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【発明の名称】 昆虫誘殺装置
【発明者】 【氏名】宮原 隆和

【氏名】瀬戸口 脩

【氏名】上和田 秀美

【氏名】竹村 薫

【要約】 【課題】捕獲した昆虫等の数を正確に自動計数する機能を有し、捕獲した昆虫等を薬剤を用いることなく自動的に殺すことのできる昆虫誘殺装置を提供する。

【解決手段】誘引物質により誘引された昆虫等は入口15から下部構造体20に入り、更に導入部21内部を徘徊又は飛翔する間に殺傷計数部22に進入する。殺傷計数部22と中心電極31の露出部31aとの間には高電圧が印加されており、ここへ昆虫等が到達すると、空気による絶縁が破壊されて放電が生じる。この放電の発生回数を数えることにより、昆虫等の誘殺数を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 特定の種類の昆虫等を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段により誘引された昆虫等を後記第1対の電極間へ誘導する誘導手段と、放電を発生させるための第1対の電極と、前記第1対の電極間に前記昆虫等が存在しないときには該電極間に放電が発生せず、該電極間に前記昆虫等が存在するときには該昆虫等を媒体として該電極間に放電が発生するような電圧を該電極間に印加するための電圧印加手段と、前記電極間において放電が発生した回数及び時刻を測定する放電検出手段と、を備えることを特徴とする昆虫誘殺装置。
【請求項2】 上記誘導手段が、上記誘引手段により誘引された昆虫等が集まる場所の近くに入口を有し、上記第1対の電極が配設された場所の近くに出口を有する誘導通路を含む請求項1に記載の昆虫誘殺装置において、前記誘導通路の入口を通過できる昆虫等の大きさを制限するための入口制限手段、を備えることを特徴とする昆虫誘殺装置。
【請求項3】 上記誘導通路の入口が出口よりも上に配置されている請求項2に記載の昆虫誘殺装置において、上記誘導通路の入口から上記第1対の電極へ至る経路の途上に配設された第2対の電極と、前記第2対の電極間内に昆虫等が存在しないときには該電極間に放電が生じず、該電極間に昆虫等が存在するときには該昆虫等を媒体として該電極間に放電が生じるような電圧を該電極間に印加する電圧印加手段と、を備えることを特徴とする昆虫誘殺装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、昆虫や小動物(以下、昆虫等という)を誘引して捕殺するための装置(以下、昆虫誘殺装置という)に関する。
【0002】
【従来の技術】農作物にとって有害な昆虫等が大量発生すると農作物に大きな被害が生じる。これを防止するために、従来より大量の農薬を散布する等の対策が講じられている。また、これに併せて、害虫の発生を早期に発見するための調査や、害虫対策の効果を確認するための調査も行われている。
【0003】昆虫等の発生状況や根絶過程を把握するための調査には、特定の昆虫等を誘引できるフェロモン等の誘引物質で昆虫等を誘引して捕獲する装置(フェロモントラップ)が従来より使用されている。すなわち、調査場所に所定期間フェロモントラップを設置しておき、これに捕らえられた昆虫等の数を定期的に調べることにより、昆虫等の発生状況や、それに対して採られた対策の効果を確認するのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来より、フェロモントラップに捕獲された昆虫等の数を計数する作業は、多大な時間を使い人力で行われている。また、一般に捕獲数の集計は24時間単位で成されているが、例えば、24時間以前に捕獲した昆虫等と1時間前に捕獲した昆虫等がフェロモントラップの容器内で混ざってしまうと、両者を識別できない。このため、昆虫等の捕獲数のデータを24時間単位で得るには、24時間毎に昆虫等を回収する必要があり、この回収作業にも多くの時間が割かれている。
【0005】一部には、光センサ等を用いた自動計数機能を有するフェロモントラップも存在するが、光センサは昆虫等の体液・排泄物・燐粉等で汚染されると誤動作を生じやすく、また、昆虫等が生きた状態で通過するため通過時間が変化したり再通過による2重計数が生じやすいなどの理由で、広く利用されるに至っていない。
