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【発明の名称】 アレルゲン除去方法及び製剤
【発明者】 【氏名】藤井 真吾

【氏名】厳原 美穂

【氏名】高木 滋樹

【要約】 【課題】アレルギー、アトピー、喘息等の予防技術に関し、環境中のアレルゲンを失活させて、アレルゲンを除去し、アレルギー発症の予防を行う。

【解決手段】アルコール等の有機溶剤を利用したアレルゲンを変性して失活させるアレルゲン除去方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルコール等の有機溶剤を利用したアレルゲンを変性して失活させることを特徴とするアレルゲン除去方法。
【請求項2】 アルコール等の有機溶剤を利用したアレルゲンを変性してアレルゲンを不溶化させることを特徴とするアレルゲン除去方法。
【請求項3】 前記アレルゲンは、環境中に存在するダニ、スギ花粉、ゴキブリ、カビ等のアレルゲンを対象にしたことを特徴とする請求項1または2記載のアレルゲン除去方法。
【請求項4】 前記有機溶剤は、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、オレイン酸等のカルボン酸類、アセトニトリル、アニリン等の窒素化合物、酢酸エチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類より選ばれた1種または2種以上の混合物を利用したことを特徴とする請求項1または2または3記載のアレルゲン除去方法。
【請求項5】 前記有機溶剤は、濃度が20v/v%〜100v/v%のエタノールを利用したことを特徴とする請求項1または2または3または4記載のアレルゲン除去方法。
【請求項6】 アルコール等の有機溶剤を利用したアレルゲンを変性して失活させることを特徴とするアレルゲン除去製剤。
【請求項7】 アルコール等の有機溶剤を利用したアレルゲンを変性してアレルゲンを不溶化させることを特徴とするアレルゲン除去製剤。
【請求項8】 前記アレルゲンは、環境中に存在するダニ、スギ花粉、ゴキブリ、カビ等のアレルゲンを対象にしたことを特徴とする請求項6または7記載のアレルゲン除去製剤。
【請求項9】 前記有機溶剤は、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、オレイン酸等のカルボン酸類、アセトニトリル、アニリン等の窒素化合物、酢酸エチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類より選ばれた1種または2種以上の混合物を利用したことを特徴とする請求項6または7または8記載のアレルゲン除去製剤。
【請求項10】 前記有機溶剤は、濃度が20v/v%〜100v/v%のエタノールを利用したことを特徴とする請求項6または7または8または9記載のアレルゲン除去製剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アレルギー、アトピー、喘息等の予防技術に関し、特には、環境中のアレルゲンを失活させる、あるいはアレルゲンを不溶化させるアレルゲン除去方法及び製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】アレルギー患者数は年々増加傾向にあり、国内の患者は750万人ともいわれ、現在非常に大きな問題となっている。アレルギー疾患の対策は、アレルギー疾患者の治療と、アレルゲンそのもののを除去する方法とに分けられる。
【0003】アレルギー疾患者の治療としては、ステロイド剤や抗ヒスタミン剤の投与が行われているが、効果や副作用を考慮すると決して満足できるレベルではない。また、体質を改善する治療法も検討されているが、その手法が確立されるまでには至っていない。一方、環境中からアレルゲンを除去することはアレルギー発症の予防に大変有効であるとの報告がある(アレルギー41 1405〜1412、THELANCET 336 895〜897)。環境中のアレルゲン密度を低下させるために、殺ダニ剤、殺菌剤および殺ダニ効果を謳った掃除機、ふとん乾燥器等が市販されている。また、特開昭61−44821号公報や特開平6−279273号公報には、タンニン酸や類似構造を有する物質で環境を処理することにより、アレルゲンを除去する方法が示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記に挙げた商品はダニやカビそのものの増殖の抑制には有効であるが、アレルゲンはカビ本体やダニの死骸並びに排泄物に多く含まれているため、単にダニやカビを殺すだけでは室内のアレルゲン量は低下しない。