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【発明の名称】 低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法
【発明者】 【氏名】岩下 裕志

【氏名】白井 尚子

【氏名】足立 好司

【要約】 【課題】低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法において、煩雑である焼成前作業を単純化すること、解凍作業及び成形作業などの頻度を減少させ総労働量を減少させること、パン生地の焼成頻度をあげること、及び、解凍後の生地発酵を促進し発酵風味を付与すること。

【解決手段】庫内温度を0℃〜25℃に維持した高湿度冷蔵庫内で、低糖配合玉状冷凍パン生地の解凍工程及び低温発酵工程を連続的に行ない、解凍終了後に、パン生地を成形することから成る、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 庫内温度を0℃〜25℃に維持した高湿度冷蔵庫内で、低糖配合玉状冷凍パン生地の解凍工程及び低温発酵工程を連続的に行ない、解凍終了後に、パン生地を成形することから成る、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項2】 庫内温度を0℃〜25℃に維持した高湿度冷蔵庫内で、低糖配合玉状冷凍パン生地の解凍工程及び低温発酵工程を連続的に行ない、解凍終了後に生地を丸めベンチタイムで生地を休めた後、パン生地を成形することから成る、請求項1に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項3】 庫内温度を5℃〜20℃に維持することを特徴とする請求項1又は2に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項4】 庫内温度を10℃〜15℃に維持することを特徴とする請求項3に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項5】 ベンチタイムの条件が温度20℃〜40℃、15分間〜2時間であることを特徴とする請求項2、3又は4のいずれか一項に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項6】 成形したパン生地を庫内温度−5℃〜20℃に維持した高湿度冷蔵庫内で一定時間維持し、その後に最終発酵工程を行うことを特徴とする、請求項1、2、3、4又は5のいずれか一項に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【請求項7】 最終発酵工程が終了した後、パン生地を庫内温度−5℃〜20℃に維持した高湿度冷蔵庫内で一定時間維持し、その後に焼成することを特徴とする、請求項1、2、3、4、5又は6のいずれか一項に記載の低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】玉状冷凍パン生地の解凍は冷凍保管庫から生地を取り出し、これを室内で解凍させる室温解凍法や発酵室を利用して解凍させる発酵解凍法が最も一般的であり、解凍終了後(生地温度が0℃〜20℃)は生地をホイロに入れ最終発酵工程が行われている。これらの方法では1時間〜3時間で解凍が終了するが、生地表面の濡れが激しい為に、生地にビニール袋などを被せて生地が濡れるのを防ぐ等の対応策が必要である。
【0003】又、焼成に適当な生地状態を長時間維持する手段として、最終発酵工程後に、0℃〜18℃の温度範囲に維持し、パン酵母の活性を抑制する方法(特開平7−155100)も知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようとする課題は、■煩雑である焼成前作業を単純化すること、■解凍作業及び成形作業などの頻度を減少させ総労働量を減少させること、■パン生地の焼成頻度をあげること、■解凍後の生地発酵を促進し発酵風味を付与すること、の4点である。
【0005】玉状冷凍パン生地の利用はスクラッチ法(ミキシングから焼成まで連続的に行う従来の製パン方法)に比べて、店舗内の作業を単純化し作業量を大幅に削減することが可能である。又、ミキサーや発酵室等の装置を必要とせず、その分設備投資も少なくて済み、更に広いスペースも必要としない。しかし、60種類から100種類にも及ぶパンを製造するような一般的な店舗においては、玉状冷凍パン生地を利用しても1日1回から2回製造することが現状であり、常に焼き立てのパンを消費者に提供することは困難である。この理由として、焼成する回数だけ解凍・成形工程を行う必要があり、多頻度にこれらの作業を行うことは困難であるからである。従って、作業の単純化の手段として、連続的に解凍、成形及び低温発酵を行うことによって、任意の時間に焼成が出来るようにすることが好ましい。
