や、分解等によって、最終的に得た抽出液の粘度上昇や褐変等を招く。
【0032】抽出終了後、固液分離する際には、金属製の網やアルカリに強い素材で出来ている布を用いて圧搾濾過するなどの方法を取ることができる。ササ抽出液は空気と触れると褐色となり、密閉或いは空気遮断状態では緑色に変化する特性を有する。また、ササ抽出液を中和してpHを弱アルカリ性以下にすると、開放条件でも緑色を保持する特性を有する。これはおそらく、鉄クロロフィリンの鉄に酸素が配位することによるものと思われ、またこれが、pHによって、親和性が可逆的に変化することよる現象と思われる。これはアルカリ性で還元剤を加えると、鮮緑色となることからも確認できる。
【0033】本発明においては、さらに、このササ抽出液を二分割し、一方の部分に酸を加えて沈澱を生成させ、遠心分離等することによって緑色の強い鉄クロロフィリン類からなる沈殿部分と、溶液部の褐色の強い混液とに分離できる。そして、この緑色の強い鉄クロロフィリン類からなる沈澱部分を、2分割した他方のササ抽出液部分に加えることで、後工程で中和した際により緑色の強い液を得ることができ、その上、前記最終工程であるアルカリ水溶液による抽出工程から得られる鉄クロロフィリン含有抽出液よりも大幅に鉄クロロフィリン成分含量が増加せしめられた濃厚液を製造することができ、この濃厚液も本発明の範囲に含まれる。なお、上記酸析工程で沈殿部分を分離した後に残る溶液部分は、たとえば、抗菌剤等として利用することができる。
【0034】前記アルカリ水溶液による抽出工程から得られる鉄クロロフィリン含有抽出液は、他の濃縮法、すなわち凍結乾燥法や逆浸透法、加熱濃縮法を適用して濃縮しても、最終的に色の良い緑色の濃厚抽出液を得ることは非常に難しい。これは、褐色成分も同時に濃縮されるために、最終的に緑色成分よりも、褐色成分の褐色が勝ってしまうことによるものと考えられる。
【0035】また、この鉄クロロフィリン成分からなる沈澱部分をササ葉抽出液に加える比率により、製品としても抽出液の鉄クロロフィリンの濃度を自由に設定することができる利点も有する。製品抽出液の濃度に特に制限はないが、通常、0.1重量%〜2.0重量%程度であることが望ましい。この範囲より低いと生理活性物質濃度が低く、また高過ぎると粘度上昇などで後の工程で支障が生じる。
【0036】鉄クロロフィリン類を分離する方法としては、他に、溶媒分画による方法、カルシウム塩として得る方法、カラムクロマトグラフィーを用いる方法等を採用することもできる。
【0037】この酸析に使われる酸としては、pHを酸性にすることができるかぎり、特に制限はなく、無機酸、有機酸のいずれも使用可能である。例えば塩酸、硫酸、酢酸、硝酸、クエン酸、燐酸等が使用できるが、安全性、コスト、その後の工程等を勘案して、塩酸が最も好ましい。ただし、酢酸等の有機酸を使用した場合、鉄クロロフィリンの分解が起こりにくいので、これら有機酸の使用が適する場合もある。
【0038】酸析工程の条件としては、温度が低い程大きな分離し易い沈澱が出来易いことから、通常、15℃以下で行われ、特に10℃以下が好ましい。酸析の際のpHは、酸性域のpHである限り特に制限はない。通常、pH5.0以下で行われるが、余り低いと、Feの遊離が懸念される。生成した沈澱の分取方法としては、通常の濾過法では目詰まりや収率の低下が起こるため、遠心分離が好ましい。この酸析工程では、鉄置換率の低いササ抽出液の場合は、鉄が遊離するような分解を生じるが、本発明の方法のようにほぼ完全に鉄置換されているササ抽出液の場合は分解を極めて低いレベルに抑制することができる利点がある。
