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【発明の名称】 加熱殺菌方法
【発明者】 【氏名】美濃部 富男

【要約】 【課題】大気圧近くまで減圧した過熱蒸気とマイクロ波とを被殺菌物に与えて殺菌する加熱殺菌方法を提案する。

【解決手段】ボイラ57から送られる5〜10Kg/cm2G程度の飽和水蒸気B1を減圧弁59によって0.1〜0.7Kg/cm2G程度まで減圧した後、この水蒸気B1を加熱ヒ−タ−60によって110〜300℃程度まで昇温して過熱蒸気B2とし、この過熱蒸気B2をマイクロ波加熱室50に送り、このマイクロ波加熱室50内において、マイクロ波と過熱蒸気とを被殺菌物Aに与えて急速加熱し、被殺菌物Aを殺菌する方法となっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 マイクロ波加熱室内でマイクロ波エネルギ−と水蒸気エネルギ−とを被殺菌物に与えて殺菌する加熱殺菌方法において、水蒸気の圧力を大気圧近くまで減圧すると共に、この水蒸気の温度を110〜300℃程度まで昇温してマイクロ波加熱室内を過熱蒸気の雰囲気状態とし、被殺菌物にマイクロ波と水蒸気とを与えて加熱殺菌することを特徴とする加熱殺菌方法。
【請求項2】 マイクロ波室内に熱風を送り、マイクロ波加熱室内の雰囲気である過熱蒸気を保温することを特徴とする請求項1記載の加熱殺菌方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、粉粒物食品である被殺菌物にマイクロ波と過熱蒸気とを与えて殺菌する加熱殺菌方法に関する。
【0002】
【従来の技術】粉粒物食品には、穀物、玄そば、豆類、香辛料、乾燥野菜、健康食品などがあるが、その種類が多く、また、その形状、粒度もさまざまで、3〜15%程度の水分をもっているものが多い。
【0003】このような粉粒物食品は、一般に乾燥、成熟、粉砕などの処理工程を得て加工されるため、非常に汚染されている場合がある。例えば、香辛料、玄そばなどは土壌菌などで極端に汚染され、菌数が105〜108(個/g)にもなる。
【0004】上記した粉粒物食品の殺菌には、殺菌効果の高い過熱蒸気を利用した気流式殺菌装置が広く使用されている。
【0005】この気流式殺菌装置は、粉粒物の搬送及び加熱に蒸気の気流を用いる。具体的には、殺菌の圧力を1〜3Kg/cm2G、温度を120〜260℃程度にした過熱蒸気を流速10〜30m/秒の高速でパイプ内を循環させ、そのパイプ内を粉粒物が浮遊しながら搬送、加熱される。
【0006】また、プラスチックフイルムを貼り合わせたパウジ(袋)や成形容器などに食品を詰めて密封されているレトルト食品の加熱殺菌には、レトルト殺菌装置が使用されている。
【0007】このレトルト殺菌装置は、圧力釜内にレトルト食品を入れ、圧力釜内に導入する蒸気や熱水によって、パウジや容器の食品を加熱し、食品の温度を、例えば、120℃で3分間保つこにより、食品を加熱殺菌する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記した気流式殺菌装置による殺菌方法は、急速な加熱が可能であり、殺菌効果の高い殺菌方法であると言われている。
【0009】しかし、この殺菌方法を実施するには、粉粒物を加圧系内に供給する手段や粉粒物を蒸気と分離して加圧系外に捕集する機構などの圧力シ−ル等が複雑となり、殺菌装置が高価なシステム構成となる。また、粉粒物を気流で搬送する構成であるため、レトルト食品のような嵩張った食品については殺菌することができない。
【0010】上記したレトルト殺菌装置による殺菌方法は、圧力釜内に導入される蒸気や熱水より、パウジや成形容器を介して食品の表面より中心へ熱伝達して殺菌する方法である。
【0011】したがつて、例えば、120℃まで昇温する時間が40分程度かかるため、食品の表面が高温に長時間さらされることになり、このことから、食品の味、香り、食感などの品質が低下すると言う問題がある。
【0012】また、このレトルト殺菌装置による殺菌方法は、圧力釜による加圧加熱法となるために、粉粒物の連続殺菌化が難しいことから、粉粒物食品の生産上において問題となっている。さらに、圧力釜を使用するため、安全性の面で保守、点検、管理が大変となる。
【0013】本発明は、上記した実情にかんがみ、常圧(大気圧)に近い過熱蒸気とマイクロ波を併用して被殺菌物を短時間で殺菌する加熱殺菌方法を提案することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するため、本発明では、マイクロ波加熱室内でマイクロ波エネルギ−と水蒸気エネルギ−とを被殺菌物に与えて殺菌する加熱殺菌方法に関する。