【0006】又、一般的に、冷凍生地はスクラッチ生地(非冷凍生地)に比べて、冷凍前の生地発酵時間がかなり短い。これは生地の冷凍保存性を高める為であるが、この結果、冷凍生地より得たパンは発酵風味が弱いことが多い。この現象は多糖生地よりもフランスパンを代表とする低糖生地で特に顕著に見られる傾向がある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、庫内温度を0℃〜25℃、好ましくは5℃〜20℃、更に好ましくは10℃〜15℃に維持した高湿度冷蔵庫内で、低糖配合玉状冷凍パン生地の解凍工程及び低温発酵工程を連続的に行ない、解凍終了後に、パン生地を成形することから成る、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法に係わる。解凍工程及び低温発酵工程に要する時間は、通常、4時間から36時間、好ましくは、6時間から24時間である。庫内温度が0℃以下であると低糖配合生地の解凍は進まず、25℃以上、又は36時間以上解凍すると生地は発酵が進みすぎ過発酵状態となる。すなわち低糖配合生地中のパン酵母の活性が落ち最終発酵工程で十分な炭酸ガスが発生しなくなる等の現象が生じる。本発明方法においては、解凍工程及び低温発酵工程を行う間、高湿度冷蔵庫内の温度を特に段階的に変化させる必要がなく、上記の所定範囲の一定温度に維持すれば良い。低糖配合玉状冷凍パン生地として複数種類のものを使用することも可能である。又、解凍後の玉状冷凍パン生地の成形は、最終製品の形状等に応じて当業者が適宜選択できる。尚、成形はモルダー等の通常の手段を使用して行うことができる。
【0008】本発明によれば、解凍工程及び低温発酵工程を同一の庫内で連続的に行うことによって、良質のパンを得ることができる。即ち、高湿度下の庫内で解凍を行う為に、生地表面にビニール袋等を被せる等して生地の濡れ及び乾燥のいずれも防ぐ必要がないので、作業性向上し、更に衛生上も好ましい。このような効果を得る為に庫の湿度は、通常、80%〜100%の範囲に維持するのが好ましい。本発明方法においては、生地を解凍状態で数時間維持する為に、その間生地は低温発酵して発酵風味が付与され、冷凍生地の課題であった少ない発酵量を補うことが出来る。特に、フランスパン生地のような低糖生地の配合はリーンであり、パンの風味で原材料に由来するものは少なく、その分生地の発酵風味が重要である。又、長時間解凍である為に生地のムラが殆どなく、解凍終了後は安定した生地温度の生地を得ることが可能であり、従って、解凍・成形工程の次工程である(最終)発酵工程でも安定した発酵(長時間発酵)を得ることが可能である。更に、本発明方法においては、解凍終了後に生地を丸めベンチタイムで生地を休めることが好ましく、このベンチタイムは、通常、20℃〜40℃、より好ましくは28℃〜35℃で、15分〜2時間である。こうしてパン生地を休め、更に発酵を進めることにより、更に良好な風味のフランスパン等を得ることができる。尚、かかるベンチタイムの際の湿度条件には特に制限はないが、通常60%〜80%の範囲が好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明は更に、成形した生地を−5℃〜20℃、好ましくは−5℃〜5℃に維持した高湿度冷蔵庫内で一定時間、例えば、30分間〜5時間維持し、その後に最終発酵工程を行うことを特徴とする、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法に係わる。即ち、この温度領域においてはパン酵母の活性は低く、パン生地の膨張は殆どなく、生地表面の濡れすぎ乾燥もない為に、成形された生地を長時間同じ状態で維持することが可能である。これによって玉状冷凍パン生地の焼成前処理工程で煩雑な成形作業を一括して行うことが可能となり、必要に応じて、希望するタイミングで次工程である発酵工程に移行し、その後に焼成してパンを得ることが可能となった。
【0010】又、本発明は、最終発酵工程が終了した後、パン生地を、−5℃〜20℃、好ましくは−5℃〜5℃に維持した高湿度冷蔵庫内で一定時間、例えば、30分間〜5時間維持し、その後に焼成することを特徴とする、低糖配合玉状冷凍パン生地の焼成前処理方法に係わる。但し、最終発酵工程後は、パン酵母の活性が高くなっている為、生地冷却中の若干の生地膨張が起こる。従って、このような場合は、やや早めに最終発酵を終了することが望ましい。高湿度冷蔵庫内の湿度は、通常、80%〜100%の範囲に維持するのが好ましい。又、本発明方法において、最終発酵工程前後の両方の時期に、パン生地を−5℃〜20℃、好ましくは−5℃〜5℃に維持した高湿度冷蔵庫内で一定時間維持することも可能である。
【0011】本発明方法において、冷凍パン生地の解凍、低温発酵、最終発酵、最終発酵工程前後の冷却維持を行う為の高湿度冷蔵庫としては、当業者には公知の任意のもの、例えば、「氷温庫」と呼ばれているものを使用することができる。又、「ドウコンディショナー」と称する、加温、冷却、加湿、除湿が任意におこなえる装置を使用することも可能である。本発明方法に使用する「低糖配合玉状冷凍パン生地」とは、糖の含有量が約3重量%以下のパン生地を意味し、その材料及び他の配合割合は、例えば、フランスパン等の最終製品の種類に応じて当業者が適宜選択できる。各材料を適宜配合して調製して得られた原料を、当業者には周知の各工程、例えば、前処理、混捏、醗酵等を施したのち、更に、分割、丸め,ねかし、整形等の仕上げ処理を経て、プラストフリーザーなどを用いて凍結させ、適当な温度で冷凍庫などで凍結保存する。
【0012】以下、実施例を参照しながら本発明方法を具体的に説明する。本発明の主旨を逸脱しない限り、本発明の技術的範囲が実施例に限定されるものでないことは当業者には明らかである。尚、当業者には周知の事項であるが、以下の表における「ベーカーズ%」及び「%」は「重量部」を意味する。
【0013】
【実施例1】以下の仕様によりフランスパンの玉状冷凍パン生地を製造した。
【0014】
【表1】