【0039】又分離後、水で沈澱を洗う工程を設けることによって、残存する褐色成分の除去と共に、生成した食塩や塩素イオンを除き、最終的に食塩や塩化カリウム等の塩の残存を防ぐことが望ましい。これらの物質の最終抽出液への混入を防ぐために、最終工程近くにさらに脱塩の工程を設けても良い。水洗された沈澱物は、緑色の、主に鉄クロロフィリンより成っているため、先のササ抽出液部分に加えることで、鉄クロロフィリン等の濃度を高め、少量の摂取で生理活性を発揮することのできる抽出液を製造することができる。沈殿成分を抽出液成分に溶解させる方法は、沈澱成分はアルカリ性で溶解するので、攪拌によって溶解させることも可能であるが、必要に応じて、ホモジナイザー等を用いて溶解を補助しても良い。
【0040】また、酸析をしていない抽出液部分は、酸析で除かれる有益な液体成分をも含んでいるので、前記沈殿部分によって鉄クロロフィリン成分の含有量を高めるとともに、抽出液が含有する有益な液体成分、たとえば糖類等の生理活性機能をも有効に利用することができる。最終抽出液の色は、褐色成分と緑色成分の比によって決まるため、この様な方法を取ることで、ササ抽出液中に含まれる糖類等の生理活性成分を含みながら、見栄えの良い、ササのイメージを保った緑色の抽出液を得ることができる。
【0041】なお、前記酸析工程から得られる沈殿成分は、前記アルカリ抽出工程からの抽出液ではなく、鉄置換工程を経ていない、従来の種々のササ抽出液に添加して使用してもよい。この場合には、ササ葉中に含まれているままの成分に鉄クロロフィリンを添加含有させることとなり、鉄クロロフィリンが増強された飲料等を製造することができる。
【0042】前記した鉄クロロフィリンを含有するササ葉のアルカリ抽出液は、特有な香りのする、わずかに粘調な液体であって、かつ強アルカリ性であり、さらにササ葉由来のケイ酸成分を多量(約1000ppm〜5000ppm)に含むため、このままでは飲用等の使用に適さない。それ故、前記のように得られた濃縮アルカリ抽出液は、各種有機酸、無機酸、イオン交換樹脂等で中和し、その後脱シリカすることではじめて飲用等に適し、広く医薬品、医薬部外品、化粧品、健康食品等に使用できるササ抽出液とされる。
【0043】この中和、脱シリカ法としては、特開平5−97692号公報に記載された方法等を採用することができる。具体的には、鉄クロロフィリンを含有するササ抽出液を有機酸、無機酸で中和する方法や、イオン交換樹脂を用いる方法などがあり、酸は使用目的を損なわない限りどんなものでも用いることができる。例えば、塩酸を用いた場合のNaClのような塩の生成により最終製品の品質に影響を与える場合があるので、そのような塩の生成を伴わないイオン交換樹脂による中和方法が好ましい。イオン交換樹脂としては、強酸性、弱酸性イオン交換樹脂のいずれも使用することができるが、温和な条件での中和が可能なことと、有用成分の吸着ロスが少ないことから、弱酸性イオン交換樹脂を用いての中和が望ましい。
【0044】イオン交換樹脂での中和法としては、カラムの中にイオン交換樹脂を充填しておき、このカラム中に抽出液を導通して中和を行うカラム法と、槽内に、イオン交換樹脂を入れておき、ここに抽出液を導入して攪拌混合して中和し、抽出液のみを、網仕切等を通して分離して取り出すバッチ法などがあるが、どちらの方法を採用してもよい。中和処理温度は、20℃〜40℃付近が望ましく、この範囲以下だと中和反応に時間がかかるし、温度が高すぎると後述のような加熱効果により、中和処理中にケイ酸の析出を招く。
【0045】アルカリ性ササ抽出液は中和することによって、前記したように、鮮緑色へと変化する。この変化は、およそpH9付近よりはじまる。この中和液はササの香りがして緑色を呈し、抽出時等の量比にもよるが極くわずかに粘性のある液体である。