【0015】そして、この発明では、水蒸気の圧力を大気圧近くまで減圧すると共に、この水蒸気の温度を110〜300℃程度まで昇温してマイクロ波加熱室内を過熱蒸気の雰囲気状態とし、被殺菌物にマイクロ波と水蒸気とを与えて加熱殺菌する構成となっている。
【0016】また、この発明は、マイクロ波室内に熱風を送り、マイクロ波加熱室内の過熱蒸気を保温する構成としてある。
【0017】
【作用】この発明は温度100〜110℃程度の飽和水蒸気をほぼ大気圧(常圧)近くまで減圧した状態で、この水蒸気を電気ヒ−タ−、ガスヒ−タ−などの熱源を利用して110〜300℃まで昇温する。この昇温によってマイクロ波加熱室内が過熱蒸気の雰囲気状態となる。
【0018】これより、マイクロ波加熱室にある被殺菌物が、水蒸気によって表面から昇温すると同時にマイクロ波の照射によって内部が発熱する。この結果、被殺菌物の内外部から均一に急速加熱して殺菌することができる。なお、本発明は人間の食品にかぎらず、動物の食品についても同様に殺菌することができる。
【0019】また、本発明は、過熱蒸気の温度が飽和温度以下に降下し、被殺菌物が吸湿したり、また、マイクロ波加熱室の内壁面や被殺菌物を出し入れするマイクロ波加熱室の開口部内壁に水滴が付着することを防ぐため、温度調節できる熱風発生機を使ってマイクロ波加熱室内に熱風を送る手段を採用している。
【0020】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態について図面に沿って説明する。図1は本発明の加熱殺菌方法を実施するための加熱殺菌装置を示す機構図である。
【0021】この図において、50は断熱構造としたマイクロ波加熱室で、この加熱室50の左右側にはマイクロ波漏洩防止対策を施したフィルタ−付の開口部51、52が設けてある。
【0022】また、このマイクロ波加熱室50には、被殺菌物Aを開口部51から52に向かって移送する搬送ベルト53が設けてある。なお、この搬送ベルト53はモ−タ54によって駆動する。
【0023】さらに、マイクロ波加熱室50の開口部51、52には過熱蒸気の排気ダクト55、56を接続し、これら排気ダクト55、56を手動式ダンパ−として排気量を調整する構造となっている。なお、必要に応じ排気ブロア−に接続して強制排気するようにしてもよい。
【0024】一方、ボイラ57より送られる5〜10(Kg/cm2G)程度(ゲ−ジ圧力)の飽和水蒸気B1は、仕切弁58を経て圧力調整用の減圧弁59により、その圧力を0.1〜0.7(Kg/cm2G)程度に減圧調整する構成としてある。
【0025】さらに、このように減圧された飽和水蒸気B1は、電気ヒ−タ−やガスヒ−タ−などからなる熱交換式加熱ヒ−タ−60によって、温度110〜300℃程度まで昇温させて過熱蒸気B2を生成する。なお、過熱蒸気B2は、マイクロ波加熱室50と加熱ヒ−タ−60とを接続する配管61の一部に設けた温度センサ−62の検出信号にしたがって予め設定した温度に調整するようにしてある。
【0026】このように生成された過熱蒸気B2は配管の吹出孔63a、63b、63c・・・・・よりマイクロ波加熱室50内に吹き出し、この加熱室50内に充満する。
【0027】他方、マイクロ波加熱室50の底面側には、リタ−ンダクトに接続した耐熱用の循環ファン64と、加熱ヒ−タ65と、吹き出しダクトの一部に設けた熱風温度センサ−66とによって構成した熱風発生機が配備してある。
【0028】この熱風発生機の循環熱風温度は予め設定した温度になるように熱風温度センサ−66の検出信号にしたがってコントロ−ルする。このことから、マイクロ波加熱室50内の過熱蒸気がこの熱風発生機の熱風によって循環されながら熱が補充され、この過熱蒸気の温度が保温される。
【0029】またマイクロ波は、マイクロ波発振機67より発振され、導波管68の先端の照射口よりマイクロ波加熱室50内に照射される。なお、マイクロ波の照射口には、テフロン、セラミック、石英ガラス等の材料を用いたシ−ル板69を設け、導波管68内への過熱蒸気の侵入を防ぐようにしてある。
【0030】次に、上記した加熱殺菌装置を用いた殺菌方法について説明する。先ず、マイクロ波加熱室50に被殺菌物Aを搬入する前に循環ファン64と加熱ヒ−タ−65を動作させて熱風発生機を運転し、マイクロ波加熱室50内やその左右側の開口部51、52の内壁を昇温させる。