【0015】この様にして得られた冷凍フランスパン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度10℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、生地を丸め、温度35℃、湿度70%の庫内で1時間生地を発酵させた後生地を取り出して成形をおこない、さらに温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0016】
【実施例2】実施例1と同様にして冷凍フランスパン生地を調整した。この様にして得られた冷凍フランスパン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度10℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、生地を丸め、温度35℃、湿度70%の庫内で1時間生地を発酵させた後生地を取り出し成形をおこなった。成形生地は高湿度冷蔵庫(温度5℃、湿度90%)に移しその状態で維持した。1時間後、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0017】
【実施例3】実施例1と同様にして冷凍フランスパン生地を調整した。この様にして得られた冷凍フランスパン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度10℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、生地を丸め、温度35℃、湿度70%の庫内で1時間生地を発酵させた後生地を取り出し成形をおこなった。さらに温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵をおこなった。最終発酵が終了した生地は高湿度冷蔵庫(温度5℃、湿度90%)に移しその状態で維持した。1時間後、高湿度冷蔵庫から最終発酵済み生地を取り出し焼成をおこなった。
【0018】
【実施例4】実施例1と同様にして冷凍フランスパン生地を調整した。この様にして得られた玉状冷凍パン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度10℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、生地を丸め、温度35℃、湿度70%の庫内で1時間生地を発酵させた後生地を取り出し成形をおこなった。成形した生地は高湿度冷蔵庫(温度5℃、湿度90%)に移しその状態で維持した。1時間後、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵をおこなった。最終発酵が終了した生地は高湿度冷蔵庫(温度5℃、湿度90%)に移しその状態で維持した。1時間後高湿度冷蔵庫から最終発酵済み生地を取り出し焼成をおこなった。
【0019】
【比較例1】以下の仕様により玉状冷凍パン生地を製造した。
【0020】
【表2】

