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【発明の名称】 ロングライフスクランブルエッグフィリング
【発明者】 【氏名】山本 浩三

【氏名】千葉 みのり

【氏名】田渕 歩

【氏名】松崎 成秀

【氏名】岸田 謙一

【氏名】牧之段 賢一

【要約】 【課題】フンワリした柔らかい食感を有するスクランブルエッグを提供し、更には、このスクランブルエッグとマヨネーズを混合して成る保存性の優れた、所謂「ロングライフスクランブルエッグフィリング」と呼ばれている、スクランブルエッグフィリングを提供すること。

【解決手段】増粘多糖類0.15重量%〜0.35重量%、澱粉類0.2重量%〜1.0重量%及び油脂1.5重量%〜3.5重量%を配合されて成る、スクランブルエッグ、及び該スクランブルエッグ30重量%〜90重量%、及びマヨネーズ70重量%〜10重量%が配合されて成る、スクランブルエッグフィリング、並びにそれらの製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 増粘多糖類0.15重量%〜0.35重量%、澱粉類0.2重量%〜1.0重量%及び油脂1.5重量%〜3.5重量%が配合されて成る、スクランブルエッグ。
【請求項2】 更に、キレート剤0.6重量%〜2.0重量%が配合されている請求項1記載のスクランブルエッグ。
【請求項3】 各種成分を配合した卵中に直接蒸気を注入して加熱することから成る、請求項1又は2記載のスクランブルエッグの製造方法。
【請求項4】 各種成分を配合した卵が配管中を移動する際に直接蒸気を注入することにより、76℃〜90℃で30秒〜2分間加熱することを特徴とする、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】 スクランブルエッグ30重量%〜90重量%、及びマヨネーズ70重量%〜10重量%が配合されて成る、スクランブルエッグフィリング。
【請求項6】 請求項1又は2記載のスクランブルエッグ及びマヨネーズを混合攪拌し、その後、加熱殺菌することから成る、請求項5記載のスクランブルエッグフィリングの製造方法。
【請求項7】 耐熱性マヨネーズを使用することを特徴とする、請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】 70℃〜80℃で30分間〜45分間加熱殺菌することを特徴とする、請求項6又は7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フンワリした柔らかい食感を有するスクランブルエッグ及び保存性に優れたスクランブルエッグフィリング並びにそれらの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、スクランブルエッグはホテルの朝食、給食、ファーストフード、コンビニエンスストアー、ファミリーレストランといった外食分野において出現頻度の高い食材であり、冷凍食品又はショートライフ品として多数製造及び販売されている。しかしながら、冷凍食品に於いては、凍結により組織の損傷および蛋白質の変成が見られ、更には解凍時に離水が生じて製品がスポンジ状となり、その食感はきわめて悪いなどの品質上の問題がある。また、使用時において冷凍品を解凍しなければならないという余分な作業が発生し、大量に使用するようなときには、厨房などの狭いスペースでは作業スペースに支障を来す場合が有る。解凍時のスポンジ化防止の為に、従来から、澱粉、油、増粘剤、ポリリン酸塩、ショ糖、脂肪酸エステルなどを単独または適宜組み合わせて液卵に添加したり、凍結速度及び凍結方法等の調整が行われてきたが、未だ、十分な食感を得るまでには達していない。一方、ショートライフ品においてはその保存性に問題があり、利便性に欠けるという問題点を有する。
【0003】また、一般に卵を加熱加工する際には、硫化水素か発生して卵自体が速やかに硫化黒変するという品質上の問題が有る。更に、スクランブルエッグを大量に製造しようとする場合に蒸気式ニーダー又は直火釜を用いると、均一かつ適度な柔らかさを有し、かつ、塊の大きさもある程度均一にし、さらに焦げを発生させることなくスクランブルエッグを製造することは困難であった。そこで、これらの問題点を解決する方法として、粉末卵を使用する方法、更に、蒸気を注入して80℃で3〜13分間加熱する方法、一部変性卵または加熱変性しない副食品用原料を配合する方法(特開昭60−232077号)等が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、フンワリした柔らかい食感を有するスクランブルエッグを提供し、更には、このスクランブルエッグとマヨネーズを混合して成る保存性の優れた、所謂「ロングライフスクランブルエッグフィリング」と呼ばれている、スクランブルエッグフィリングを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、増粘多糖類0.15重量%〜0.35重量%、好ましくは0.20重量%〜0.30重量%、澱粉類0.2重量%〜1.0重量%、好ましくは0.4重量%〜0.8重量%、及び油脂1.5重量%〜3.5重量%、好ましくは1.5重量%〜2.5重量%を配合されて成る、スクランブルエッグに係わる。これらの各種配合成分は、本発明のスクランブルエッグにフンワリした柔らかい食感を与える為に必須の配合成分である。更に、本発明のスクランブルエッグにキレート剤0.6重量%〜2.0重量%好ましくは0.6重量%〜1.0重量%が配合されていることが好ましい。キレート剤は、加熱に際して卵に生じる硫化黒変を防止する効果がある。本発明は、又、こうしたスクランブルエッグの製造方法であって、各種成分を配合した卵中に直接蒸気を注入して加熱することから成る、前記製造方法に係わる。本発明で使用する卵は、通常、「液卵」と呼ばれる白身も含んだ液状の全卵が好ましいが、その他にも、黄身だけの卵、又は、加熱等による変性卵及び一部変性卵等も適宜使用することができる。蒸気による加熱は76℃〜90℃で30秒〜2分間、好ましくは、78℃〜82℃で45秒〜1分間行うことが好ましい。尚、かかる液卵等を配管中に流す際に直接蒸気を注入して加熱することにより、スクランブルエッグを連続的に生産することが出来る。このため、生産効率及び経済性の点からこの加熱方法が好ましい。この際の液卵等の流速は当業者が適宜定めることができるが、通常、350kg/hr〜 800kg/hr の範囲である。蒸気を液卵等の移動方向に沿って配管中に注入することで、加熱により蛋白が凝固状態になったスクランブルエッグを配管中でスムースに流すことができる。かかる蒸気による加熱を行う為の装置自体は当業者には公知であり市販されている。