【0031】これは、マイクロ波加熱室50の内壁や被殺菌物の温度が低い場合に、過熱蒸気の熱が奪われ、この過熱蒸気の温度が下がることによって発生する水滴を防止するためである。
【0032】続いて、仕切弁58を開いて飽和水蒸気B1を減圧弁59に送り、この減圧弁59によりこの水蒸気B1を所定圧力にまで減圧する。このように減圧された飽和水蒸気B1が加熱ヒ−タ−60に送られ、この加熱ヒ−タ−60によって目的の所定温度(110〜300℃)に昇温された過熱蒸気B2が配管61より送り出される。
【0033】このように送り出される過熱蒸気B2は、既に述べたように、0.1〜0.7(Kg/cm2G)の圧力で、110〜300℃の温度となっており、この過熱蒸気B2が吹出口63a、63b、63c・・・・・よりマイクロ波加熱室50内に放出される。
【0034】また、マイクロ波加熱室50に放出された過熱蒸気が冷たい部所に触れると結露が発生するため、循環ファン64と加熱ヒ−タ−65を常時運転し、過熱蒸気の温度を低下させずに、設定過熱温度を保ち続けるように熱の補給を行なう。
【0035】このように過熱蒸気の雰囲気状態としたマイクロ波加熱室50内に被殺菌物Aを搬送ベルト53に乗せて開口部51より順次送り込む。これにより、被殺菌物Aが過熱蒸気により外面から加熱され、また、マイクロ波の照射を受けて分子振動を起こし内部から発熱することから、被殺菌物Aの内外が均一に高速加熱殺菌処理される。
【0036】なお、殺菌された殺菌物は開口部52から順次搬送され、その後、必要に応じて冷却工程を経て冷却される。
【0037】また、この加熱殺菌装置は、左右の排気ダクト55、56によって、マイクロ波加熱室50に供給される過熱蒸気B2の分量だけ常時排出させる。このことから、過熱蒸気の圧力が若干程度(0.1〜0.7Kg/cm2G程度)存在しても、マイクロ波加熱室50が開放されるため、圧力シ−ルや加圧構造が不要となり、また、搬送ベルト53を使った連続加熱殺菌が可能になる。
【0038】次に、本発明の加熱殺菌方法をいて実際に殺菌を行なった実験設備と実験デ−タについて述べる。
実験設備 〇 マイクロ波加熱装置 マイクロ波最大出力 : 0〜1.5KW×2台(0〜3KW)
オ−ブン寸法 : 800W×830L×850Hmm 回転テ−ブル : 600φ スタラファン : 電波撹拌機 熱風循環発生機 : ヒ−タ−容量5KW(自動温調回路付)
耐熱循環ファン4m3/分 循環量:手動ダンパ−付 排 気 : φ100mm手動ダンパ−付 〇 過熱蒸気供給装置 ボイラ− : 最大蒸発量60kg/Hr 最大圧力5.5Kg/cm2G ス−パ−ヒ−タ− : ヒ−タ−容量6KW(自動温調回路付)
過熱蒸気圧力 最大0.7Kg/cm2G 〇 計 測 器 温度計 : 光ファイバ−温度計 安立計器 AMOTH FX8000 重量計 : SINKO DENSI SG−10K〇 実験原料実験例 1品名 : 玄そば(そば殻付)
処理前菌数 : 2.8×106個/g実験例 2品名 : そば粉処理前菌数 : 4.5×105個/g【0039】実験デ−タ【数1】

【0040】実験結果そば殻をかぶった玄そば全般において、また粉に引いたそば粉の一番条件の厳しいそば粉Cにおいても、外観上の色については、変色は見られず、そば粉に対する吸湿はなく、むしろ若干乾燥気味で非常に良好な結果であった。そば粉について実際にそばを打って、試食したが、程々の香りと粘り具合も満足する結果が得られた。
【0041】
【発明の効果】上記した通り、本発明に係る加熱殺菌方法によれば、マイクロ波加熱室内を大気圧に近い圧力の過熱蒸気の雰囲気下に被殺菌物を配置し、この被殺菌物にマイクロ波を照射して殺菌することから、被殺菌物の内外から急速加熱して殺菌することができる。
【0042】この結果、高速殺菌できる他、熱に敏感な食品や外形がパウジ或いは成形容器で包装された食品についても充分な殺菌を行なうことができる。
【0043】また、過熱蒸気を使用しても加圧構造とならないので、圧力構造やシ−ル対策を必要としないから、この面でコスト、管理、安全性に有利な加熱殺菌方法となる。
【出願人】 【識別番号】000114031
【氏名又は名称】ミクロ電子株式会社
【出願日】 平成10年8月18日(1998.8.18)
【代理人】 【識別番号】100076196
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 寛治
【公開番号】 特開2000−60511(P2000−60511A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−246540