【0006】また、誘引した昆虫等は収納容器に生きたままで捕獲するか、同容器に殺虫剤などの薬剤を入れておき死滅させている。生きたまま捕獲した場合、回収・殺虫作業を必要とし、死滅させた場合でも廃棄作業や薬剤の補充などの作業を必要とし、完全な自動化は難しい。更に、薬剤による殺虫作業は人体や環境に悪影響を及ぼす恐れがあるという問題もある。
【0007】ところで、上記のような昆虫誘殺装置に類似した装置として、食品工場や飲食店等のように食品を扱う場所において害虫を駆除するための電撃殺虫器が知られている。このような電撃殺虫器としては、一対の電撃格子と、該電撃格子に数千ボルト程度の高電圧を印加する電圧印加手段と、前記電撃格子へ昆虫等を誘引するための誘引手段(誘引物質、誘引光等を利用したもの)とを備えるものが広く用いられている。この種の電撃殺虫器において、誘引手段により誘引された昆虫等が電撃格子間に侵入すると、該電撃格子間に放電が発生し、これにより昆虫等が感電死するのである。更に、このような電撃殺虫器において、電撃格子間に発生する電撃の回数を数えることにより昆虫等の殺傷数を自動的に計数するように構成されたものも知られている。
【0008】しかし、上記のような自動計数機能付電撃殺虫器を農場における害虫の発生状況調査に利用しようとすると、次のような問題がある。農場における昆虫等の発生状況調査では、昆虫等一般の発生状況ではなく、特定の種類の昆虫等の発生状況を調査しなければならない。一方、食品を扱う場所ではほとんどの昆虫等が有害とみなされるため、そこに用いられる電撃殺虫器は多種多様な昆虫等をほぼ無差別に殺傷するものがほとんどである。このような電撃殺虫器を用いて農場における特定の昆虫等の発生状況を示すデータを得ようとしても、正しいデータを得ることはできないのである。
【0009】また、特定の誘引物質により特定の昆虫等のみを上記自動計数機能付電撃殺虫器に誘引するという方法も考えられるが、これにも次のような問題がある。農場において調査の対象となる昆虫等の種類は多種多様で、その大きさも2mm程度から50mm程度という広い範囲にわたる。そして、もし、調査の対象となる昆虫等が電撃格子の間隔(ピッチ)よりもはるかに小さいと、電撃格子間に放電が発生せず、従って、該昆虫等の殺傷及び計数はできない。一方、調査の対象となる昆虫等が電撃格子の間隔よりもはるかに大きいと、該昆虫等が電撃格子間で複数回放電を誘起したり、その死骸が電撃格子間に付着して正常な放電の妨げとなったりする。
【0010】本発明はこのような課題を解決するために成されたものであり、その目的とするところは、農場における昆虫等の発生状況や根絶過程を示すデータを採取するための装置であって、目的となる種類の昆虫等のみを選択的に採集できること、採集された標本の数を正確に計数できること、採集された標本を確実に殺傷できること、殺傷した昆虫等の死骸の処理に手間がかからないこと、といった、自動化のための諸要件を満たす昆虫誘殺装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために成された本発明に係る昆虫誘殺装置は、特定の種類の昆虫等を誘引するための誘引手段と、前記誘引手段により誘引された昆虫等を後記第1対の電極間へ誘導する誘導手段と、放電を発生させるための第1対の電極と、前記第1対の電極間に前記昆虫等が存在しないときには該電極間に放電が発生せず、該電極間に前記昆虫等が存在するときには該昆虫等を媒体として該電極間に放電が発生するような電圧を該電極間に印加するための電圧印加手段と、前記電極間において放電が発生した回数及び時刻を測定する放電検出手段と、を備えることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態及び発明の効果】本発明に係る昆虫誘殺装置において、誘引手段は、目的となる昆虫等を選択的に誘引するためのものであり、例えば目的となる昆虫等を誘引する誘引物質(フェロモン)等を利用して構成することができる。
【0013】誘導手段は、上記誘引手段により誘引された昆虫等を逃がすことなく確実に後記第1対の電極間へ誘導するためのものである。このような誘導手段の例としては、上記誘引手段により誘引された昆虫等が集まる場所の近くに大径の入口を有し、第1対の電極が配設された場所の近くに小径の出口を有する誘導通路を用いたものが挙げられる。
