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【発明の名称】 卵食品及びその製造方法
【発明者】 【氏名】納富 達志

【氏名】山宮 豊

【要約】 【課題】酸性調味料と混合してあっても、凝固卵白部がソフトな食感を維持する卵食品を提供する。

【解決手段】メタリン酸塩を吸収してなる凝固卵白と酸性調味料とからなる卵食品。
【特許請求の範囲】
【請求項1】メタリン酸塩を吸収してなる凝固卵白と酸性調味料とからなる卵食品。
【請求項2】凝固卵白をメタリン酸塩溶液に浸漬処理後、酸性調味料と混合してなる卵食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸性調味料と混合しても、凝固卵白がソフトな食感を維持する卵食品とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】凝固卵白と酸性調味料を混合すると、保存期間中に卵白部分が酸により変性し固くなってしまうため、これを防止するために特開平8−103248号公報には、茹で卵を乳化剤およびプルランの併用処理することが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方法では、卵白部分の酸による硬化を、今だ充分に抑制することができないものである。そこで、本発明は、酸性調味料と混合しても、卵白部が、ソフトな食感を維持する卵食品を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者は上記の目的を達成するために種々検討した結果本発明に到達した。すなわち、本発明は、(1)メタリン酸塩を吸収してなる凝固卵白と酸性調味料とからなる卵食品、及び、(2)凝固卵白をメタリン酸塩溶液に浸漬処理後、酸性調味料と混合してなる卵食品の製造方法を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、「%」はすべて「重量%」を、また、「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0006】本発明における凝固卵白とは、鶏、鶉、アヒル、鴨等鳥類の卵の卵白を加熱して得られる凝固物をいい、具体的には、卵をそのまま加熱して得られる茹で卵や、卵を割卵して卵黄と分離して得られる液卵白を凝固したもの等である。ここで用いる液卵白としては、熱凝固性を備えている限り、生卵白の代わりに凍結卵白や乾燥卵白を水戻ししたもの、また、濃縮あるいは希釈したもの、成分の一部例えば糖分やリゾチーム等を除去したもの、あるいは、酵素処理等を施し生卵白の成分より低分子になっているもの、逆に、卵白中の成分が脂肪酸等その他の成分と結合して生卵白の成分より高分子になっているもの等も用いることができる。
【0007】次に本発明の酸性調味料とは、pHが6以下の半固体状又は液状の調味料のことをいい、具体的には、例えば、マヨネーズやサラダドレッシング等の半固体状ドレッシング、フレンチドレッシングやチーズドレッシング等の乳化液状ドレッシング、セパレートドレッシングや中華ドレッシング等の分離液状ドレッシングの他、食酢、砂糖、香辛料を混合した調味酢、あるいは、調味液等である。
【0008】本発明に用いるメタリン酸塩としては、食品に用いられるものがよく、例えばメタリン酸ナトリウムやメタリン酸カリウム等が挙げられる。後の試験例で詳しく述べるが、ポリリン酸塩等、他のリン酸塩では、酸による凝固卵白の硬化は防止できないものである。
【0009】本発明の卵食品としては、例えば、液卵白を加熱した凝固卵白に、メタリン酸塩を吸収させ、適宜の大きさに刻み、その他、タマネギやパセリのみじん切りとマヨネーズ等の酸性調味料と混合した卵スプレッドや、メタリン酸塩を吸収させた茹で卵を、そのまま又は適宜の大きさにカットし、各種ドレッシング等の液体又は半固体状酸性調味料と共に容器に充填されてなるもの等である。
【0010】また、酸性調味料にメタリン酸塩を含有させ、あらかじめメタリン酸塩を吸収させていない凝固卵白と共に容器に充填してあるものも、経時的に凝固卵白にメタリン酸塩が吸収されることになるので、本発明の技術的範囲に含まれるものとする。そして、本発明の卵食品は、殺菌処理やチルド保管により長期間保存できるタイプのものに適用すると特に有効である。