【0006】本発明は、更に、本発明のスクランブルエッグ30重量%〜90重量%、及びマヨネーズ70重量%〜10重量%が配合されて成る、スクランブルエッグフィリングに係わる。本発明は、又、本発明のスクランブルエッグ及びマヨネーズを混合攪拌し、その後、加熱殺菌することから成る、上記スクランブルエッグフィリングの製造方法にも係わる。スクランブルエッグとマヨネーズを混合攪拌することによって製品全体のpHが下がり、かかるpHの低下による静菌作用によってスクランブルエッグフィリングの保存性を高めることが出来る。加熱殺菌は当業者には周知の任意の手段・方法で行うことができる。又、その条件も当業者が適宜選択できるものであるが、本発明のスクランブルエッグの有するフンワリとした食感を維持するには、出来るだけ、低温で短時間の加熱処理が望ましい。通常は、70℃〜80℃で30〜45分間程度である。こうして製造された本発明のスクランブルエッグフィリングは、冷蔵下で保存することで、フンワリとした食感を長期間維持することが可能な、所謂「ロングライフスクランブルエッグフィリング」である。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明方法において用いることの出来る増粘多糖類としては、本発明スクランブルエッグにフンワリとした柔らかい食感を与える為に必要な配合成分であり、従来から当該技術分野で公知のいずれのものも使用できる。代表例としては、例えば、キサンタンガム、コンニャクマンナン、ローカストビーンガム、グアガム、ペクチン、アラビアガム、タマリンドガム、アルギン酸ソーダ、カラヤガム、トラガントガム、寒天、カラギーナン、ファーセルラン、プルラン、ゼラチン等がある。澱粉類としては、従来から当該技術分野で公知のいずれのものも使用できる。例えば、馬鈴薯澱粉、小麦粉澱粉、トウモロコシ澱粉、その他の澱粉、あるいは化工澱粉を用いることができる。油脂としては、従来から当該技術分野で公知のいずれのものも使用することができる。キレート剤としては、従来から当該技術分野で公知のいずれのものも使用できる。例えば、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、グリシン等食品添加物として認められるものであれば何れのものも使用できる。
【0008】本発明において、「マヨネーズ」とは、必須原料として、植物油、食酢、食塩からなり、その他に糖類、調味料酸味料及び香辛料が適宜加えられた、日本農林規格に定義されている狭義の「マヨネーズ」に限らず、更に、澱粉糊及び乳化剤等も含有するサラダドレッシング等も含み、広く「半固体状ドレッシング」を意味するものである。本発明のスクランブルエッグ及びマヨネーズを混合攪拌し、通常は、当業者には周知の方法によってパウチ等で包装した後に、保存性を高める目的で加熱殺菌を施すので、マヨネーズとしては、耐熱性を有している、所謂「耐熱性マヨネーズ」を使用することが好ましい。耐熱性マヨネーズとは、加熱しても乳化状態が破壊されず油脂が分離することがないように処理されたマヨネーズである。かかる耐熱性をマヨネーズに付与する為に、従来から様々な処理方法が提案されている。例えば、マヨネーズに乳化安定剤として、澱粉を使用する方法(特開昭57−25183号)、豆乳及び大豆蛋白を添加する方法(特開昭57−186464号)、ポテト粉砕物、パン粉及び植物蛋白を使用する方法(特開昭57−115133号)、ラクトアルブミン、アルファデンプン及びデンプンペーストを使用する方法(特開昭59−66859号)、天然ガム質をしようする方法(特開昭62−244366号)、パーム油低融点画分と熱凝固性蛋白質を使用する方法(特開昭63−59867号)、セルロースIIの結晶形をもつセルロースとポリペプチド及び食用多糖類を使用する方法(特開平1−98448号)、単離ホエー蛋白質を使用する方法(特開平2−42943号)、キトサンを使用する方法(特開平4−53469号)、加熱処理したホエー蛋白質を使用する方法(特開平4−126050号)、食塩9〜13%添加卵黄をプロテアーゼ等の酵素で分解したものを使用する方法(特公平6−22461号)、及びゼラチンを使用する方法(特開平9−149772号)等が提案されている。又は、加熱しても卵の蛋白質が凝固せず乳化状態も破壊されないようにする為に、トリプシン処理した卵黄を使用する方法(特開昭58−51841号)、卵黄をホスホリパーゼAで変性させたりリポ蛋白を使用する方法(特公昭53−44426号)、及びバチルス属由来のグルタミナーゼ含有酵素を有効成分として含有させる方法(特開平9−224612号)がある。更に、マヨネーズ本体を80℃以上に急激に加熱した後に、直ちに急速冷却することによりマヨネーズに耐熱性を付与する方法(特開昭59−198956号)も提案されている。本発明にあっては、最終製品の品質等に応じて、上記の従来公知の耐熱性マヨネーズのいずれかを適宜選択して使用することができる。これらの耐熱性マヨネーズは市販されており、容易に入手可能である。又、マヨネーズにグリシン、酢酸Na及びポリリジン等の静菌剤を添加することで、本発明のスクランブルエッグフィリングの保存性を更に高めることができる。尚、本発明のスクランブルエッグ又はロングライフスクランブルエッグフィリングが有するフンワリとした柔らかい食感及び長期間の保存性を損なわない限り、上記成分以外のその他の添加剤を液卵又は得られたスクランブルエッグに適宜加えることも出来る。
【0009】
【実施例】以下、実施例を参照しながら本発明を具体的に説明する。本発明の技術的範囲が以下の実施例に限定されるものでないことは当業者には明らかである。尚、以下の実施例で使用した配合成分は具体的には次の通りである。
油:品名「なたねサラダ油」,能沢製油産業(株)製造,味の素(株)販売;キサンタンガム,大日本製薬(株)製造,メルシャン(株)販売;
化工澱粉:品名ネオビスC−6,日本食品化工(株)製造,東海澱粉販売;トリポリリン酸,太平化学産業(株)製造,三栄源エフ・エフ・アイ(株)販売。
【0010】
【実施例1】液卵106kgに油4kg、キサンタンガム0.2kg、化工澱粉0.5kg及びトリポリリン酸0.7kgをミキサーにて均一混合してスクランブルエッグ原液を作った。この原液が流速500kg/hrで流れる配管中に、80℃で1分間加熱されるよう調整された蒸気を直接注入することによってフンワリした食感のスクランブルエッグが100kg得られた。このものを自然に冷却しても硫化黒変を生ずることはなかった。
【0011】
【実施例2】液卵150kgに油4kg、キサンタンガム0.3kg、化工澱粉0.7kg及びトリポリリン酸1kgをミキサーにて均一混合してスクランブルエッグ原液を作った。この原液が流速500kg/hrで流れる配管中に、蒸気流量を変化させることによって、加熱温度を74℃〜92℃の範囲で2℃間隔で変化させて、数種類のスクランブルエッグを製造した。こうして得られたスクランブルエッグの柔らかさをテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製)で測定した。その結果を以下の表1に示す。かかる流速条件下では、温度が74℃以下では液卵が十分に蛋白凝固せず、又、92℃以上では目的とするフンワリとした食感のスクランブルエッグは得られなかった。
【0012】
【表1】