【0014】なお、上記のような誘導通路を用いる場合、更に該誘導通路の入口を通過できる昆虫等の大きさを制限するための入口制限手段を設けることが好ましい。このようにすると、特定の大きさよりも大きい昆虫等は誘導通路に進入できなくなる。すなわち、入口制限手段を設けることにより、昆虫等の大きさの上限を設定/変更することができるようになるのである。このようにして昆虫等の大きさの上限を適宜設定すれば、目的とする昆虫等よりも大きい昆虫等を誘殺する可能性が小さくなるため、目的の昆虫等の発生状況に関するより正確なデータが得られる。なお、誘導通路へ大型の昆虫等が侵入して該通路が閉塞されるといった事態を防止するため、誘導通路の入口の大きさは、第1対の電極間の距離よりも小さめに設定することが望ましい。
【0015】第1対の電極は、上記誘導手段により誘導された昆虫等を放電により殺傷するための放電空間を構成するためのものである。この電極間には、本発明に係る昆虫誘殺装置の使用中、電圧印加手段により電圧が印加されるのであるが、この電圧は、前記電極間に目的とする昆虫等が存在しないときには放電が発生せず、該電極間に前記昆虫等が存在するときには該昆虫等を媒体として放電が発生するような電圧に予め設定しておく。
【0016】放電検出手段は、上記第1対の電極間において発生する放電を検出することにより、昆虫等の殺傷された数及び時刻を間接的に測定するものである。
【0017】以上のような本発明に係る昆虫誘殺装置によれば、誘引手段により目的とされる昆虫等のみが誘引され、該昆虫等は誘導手段により確実に第1対の電極間へ誘導され、放電により殺傷される。そして、前記放電の発生回数及び発生時刻を放電検出手段により検出することにより、誘殺された昆虫等の数及び誘殺の時刻を正確に得ることができる。このような作業は全て自動化可能であるから、従来の面倒な作業、すなわち、捕獲された昆虫を所定時間毎に回収してその数を人力で数え、計数作業の完了後に昆虫等の死骸等を廃棄するという面倒且つ費用のかかる作業は最早不要となる。また、本発明の昆虫誘殺装置によれば、誘殺数及び誘殺時刻の正確なデータを採取することができるため、昆虫等の活動状況(どの時間帯に昆虫等が活発に活動するか)を正確に把握し、その駆除対策(例えば農薬散布)を適切なタイミングで効率よく行うことができるようになる。更に、本発明に係る昆虫誘殺装置では、誘引された昆虫等を放電により殺すようにしているため、薬剤を用いて人力で昆虫等を殺すという作業が不要であり、従って人体や環境へ悪影響が及ぶおそれもない。
【0018】また、本発明に係る昆虫誘殺装置において、放電検出手段により放電が検出された時刻及び放電回数をデータとして外部へ出力するためのデータ出力手段を設けてもよい。
【0019】上記昆虫誘殺装置においては、上記データ出力手段と遠隔地にあるコンピュータとを通常に用いられる通信手段(通信線、無線等)により接続し、昆虫等の発生状況に関するデータを瞬時に且つ自動的にコンピュータに取り込んで処理する、ということが可能である。このようにすれば、昆虫等の発生状況を広域に渡って迅速且つ正確に把握できるため、昆虫等による発生状況の変化に関する正確な予測を行い、それに基づいて迅速且つ適切な対策を講じることが可能となる。このように昆虫等の発生の初期段階において適切な対策を講じることにより、昆虫等の大量発生や隣接地域への被害の拡大が未然に防止され、昆虫駆除のために必要とされてきた農薬の使用量を大幅に削減することができる。
【0020】次に、上記第1対の電極間に印加する電圧について更に説明する。
【0021】一般に、対向して配置された1対の電極間に高電圧を印加したとき該電極間に放電が発生するか否かは、電極間の距離、印加電圧の大きさ、及び電極間に存在する物(物質、物体等)の導電率等に依存する。例えば、電極間距離及び印加電圧が同じという条件の下では、ある大きさよりも大きい昆虫等が電極間に進入したときには該昆虫等を媒体として放電が発生し、その大きさよりも小さい昆虫等が電極間に進入したときには放電が発生しないという特定の大きさが存在する。