そのため、アレルギー発症を抑制するには、これらのアレルゲンを除去させる必要がある。アレルゲンの除去するには掃除機による吸引やふとんたたき、クリーニング等で行うのが一般的である。しかし、前記の方法を通常通り行ってアレルゲンを除去するのは非常に困難で、最も効果の高いクリーニングにおいても手間やコストがかかる(アレルギー40 439〜443)。また、タンニン酸等の物質で環境を処理すると多価フェノール基が金属イオンとキレートを形成し、特異的な定色反応が起こるため、壁や敷物等が着色し、実使用に至るまでには解決すべき問題が山積している。以上より、安価で簡便なアレルゲン除去方法が望まれている。
【0005】本発明は、前記従来技術の問題点を改善・解決するものであり、アレルギーの発症予防に効果を有するのみならず、副作用を抑え環境中に有害物を残留させず、しかも広範囲なアレルゲンに利用できる新規技術を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、タンパク質で構成されているアレルゲンはエアゾール等の吹付けによって有機溶剤を接触させることで、その生理活性に変化を来すことを発見した。また、溶媒蒸気においても同様の効果があることも明確となった。
【0007】なお、前記有機溶剤は、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、オレイン酸等のカルボン酸類、アセトニトリル、アニリン等の窒素化合物、酢酸エチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類より選ばれた1種または2種以上の混合物を利用した場合に、きわめて良好な効果があらわれる。
【0008】また、前記アレルゲンは、環境中に存在するダニ、スギ花粉、ゴキブリ、カビ等のアレルゲンを対象にすると著しい効果がある。
【0009】また、有機溶剤を利用したことで、特異的な定色反応が起こるのを防止し、着色等の汚染をなくすことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に実施例を挙げて本発明を説明する。しかし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0011】<実施例1>実施例1は溶剤に浸漬した場合であり、その効果は以下の通りである。ダニ培養物から分離、凍結乾燥したダニ虫体1mgを0、50、100v/v%エタノール溶液1mlに10分間浸漬し、ELISA法にてアレルギー患者IgE(免疫グロブリンE)との結合能を調査した。このELISA法は次の通りである。
【0012】重炭酸塩緩衝液(Bicarbonate buffer)で10μg/mlに希釈した抗原液をマイクロタイタープレート(Falcon3912,Becton Dickinson and Co.)のウェルに50μl加え、25℃で2時間静置して抗原の固定化を行った。PBST(PBS containing 0.05%Tween20)、PBSで洗浄後、200μlの阻止緩衝液(Blocking buffer)(PBST,containing 5%skin milk)を加え、25℃で2時間静置した。再び、PBST、PBSで洗浄後、PBSで4、8、16倍に希釈したダニ喘息患者プール血清をそれぞれ50μlずつ加え、25℃で12時間静置した。PBST、PBSで洗浄後、1000倍に希釈したアフィニティー分離山羊抗体抗−(Affinity−isolated Goat Antibodies anti−(Human IgE epsilon chain))ビオチン抱合体(Biotinconjugate(BIOSOURCE international))をプレートにそれぞれ50μlずつアプライし、25℃で2時間静置した。PBST、PBSで洗浄後、1000倍に希釈したHPR−ストレプタヴィディン(HPR−streptavidin)(Zymed)を50μlアプライし、25℃で1時間静置した。PBST、PBSで洗浄後、100μlの発色液を加えて発色させ、450nmで吸光度を測定した。
【0013】その結果を、溶剤に浸漬した場合の効果を示す下記の表1及びエタノール浸漬処理におけるIgE結合能(水処理区(水浸漬区)のIgE結合能を100%とした結合能)を示す図1に示す。
【0014】
【表1】