【0013】
【実施例3】液卵5kgに油0.2kg、キサンタンガム9g、及び化工澱粉0.24kgをミキサーにて均一混合した。これを各1kgに分け、夫々にトリポリリン酸を2,7,10,15,21gを加えてミキサーにて均一混合した。そして、各々を湯煎にて蛋白凝固させた後、パウチに密封し、80℃で30分間の加熱殺菌した。得られたもののうち、トリポリリン酸を2gしか添加しなかったものには硫化黒変が認められた。一方、21g添加したものは、食感が悪くなり、且つ、卵風味が落ちてしまい許容できるものではなかった。これらに対して、トリポリリン酸をその他の量で添加したものには、硫化黒変が認められず、食感も良かった。
【0014】
【実施例4】液卵40kgに油1.5kg、キサンタンガム0.76kg、及びトリポリリン酸0.3kgをミキサーにて均一混合した。これを各5kgに分け、夫々に化工澱粉を全体の0〜1.2重量%となるように0.2重量%毎に段階的に添加してホモジナイザーにて均一混合した。各々を湯煎にて加熱してスクランブルエッグを調製し、それらの食感を官能評価した。得られた結果を以下の表2に示す。この結果より、化工澱粉の添加量が1.2重量%以上のものはフンワリ感というよりネットリ感の方が強く感じられて許容できないものであった。
【0015】
【表2】