【0022】このことを踏まえると、本発明に係る昆虫誘殺装置の一態様として、上記第1対の電極間の距離を、誘殺の対象となる昆虫等の大きさに応じて適宜変更できるように構成したものが考えられる。この昆虫誘殺装置の特徴は次のように説明される。例えば、誘引手段により誘引しようとする昆虫等が小型である場合、従来の電撃殺虫器では、対とされた電撃格子間の距離が大き過ぎるために昆虫等が該電撃格子間に進入しても放電が生じず、従って放電による殺傷及び計数もできないといった事態が生じることがあった。逆に、誘殺しようとする昆虫等が大型である場合、従来の電撃殺虫器では、電撃格子のピッチが小さ過ぎるために昆虫等が電撃格子間に進入できず、従って放電による殺傷及び計数もできないといった事態が生じることがあった。これに対し、上記昆虫誘殺装置では、誘殺しようとする昆虫等が小型であるときには第1対の電極間の距離を小さくする一方、該昆虫等が大型である場合は前記電極間の距離を大きくするというように、昆虫等の大きさに応じて第1対の電極間の距離を適宜変更することにより、どのような大きさの昆虫等を対象とする場合でも放電により確実に該昆虫等を殺傷することができるのである。
【0023】また、別の態様としては、前記第1対の電極間に印加する電圧を、誘殺の対象となる昆虫等の大きさに応じて変更するための電圧制御手段を備える昆虫誘殺装置が考えられる。この昆虫誘殺装置を使用する際、誘殺しようとする昆虫等が小型である場合は電極間に印加する電圧を高めに設定する一方、誘殺しようとする昆虫等が小型である場合は電極間に印加する電圧を高めに設定する。このような方法によっても、電極間距離を適宜変更するという上記方法による場合と同様に、昆虫等の大きさに応じて放電の発生を制御することができる。
【0024】上記のように、電極間距離又は印加電圧を適宜変更することにより、誘殺可能な昆虫等の大きさの下限を適宜設定/変更できるのであるが、電極間距離と該電極間に印加する電圧の両方を変更可能にすれば、より高い精度で下限の設定及び変更を行うことができることは言うまでもない。
【0025】また、上記誘導通路を備える昆虫誘殺装置において、上記誘導通路の入口が出口よりも上に配置されている場合、上記誘導通路の入口から上記第1対の電極へ至る経路の途上に配設された第2対の電極と、前記第2対の電極間内に昆虫等が存在しないときには該電極間に放電が生じず、該電極間に昆虫等が存在するときには該昆虫等を媒体として該電極間に放電が生じるような電圧を該電極間に印加する電圧印加手段と、を備えるようにしてもよい。このような昆虫誘殺装置では、誘導通路に進入した昆虫等は、まず第2対の電極間で生じる放電により感電死し、又は活動不能な状態とされた後に第2対の電極から落下して第1対の電極に達する。このようにすると、2度の電撃を加えることにより殺傷能力を高めることができるだけでなく、昆虫等が第1対の電極間を通過する速度が安定するため、計数精度が高まる。なお、上記電圧印加手段は、第1対の電極間に電圧を印加するための電圧印加手段と同じものを利用するようにしてもよい。
【0026】
【実施例】本発明に係る昆虫誘殺装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0027】図1は本発明の一実施例である昆虫誘殺装置1の縦断面図である。この昆虫誘殺装置1は、電子回路収納部12、雨浸入防止傘11、昆虫等の種類に応じて入口15の大きさを調整する入口調整リング14等を有する上部構造体10と、漏斗状をした導入部21及び殺傷計数部22よりなる下部構造体20と、上部構造体10と下部構造体20を電気的・機械的に接続する接続金具13により主として構成される。なお、上部構造体10の適当な位置に、誘引物質保持体50が取り付けられている。
【0028】上部構造体10からは、下部構造体20にある円筒状をした殺傷計数部22の概ね中心に位置するように、棒状をした導電性の中心電極31が伸びている。この中心電極31と筒状の導電体でできた殺傷計数部22により、中心電極31を片側の電極とし殺傷計数部22を対向電極とし、昆虫等を殺傷及び計数するための電極対が構成されている。
【0029】中心電極31は、その全長において電極を構成するようにすると、同時に進入した複数の昆虫等に対して放電を発生し誤計数の原因になるため、下端部の概ね1cm程度を除き絶縁性の電極カバー30で被覆してある。
