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【発明の名称】 抗酸化物質の製造法
【発明者】 【氏名】越阪部 奈緒美

【氏名】足立 桐子

【氏名】滝沢 登志雄

【氏名】中村 哲夫

【要約】 【課題】優れた活性酸素消去能と安全性を持つ抗酸化物質の製造法を提供する。

【解決手段】カカオの葉、樹皮、根から水又はエタノールを使用して抽出した抗酸化物質の製造法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】カカオの葉、樹皮又は根から水および/またはエタノールを使用して抽出を行い、得られた抽出液を濃縮して抽出物を得ることより成る、抗酸化物質の製造法。
【請求項2】カカオの葉、樹皮又は根から水および/またはエタノールを使用して抽出を行い、得られた抽出液を濃縮して抽出物とし、さらに該抽出物を精製して粗ポリフェノールを得ることより成る、抗酸化物質の製造法。
【請求項3】請求項1又は2に記載の方法によって得られる抗酸化物質を添加して製造される飲食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然のポリフェノールを含有する抗酸化物質の製造法に関し、詳しくはカカオの葉、樹皮又は根から抽出法を用いてポリフェノール類を有効成分として含有する抗酸化物質を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】ヒトをはじめとするほとんどの生物は酸素を利用して生命活動を維持している。しかし、生体内にとりこまれた酸素の一部は有害な活性酸素に変化し、発癌、虚血性心疾患、糖尿病の合併症などを引き起こすことがわかってきている。このような障害から生体組織を守る為に、正常時にはヒトの体内では種々の抗酸化物質が機能している。しかしながら、老化の進展とともに、生体内に元々存在していた抗酸化機能は著しく低下し、生体外から抗酸化機能を持つ物質群を取り入れる必要が生じてくる。そこで、日常的に摂取でき得る抗酸化物質及びその製造法が検討されてきている。日常的な抗酸化物質の摂取を考える上で、その経済性や安全性から主に抗酸化物質の製造における原料としては食品が用いられ、例えば茶葉からカテキン類や赤ワインからはプロシアニジン類等のポリフェノール類が製造される。ポリフェノール類の抗酸化作用は、ポリフェノール類の水酸基が還元能を示すこと、また、活性酸素の発生源となる重金属に対してキレート能を示すことなどによると報告されている。
【0003】またカカオ豆から抗酸化物質を製造する方法としては、特開平7―213251号に示されるように、カカオ豆から水とエタノールを用いて抽出する抗酸化物質の製造法が知られている。抽出によって得られるカカオ豆に含有される抗酸化物質はカテキン、エピカテキン、ケルセチン、クロバミド等のポリフェノール類の単体あるいは重合体を主成分として構成されている。カカオ豆の有効成分であるこれらのポリフェノール類は抗酸化作用、歯垢形成抑制作用、抗潰瘍作用、抗ストレス作用、発癌予防作用、糖尿病合併症予防作用等生体にとって有益であることがわかっている(特開平7―213251号、特開平7―238028号、特開平7―274894号、特開平9―206026号、特開平9―224606号、特開平9―234018号参照)。
【0004】一方で、単一な物質の大量摂取より、多種・多様な抗酸化物質を少量ずつ摂取することのほうが、種々の疾病の予防については有効であることがわかってきた。そのためには多彩な抗酸化物質を提供することが必要である。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、カカオ(Theobroma cacao)の葉、樹皮及び根に優れた抗酸化作用を有するポリフェノール類がカカオ豆抽出物より多量に含有されることを初めて確認し、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
