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【発明の名称】 ポプリ製造器
【発明者】 【氏名】鳩野 哲男

【氏名】服部 美津江

【氏名】杉田 勝志

【要約】 【課題】花卉類の香りを残し,短時間で均一に乾燥して,家庭でも簡単にポプリを作製することができるポプリ製造器を提供する。

【解決手段】花卉類6を収容する網体3と,花卉類に対して遠赤外線を放射する遠赤外線放射体2と,遠赤外線を反射する透明な蓋体1とを有する。蓋体は,ガラス基板の表面に熱線遮断用の薄膜を有する熱線遮断ガラスであって,ガラス基板は低熱膨張性を有すると共に,薄膜は酸化錫系皮膜であることが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 花卉類を収容する網体と,上記花卉類に対して遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と,上記遠赤外線を反射する透明な蓋体とを有することを特徴とするポプリ製造器。
【請求項2】 請求項1において,上記蓋体は,ガラス基板の表面に熱線遮断用の薄膜を有する熱線遮断ガラスであって,上記薄膜は酸化錫系皮膜であることを特徴とするポプリ製造器。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記蓋体は,ガラス基板の表面に熱線遮断用の薄膜及び耐熱性防汚膜を設けた耐熱防汚性熱線遮断ガラスであることを特徴とするポプリ製造器。
【発明の詳細な説明】【0001】
【技術分野】本発明は,花卉類の香りを十分に残した状態で花卉類を短時間に乾燥してポプリを製造することができるポプリ製造器に関する。
【0002】
【従来技術】ポプリは,ラベンダーなどのハーブ,バラなどの花卉類を乾燥させることにより作成される。従来,花卉類乾燥のための専用装置がほとんどなく,花卉類を容器に入れ,ガスコンロやオーブントースター等で加熱するか,または天日や陰干しをすることにより乾燥を行っていた。
【0003】また,薬草やお茶と同様にポプリ原料を乾燥する装置として,特開平1−247037号公報に開示されているように,遠赤外線を用いて外部から観察しつつ低温の恒温状態で回転しながら乾燥する装置がある。
【0004】
【解決しようとする課題】しかしながら,上記従来のポプリ製造器においては,以下の問題がある。
(1)ガスコンロやオーブントースター等での加熱乾燥では,ポプリに加熱ムラが生じたり,焼けてしまうなどの失敗が発生しやすく,また天日や陰干しでの乾燥は時間がかかりすぎ,しかもポプリに要求される香りが残らないなどの問題がある。
(2)特開平1−247037号公報のような遠赤外線を用いて乾燥する装置では,ポプリの製造には望ましいが,全体を均一に乾燥するための回転機構を設けているため,装置が複雑となりコストも高い。
【0005】本発明はかかる従来の問題点に鑑み,花卉類の香りを残し,短時間で均一に乾燥して,家庭でも簡単にポプリを作製することができるポプリ製造器を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】本発明は,花卉類を収容する網体と,上記花卉類に対して遠赤外線を放射する遠赤外線放射体と,上記遠赤外線を反射する透明な蓋体とを有することを特徴とするポプリ製造器である。
【0007】本発明において最も注目すべきことは,遠赤外線を反射する透明な蓋体を,花卉類を収容した網体に載置し,遠赤外線を花卉類のまわりから放射させて花卉類を乾燥させていることである。
【0008】次に,本発明の作用及び効果について説明する。蓋体は,遠赤外線を反射するため,発熱体を作動させると同時に上下方向から花卉類に均一に遠赤外線が放射される。このため,均一に短時間で乾燥し,乾燥ムラがないポプリを製造することができる。また,蓋体は透明であるため,乾燥時に,花卉類を外部から観察することができる。そのため,加熱乾燥しすぎで変色,変形を起こす前に加熱乾燥を終了することができる。
【0009】また,加熱手段は遠赤外線であるため,香りを十分に残した状態で花卉類を短時間で乾燥させることができる。また,セラミックス体は,遠赤外領域で強いエネルギーを放射する。また,遠赤外線は特に水分子に吸収されやすい。そのため,効率よく花卉類を乾燥することができる。また,遠赤外線放射により花卉類は加熱乾燥されるため,雑菌や害虫を殺すことができ,後日のカビや虫が発生することを防止できる。
【0010】更に,花卉類の収容体は網体であるため,通気性に優れ,乾燥により生じた水分をそこから外部に放出するため,花卉類の乾燥が促進される。また,本発明によれば,大掛かりな装置や複雑な装置を必要とせず,一般家庭において手軽にポプリを作製できる。以上のように,本発明のポプリ製造器によれば,花卉類の香りを残し,短時間で均一にポプリを作製することができる。
【0011】次に,本発明の詳細について説明する。本発明のポプリ製造器は,遠赤外線を反射する透明な蓋体を有している。上記蓋体は,ガラス基板の表面に熱線遮断用の薄膜を有する熱線遮断ガラスであって,上記薄膜は酸化錫系皮膜であることが好ましい。熱線遮断用の薄膜は酸化錫系皮膜であるため,熱線遮断効果が高い。
【0012】さらに好ましくは熱線遮断用の薄膜は,650℃以上において形成された酸化錫系皮膜である。650℃以上において形成された酸化錫系皮膜は,高温下での熱線遮断効果が大きいからである。酸化錫系皮膜には,熱線遮断効果を発揮するための種々のドーピング剤が加えられている。酸化錫系皮膜としては,たとえば,酸化錫,インジウム錫の酸化物などを用いることができる。
【0013】また,上記薄膜の膜厚は,100〜1000nmであることが好ましい。100nm未満の場合には,上記薄膜が島状になって連続した均一な薄膜構造にならないため,十分な熱線遮断効果を発揮し得ない。そのため,より好ましくは300nm以上がよい。一方,1000nmを超える場合には,可視光の透過率が低下するため,透視することを目的とする熱線遮断ガラスには適用困難となるという問題がある。そのため,より好ましくは700nm以下がよい。
【0014】また,上記薄膜が熱線遮断効果を発揮するためには,薄膜に電気伝導性が必要である。電子のプラズマ振動により熱線が反射されるからである。したがって,導電効果を高めるために上記薄膜にドーピング剤を含有させる。ドーピング剤としてはアンチモンを含有していることが好ましい。これにより,酸化アンチモンを有する酸化錫系皮膜が形成され,優れた熱線遮断ガラスを確実に発揮させることができる。なお,アンチモンに代えて,フッ素,インジウム等をドーピング剤として用いることもできる。
