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【発明の名称】 ゼリーの製造方法及び該ゼリーを含有する食品
【発明者】 【氏名】臼井 利光

【要約】 【課題】焼成食品に利用しても熱や水分により溶解、変形、縮小することがなく、かつ、柔らかい食感を有するゼリーの製造方法を提供する。

【解決手段】エステル化度50%以下のペクチンを含有する原料を、水に対する溶解度0.02%以下のカルシウム塩を用いて凝固させる。前記カルシウム塩が、第3リン酸カルシウムであることが好ましい。また、チョコレートゼリーを作る場合は、前記原料がエステル化度50%以下のペクチンとアルカリゼーションを行わないpH7.0以下の酸性ココアを含有する原料を用いることが好ましい。得られたゼリーは、パン、ケーキ、ビスケット、クッキー、プリンなどに添加して焼成しても、溶解、変形、縮小することがない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エステル化度50%以下のペクチンを含有する原料を、水に対する溶解度0.02%以下のカルシウム塩を用いて凝固させることを特徴とするゼリーの製造方法。
【請求項2】 前記カルシウム塩が、第3リン酸カルシウムである請求項1記載のゼリーの製造方法。
【請求項3】 前記原料がエステル化度50%以下のペクチンとアルカリゼーションを行わないpH7.0以下の酸性ココアを含有する原料である請求項1又は2記載のゼリーの製造方法。
【請求項4】 請求項1〜3記載の製造方法により得られたゼリーを含有する食品。
【請求項5】 前記食品が、パン、ケーキ、ビスケット、クッキー又はプリンから選ばれた1種である請求項4記載の食品。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パン、ケーキ、ビスケット、クッキー、プリン等の生地に練り込み又はトッピングした後に焼成しても、熱及び生地の水分により溶解、変形、縮小することのないゼリーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にパン、ケーキ、プリン等の焼成食品において、生地に練り込んだり、トッピングに用いられているゼリーは、ハイメトキシペクチン(以下、HMペクチンという)や寒天を用いてpH2.9〜4.0、糖度(以下、Bxという)60〜85で製造したものや、ローメトキシペクチン(以下、LMペクチンという)を易溶性カルシウムでゲル化させて製造したものである。
【0003】また、パンやクッキー等に練り込んだりトッピングしたりして使用されている粒状のチョコレートは、融点の高い代用植物油脂にココアパウダーを混ぜたものが用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者のゼリーは耐熱性・耐水性に乏しく、パン等に練り込み又は表面にふりかけて使用した場合は、焼き上げの熱と生地の水分により溶解してしまい、製品に空洞等が生じてしまうという問題があった。そして、それを避けるためにBxを高くし、よく乾燥させたゼリーを用いた場合でもゼリーの変形や縮小は避けられず、また、食感が硬くなりパンのような柔らかい食感になじまないものであった。一方、後者の場合は、LMペクチン溶液を乳酸カルシウム等の易溶性カルシウム溶液に滴下して、直径がおよそ4〜5mmの球形に固化させたものであり、その大きさや形にも限界があった。また、このゼリーは、耐熱性・耐水性はあるものの、弾力のないもろく崩れ易い食感であり、同様にパンのような柔らかい食感になじまないものであった。さらに、このゼリーは製造方法上、製造効率が低いため価格も高いという問題があった。
【0005】そして、上記粒状のチョコレートは融点の高い油脂を使用しているため口解けが悪いという問題があった。
【0006】したがって、本発明の目的は、焼成食品に利用しても熱や水分により溶解、変形、縮小することがなく、かつ、柔らかい食感を有するゼリーの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明のゼリーの製造方法は、エステル化度50%以下のペクチンを含有する原料を、水に対する溶解度0.02%以下のカルシウム塩を用いて凝固させることを特徴とする。
【0008】本発明によれば、耐熱性・耐水性に優れたゼリーの原料として用いられているエステル化度50%以下のペクチンを、水に対する溶解度0.02%以下のカルシウム塩を用いて凝固させることにより、非常に滑らかで柔らかい食感のゼリーを得ることができる。
【0009】本発明の製造方法により得られるゼリーは、耐熱性・耐水性に優れ、かつ、非常に滑らかで柔らかい食感を有するため、特にパンやケーキ等の弾力のある柔らかい食品の食感と合致する。
【0010】
【発明の実施形態】本発明において、エステル化度50%以下のペクチンとは、LMペクチンのことであり、好ましくはエステル化度15〜35%のものが用いられる。具体的には、市販のRED RIBBON(MRS社製)、LM−SN−325(MRS社製)等が用いられる。
【0011】その使用量は、好ましくは0.5〜2.5重量部、より好ましくは、1.0〜2.2重量部である。使用量が0.5重量部未満であるとゲルが弱く、2.5重量部を超えるとゼリーの食感が硬くなるため好ましくない。