【0021】この様にして得られた冷凍食パン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度15℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、生地を丸め温度35℃、湿度70%の庫内で1時間生地を発酵させた後生地を取り出して成形をおこない、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0022】
【比較例2】実施例1と同様にして冷凍フランスパン生地を調整した。この様にして得られた冷凍フランスパン生地を冷凍庫から取り出し、解凍庫(温度26℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、直ちに成形をおこない、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0023】
【比較例3】実施例1と同様にして玉状冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた玉状冷凍パン生地を冷凍庫から取り出し、冷蔵庫(温度15℃、湿度50%)に収容した。16時間後に冷蔵庫から解凍した生地を取り出し、直ちに成形をおこなった後に、冷蔵庫(後5℃、湿度50%)に移し1時間その状態で成形済み生地を維持した。1時間後、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0024】
【比較例4】実施例1と同様にして玉状冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた玉状冷凍パン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度15℃、湿度90%)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、直ちに成形をおこなった後、温度28℃、湿度65%の部屋に放置し1時間その状態で成形済み生地を維持した。1時間後、温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。
【0025】
【比較例5】実施例1と同様にして玉状冷凍パン生地を調整した。この様にして得られた玉状冷凍パン生地を冷凍庫から取り出し、高湿度氷温庫(温度15℃、湿度90%以上)に収容した。16時間後に高湿度氷温庫から解凍した生地を取り出し、直ちに成形をおこない、さらに温度35℃、湿度70%のホイロ庫に入れ最終発酵終了後焼成をおこなった。最終発酵が終了した生地は温度28℃、湿度65%の部屋に放置した後焼成をおこなった。以上の結果を表3、表4及び表5に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
【表4】

【0028】
【表5】

【0029】各実施例はいずれも各比較例に比べ、焼成前の生地表面の状態が良く、焼成後得られたパンの品質も良好であった。温度15℃、湿度90%以上の状態に16時間維持されることで生地は解凍及び低温発酵が進み、焼成後のパンは発酵風味が良好であった。さらに温度35℃、湿度70%の庫内で1時間ベンチタイムをとることにより風味は更に良化した。また、解凍及び低温発酵が終了した生地は表面が適度にしとり感があり、物性は伸展性が良く、成形の作業性が非常に良いものであった。26℃で16時間解凍した生地はかなり発酵が進み生地は膨張していた。すなわち解凍工程中のイーストの活性は高い状態で維持され、解凍終了時は残存糖量が少なく、イースト活性が低下し、従ってパンのボリュームが小さく、焼き色は薄くなった。成形後、さらに最終発酵終了後の生地を温度5℃、湿度90%以上の高湿度冷蔵庫に入れることにより、その状態を数時間まで同じ状態で維持することが可能であることが明らかになった。最終発酵終了後の生地はしばらく膨張が認められるが直ちに膨張が停止し大きな問題はない。室温に放置すると生地の膨張、表面の乾燥が現れパン品質に重大な悪影響を与えた。
【0030】
【発明の効果】本発明の焼成前処理方法によれば、例えば、前日夜から解凍を開始することが可能となるため、当日は常時解凍状態の生地を確保することが可能となる。また、解凍状態の生地は安定している為、空いた時間、任意の時間に成形作業を行うことが出来る。更に、成形されたパン生地を数時間維持することが可能であることから、大量の生地をまとめて成形することが可能であり、必要に応じて、必要な量だけ最終発酵及び焼成工程に進めることが出来る。従って、1日に複数回のパン焼成が可能であり、更に、販売の状態を考慮しながら製造個数を調整することも可能である。このように、本発明方法によって、小人数で、多品種のパンを多頻度で任意の時間に焼成することが可能になった。
【出願人】 【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
【出願日】 平成10年9月24日(1998.9.24)
【代理人】 【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
【公開番号】 特開2000−93074(P2000−93074A)
【公開日】 平成12年4月4日(2000.4.4)
【出願番号】 特願平10−270246