【0030】電子回路収納部12に内蔵された図示せぬ高電圧電源の両極の端子のうち接地電位側の端子は、接続金具13を経由して導電体でできた下部構造体20に接続され、対する高電圧側の端子は中心電極31に接続されている。
【0031】上記のように構成された昆虫誘殺装置1において、誘引物質保持体50から誘引物質が気化し、漏斗状をした導入部21と上部構造体10及び入口調整リング14に囲まれた空間内における前記誘引物質の濃度が高くなると、その物質に誘引された昆虫等は、上部構造体10と下部構造体20又は入口調整リング14の隙間から前記空間内へ進入する。
【0032】進入した昆虫等は、上記空間を飛翔したり導入部21等の内壁面上を徘徊しているうちに、下方の殺傷計数部22に滑落する。ここで、効率的に昆虫等を滑落させるためには、殺傷計数部22を構成する筒と、中心電極31及び電極カバー30の間に、昆虫等の通過を妨げない十分な間隔を設け、更にその材質及び表面は昆虫等が容易に付着したりひっかかることがないよう滑らかなほうがよい。
【0033】また、電極間に印加する適当な電圧と電極間の間隔は相互に関係するが、電極間に昆虫等が存在しない場合は放電が生じず、昆虫等が存在すると確実に放電が生じるような電源電圧及び電極間隔にする必要がある。このため、対象とする昆虫等の種類(大きさ)に応じて、殺傷計数部22を構成する筒としてそれぞれ異なる内径を有する複数種類の筒を準備するか、異なる直径を有する複数種類の中心電極31及び電極カバー30を準備し、適宜これを交換できるようにするとよい。また、高電圧電源として、印加電圧の可変な電源を用いるようにすれば、さらに広範囲の昆虫等に対応できる。
【0034】滑落した昆虫等が、中心電極31の露出部31a及び殺傷計数部22から成る電極対の間に到達すると、それまで空気により保たれていた電極対間の絶縁が導電性の高い昆虫等により破壊されて放電が生じ、昆虫等は殺傷されるとともに計数される。なお、放電は、1匹の昆虫等の通過に対して1回ないし複数回生じるが、放電の発生を適当な周波数のフィルタで処理することにより、殺傷された昆虫等の数を正確に得ることができる。
【0035】電撃(放電)により昆虫等は感電死するか、もしくはその活動が一時的に麻痺(停止)するため、殺傷計数部22に昆虫等が長時間留まることはなく、従って、同じ昆虫等を重複して計数するという誤動作が生じることはない。さらに、多くの昆虫等が集まる場所に営巣したり進入するクモ等食虫動物が殺傷計数部22に止まると機能に障害を与えたり誤動作を引き起こす等の問題が生じることがあるが、そのような食虫動物も電撃により駆除されるため、上記のような問題が生じるおそれもない。
【0036】図2は、下部構造体20を導電体ではなく絶縁体により構成した例で、殺傷計数部22の内壁面に別途導電性の帯状電極23を、中心電極31の露出部31aに対向して設けてある。
【0037】図1及び図2の例では殺傷計数部22を円筒状としたが、その形状は必ずしも円筒状である必要はない。例えば、図3(A)は、断面が6角形である筒状部材22bを含む殺傷計数部22を示す横断面図である。なお、この例では中心電極31bの断面も筒状部材22bと同じ6角形にしてあるが、同じである必要はない。もちろん、断面を6角形以外とすることも可能である。また、図3(B)は、非導電性材料により作成された断面が四角形である殺傷計数部22を示す横断面図であって、対向する壁面の一部をそれぞれ構成する一対の電極板23b及び31cから成る電極対が保持部材22cにより保持されている。
【0038】図4は上記昆虫誘殺装置1の変形例を示す縦断面図である。この昆虫誘殺装置101は、前述した、昆虫等を殺傷及び計数するための中心電極31の露出部31aよりも上に、主として昆虫等の殺傷を目的とした殺傷電極32を設けたものである。以下、中心電極31の露出部31aと殺傷計数部22から成る電極対を第1電極対、殺傷電極32と殺傷計数部22から成る電極対を第2電極対と呼ぶ。
【0039】昆虫誘殺装置101の内部に進入してきた昆虫等は、第2電極対の間を通過する際に1回目の電撃を受け、これにより殺傷されて活動不能となった状態で殺傷計数部22の内部を落下し、第1電極対の間を落下する際に再度電撃を受ける。このようにすると、殺傷能力が更に高まるだけでなく、昆虫等が1回目の電撃により活動不能となった状態で中心電極31付近を落下するため、第1電極対の間を昆虫等が通過する速度が安定し、計数精度を高めることができる。
