| 【発明の名称】 |
還元糖とアルカリの併用処理による畜肉缶詰の食感改良法 |
| 【発明者】 |
【氏名】滝浪 晋
【氏名】前田 典久
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| 【要約】 |
【課題】加熱調理した場合、柔らかい食感を保持する生肉の処理方法の提供。ソフト、ジュシー、弾力のある食感を有する畜肉類を素材とするレトルト食品の提供。
【解決手段】レトルト加熱調理する際の前処理であって、生肉を糖アルコールおよびアルカリを必須の組み合わせとする漬込み液に浸漬処理することを特徴とする生肉の処理方法。生肉は鮮度のよい畜肉である。浸漬処理を真空下で行う。上記いずれかの方法で処理された生肉を単独で、または注入液もしくは他の食品素材とともにレトルト処理することを特徴とする生肉のレトルト処理方法。注入液はアルカリを含有する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 レトルト加熱調理する際の前処理であって、生肉を糖アルコールおよびアルカリを必須の組み合わせとする漬込み液に浸漬処理することを特徴とする生肉の処理方法。 【請求項2】 生肉が鮮度のよい畜肉である請求項1の生肉の処理方法。 【請求項3】 浸漬処理を真空下で行う請求項1または2の生肉の処理方法。 【請求項4】 請求項1ないし3のいずれかの方法で処理された生肉を単独で、または注入液もしくは他の食品素材とともにレトルト処理することを特徴とする生肉のレトルト処理方法。 【請求項5】 注入液がアルカリを含有する請求項4の生肉のレトルト処理方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業の属する技術分野】本発明は畜肉類を素材とする畜肉缶詰の食感改良法に関する。より詳細には本発明は、レトルト加熱調理しても柔らかい食感を保持する生肉の処理方法に関する。 【0002】 【従来の技術】畜肉缶詰などのレトルト食品は、通常、80〜140℃で約1〜120分間の密閉系での加圧加熱処理が施されるが、この加熱処理によりどうしても食感に変化が生じ、通常の調理品に比べ、食感が劣るという問題がある。具体的には、畜肉類では、加熱により蛋白が変性し組織の収縮崩壊が起こり、食感が脆くなるなどの問題がある。畜肉類を対象とするレトルト食品の場合、レトルト処理時の加熱による蛋白質の加熱変性が大きく、コラーゲンのゼラチン化、加熱による過度の変性により、食感が極端に低下することが多い。このような問題を解決するために、予め畜肉類を前処理する方法が各種提案されている。例えば、特開平1−181767号公報では、未加熱の畜肉・魚介類をリン酸塩及び食塩を含む水溶液に浸漬する方法、特開平4−341160号公報では、カルシウム含有液に浸漬後、重合リン酸塩含有液に浸漬する方法が開示されている。しかしながら、これらの方法は何れも効果の点で十分満足できるものではない。またWO95/20323では、アルカリ剤と塩類を併用した技術が開示されているがアルカリ剤特有のエグ味が感じられる、繊維感がなくなり肉本来の食感とかけ離れてしまう等の欠点が生じる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、加熱調理した場合、柔らかい食感を保持する生肉の処理方法の提供を目的とする。本発明は、ソフト、ジュシー、弾力のある食感を有する畜肉類を素材とするレトルト食品を提供することを目的とする。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明は、レトルト加熱調理する際の前処理であって、生肉を糖アルコールおよびアルカリを必須の組み合わせとする漬込み液に浸漬処理することを特徴とする生肉の処理方法を要旨としている。上記の生肉は好ましくは鮮度のよい畜肉である。上記の浸漬処理は好ましくは真空下で行う。本発明は、上記の方法で処理された生肉を単独で、または注入液もしくは他の食品素材とともにレトルト処理することを特徴とする生肉のレトルト処理方法を要旨としている。上記注入液はアルカリを含有することができる。 【0005】 【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。本発明は、レトルト加熱調理するいかなる生肉をも対象とすることができるが、当該生肉は鮮度のよい畜肉であることが好ましい。畜肉類として、牛、馬、豚、羊、鳥等の一般的な畜肉が例示される。 【0006】本発明で用いる漬込み液を構成する糖アルコールは、食品、食品添加物および/または医薬品として市販されているものであれば何でもよく、デンプン等の加水分解物、またはオリゴ糖、単糖類を高圧還元法等によりその還元末端を還元したものである。具体的にはソルビトール、マンニトール、キシリトール、ラクチトール、マルチトールの単糖、2糖を還元したもの、デンプン等を加水分解後生じた糖液を還元したものなどが挙げられる。