【0046】中和した抽出液を脱シリカするために、次に加熱を行う。この際、鉄置換時に酸化防止剤、還元剤、或いはアミノ酸、アミン化合物を加えていない抽出液であると、すみやかに褐変してしまう。抽出液を、中和後、そのままの温度で放置するだけでも、シリカ析出は起こるが、加熱することで加速し、分離し易い固いゲル状態にすることができる。温度は50℃〜100℃で行われるが、90℃前後がより好ましい。スケールの大きい際には、ゲルを破砕しない程度に、ゆるやかに攪拌することで加熱の均一化を図る。また加熱状態での放置時間は、長い方がよいが、成分の分解を避けるためには1 時間前後が好ましい。この際、極く僅かに残存する鉄イオンによる鉄置換が追加的に生起する。
【0047】こうして析出した主にシリカより成る成分の分離には、自然濾過や、遠心分離等を採用することができるが、この析出物は、ゲル状で軟らかく、目詰まりし易く、また目漏れし易い等の特徴を有するために、遠心分離や加圧、減圧等の圧力のかかる方法よりも、自然濾過が望ましい。また、濾布としては目詰まりが少なく、除去もしやすい等の理由から不織布が好ましい。この濾過工程は、熱時及び冷却後のどちらでも良い。脱シリカ処理によって抽出液のシリカ濃度を100〜500ppmとすることが好ましい。
【0048】この脱シリカされた抽出液は、その使用目的により様々な剤形に加工することができる。液状のまま瓶等の容器に充填し、滅菌等の工程を経て液剤として供与することもできるし、さらに抽出液を、減圧濃縮、逆浸透膜濃縮、フリーズドライしたり、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等に加工しても良い。
【0049】
【実施例】実施例1(アルカリ加熱処理工程):ステンレス製槽を使用し、6Lの水に24.5%NaOH水溶液82mlを加えて加熱沸騰させ、300gのササを浸漬して20分間煮沸処理した。その後、ササを取り出してよく水洗した。
(鉄置換反応工程):別に、6Lの水を沸騰させ、塩化第一鉄・水和物3.6g、アスコルビン酸8.0gを加えた後、前記の水洗したササを浸漬し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整して60分間煮沸を継続した。その後、ササを取り出してよく水洗した。
(アルカリ抽出工程):蒸留水1.5Lに24.5%NaOH水溶液150mlを加えて加熱沸騰させ、置換反応工程から得られたササを浸漬し、攪拌しながら70分煮沸を継続した。ついで、煮沸処理液から処理葉を除いて、緑色の鉄クロロフィリン類を含有するササ抽出液1.3Lを得た。
(酸析工程):アルカリ抽出工程から得られた抽出液400mlを5℃付近にまで冷却した後、25%HClを加えてpH2.5付近に調整し、生じた沈澱を遠心分離して採取し、水洗して、沈殿物100g(湿ケーキ)を得た。
(混合・溶解工程):抽出工程から得られたササ抽出液260mlを採り、酸析工程から得られた沈澱物100g(湿ケーキ)を加えて溶解させた。
(脱シリカ工程):混合・溶解工程から得られた溶解液を弱酸性イオン交換樹脂(H型)を用いて中和し、中和後、88℃にまで加熱し、析出したゲル状ケイ酸を濾過除去した。緑色の鉄クロロフィリン類を含有するササ抽出液200mlが得られた。
【0050】実施例2(アルカリ加熱処理工程):ステンレス製槽を使用し、6Lの水に24.5%NaOH水溶液82mlを加えて加熱沸騰させ、300gのササを浸漬して20分間煮沸処理した。その後、ササを取り出してよく水洗した。
(鉄置換反応工程):別に、6Lの水を沸騰させ、塩化第一鉄・水和物3.6gを加えた後、アルカリ加熱処理工程から得られた水洗ササを浸漬し、水酸化ナトリウム水溶液でpH6に調整して50分間煮沸したところでヒスチジン7.0gを添加し、さらに10分間煮沸を続けた。その後、ササを取り出してよく水洗した。
(アルカリ抽出工程):蒸留水1.5Lに24.5%NaOH水溶液150mlを加えて加熱沸騰させ、鉄置換反応工程から得られたササを浸漬し、攪拌しながら70分煮沸を継続した。ついで、煮沸処理液から処理葉を除いて、緑色の鉄クロロフィリン類を含有するササ抽出液1.3Lを得た。