【0006】すなわち、本発明はカカオの葉、樹皮又は根から水および/またはエタノールを使用して抽出を行い、得られた抽出液を濃縮して抽出物を得ることより成る、抗酸化物質の製造法、及びその製造法によって得られる抗酸化物質を添加して製造される飲食品を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明における抗酸化物質を製造する方法は、人体に無害な水および/またはエタノールをカカオの葉、樹皮又は根に加えて抽出した後、該抽出液を濃縮、さらに必要に応じて精製することによる。また目的物質の回収率を上げることを目的として、抽出溶媒に対して0.1〜10重量%の塩酸等の酸を加えて酸性条件下で抽出を行なってもよい。
【0008】さらに詳しく本発明の製造法について以下に述べる。本発明の製造法に用いる原料はカカオ葉、カカオ樹皮又は、カカオ根(以下、総称としてカカオ植物体と記す。)であり、それらを生あるいは乾燥した状態で単独又は混合して、そのまま、チップ状あるいは粉状の各種形態として用いることができる。
【0009】水で抽出を行う場合はカカオ植物体100重量部に対し、水300〜800重量部、好ましくは、400〜700重量部を加え10℃〜120℃、好ましくは80〜100℃に加熱して数分〜1時間、好ましくは、20〜40分攪拌抽出を行う。
【0010】エタノール水溶液で抽出を行う場合は、カカオ植物体100重量部に対し、エタノール水溶液として水対エタノールの比が100:0〜0:100、好ましくは80:20〜0:100のエタノール水溶液を300〜800重量部、好ましくは、400〜700重量部を加え、10〜80℃、好ましくは20〜50℃で、数時間〜48時間、好ましくは約24時間撹拌抽出を行う。
【0011】さらに濾過して得られた抽出液中に含まれる水又はエタノールを減圧下で留去した残渣を凍結乾燥又はスプレードライ等により、粉末化してポリフェノール類を含有した抗酸化物質を製造することができる。また、濃縮された抽出物を溶媒抽出法、膜分離法、カラムクロマトグラフィー法等、好ましくは、レジンを用いた吸着カラムクロマトグラフィーによってさらに精製することにより、ポリフェノール類の含有量を高めた抗酸化物質(粗ポリフェノールと称す。)を得ることができる。
【0012】本発明によって製造される抗酸化物質は、高いDPPHラジカル消去能、SOD様活性を示し、抗酸化物質中のポリフェノール類含有量は従来知られているカカオ豆を原料とし、カカオ豆から抽出法によって製造される抗酸化物質よりも高いので有用である。
【0013】また、本発明によって製造される抗酸化物質の使用としては、従来知られているカカオ豆を原料とし、カカオ豆から抽出法によって製造される抗酸化物質と同様に抗酸化作用、歯垢形成抑制作用、抗潰瘍作用、抗ストレス作用、発癌予防作用、糖尿病合併症予防作用等の効果を付加するため飲食品原料に添加して使用する他、最終品に塗着して使用することがあげられる。歯垢形成抑制作用の効果を付加する目的においては、飲食品以外の練り・液状歯磨き剤、洗口剤等の口腔用製品に添加することができる。
【0014】本発明の飲食品としては、チョコレートやココアのようにカカオ豆を主原料とする飲食品はもちろんのこと、パン、ビスケット、麺類をはじめとする澱粉系食品、あるいはキャンデー、加工牛乳、ヨーグルトなどいかなる飲食品にも用いることができ、添加使用としては各飲食品の特性、目的に応じ、適当な製造工程の段階で適宜添加配合すればよく、例えば、チョコレート、キャンデー、パン、ココア飲料、また、クッキー等の飲食品には重量割合で0.01%以上5%以下、添加するのがこれらの食品の特性、旨味性あるいは経済性を考慮すると好ましい。
【0015】本発明の飲食品の摂取量は、カカオ豆及びカカオ植物体が含有するポリフェノールは人体に対して無毒性であるから、その摂取量については特に制限がないが、実際に高コレステロール血症予防飲食品として摂取する場合には、抽出物質として1〜1000mg/kg/体重/日、好ましくは10〜500mg/kg/体重/日程度が適当である。
【0016】
【実施例】以下、実験例をあげて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。なお、実施例に示した抗酸化物質のポリフェノール類含有量は、Martin L.Priceand Larry G. Butler,J. Agric. Food Chem.,Vol.25,No.6,1268-1273,1977に記載のプルシアンブルー法によって測定して、市販のエピカテキンを標品として算出した値を用いた。