【0012】本発明において使用されるカルシウム塩は、食品添加物として使用されるカルシウム塩であって水に対する溶解度が0.02%以下のものをいう。ここでいう溶解度とは、カルシウム塩飽和水溶液(20℃)の濃度(%)である。具体的には、第3リン酸カルシウム、第2リン酸カルシウム等が挙げられるが、特に好ましくは第3リン酸カルシウムが用いられる。このようなカルシウム塩を用いることにより上記LMペクチンが緩やかに凝固するため作業性が上がると共に均一で柔らかい食感のゼリーとすることができる。
【0013】上記カルシウム塩の使用量は、好ましくは0.04〜1.1重量部、より好ましくは0.08〜0.14重量部である。使用量が0.04重量部未満であるとペクチンがゲル化せず、1.1重量部を超えるとゼリーの食感が固くなるため好ましくない。また、上記カルシウム塩は予め水等に懸濁させた状態で原料溶液に添加することが好ましく、上記懸濁液の濃度は、4〜10重量%のものを用いることが好ましい。
【0014】ゼリーの凝固及び成形方法としては、■上記LMペクチンと甘味料、pH調整剤、香料、着色料等を水に添加し、85〜98℃に加熱して均一に溶解させた水溶液(A)と、上記カルシウム塩を水や熱水等に溶解した水溶液(B)とを加熱(85〜98℃)混合して、成形に適した容器に流し込み冷却して凝固させ、この成形品を必要に応じて適宜形状、大きさにカットする方法、■水溶液(A)を水溶液(B)中に滴下して球形に凝固させる方法、■水溶液(A)を水溶液(B)中に糸状に押出して凝固させる方法、■水溶液(A)と水溶液(B)とを混合した後、糸状に押出して水等に浸漬する方法などが好ましく採用される。
【0015】このとき、ゼリーのpHは3.6〜5.2であることが好ましく、3.8〜5.0であることがより好ましい。ゼリーのpHが3.6以下であるとゲル化の温度が高すぎるため作業性が悪く、pHが5.2を超えるとゼリーの耐熱性・耐水性が劣るため好ましくない。
【0016】なお、フルーツゼリーを作る際には、果汁、濃縮果汁、果汁パウダー等を、コーヒーゼリーを作る際には、インスタントコーヒー、コーヒー抽出エキス等を上記原料に添加すればよい。
【0017】また、チョコレートゼリーを作る際には、アルカリゼーションを行わないpH7.0以下の酸性ココアを用いる。その使用量は、1〜8重量部、好ましくは、2〜5重量部用いられる。
【0018】なお、酸性ココアとは、カカオ豆を砕いて皮などを取り除きロースターで焙焼した後、粉砕して得られるカカオマスを搾油してココアバターを分離し、搾油粕のココアケーキを粉砕して得られるココアパウダーのことである。通常、ココアは、風味を増すために焙焼前にアルカリゼーション処理されるが、該処理をしたココアはpHが6.5〜9.0と高く、これをチョコレートゼリーの原料として用いた場合、原料がアルカリ性になるためペクチンが凝固せず、また、ペクチンを凝固させるために酸を添加した場合、風味が悪くなってしまうため好ましくない。
【0019】
【実施例】以下、試験例、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
試験例1LMペクチンを均一にゲル化させる食品添加物として使用できるカルシウム塩の検索を行った。
【0020】LMペクチンとして「LM−SN325」(商品名、MRS社製)2.0重量部、砂糖53重量部、水飴10重量部、液糖13重量部を水20重量部に溶解し、pH調整剤としてクエン酸を0.1重量部添加してpHを調整し、加熱して均一に溶解した水溶液と、表1に示したカルシウム塩の水溶液(又は懸濁液)(濃度4〜8%)とを加熱(90℃)してから混合した。該混合液を型に入れて冷却し、カルシウムの含量0.04%、Bx75、pH4.2のゼリーを作成し、その均一性及び滑らかさを見た。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】表1に示されるように、ゼリーの製造に通常用いられている易溶性のカルシウム塩、例えば、乳酸カルシウムを用いた場合、該水溶液を添加すると同時にゲル化が始まり、その後撹拌しても部分的にゲル化してしまい、均一なゼリーの製造は不可能であった。
【0023】一方、第3リン酸カルシウムや第2リン酸カルシウム等の水に対する溶解度の低いカルシウム塩(溶解度0.02%以下)を用いることにより均一で滑らかなゼリーを作ることができた。
【0024】試験例2pHが、ゼリーの製造上必要とされる流動性と、ゲル化後の耐熱性・耐水性に与える影響を見た。
【0025】試験例1と同じLMペクチン2.0重量部、砂糖55重量部、水飴17重量部を水22重量部に溶解し、pH調整剤としてクエン酸0.05〜0.5重量部、又はクエン酸ナトリウム0.04〜0.5重量部、又は酸性及びアルカリゼーションしたココアを2〜5重量部添加してpHを調整し、加熱して均一に溶解した溶液と、第3リン酸カルシウム0.1重量部を水2重量部に懸濁した溶液とを加熱(90℃)してから混合した。該混合液を型に入れて冷却してpHが3.4〜5.4のゼリーを作成した。
