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【発明の名称】 スープ類付パンとその製造方法
【発明者】 【氏名】長谷川 英毅

【氏名】出口 澄典

【要約】 【課題】保存や管理が容易で、スープなどを計量したり、暖めた後、パンの空洞部に一々注ぎ込んだりする必要のないスープ類付パンとその製造方法を提供することを課題とする。

【解決手段】パンの一部に設けられた空洞部と、その空洞部に充填された凝固したスープ類とを有するスープ類付パンを提供すると共に、パンの一部に設けられた空洞部に凝固したスープ類を充填する工程を含むスープ類付パンの製造方法を提供することによって上記課題を解決する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 パンの一部に設けられた空洞部と、その空洞部に充填された凝固したスープ類とを有するスープ類付パン。
【請求項2】 空洞部がパンの頭頂部に設けられている請求項1記載のスープ類付パン。
【請求項3】 パンの一部に設けられた空洞部に凝固したスープ類を充填する工程を含むスープ類付パンの製造方法。
【請求項4】 パンの一部を刳り抜くことによって空洞部を設ける工程を更に含む請求項3記載のスープ類付パンの製造方法。
【請求項5】 パンの焼成時に所定形状の金型を填め込むことによって空洞部を設ける工程を更に含む請求項3記載のスープ類付パンの製造方法。
【請求項6】 請求項1又は2記載のスープ類付パン用の凝固したスープ類。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スープ類付パンとその製造方法に関し、更に詳しくは、スープやシチューなどのスープ類とパンとを同時に手軽に喫食することができるスープ類付パンとその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般にパンとスープなどとを共に食するときには、スープをパンとは別個の容器に入れて喫食するのが古来からの慣習であるが、近年、ファースト・フード店などにおいて、例えば、特開平6−14697号公報に見られるように、丸形のパンの頭頂部を刳り抜いて設けられた凹型の空洞部に、暖めたスープを販売時に注ぎ込んで喫食せしめる方式の、いわゆるスープパンと称するものが一部で採用されている。
【0003】しかしながら、このような方式では、吸水性の極めて高いパン自体を液体状であるスープの容器として使用するものであるので、パンの空洞部に一旦スープを注ぎ込んだ後は、比較的短時間内に喫食しないと、パンによる水分吸収が進行し、パン自体が過度の膨潤状態となってテクスチャーを損なうばかりか、スープがパン外に漏れ出すという不都合を生じることがある。このため、従来のスープパンにおいては、事前にスープを注ぎ込んで販売の準備をすることや、スープを注ぎ込んだ状態で長時間保存するなどということは不可能で、ファースト・フード店などにおいて、顧客の注文を待ってから、スープを計量し、暖めて、パンの空洞部に注ぎ込むようにするのが精々であった。
【0004】しかも、従来のスープパンにおいては、パンとスープとは調理時に一体化されるまでは別々に保存管理されており、パンの数とスープの量とを一致させることが困難で、どちらか一方が不足したり余ったりして無駄が生じ易く、特にスープに関しては、余った場合の保管や空き容器の処理等、手間と煩わしさには多大のものがあった。
【0005】
【発明の解決しようとする課題】本発明は、以上のような従来技術の欠点を解決するために為されたもので、パンとスープ類とを互いに一体化した状態で長期保存や輸送が可能で、喫食時にスープ類を計量したり、暖めた後にパンの空洞部に注ぎ込んだりする必要のないスープ類付パンとその製造方法を提供することを課題とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、ゼラチンや寒天などの凝固剤を用いて凝固させたスープ類は、パンクラムと接触してもパンクラムへの水分移行が殆ど起こらないことを見出し、このように凝固させたスープ類をパンの一部に設けた空洞部に充填しておくことによって、スープ類をパンの空洞部に充填した状態で長期保存や輸送が可能で、しかも、喫食時には単に暖めるだけの簡単な操作でスープ類付パンが得られることを確認して、本発明を完成した。