【0017】実施例1カカオ生葉からの抗酸化物質の製造カカオ生葉100gに熱水500ml及び10mlの濃塩酸を添加し、90℃で30分撹拌し、濾過した。得られた抽出液を減圧濃縮後、凍結乾燥することにより、3.1gの粉末状の抗酸化物質を得た。得られた抗酸化物質は48.38重量%のポリフェノール類を含有していた。
【0018】実施例2カカオ樹皮からの吸着カラムクロマトグラフィーによる精製を加えた抗酸化物質の製造チップ状のカカオ樹皮100gに水:エタノール=2:8の混液500mlを加え5時間、50℃で還流加熱しながら撹拌し、濾過した。得られた濾液を減圧濃縮して、エタノール分を留去した濃縮液をダイヤイオンHP2MGを充填したオープンカラムにアプライした。混在する水溶性高分子物質を除去するため、水:エタノール=8:2の混液でカラムを洗浄し、続いて水:エタノール=2:8の混液で溶出し、粗ポリフェノール画分を得た。製造工程法の概略を図1に示す。この溶出液を減圧濃縮後、凍結乾燥し、1.4gの固形状の抗酸化物質を得た。得られた抗酸化物は63.3%のポリフェノール類を含有していた。
【0019】試験例1DPPHラジカル消去活性DPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)は溶液中で比較的安定なラジカル分子種として存在するため、活性酸素消去活性のスクリーニングに広く用いられている。以下の方法を用いて本発明によって得られる抗酸化物質のラジカル消去作用を測定した。
【0020】60μM DPPHエタノール溶液1000μlに実施例1に準じた方法によって得られた抗酸化物質を1〜500μg/mlの範囲の段階的な濃度で希釈した溶液1000μl加え、15分以上室温で放置した後に520nmにおける吸光度を分光光度計で測定した。無添加群に対する阻害率を計算し、結果を図2に示した。カカオ生葉から抽出した抗酸化物質は強いDPPHラジカルの消去活性を有し、その活性は用量依存的であった。
【0021】試験例2SOD様活性SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)は、生体内で多くの障害を引き起こすスーパーオキサイドを消去する酵素である。しかしながら、血中に含まれる他の酵素によって速やかに代謝されてしまうため、臨床応用が難しいという性質を持っている。以下の方法を用いて本発明によって得られる抗酸化物質のSOD様活性作用を確認した。
【0022】2mMのヒポキサンチン50μl,5.5mMのDTPA(Diethylenetriamine pentaacetic acid)35μl,DMPO(Dimethyl pyrollin oxide)35μl,及び原料としてカカオ根を用い、エタノールだけを用いて抽出を行った以外は実施例2に記載の方法に準じてカカオ根5gから得た抽出液からエタノールを留去して得られた濃縮液の希釈液50μl(固形分1mg/ml)を含む溶液に、0.4U/mlのキサンチンオキシダーゼ50μlを添加、混和し、45秒後にESR(電子スピン共鳴装置)を用いDMPOによるスーパーオキシドラジカルのアダクトを測定した。結果は図3に示す様に、カカオ根抽出液には著しいSOD様作用が認められた。
【0023】試験例3毒性試験実施例1に記載の方法で得られた抗酸化物質を精製水に懸濁したものを5週齢の雄性マウス(5匹)に経口投与した。実施例1に記載の方法で得られた抗酸化物質の投与量2000mg/kgでは、死亡例は示さなかった。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、カカオ植物体を原料として、優れた活性酸素消去能と安全性を持つ抗酸化物質をカカオ豆を原料とする場合より多くポリフェノール類を含有する抗酸化物質を提供することができる。本発明の抗酸化物質は、これを摂食することにより、現代社会における代表的な成人病である動脈硬化やガン、糖尿病の合併症を日常の生活を通して予防できる。
【出願人】 【識別番号】000006091
【氏名又は名称】明治製菓株式会社
【出願日】 平成10年8月17日(1998.8.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2000−60485(P2000−60485A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−230628