食感:専門パネラー5名による官能評価食感の点数:5・・とてもフンワリしている;
4・・かなりフンワリしている;
3・・フンワリしている;
2・・フンワリ感に欠ける;
1・・フンワリ感がない。
【0016】
【実施例5】液卵60kgに油2.25kg、化工澱粉0.36kg、及びトリポリリン酸0.45kgをミキサーにて均一混合した。これを各8kgに分け、夫々にキサンタンガムを全体の0.1〜0.4重量%となるように0.05重量%毎に段階的に添加してホモジナイザーにて均一混合した。各々を湯煎にて加熱してスクランブルエッグを調製し、それらの食感を官能評価した。得られた結果を以下の表3に示す。この結果より、増粘多糖類の添加量が0.4重量%以上のものはフンワリ感というよりネットリ感の方が強く感じられて許容できないものであった。
【0017】
【表3】

食感:専門パネラー5名による官能評価食感の点数:5・・とてもフンワリしている;
4・・かなりフンワリしている;
3・・フンワリしている;
2・・フンワリ感に欠ける;
1・・フンワリ感がない。
【0018】
【実施例6】実施例1で得られたスクランブルエッグ70kgに対し耐熱性マヨネーズ(味の素(株)業務用耐熱耐冷凍マヨネーズ)を30kg混合攪拌した後、その1kgをレトルトパウチに詰め75℃で30分間加熱殺菌を施した。このものを5℃で5週間保存したときの結果を表4に示す。この結果から、本製造法にて調製したロングライフスクランブルエッグフィリングは、調製後5週間を経てもその柔らかい食感が十分に保たれていることが分かった。
【0019】
【表4】
──────────────────────────────────── 製造直後 1週間後 2週間後 3週間後 4週間後 5週間後 ──────────────────────────────────── 食感 5 4 3.7 3.5 3.4 3.3────────────────────────────────────一般生菌数 <100 <100 <100 <100 <100 <100大腸菌群 陰性 陰性 陰性 陰性 陰性 陰性かび&酵母 <10 <10 <10 <10 <10 <10────────────────────────────────────食感:専門パネラー5名による官能評価食感の点数:5・・とてもフンワリしている;
4・・かなりフンワリしている;
3・・フンワリしている;
2・・フンワリ感に欠ける;
1・・フンワリ感がない。 【0020】尚、一般生菌数、大腸菌群及びかび&酵母は、食品衛生検査指針(社団法人日本食品衛生協会発行,第1刷,1990年12月25日)に記載された方法に基づいて検査したものである。
【0021】
【発明の効果】本発明によって、フンワリした柔らかい食感を有するスクランブルエッグが得られた。更に、このスクランブルエッグとマヨネーズを配合して成る本発明のスクランブルエッグフィリングは、冷蔵保存下で調製後5週間を経てもその柔らかい食感が十分に保たれていることが判明した。従って、本発明のスクランブルエッグフィリングは、保存性の優れた、所謂「ロングライフスクランブルエッグフィリング」ということができる。
【出願人】 【識別番号】591101504
【氏名又は名称】クノール食品株式会社
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【出願日】 平成10年8月14日(1998.8.14)
【代理人】 【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
【公開番号】 特開2000−60494(P2000−60494A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−229603