【0007】即ち、本発明は、パンの一部に設けられた空洞部と、その空洞部に充填された凝固したスープ類とを有するスープ類付パンを提供すると共に、パンの一部に設けられた空洞部に凝固したスープ類を充填する工程を含むスープ類付パンの製造方法を提供することによって上記課題を解決するものである。
【0008】本発明においては、スープ類が凝固した状態でパンの空洞部に充填されることが重要である。スープ類の凝固は、通常、スープ類に対して1〜3重量%程度のゼラチンや寒天などの天然凝固剤を含有させ、室温乃至は室温以下の温度条件にすることによって行われる。スープ類は、温度低下と共に次第に流動性を失い、ペースト状、半流動状又は半固状、更には完全な固体状となり、このような状態になったスープ類は、パンの皮部分(クラスト)だけでなく、パンの内相(クラム)と接触しても、パン側に水分が移行することは殆どない。凝固したスープ類は、予め設けられているパンの空洞部に充填され、そのまま、或いは、必要に応じてなおも冷却されて、本発明のスープ類付パンとなる。このように、凝固したスープ類が空洞部に充填された本発明のスープ類付パンは、スープ類中の水分がパン側に移行することが殆どないので、長期保存や輸送中にもパンのテクスチャーが損なわれることがなく、また、スープ類がこぼれたり、漏れ出たりすることがない。喫食時には、本発明のスープ類付パンを電子レンジ又はオーブン等で加熱するだけで、空洞部に充填されたスープ類は溶解し暖かなスープ類となり、極めて簡単かつ便利であると共に、容器としてのパン本体も本来のテクスチャーや風味を維持しているので、優れた食感を与えると共に極めて美味である。
【0009】本発明において、パンには予め空洞が設けられているのが望ましい。空洞を設ける方法に特に制限はなく、焼成後のパンを手若しくは機械などを用いて、部分的に刳り抜くようにしても良いし、焼成時に所定形状の金型などを填め込んで、空洞部が形成されるようにしても良い。また、焼成時に内部に自然に空洞部が形成されるタイプのパンにおいては、単に、その頭頂部を切り取るだけでも良い。切り取られた頭頂部は、スープ類を充填した後、蓋としても利用することができる。空洞部を設ける位置については、特に制限はないが、喫食時には、パン自体がスープ類の容器になることを考えると、パンの頭頂部に設けるのが現実的である。
【0010】なお、本発明において凝固とは、必ずしも完全に固体状となったものだけを指すのではなく、上述のように、ペースト状、半流動状又は半固状のものをも含むものである。また、本発明においてスープ類とは、コーンスープ、ビーフコンソメ、フカヒレスープなどの各種スープは勿論、クリームシチューやビーフシチューなどの各種シチュー、ハヤシライス、カレー、すき焼き等、和風、洋風、中華風、その他を問わず、パンクラムと接触して水分がパン側に移行する恐れのある比較的水分を多量に含んだ食品全般を対象とするが、中でも、水分量が格段に多い、スープ類やシチュー類に特に好適である。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を用いて、本発明を詳細に説明する。
【0012】図1は本発明のスープ類付パンの一例を示す図であって、1は本発明のスープ類付パンを示し、2はパンを、3はパン2に設けられた空洞部を、4は空洞部3に充填された凝固したスープ類を示す。
【0013】凝固したスープ類4は、上述のごとく、スープ類に1〜3重量%程度のゼラチンや寒天などの天然凝固剤を含有させ、室温乃至は室温以下の温度条件にすることによって製造される。凝固剤としては、上述のゼラチンや寒天に限られるものではなく、室温乃至室温以下の温度では流動性を失い、加熱によって流動性を回復する物質であればどのようなものでも使用できるが、ゼラチンや寒天を用いるのが好適である。勿論、以上のような凝固剤を使用せず、スープ類に含まれている水分を利用して、冷凍することによって完全な固体として凝固させることも可能である。