【0040】上記説明では、第2電極対は昆虫等の殺傷だけを目的とするものとして説明したが、両方の電極対を組合わせて計数機能を実現することもできる。
【0041】図5は、コガネ虫等の甲虫を対象にした昆虫誘殺装置111の例である。
【0042】コガネ虫等の甲虫は、蛾等の昆虫に比べ、主に直線的な飛翔をすることから、図1又は図4に示すように上部構造体10と下部構造体20の間にできた入口15の幅が狭いと、そこに飛び込むことが困難である。このことを考慮し、図5(A)に示したように、本例の装置では、上部構造体10と下部構造体20の間の入口15を広くして甲虫の進入を容易にするとともに、飛来した甲虫を下方の殺傷計数部22に誘導するために衝突板40を設けてある。直線的に飛来した甲虫は衝突板40に衝突すると一時的に飛翔できなくなり、殺傷計数部22に滑落する。
【0043】図5(B)は十字型をした衝突板40の平面図で、中心に中心電極31及び電極カバー30を挿通させる穴40aと、十字の4辺の先端に接続金具13を挿通させる穴40bがあり、この穴に挿通させた接続金具13で上部構造体10と下部構造体20を電気的・機械的に接続すると、同時に衝突板40も上部構造体10と下部構造体20の間に固定される。
【0044】図6は、昆虫等の習性に応じた各種形状の付加部品及びその設置例である。
【0045】まず、図6(A)は、飛翔型昆虫の中で誘引物質に下方から接近する傾向の強い種類に対応する付加部品を示す図で、昆虫等が内径の細い殺傷計数部22に下方から容易に到達できるように、下方に開いたラッパ状の誘導路41を設けた例である。
【0046】図6(B)は、地上を徘徊する昆虫等に対応する付加部品の1例で、図6(A)の誘導路41と同様に下方に開いたラッパ状部材の下端に一部切欠を設けて成る誘導路42を殺傷計数部22の下端に取り付け、地表に設置する例である。誘導路42の下端の切り欠きから流れ出す誘引物質に誘引された昆虫等は、切り欠きから誘導路42の内部に進入し、誘導路42の内壁を登り第1電極対に到達し、電撃を受けて殺傷されると共に計数される。なお、このような誘導路の内壁は、昆虫等が容易に上れるように、平滑ではないほうが良い。
【0047】図6(C)も、図6(B)と同様、地上徘徊型の昆虫等に対応するための付加部品である誘導路の例であるが、図6(C)の誘導路43においては、誘引された昆虫等は誘導路43の外壁を登り、本発明による昆虫誘殺装置1の上部構造体の入口15に到達する。その後、その昆虫等を殺傷し、計数する行程は、先に説明した通りである。
【0048】図6(D)は、地上徘徊型の昆虫等に対応する第三の例で、特別な付加部品を付加するのではなく、地面に適当な大きさの穴を掘り、本発明による昆虫誘殺装置1を設置することにより、徘徊型の昆虫等が容易に本装置の上部構造体の入口15に到達できるようにしてある。
【0049】図7は本発明に係る昆虫誘殺装置の電子回路の一例を示す回路図である。
【0050】高電圧を発生させるには、商用電源をトランスで昇圧する方法によるのが一般的であるが、昆虫誘殺装置は、近くに商用電源の得られない山間部や田畑に設置する例が多い。そこで、図7の電子回路では、電源Vccから得られる直流電流を、発振・駆動回路60により駆動される2石のトランジスタTr1、Tr2を用いて高周波交流に変換し、トランスT1で昇圧したものを、更にダイオードD1〜D8及びコンデンサC1〜C8を用いた4倍圧整流回路で整流し数千ボルトの直流高電圧にしている。
【0051】発生した直流高電圧は中心電極31に接続され、直流高電圧の接地電位側は接続金具13等を経て下部構造体20の下端に位置する殺傷計数部22に接続され、両電極間に昆虫等が到達すると主にコンデンサC1〜C8にチャージされていた電荷が放出され昆虫等を殺傷する。
【0052】さらに、直流高電圧はコンデンサC9を経てコンデンサC10、直流バイアス用の抵抗R1、及び比較回路61に接続されている。昆虫等が電極間に到達し放電が生じると、直流高電圧電源の出力には数百ボルト〜数千ボルトのパルス状の電圧降下が生じるが、コンデンサC9とコンデンサC10の容量比をn:mとすると、比較回路61にはm/(n+m)に分圧されたパルス信号が入力されことになる。