【0026】流動性は、80℃付近の温度で上記混合液がビーカーから滑らかに落下するかどうかで評価した。また、pHは、該混合液(ゼリー)を純水で20倍に希釈してミキサーで均一になるまで粉砕してpHメーターで測定した。そして、耐熱性及び耐水性は、作成したゼリーを5mm角のさいの目状に細断してパン生地に練り込み、さらに表面にトッピングして200℃で20分間焼き上げてその状態を見た。その結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】表2から、ゼリーのpHが3.4の場合、耐熱性・耐水性はあるが、80℃以上でゲル化が始まるため作業性が悪く、pH5.4の場合、80℃以下での流動性はあるものの耐熱性・耐水性に乏しいことが分かった。
【0029】一方、pHが3.8〜5.0では、80℃以下でも流動性があり、かつ耐熱性・耐水性に優れていることが分かった。したがって、ゼリーのpHが3.6〜5.2であることが製造上好ましいことが分かった。
【0030】実施例1LMペクチン(エステル化度24%、商品名RED RIBBON、MRS社製)1.8重量部、アルカリゼーションを行わないココア(ココアバター15%)5.0重量部、砂糖53重量部、水飴20重量部、チョコレート香料0.1重量部を水25重量部に溶解し、さらにクエン酸を0.1重量部添加してpHを調整し、加熱して均一に溶解した溶液と、第3リン酸カルシウム0.1重量部を水2重量部に懸濁した溶液とを加熱(90℃)してから混合撹拌した。この混合液は、80℃以下になっても流動性があり均一に混合することができ、作業性もよかった。該混合液を型に流し込み一晩放置して冷却して固めた後、3mm角のさいの目状に細断してBx75、pH4.9のチョコレートゼリーを得た。このチョコレートゼリーをスポンジケーキの生地に練り込み、さらに表面にトッピングして180℃で20分間焼き上げてチョコレートゼリー入りスポンジケーキを作った。チョコレートゼリーの状態を見たところ、ケーキ表面及び内部のゼリーに溶解、変形、縮小は見られなかった。また、ゼリーの食感は柔らかく、スポンジケーキのソフトな食感とよく合うものであった。
【0031】実施例2LMペクチン(エステル化度30%、商品名LM−SN−325、MRS社製)1.5重量部、ストロベリー5分の1濃縮果汁2.0重量部、砂糖53重量部、水飴24重量部、赤キャベツ色素0.2重量部、ストロベリー香料0.1重量部を水15重量部に溶解し、さらにクエン酸0.2重量部、クエン酸ナトリウム0.3重量部を加えてpHを調整し、加熱して均一に溶解した溶液と、第3リン酸カルシウム0.1重量部を水2重量部に懸濁した溶液とを加熱(90℃)してから混合撹拌した。この混合液は80℃以下になっても流動性があり均一に混合することができ、作業性もよかった。該混合液を型に流し込み一晩放置して冷却して固めた後、5mm角のさいの目状に細断してBx75、pH4.1のストロベリーゼリーを得た。このストロベリーゼリーをパンの生地に練り込み、さらに表面にトッピングして200℃で20分間焼き上げてストロベリーゼリー入りパンを作った。ストロベリーゼリーの状態を見たところ、パン表面及び内部のゼリーに溶解、変形、縮小は見られなかった。また、ゼリーの食感は柔らかく、パンのソフトな食感とよく合うものであった。
【0032】実施例3実施例1と同じLMペクチン1.4重量部、インスタントコーヒー2.0重量部、粗挽きコーヒー抽出液5.0重量部、砂糖60重量部、水飴6重量部、果糖ブドウ糖液糖10重量部、コーヒーフレーバー0.1重量部を水14重量部に溶解し、さらにクエン酸を0.1重量部添加してpHを調整し、加熱して均一に溶解した溶液と、第3リン酸カルシウム0.1重量部を水2重量部に懸濁した溶液とを加熱(90℃)してから混合撹拌した。この混合液は80℃以下になっても流動性があり均一に混合することができ、作業性もよかった。該混合液を少量プリンの型に流し込み、冷却して固めた後、さらにプリン生地を流し込んで170℃で25分間焼き上げてプリンを作った。コーヒーゼリーの状態を見たところ、溶解、変形、縮小は生じていなかった。また、ゼリーの食感は柔らかく、プリンのソフトな食感とよく合うものであった。また、通常のカラメルソースとは異なるコーヒーの香り高い新しいプリンであった。
【0033】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、耐熱性及び耐水性に優れ、均一で滑らかなゼリーを得ることができる。本発明のゼリーは、熱や生地の水分による溶解、変形、縮小がなく、柔らかい食感を有するため、パンやケーキ等の柔らかい食感に合致し、特にチョコレートゼリーは、代用植物油脂で作られていた粒状チョコレートの代用品として用いることができる。
【出願人】 【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
【識別番号】599046531
【氏名又は名称】森永商事株式会社
【出願日】 平成11年4月5日(1999.4.5)
【代理人】 【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
【公開番号】 特開2000−287609(P2000−287609A)
【公開日】 平成12年10月17日(2000.10.17)
【出願番号】 特願平11−97690