【0015】上記蓋体は,ガラス基板の表面に熱線遮断用の薄膜及び耐熱性防汚膜を設けた耐熱防汚性熱線遮断ガラスであることが好ましい。熱線遮断効果の劣化を防止するためである。耐熱性防汚膜は,可視光を透過することが可能な薄膜であり,二酸化珪素,酸化ジルコニウム,酸化チタンのいずれか1種以上からなることが好ましい。これらは原子同士の結びつきが強く緻密体となり機械的強度が高く,耐久性,防汚効果も優れている。これにより,上記耐熱防汚性熱線遮断ガラスの表面に付着した汚れは,ブラシ,研磨剤等でこすったり,磨いたりせずに,スポンジなどで軽く擦るだけで取り除くことができる。更に,上記耐熱性防汚膜により,その下層の熱線遮断用の薄膜は保護され,該薄膜の熱線遮断効果が劣化することを防止することができる。
【0016】次に,上記耐熱性防汚膜の膜厚は50〜500nmであることが好ましい。これにより,耐熱性防汚膜の防汚効果及び耐久性が向上する。一方,上記膜厚が50nm未満の場合には,充分な防汚効果を得ることができないおそれがある。上記膜厚が500nmを超える場合には,形成過程における上記耐熱性防汚膜の応力により該耐熱性防汚膜が基板から剥離するおそれがある。
【0017】遠赤外線放射体は,例えば,セラミックス体であり,花卉類収容側の反対側に発熱体を設けていることが好ましい。セラミックス体は,適度な熱伝導性を有し,耐熱性に優れているため,良好な熱緩衝体となる。発熱体から放射された熱は,セラミックス体において全体に伝達し,緩和される。そのため,熱は遠赤外線としてセラミックス体の全体から均一に放射され,ポプリの乾燥に適した乾燥環境となる。セラミックス体としては,結晶化ガラスを用いることが好ましい。結晶化ガラスは遠赤外線放出量が多いからである。発熱体としては,たとえば,電熱線,ハロゲンランプ,黒鉛などを用いることができる。
【0018】花卉類と遠赤外線放射体との間は1〜50mmの間隙があいていることが好ましい。1mm未満の場合には,花卉類と遠赤外線放射体とが接するおそれがあり,接した場合には花卉類が焦げてしまうおそれがある。50mmを超える場合には乾燥に時間がかかるおそれがあるからである。上記間隙は,たとえば,網体自体の厚みや,網体に脚部を設けることにより形成できる。更に好ましくは2〜30mmの間隙であり,かつ,網体の表面温度が80℃以下になるようにする。この範囲において遠赤外線の効果が発揮され花卉類の香りを残し短時間で均一に乾燥させることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】実施形態例1本発明の実施形態に係るポプリ製造器について,図1〜図4を用いて説明する。本例のポプリ製造器は,図1,図2に示すごとく,花卉類6を収容する網体3と,花卉類6に対して遠赤外線4を放射する遠赤外線放射体2と,遠赤外線4を反射する透明な蓋体1とを有する。網体3は,金網からなり,その下部には脚部31が取付けられており,収容した花卉類6と遠赤外線放射体2との間に15mmの間隙をあけている。
【0020】蓋体1は,図3に示すごとく,ガラス基板12の表面に熱線遮断用の薄膜11を有する熱線遮断ガラスである。ガラス基板12は,透明結晶化ガラスである。薄膜11は,SnO−15wt%Sbよりなる酸化錫系皮膜である。薄膜11は,ガラス基板12に,上記熱線遮断膜形成用の薬液をスプレー法により均一に散布して,酸化熱分解反応を起こさせて形成する。薄膜11の厚みは約600nmである。蓋体1には,取っ手14が設けられている。
【0021】遠赤外線放射体2は,図1に示すごとく,セラミックス体22と,セラミックス体22に対して花卉類6収容側の反対側に設けた発熱体21とからなる。セラミックス体22は,結晶化ガラスである。発熱体21は,150mm角の黒鉛からなる平面薄膜であり,セラミックス体22に対して印刷し焼付けてある。発熱体21の両端には,電極212が取付けられており,発熱体21に電圧を印加するための配線213と接続している。
【0022】遠赤外線放射体2は,筐体29の上に固定されている。筐体29には,図4に示すごとく,スイッチ291,受電ランプ292,ヒューズ294,電圧調整器293,電源コード295,コンセントプラグ296が設けられており,これらにより発熱体21の作動が制御される。
【0023】花卉類6は,淡いピンク色のバラの花弁であり,花弁が重ならないようにして網体3に収容する。網体3の上には,蓋体1を置く。そして,電圧調整器293により遠赤外線放射体2の表面温度を150℃に設定し,スイッチ291をONにする。加熱乾燥中,適宜花卉類6の乾燥状態を観察し,電圧調整器293及びスイッチ291により加熱条件を調整する。3分間程度加熱すると,芳香が高く変色が少ないポプリが得られる。一方,比較のため,上記と同様の花卉類を風通しのよい室内で1週間放置して自然乾燥したところ,得られたポプリは褐色に変化し,香りもなかった。
【0024】次に,本例の作用及び効果について説明する。遠赤外線放射体2は,花卉類6収容側にセラミックス体22を,その反対側に発熱体21を設けている。セラミックス体22は,適度な熱伝導性を有し,耐熱性に優れているため,良好な熱緩衝体となる。発熱体21から放射された熱はセラミックス体22において全体に伝達し,緩和される。そのため,熱は遠赤外線としてセラミックス体の全体から均一に放射され,ポプリの乾燥に適した乾燥環境となる。また,蓋体1は,遠赤外線を反射するため,発熱体21を作動させると同時に上下方向から花卉類に均一に遠赤外線が放射される。このため,均一に短時間で乾燥し,乾燥ムラがないポプリを製造することができる。
【0025】また,蓋体1は透明であるため,乾燥時に,花卉類6を外部から観察することができる。花卉類6の乾燥状態に応じて,スイッチ291のON/OFFをすることにより,乾燥過剰を防止し変色,変形も防止できる。また,加熱手段は遠赤外線であるため,香りを十分に残した状態で花卉類を短時間で乾燥させることができる。更に,花卉類の収容体は網体3であり,通気性に優れ,花卉類の乾燥が促進される。
【0026】実験例1本例においては,蓋体のポプリ乾燥状態への影響を調べた。実験に際しては,バラの花弁を実施形態例1のポプリ製造器により乾燥した。バラの花弁と遠赤外線放射体との距離,網体の表面温度,及び蓋体の種類を変えた。網体の表面温度は,遠赤外線放射体の表面温度を150℃に保ち,遠赤外線放射体からの網体の距離を離すことにより調整した。遠赤外線放射体及び網体の表面温度は,表面温度計で測定した。蓋体は,花弁より30mm離した。表1に,花弁の乾燥所要時間を示した。
【0027】
【表1】