【0053】比較回路61に入力されたパルス信号は、雑音等の影響を避けるため、適当な電圧以上であるか比較回路61で比較し、大きいと昆虫等が到達したことを意味する信号として、コンピュータ回路63に入力される。なお、コンピュータ回路63は、マイクロプロセッサ、プログラムを記憶するROM、データを記憶するRAM、データ入出力用のI/O回路等で構成する。
【0054】高電圧の放電は、昆虫等の1個体に対して1回とは限らないため、コンピュータ回路63はパルス信号の幅や周期を測定するとともに、一種のフィルタ処理を加えた上でパルス信号の数を計数する。実施例では、この処理をコンピュータ回路63のソフトウエアにより実現しているが、放電により得られるパルス信号に対して電子回路によるアナログ的なフィルタ処理を実施するか、比較回路61の2値化された信号に対してモノステーブルマルチバイブレータ等を用いたフィルタ処理を行っても同様の効果を発揮できる。
【0055】さらに、コンピュータ回路63に時計機能を持たせることにより、所定時間毎の誘殺数を計数して記録することができる。これにより、人力による計数の場合24時間毎に必ず必要になる誘殺した昆虫等の回収作業が不要になる。
【0056】また、有線、電波、光等を利用した通信機能62を持たせることにより、誘殺した昆虫等に関するデータをコンピュータ等に容易に収集することができ、発生状況の監視や予測などが迅速かつ容易に行うことができる。
【0057】図1に示す下部構造体20は、高電圧の印加された中心電極31を取り囲み、高電圧が昆虫等以外の人間等に放電しないようにガードする機能も兼ねるものである。従って、もし下部構造体20を取り外すと中心電極31が露出することになり危険である。
【0058】そこで、図7の回路では、次のようにして下部構造体20の取り付け状態を検出するようにしている。すなわち、複数個ある接続金具13の中の1個以外は接地電位に接続し、残りの1個を抵抗R2を通じて電源Vccに接続する。接続金具13と下部構造体20が正常に接続された状態では電源Vccから抵抗R2を経て流れる電流は全て接地電位に流れ込むが、下部構造体20が取り外された状態では電流が流れない。この電流の変化をコンピュータ回路63が監視し、下部構造体20が取り外されたことを検出すると、発振・駆動回路60を制御して高電圧の発生を停止させるのである。
【0059】図8は本発明による昆虫誘殺装置の設置例を示す側面図である。前記したように、本装置に類する昆虫誘殺装置は商用電源が容易には利用できない山間部や田畑に設置されることが多い。そこで、図8の装置では、太陽電池パネル71で発電した電力を、蓄電池及び充放電制御回路を備えた電源装置72に貯え、その電力で本装置の電力を賄うようにしたものである。
【0060】上記実施例において、放電を検出するための回路としては、従来の電撃殺虫器に用いられている検出回路を適宜使用してもよい。また、上記実施例では、電極間の距離を変更する方法として、中心電極31や導入部21を異なる径のものと交換するという方法を例に挙げたが、例えば図3(B)のように一対の電極板を対向配置させて成る電極対を備える装置においては、各電極を機械的に移動させるような機構を設け、これにより電極間距離を変更できるようにしてもよい。
【0061】図9は本発明の別の実施例である昆虫誘殺装置の縦断面図である。この昆虫誘殺装置121の説明において、先に図1〜図8を参照しながら説明した構成要素と構成的及び機能的に同一とみなされる構成要素には同一の符号を用い、その説明を適宜省略する。
【0062】昆虫誘殺装置121は、上端に鍔を有する筒状の誘引物質装填部品51を備えている。この誘引物質装填部品51の下端には、誘引物質保持体50を装着するための凸部51aが形成されている。上部構造体10には、該上部構造体10の中心を上下方向に貫通する誘引物質装填口52が設けられている。前記誘引物質装填部品51の凸部51aに誘引物質保持体50を装着し、該誘引物質装填部品51を前記誘引物質装填口52に挿入すると、図9に示したように、誘引物質保持体50が漏斗状の導入部21の直上に配置される。誘引物質の交換や補充を行う際には、誘引物質装填口52から誘引物質装填部品51を抜き出し、誘引物質保持体50を新たなものと交換する。