【0015】表1及び図1から明らかなように、50%エタノール溶液によって結合能は水処理区(水浸漬区)の40%まで低下した。本結果は、エタノールがアレルゲンに作用し、アレルギー患者lgEとの結合価を低下させたかもしくはアレルゲンとマイクロプレートとの結合性を低下させたことを示しており、従来の生理活性に変化を来したことは明確である。
【0016】<実施例2>実施例2は溶剤蒸気と接触させた場合であり、その効果は以下の通りである。密閉容器に0、8、22、100v/v%エタノール溶液を入れ、十分容器内を飽和させた後、ダニ虫体1mgを取り分けたガラスシャーレを入れ、25℃で10時間飽和エタノール蒸気と接触させた。
【0017】その結果を、各抗原濃度における水処理区を基準にしたヒスタミン遊離比率を示す下記の表2及びエタノールを空間接触させたアレルゲンのヒスタミン遊離率を示す図2、各抗原濃度における水処理区を基準にしたヒスタミン遊離比率を示す図3、50%ヒスタミン遊離時の抗原濃度を示す図4にそれぞれ示す。
【0018】
【表2】

【0019】図2から明らかなように、22%エタノール溶液(気中エタノール濃度約70%)において最も活性を低下させた。
【0020】また、表2及び図3から明らかなように、活性低下の割合は抗原濃度が低いほど顕著で、最も効果が現れたのは抗原濃度が0.05μg/mlのときで、活性は5分の1に低下した。
【0021】また、図4から明らかなように、ヒスタミン遊離率(このヒスタミン遊離率の測定法については後述する)が50%となる時に要する抗原濃度は、水処理区では0.9μg/mlであったが、22%エタノール処理区では2.1μg/mlであった。つまり、生体に取り込まれた抗原量が2.3倍であるにも関わらず、抗原としての活性は同じであったことになる。
【0022】このようにエタノール溶液において濃度が20v/v%〜100v/v%のときにアレルゲンをきわめて効果的に失活させることができる。
【0023】次に、ヒスタミン遊離率の測定法について述べる。アレルギーは、好塩基球に結合しているIgE抗体が抗原と結合することによって架橋され、好塩基球からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出されることで発症する。そのため、アレルゲン活性が低下した抗原では、IgEとの結合が低下するので血球から遊離されるヒスタミン量が低下する。そこで、抗原をエタノール処理し、アレルギー患者血球からの遊離されるヒスタミン量を高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0024】・エタノールの処理方法と抗原液の調製ダニ培養物から分離、凍結乾燥したダニ虫体を1mgずつ直径6cmのガラスシャーレに取り分け、密閉容器(510ml)に0、8、22、100v/v%エタノール溶液50mlを注ぎ、各濃度エタノールで十分容器内を飽和させた。それぞれの容器内に抗原の入ったシャーレを入れ、25℃で10時間放置することで、気中エタノールと接触させた。接触終了後、ハンクス緩衝液(Hanks′buffer)を加えて懸濁し、抗原を回収した。
【0025】・アレルギー患者血球液の調製アレルギー患者血液を1400rpm、15分間遠心分離し、血球と血漿とに分けた。血球は5倍量のハンクス緩衝液(Hanks′buffer)を加え、1400rpm、15分間遠心分離し、上清を取り除いて3回洗浄した。分離した血漿を洗浄した血球に加え、血球液として抗原刺激に用いた。
【0026】・遊離ヒスタミン量測定サンプルの調製調製した抗原をハンクス緩衝液(Hanks′buffer)で0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1、5、10、50、100μg/mlの濃度に希釈し、チューブに120μl分注した。各希釈液に前記アレルギー患者血球液の調製で調製した血球液を120μl加え、37℃、30分間培養した。1400rpm、10分間遠心分離後、上清120μlに60%HClOを12μl加え、撹拌して蛋白成分を沈殿させた後、12000rpm、10分間遠心分離した上清100μlを定量用試料とした。同時に、血球液120μlに等量のハンクス緩衝液(Hanks′buffer)を加えた後、60%HClOを24μl加え、血球を破壊した後、12000rpm、10分間遠心分離して上清100μlを全ヒスタミン定量用試料とした。ブランクとして抗原刺激しない場合のヒスタミン遊離量を測定した。