【0028】表1より明らかなように,網体の表面温度が90℃では,本発明の酸化錫系被膜を有する蓋を用いた場合には5分間と早く乾燥するが,花弁がやや焦げてしまった。このことから,網体の表面温度は80℃以下に設定することが好ましい。また,網体の表面温度が下がっても,本発明の酸化錫系被膜を有する蓋体を用いた場合には,乾燥時間がほとんど長くならないのに対し,本発明以外の蓋を用いた場合には乾燥時間が長くなった。これは,本発明の蓋体が遠赤外線を反射して外部に放射しないため,蓋体で反射した遠赤外線が効率的に花弁に放射されるためである。また,酸化錫系被膜を有する蓋体を用いた場合には,花弁の乾燥時間は,網体の表面温度(49〜78℃)の差(約30℃)に左右されていない。これは,花弁の乾燥は,遠赤外線の影響を強く受けているためである。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば,花卉類の香りを残し,短時間で均一に乾燥して,家庭でも簡単にポプリを作製することができるポプリ製造器を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000244305
【氏名又は名称】鳴海製陶株式会社
【出願日】 平成10年10月28日(1998.10.28)
【代理人】 【識別番号】100079142
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 祥泰 (外1名)
【公開番号】 特開2000−136101(P2000−136101A)
【公開日】 平成12年5月16日(2000.5.16)
【出願番号】 特願平10−307264