(酸析工程):抽出工程から得られたアルカリ抽出液400mlを5℃付近にまで冷却した後、25%HClを加えてpH2.5付近に調整し、生じた沈澱を遠心分離によって採取し、水洗して、沈殿物100g(湿ケーキ)を得た。
(混合・溶解工程):抽出工程から得られたササ抽出液260mlに酸析工程から得られた沈澱物100g(湿ケーキ)を加えて溶解させた。
(脱シリカ工程):混合・溶解工程から得られた溶解液を弱酸性イオン交換樹脂(H型)で中和し、中和後、88℃にまで加熱し、析出したゲル状ケイ酸を濾過除去した。緑色の鉄クロロフィリン類を含有するササ抽出液200mlが得られた。
【0051】実施例3(アルカリ加熱処理工程):ステンレス製槽を使用し、6Lの水に24.5%NaOH水溶液82mlを加えて加熱沸騰させ、300gのササを浸漬して20分間煮沸処理した。その後、ササを取り出してよく水洗した。
(アルカリ抽出工程):蒸留水1.5Lに24.5%NaOH水溶液150mlを加えて加熱沸騰させ、アルカリ加熱処理工程から得られたササを浸漬し、攪拌しながら70分煮沸を継続した。ついで、煮沸処理液から処理葉を除いて、緑色のササ抽出液1.3Lを得た。
(混合・溶解工程):上記アルカリ抽出工程から得られたササ抽出液260mlに、実施例1の方法における酸析工程から得られた沈澱物100g(湿ケーキ)を加えて溶解させた。
(脱シリカ工程):上記混合・溶解工程から得られた溶解液を弱酸性イオン交換樹脂(H型)で中和し、中和後、88℃にまで加熱し、析出したゲル状ケイ酸を濾過除去した。緑色の鉄クロロフィリンを含有するササ抽出液200mlが得られた。
【0052】以上の実施例1及び2で得られた鉄クロロフィリンを含有するササ抽出液は、従来の鉄クロロフィリン含有ササ抽出液に比べて鉄クロロフィリン含有量が大幅に増加されていることに加えて、経時安定性が向上し、その色調も従来品と変わらない緑色であり、パネラー10人による飲料としての評価テスト結果は、表1に示すように、従来品との比較で、従来品に勝るか、又は差異がないとの評価を得た。また、実施例3で得られたもの、すなわちアルカリ加熱処理葉から、鉄置換処理を施すことなく、直接アルカリ抽出して得た抽出液に、鉄クロロフィリン含有沈殿物を溶解し、同様に弱酸性イオン交換樹脂(H型)で中和し、中和後、88℃にまで加熱し、析出したゲル状ケイ酸を濾過除去したものについての評価結果も従来品に勝る評価を得た。
【0053】
【表1】

【0054】
【発明の効果】本発明によれば、全工程を通じて水系溶媒を使用して、葉質が堅牢なササの葉中のクロロフィル類の鉄置換を完全に達成し、鉄クロロフィリンとして容易に抽出することを可能とする方法を提供することができ、かつ、ササ抽出液のもつ緑色の色調を保持しながらクロロフィリン成分の含有量が飛躍的に高められており、経時安定性の高いササ抽出エキスが提供される。
【0055】また、本発明の方法は、高価で危険な有機溶媒を使用しない方法であるため、製造側、消費者側双方に安全であるし、得られる抽出液には、ササ中の水溶性の他物質も抽出されて含まれているため、鉄クロロフィリンの生理活性機能に加えて、糖類等の生理活性物質も加わった生理活性機能の優れた抽出液を提供することができ、広く健康増進に役立つ医薬品、医薬部外品、化粧品等を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】591240940
【氏名又は名称】株式会社大和生物研究所
【出願日】 平成10年9月2日(1998.9.2)
【代理人】 【識別番号】100089428
【弁理士】
【氏名又は名称】吉嶺 桂 (外1名)
【公開番号】 特開2000−69946(P2000−69946A)
【公開日】 平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願番号】 特願平10−262274