【0011】次に本発明の卵食品の代表的製造方法について説明する。凝固卵白としては、卵白を常法に従い加熱して凝固させたものでよく、特に限定されるものではない。通常行われる加熱としては、ボイルやスチーム加熱、熱風、赤外線、電子レンジ、焼成、油ちょう等が挙げられる。また、適宜減圧や加圧を行ってもよい。この様にして得られる凝固卵白を、そのまま又は適宜大きさにカットし、メタリン酸塩溶液に浸漬処理する。なお、凝固卵白をメタリン酸塩溶液に浸漬処理した後に適宜大きさにカットしてもよい。
【0012】用いるメタリン酸塩溶液の濃度としては0.02%以上から溶解限度の濃度まで用いることができる。0.02%より低いと、長時間浸漬しても充分な効果は得られない。例えば、鶏卵から製した茹で卵を用いる場合、殻を剥いてそのまま0.02%〜1.0%の溶液に浸漬するとよい。0.1%溶液では5時間程度、0.5%溶液では3時間程度、1%溶液で1時間程度浸漬するとよい。浸漬処理の一方法として、メタリン酸塩溶液の濃度を1%以上にして、茹で卵を溶液に一度潜らせた後、そのまま保管することもできる。潜らせる溶液の濃度が1%の場合では、茹で卵を潜らせた後、1時間程度保管するとよい。濃度が5%の場合30分程度、濃度10%の場合5分程度、保管するとよい。この処理方法も本発明でいう浸漬処理に含まれるものとする。保管中に卵白表面に付着したメタリン酸塩が卵白中に浸透するものと考えられる。後の試験例でも述べるが、効率、効果、コスト等を考慮すると、0.05%〜1.0%溶液を用いて処理するのがより望ましい。
【0013】なお、浸漬処理を行う場合、1時間以内程度であれば室温でもかまわないが、1時間程度を超える場合は、細菌の繁殖を防止する為、10℃以下で処理するのが望ましい。逆に、50℃以上の溶液を用いて処理することもできる。浸漬処理後、凝固卵白を水洗いしてもかまわないものである。また、浸漬処理を施す溶液に、保存性を高めるため、必要に応じ、食酢やリンゴ酸、クエン酸、コウジ酸等の酸類、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等の塩類、グリシン等の日持ち向上剤、しらこ蛋白、ポリリジン等の保存料を適宜加えてもよい。
【0014】このようにしてメタリン酸塩溶液に浸漬処理した凝固卵白を、必要に応じて、適宜サイズにカットする。例えば、茹で卵の場合、1片が約5mm〜5cmサイズのダイス状にカットした後、茹で卵の重量に対し、20〜30%のマヨネーズ等の酸性調味料とを加え混合する。卵白のみを凝固させたものの場合は、1片が3mm〜3cm角程度の大きさにカットして用いるとよい。好みに応じ、パセリやタマネギ等の野菜やハムを刻み加えるとよい。容器に充填し、必要に応じ殺菌処理を施したり、低温で流通させたりして、長期間保存できる卵食品が得られる。
【0015】このようにして得られる卵食品中の凝固卵白が、酸により固くならないのは、メタリン酸塩が凝固卵白中の蛋白質に結合し、酸による卵白蛋白の変性を防止するのではないかと推察される。
【0016】
【実施例】実施例1.鶏卵を98℃、18分間蒸気にて加熱し殻をむいた茹で卵約2kgと、茹で卵を浸漬する調味液として下記組成の(A),(B)を各1kg準備した。各調味液1kgに対し、茹で卵が約1kgとなるように加え、10℃の冷蔵庫にて12時間保管し、調味液漬け茹で卵とした。調味液漬け茹で卵を約1cmのダイス状にカットした後、各々、茹で卵75部に対し25部のキユーピー(株)社製「マヨネーズ102」(pH=4.0)を加え混合し、容器に充填密封し、卵スプレッドを製した。
【0017】それぞれ、4℃で2日間保管後、卵白部の食感を試したところ、メタリン酸ナトリウムを加えた(A)の調味液を用いた卵スプレッドは、(B)を用いたものよりも柔らかい食感であった。
【0018】(A)
メタリン酸ナトリウム 0.2%クエン酸(結晶) 0.5%酢酸ナトリウム(含水) 0.8%清水 98.5%合計 100.0%【0019】(B)
クエン酸(結晶) 0.5%酢酸ナトリウム(含水) 0.8%清水 98.7%合計 100.0%【0020】実施例2.実施例1.と同様に得た調味液漬け茹で卵5部を、そのまま、キユーピー(株)社製「フレンチドレッシング(白)」(pH=3.6)1部に漬け込み、卵サラダの素とした。そのまま10℃にて1週間保管後、卵白の固さを比較したところ、メタリン酸ナトリウムを加えた(A)の調味液を用いた卵スプレッドは、(B)を用いたものよりも柔らかい食感であった。