上記のデンプンなどを加水分解して得られる糖液は単糖からオリゴ糖混合物であるが、糖組成が、2糖38%で3糖38%の糖液を還元したもの(トリオリッチ、東和化成工業株式会社製、以下同じ)、4糖以上75〜80%の糖液を還元したもの(PO-20)、3糖15〜20%で4糖以上60〜65%の糖液を還元したもの(PO-30)、2糖50〜55%、3糖17〜25で4糖以上23〜30%の糖液を還元したもの(PO-40)、2糖63〜67%、3糖および4糖以上それぞれ13〜18%の糖液を還元したもの(PO-60)が例示される。さらに、デンプン等を加水分解して得られる糖液を基質としこれに糖転位酵素を作用させて分岐オリゴ糖を生成させた後還元したものである、1糖37〜43%、2糖26〜32%、3糖14〜20および4糖以上12〜19%の分岐糖アルコール(PO-500)が例示される。本発明に用いる糖アルコールの濃度は、水溶液全体の重量に対して5%〜40%の範囲が本発明の効果を十分に発揮することができて、さらに経済性が高いこと、溶液の粘度が取り扱い易い程度の高さであること、結晶を生成しにくいことなどの理由で好ましい。 【0007】本発明で用いる漬込み液を構成するアルカリは、好ましくは炭酸ナトリウムを用いる。各配合量を計量し、全てを混ぜ合わせて漬込み液とする。炭酸ナトリウムの部分は重炭酸ナトリウム(重曹)、炭酸カルシウム等への変更が可能である。 【0008】糖アルコールとアルカリの漬込み液には、これら2成分の他に、味つけや風味つけのために甘味料、アミノ酸や核酸系調味料、みりんなどの各種調味料、香辛料、リン酸塩等、通常の乾燥畜肉に用いられる各種添加剤などを適宜添加混合して用いることができるが、あまり味を変化させない程度に使用量を抑制することが好ましい。糖アルコールは原料肉の5〜50%、炭酸ナトリウムなどのアルカリは原料肉の0.3〜3.0%使用される。糖アルコールとアルカリとの合計濃度の範囲は5.5%〜50%が好ましく7%〜20%が更に好ましいが、該合計濃度が5.5%よりも低い場合は、液の成分が肉質中に十分に浸透せず、本発明の効果が十分に発揮できないことがあるので好ましくない。また、糖アルコールとアルカリとの合計濃度が50%を超えた場合には、製品の表面にベトつきが残りがちで甘味が強すぎる場合があり、また、外観も損ねるので商品価値が失われてしまうことがある。 【0009】上記の漬込み液が食塩、糖アルコールおよびアルカリを必須の組み合わせとする調味液である上記の如き糖アルコールおよびアルカリで処理された畜肉は、単独で、または各種調味液もしくは他の食品素材と共にレトルト処理される。なお、ここで調味液とは、水分が主体の調味成分であり、スープ、タレなども含むものであって、単独でも流動性を有し、具材中で連続性を構成するものである。なお、畜肉を調味液と共にレトルト処理する場合、調味液に前記糖アルコールおよびアルカリなどを添加しておき、レトルトすることにより、対象とする畜肉をいっそうソフト、ジュシー、弾力のある食感を有する畜肉とすることもできる。また、他の食品素材とは、併用される野菜類などである、畜肉と他の食品素材を共に使用する場合の例としては、シチュー、カレーなどがある。 【0010】浸漬時間は、浸漬温度が高いほど短く、低いほど長くなる。浸漬温度が20℃の場合は10分〜3時間が好ましい。浸漬温度が低い場合、例えば5℃の時は30分から72時間が好ましい。但し、これらはあくまで目安であって、浸漬濃度や被処理物の大きさにより、浸漬温度や浸漬時間は適宜変更することができる。インジェクション、タンブリング、スプレーなどによる方法は常法に従えば良く、また、被処理物の大きさにより、適宜濃度、温度、時間を設定することができる。本発明において、糖アルコールおよびアルカリの水溶液を用いて処理する場合、その水溶液のpHはおおよそ10〜11にあることが好ましい。本発明の糖アルコールおよびアルカリの水溶液を用いてする処理は、従来から知られている肉の処理(例えば、アルコール浸漬、酸素処理等)を併用してもよい。漬込みは、真空あるいは常圧のもとで行う。 【0011】本発明において、レトルト処理は、先ずレトルト処理すべき生肉あるいはボイルした肉をレトルトパウチなどの耐熱容器に充填し、次に耐圧容器に収容し、加熱して行う。加熱条件は、80〜140℃、好ましくは85〜125℃で、1〜120分、好ましくは10〜60分とすればよい。缶詰の場合、漬込み後の肉を、ボイルタンクにてボイルし、ボイル後冷却し、例えば約36gづつ計量し約30gのタレとともに缶に入れる。缶に入れて、巻き締めを行いレトルトする。ただし、実際のレトルト処理はF0値で制御され、このF0値が0.1〜30、好ましくは0.2〜10の条件下で処理される。尚、F0値とは、一定温度において所定数の微生物を死滅させるのに要する最小加熱時間(分)であって、通常、121℃の最小加熱致死時間(F0)を指す。常温で保存する場合には、F0値が3.1以上であることが必要である。