【0014】凝固したスープ類4を空洞部3に充填する方法は、凝固したスープ類4が、ペースト状、半流動状又は半固状の場合には、絞り出し機やパテなどを用いて充填することが可能であり、また、凝固したスープ類4が流動性を殆ど喪失し完全な固形状になっている場合には、空洞部に押し込むことによって充填することが可能である。スープ類を完全な固形状に調製する場合には、充填される空洞部の形状に合わせた形状に凝固したスープ類を成形するか、或いは、パンに設けられる空洞部を凝固したスープ類の形状に合わせた形状とするのが好ましく、そのようにすることによって、販売現場で、或いは工場等において、簡単に凝固したスープ類をパン2の空洞部3に充填することが可能となる。いずれにしても、要は、凝固したスープ類4が空洞部3内に位置すれば良く、充填する方法は問うものではない。なお、プルランフィルムやオブラート等の加熱によって融解する可食性フィルムによって凝固したスープ類4を包み込むなどして、凝固したスープ類4からの成分の散逸を防止したり、水分や臭い成分がパン2に移行するのを更に防止するようにしても良い。
【0015】また、凝固したスープ類4を空洞部3へ充填する時期は、加熱前ならばいつでも良く、工場出荷時に既に充填しておいても良いし、販売店又は家庭等における喫食時に凝固したスープ類4を空洞部3に充填し、その後、加熱するようにしても良い。前者の場合には、凝固したスープ類4とパン2との保存管理を一括して行うことができ便利であり、後者の場合には、パン2と凝固したスープ類4との保存条件や保存期間を異ならせることができ、凝固したスープ類4を冷蔵又は冷凍保存する一方、パン2としては焼き立ての新鮮なパンを随時補給するような場合に適している。
【0016】パン2に空洞部3を設ける方法に特に制限はなく、焼成後にパン2の一部を、手又は機械によって刳り抜いても良いし、空洞部3の形状をした金型を填め込んで焼成するようにしても良い。また、内部に自然と空洞部を有するパンの場合には、その空洞部をそのまま利用しても良い。また、パンの種類にも特に制限はなく、フランスパンやバゲット等の硬焼パンは勿論のこと、ホワイトブレッド、バラエティブレッド、テーブルロールなどの食パン類、揚げパン、蒸しパン、マフィン、ラスク等、いずれのものも使用することが可能である。また、空洞部3を設けることができる限りにおいて、パン2の大きさに制限がないことは勿論である。
【0017】図1に示す凝固したスープ類4が充填されたパン2は、スープ類付パン1として、室温乃至は室温以下の温度で保存され、喫食に際して、電子レンジ又はオーブン等によって加熱して喫食される。本発明のスープ類付パンにあっては、スープ類が凝固した状態でパン2の空洞部3に充填されているので、スープ類とパンとを接触した状態で長期保存乃至は輸送してもスープ類中の水分がパン側に移行せず、パン2は本来のテクスチャーや風味を維持することが可能となる。また、予めパン2の空洞部3に凝固したスープ類4を充填してなる本発明のスープ類付パン1においては、喫食時に一々スープ類を計量したり、暖めたり、更には、パン2の空洞部3に注ぎ込んだりする必要がなく、誰でもが手軽に喫食することが可能である。
【0018】図2は、本発明のスープ類付パンの他の例を示す図であって、図1と同じものには同じ符号を付してある。図2の例にあっては、パン2は、空洞部3を有すると共に、同じくパンからなる蓋5も有しており、空洞部3に凝固したスープ類4を充填した後に、蓋5を載せてスープ類の部分を閉じることが可能となっている。このようにすることによって、加熱して暖められたスープ類4が冷めることが防止され、かつ、蓋5もパンであるので、この蓋5の部分からまずスープ類に漬けて食することができ、食欲をそそるものである。