【0027】・高速液体クロマトグラフィーによる遊離ヒスタミン量の測定ヒスタミン測定システムは日立製作所高速液体クロマトグラフ分析システムを用いた。前処理カラムとしてWH−C18(4.6mmID×50mmL)、分析用カラムとしてCM−825(8.0mmID×75mmL)、蛍光検出器としてF−1050を用い定量した。
【0028】100μlの血球液中の全ヒスタミン量に対する、各濃度の抗原刺激によって遊離されたヒスタミン量(各サンプルヒスタミン量)の割合をヒスタミン遊離率として以下の式で算出した。
ヒスタミン遊離率(%)=(各サンプルヒスタミン量−ブランク)/(全ヒスタミン量−ブランク)×100【0029】<実施例3>実施例3はアレルゲンを不溶化した場合であり、その効果は以下の通りである。ダニ培養物から分離、凍結乾燥したダニ虫体2mgを直径3.5cmのプラスチックシャーレに取り分け、これに0(水処理区)、50、75、100v/v%エタノール溶液1mlを注ぎ、25℃8時間処理すると共に、シャーレ内の水分を蒸発させた。1mlのPBSで抗原を回収し、12000rpm、10分間遠心分離後、上清である可溶性抗原液のタンパク量の測定を行った。このタンパク量の測定は次の通りである。
【0030】プロテインアッセイ試薬(バイオラッド社)を用い、そのプロトコールに従ってブラッドフォード(Brad ford)法にて各エタノール処理区の可溶性タンパク量を測定した。即ち、10μlのサンプルに対し、200μlの染色液を加え、撹拌した。15分間室温で静置後、OD600nmの吸収を測定した。
【0031】水処理区に対する各エタノール処理区の抗原不溶化率を以下の式にて算出した。
抗原不溶化率(%)={1−(各処理区の測定値−ブランク)/(水処理区の測定値−ブランク)}×100【0032】その結果を、水処理区に対する各エタノール処理区の抗原不溶化率を示す図5に示す。
【0033】図5から明らかなように、75v/v%エタノールを処理した場合、約45%の不溶化が認められた。アレルゲンが不溶化することによって、粘膜の透過率が低下すること、凝集沈殿効果によって環境中からのアレルゲンの除去が容易になることが推測される。事実、不溶化したアレルゲンは遠心分離時に低いGでも短時間で回収され、一定のポアサイズの膜を使用して容易に回収することができた。このようにアレルゲンを不溶化させることで、アレルゲンの除去を容易にする。
【0034】
【発明の効果】本発明の有機溶剤を主成分として単独でもしくは共力剤を加えた形で利用したアレルゲン除去方法及び製剤によれば、副作用を伴わない、環境中に有害物質を残さず、かつタンニン酸等のキレート形成による着色等の汚染もなく、アレルゲンを効果的に変性して失活させることかできる。しかも、本発明は非常に簡便で汎用性に富み、安価に環境中のアレルゲン量を低下させることができると共に、アレルゲンを不溶化させることで、アレルゲンの除去を容易にし、ひいてはアレルギーの発症予防に有効である。
【0035】また、環境中に存在するダニ、スギ花粉、ゴキブリ、カビ等のアレルゲンを対象にすると、著しい効果を生じさせることができる。
【0036】また、有機溶剤は、エタノール、メタノール、プロパノール等のアルコール類、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、クロロホルム、ジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、フェノール、クレゾール等のフェノール類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸、オレイン酸等のカルボン酸類、アセトニトリル、アニリン等の窒素化合物、酢酸エチル等のエステル、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類より選ばれた1種または2種以上の混合物を利用することで、きわめて良好な効果を生じさせることができる。
【0037】また、有機溶剤は、濃度が20v/v%〜100v/v%のエタノールを利用することで、アレルゲンをきわめて効果的に失活させることができる。
【出願人】 【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
【出願日】 平成10年8月14日(1998.8.14)
【代理人】 【識別番号】100073818
【弁理士】
【氏名又は名称】浜本 忠 (外2名)
【公開番号】 特開2000−63207(P2000−63207A)
【公開日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【出願番号】 特願平10−229581