F0値が3.1よりも小さい場合には、チルド条件下(0〜10℃前後)、冷凍条件下(−18℃前後)での保存が可能で、食感は維持される。本発明のレトルト食品は、流通後、最終消費者により、再加熱後、食される。ここで、再加熱とは、湯煎、電子レンジによる加熱、オーブンレンジによる加熱などである。 【0012】 【実施例】本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。 【0013】実施例1(マトン肉大和煮) (1)マトン肉を還元糖とアルカリの溶液で漬込み処理した。テスト区は、マトンの冷凍生原料を還元糖とアルカリの溶液で漬込み処理した後、ボイルし、缶に入れて注液しレトルトした。コントロールは、漬込み処理は行わず脱血処理後ボイルし、缶に入れて注液し、(従来の畜肉缶詰の製法により)レトルトした。 (2)テスト内容■コントロール(カット肉1000g+漬込み液1010g) 漬込み液配合(60℃温水990g+重曹20g) ■テスト(1)(カット肉1000g+漬込み液246.0g) 漬込み液配合(60℃温水120g+還元糖120g+炭酸ナトリウム6.0g) ■テスト(2)(カット肉1000g+漬込み液120g) 漬込み液配合(還元糖120g) ■テスト(3)(カット肉1000g+漬込み液100.6g) 漬込み液配合(60℃温水100g+炭酸ナトリウム6.0g) 【0014】(3)手順■肉解凍→5mm幅カット→40分漬込み→液切り(10分)→ボイル(90〜93℃、3分、3000cc)→液切り10分→成型→肉詰(36g)→注液(30g)→巻締→レトルト→冷却■■■肉解凍→5mm幅カット→漬込み(真空引き後密栓、連続回転30分、真空解除)→ボイル(90〜93℃、3分、3000cc)→液切り10分→成型→肉詰(36g)→注液(30g)→巻締→レトルト→冷却レトルト条件:120℃、14分〜16分(4)結果(歩留・食感) テスト区およびコントロールの両区は缶詰にした後、約二週間37℃で放置し味がなじんだ頃に分析パネラーによる官能テストを行い食感の比較を行った。官能テストは、分析パネラー3名により下記の評価項目と評価尺度で両区の評価を行った。分析パネラーには両区の区別が分からない状態でテストを行った。結果を表1および表2に示す。 評価項目:評価尺度肉の硬さ:−3(軟らかい)、0(同じ)、3(硬い) 肉の締まった感じ:−3(弱い)、0(同じ)、3(強い) 肉がぶよぶよした感じ:0(感じない)、1(やや感じる)、2(かなり感じる)、3(非常に感じる) 【0015】 【表1】
【0016】 【表2】<PH> 【0017】(5)結果および考察■表よりボイル歩留は、テスト(1)がすべての試験区の中でいちばん良好であった。 ■また、缶詰まで作成してもとテスト(1)の歩留が良好な結果となる。 ■すべての試験区について、官能検査を実施したところテスト(1)が一番軟らかいという結果となった。3名とも一番軟らかいものとして、テスト(1)を選択した。 ■味についてもテスト(1)が良好な結果となった。 ■したがって、歩留・食感・味のすべての面を考慮したところ、テスト(1)(還元糖+アルカリ)が良好であるという結果を示した。 【0018】実施例2実施例1のマトン肉大和煮の他に、焼き肉マトン、鯨焼き肉、牛焼き肉、牛大和煮についても、実施例1と同様の試験を実施し同様の結果を得た。本発明品の特徴は、注液として従来の注液を使用したが、製品のpH域が従来のものに比べて高いことが上げられる。参考までに市販品の缶詰と本発明品の畜肉缶詰(注液として従来の注液を使用)のpH測定値を表3に示す。本試験のテスト区の注液に、さらに炭酸ナトリウム等を加えて注液のpHを高めることにより、肉の食感を軟らかくする効果がより一層顕著に現れることも別の実験で確認した。 【0019】 【表3】
【0020】 【発明の効果】ソフト、ジュシー、弾力のある食感を有する畜肉類を素材とするレトルト食品、特に畜肉缶詰を提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004189 【氏名又は名称】日本水産株式会社
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| 【出願日】 |
平成10年8月17日(1998.8.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100102314 【弁理士】 【氏名又は名称】須藤 阿佐子
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| 【公開番号】 |
特開2000−60492(P2000−60492A) |
| 【公開日】 |
平成12年2月29日(2000.2.29) |
| 【出願番号】 |
特願平10−230893 |
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