【0019】図3は、本発明のスープ類付パンの更に他の例を示す図であって、この図においては、凝固したスープ類4a、4b、4c・・・は、例えば、4aがコーンスープ、4bがコンソメスープ、4cがフカヒレスープなどのように複数種用意されており、喫食者の好みに応じて選択され、喫食時にパン2の空洞部3に充填されて加熱される。このように、凝固したスープ類は冷蔵又は冷凍保存によって比較的長期保存が可能であるので、例えば販売店などで複数種の凝固したスープ類を保存、保管しておくことによって、注文に応じて、空洞部3を有するパン2と組み合わせて、喫食者の好みに即応したバラエティに富むスープ類付パンを簡便に提供することが可能となる。
【0020】以下、実施例を用いて、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれら実施例に限られるものでないことは勿論である。
【0021】〈実施例1〉2倍濃縮タイプのコーンスープ50.0重量部、水25.0重量部、牛乳25.0重量部、ゼラチン2.5重量部を用い、まず、水、牛乳、及びゼラチンを加熱溶解した後に、それを2倍濃縮タイプのコーンスープに加え、均一になるように攪拌し、次いで冷却してペースト状の凝固したコーンスープを調製した。
【0022】一方、パンとして、丸形のプレーン・バンズ(直径:105mm、高さ:50mm、重量:85g)を準備し、その頭頂部に、木工用の円形刳り抜き機で直径約60mm、深さ約30mmの円筒状の空洞を刳り抜いた。次いで、この空洞部に、先に調製したペースト状のコーンスープ約100gを充填し、ポリ袋で包装後、直ちに冷凍庫に入れて、冷凍状態で3日間保管した。次に、1日間冷蔵庫に保管し、解凍状態になったものを電子レンジで暖め、更にオーブンで加熱して喫食したところ、コーンスープが適度にパンの内部に浸透し、テクスチャーを含めて極めて美味であった。
【0023】〈実施例2〉2倍濃縮タイプのコンソメスープ50.0重量部、水50.0重量部、ゼラチン2.5重量部を用い、まず、水にゼラチンを加えて加熱溶解した後に、それを2倍濃縮タイプのコンソメスープに加え、均一になるように攪拌し、次いで約10℃の冷蔵庫に移して冷却し固形状の凝固したコンソメスープを調製した。
【0024】一方、パンとして、丸形のロール・パン(直径:90mm、高さ:40mm、重量:30g)の頭頂部を、予め金型を填め込んで焼成し、円形凹型の空洞部を設けたものを準備し、その頭頂部の円形凹型空洞部に、先に調製した固形状のコンソメスープ約100gを充填した。これをポリ袋で包装し、直ちに冷凍庫に入れて冷凍状態で10日間保管した。次に、これを冷蔵庫に移して1日間保管して解凍させ、解凍状態になったものを電子レンジで暖め、更にオーブンで加熱して喫食したところ、コンソメスープが適度にパンの内部に浸透し、テクスチャーを含めて極めて美味であった。
【0025】
【発明の効果】以上のように、本発明のスープ類付パン及びその製造方法は、パンに設けられた空洞部に凝固したスープ類を充填するようにしているので、パンとスープ類とを接触させたまま長期間保存しても、スープ類中の水分がパンの側に移行することが殆どなく、パンのテクスチャーや風味が損なわれる恐れがない。そのため、本発明のスープ類付パンは、凝固したスープ類をパンの空洞部に充填した状態で、室温乃至は室温以下の温度での長期間の輸送や保存が可能となり、スーパーやコンビニ等で販売が可能となるばかりでなく、店頭であるか家庭であるかを問わずに、誰でもが、喫食時に電子レンジ乃至はオーブンで加熱するという極めて簡単な作業で自由に喫食することが可能となるものである。食生活の幅を広げ、豊かなものとする上で、本発明の効果には計り知れないものがある。
【出願人】 【識別番号】594029469
【氏名又は名称】ミツワフーズ株式会社
【出願日】 平成10年12月22日(1998.12.22)
【代理人】 【識別番号】100108486
【弁理士】
【氏名又は名称】須磨 光夫
【公開番号】 特開2000−189042(P2000−189042A)
【公開日】 平成12年7月11日(2000.7.11)
【出願番号】 特願平10−365021