【0021】試験例1.鶏卵を98℃、18分間蒸気にて加熱し殻をむいて、茹卵2kgを準備した。茹卵は1kgずつに分け、一方は実施例1.の(A)の調味液、すなわち、メタリン酸ナトリウム0.2%溶液に、もう一方は、特開平8−103248号公報に開示された調味液の一つである下記調味液(C)に浸漬した。茹卵と調味液の比率は1対1とした。
【0022】(C)
ショ糖脂肪酸エステル 0.5%(三菱化学ワーズ(株)P-1670)
プルラン(林原商事(株)) 0.2%クエン酸(結晶) 0.5%酢酸ナトリウム(含水) 0.8%清水 98.0%合計 100.0%【0023】10℃の冷蔵庫にて12時間保管し調味液漬け茹卵とした。その後は、実施例1.と同じように、卵スプレッドを製し、4℃で2日間保管した。これを、よく訓練されたパネラーによる風味試験を行い、凝固卵白の食感を比較した。評点基準は、柔らかい:1点、普通:3点、固い:5点とした。結果を表1に示す。
【0024】表1より、調味液(A)にて処理した茹卵を用いた卵スプレッドは調味液(C)を用いたものよりも柔らかい食感であることがわかる。
【0025】
【表1】
調味液(A) 調味液(C)
1.3 2.5【0026】試験例2.鶏卵を割卵して卵黄と分離してえた液卵白を、折径57mmの塩化ビニリデン製のケーシングチューブに充填密封し、98℃の湯中で18分間加熱し、その後水道水にて冷却し、チューブを取り除き、凝固卵白とした。この凝固卵白に対し、同重量の下記調味液を加え、4℃の条件下で2日間保管後、調味液から凝固卵白を取り出し、水切りした後、約1cm角のサイズにダイスカットした。この凝固卵白80部に対し、キユーピー(株)社製「マヨネーズ102−S」(pH=4.0)を20部の割合で混合した後、4℃にて1晩保管した。訓練されたパネラーによる風味試験を行い、凝固卵白の食感を比較した。評点基準は、試験例1と同様にした。結果を表2に示す。
【0027】表2より、メタリン酸塩処理した凝固卵白のみ、酸性調味料の1種であるマヨネーズと混合した後も、ソフトな食感を維持することがわかる。
【0028】
【表2】
調味液配合 評点(平均値)
発 メタリン酸ナトリウム 0.5% 1.5 明 メタリン酸ナトリウム 1.0% 1.3 品 メタリン酸カリウム 0.5% 1.4 メタリン酸カリウム 1.0% 1.3 ポリリン酸ナトリウム 0.5% 3.2 比 ポリリン酸ナトリウム 1.0% 3.1 較 ピロリン酸ナトリウム 0.5% 3.5 品 ピロリン酸ナトリウム 1.0% 3.6 非浸漬 4.3【0029】試験例3.試験例1と同様の方法にて凝固卵白を調整し、同重量の下記調味液を加え、4℃にて24時間保管後、調味液から取り出し、約2cmサイズのダイス状にカットした。得られたダイス状茹で卵80部に対し、キユーピー(株)社製「マヨネーズ102−S」を20部加え混合し、10℃にて4日間保管後、よく訓練したパネラーにより、卵白部分の食感の比較評価した。評点基準は試験例1と同様にした。結果を表3に示す。
【0030】表3より、メタリン酸ナトリウム濃度が0.02%以上の溶液に浸漬した卵白は、酸性調味料の1種であるマヨネーズと混合した後も、ソフトな食感を維持し0.05〜1.0%であると、より望ましいことがわかる。
【0031】
【表3】
調味液配合 評点(平均値)
メタリン酸ナトリウム 0 % 4.3 〃 0.01% 3.3 〃 0.02% 2.0 〃 0.05% 1.5 〃 0.1 % 1.3 〃 0.5 % 1.3 〃 1.0 % 1.8 〃 5.0 % 2.1 〃 10.0 % 2.4【0032】
【発明の効果】以上より、本発明の卵食品は、酸性調味料と混合してあっても、凝固卵白がソフトな食感を維持するものである。
【出願人】 【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
【出願日】 平成10年8月26日(1998.8.26)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−60493(P2000−60493A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−240644