【0063】上部構造体10の底面には、n本の陽極32A及びn本の陰極32Bを含む2×n本(ただし、nは正の整数)の針状電極が、誘引物質装填口52の周囲に、一定の間隔で、陽極32Aと陰極32Bとが交互に現れるように、配置されている。n本の陽極32Aとn本の陰極32Bとの間には、電子回路収納部12内に収納された図示せぬ高圧電源により所定の電圧が印加されている。すなわち、隣接するいずれの針状電極を対と成しても、その対は陽極32A及び陰極32Bを含み、その間には前記電圧が印加されている。
【0064】導入部21の直下には、梁17が、一対の吊持棒16により水平に吊持されている。梁17の中心には電極保持口17aが設けられており、ここに円筒状の電極支持体33が摺動可能に挿入、保持されている。電極支持体33の上端には中心電極31が固定されている。中心電極31は導入部21の内部に挿入され、該導入部21とともに殺傷計数部22を構成している。中心電極31の上下方向の位置(高さ)は、電極支持体33を上下に摺動させることにより適宜調節可能である。なお、中心電極31は、導入部21の外側に配された給電線34により、電子回路収納部12内に収納された図示せぬ高圧電源と接続されている。
【0065】以上のように構成された昆虫誘殺装置121においては、前記陽極32A及び陰極32Bが、図4の昆虫誘殺装置101にいう殺傷電極32と同様に機能する。すなわち、誘引物質により誘引されて入口15から上部構造体10内へ進入した昆虫等は、殺傷電極32による電撃を受けて殺傷され、導入部21内へ落下する。このように落下する昆虫等が殺傷計数部22を通過する際に、該昆虫等を媒体として2回目の電撃(放電)が生じる。この電撃を数えることにより、殺傷された昆虫等の数が得られる。
【0066】なお、殺傷電極32に印加する電圧が高すぎると、昆虫等を殺傷する際に該昆虫等が静電気により針状電極に付着することがある。一方、印加電圧が低すぎると、十分な殺傷力が得られない。そこで、低電圧でも十分な殺傷力が得られるように、針状電極の配置間隔は小さく、例えば5〜10mm程度とする。この程度に針状電極の間隔を小さくすると、1000〜3000V程度の電圧でも強い放電が発生し、十分な殺傷力が得られる。
【0067】上記のような昆虫誘殺装置121では、殺傷電極32を構成する針状電極が誘引物質保持体50を囲繞するように配置されているため、誘引物質に向かって飛行する昆虫等は必ずいずれかの殺傷電極32付近を飛行し、該殺傷電極32からの電撃を受けて確実に殺傷される。また、昆虫誘殺装置121では、昆虫等が殺傷電極32から殺傷計数部22まで落下する経路上に障害物が存在しないため、昆虫等が殺傷計数部22を通過する速度がより安定する。更にまた、前記障害物に静電気が発生してそこに昆虫等が付着してしまうといった事態も防止される。
【0068】図9に示したように、中心電極31の下部は下方が小径となる漏斗状に成形されており、その側面と、導入部21の壁面とは略平行であり、両面間の距離dは、中心電極31の高さに応じて変化する。図10(A)〜(C)は中心電極31の高さに応じて距離dが変化する様子を示す図である。図から明らかなように、中心電極31の位置が高いときには距離dは大きく、低いときには距離dは小さい。このように、図9の昆虫誘殺装置は、目的とする昆虫等が大型である場合には中心電極31の位置を高く設定し、目的とする昆虫等が小型である場合には中心電極31の位置を低く設定することにより、どのような大きさの昆虫等の殺傷及び計数にも対応できる。
【出願人】 【識別番号】392000486
【氏名又は名称】株式会社エルム
【識別番号】591155242
【氏名又は名称】鹿児島県
【識別番号】591049930
【氏名又は名称】サンケイ化学株式会社
【出願日】 平成10年12月3日(1998.12.3)
【代理人】 【識別番号】100095670
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良平
【公開番号】 特開2000−50(P2000−50A)
【公開日】 平成12年1月7日(2000.1.7)
【出願番号】 特願平10−343666