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【発明の名称】 高層魚礁およびその施工方法
【発明者】 【氏名】小野 源一郎

【要約】 【課題】小型の起重機船でも安定した状態で運搬、沈設可能な高層魚礁を提供する。

【解決手段】高層魚礁を、複数の鋼管1a,1b,1cを入れ子式に伸縮可能とした鋼管柱1と、鋼管柱1を構成する各鋼管1a,1b,1cから張り出した複数の梁3と、梁3間をつなぐ伸縮または折れ曲がり可能な繋ぎ材3とで構成する。鋼管柱1を縮めた状態で、組立ておよび洋上の運搬を行い。沈設位置の洋上で、または沈設後、鋼管柱1を伸ばし、高層の魚礁とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の鋼管を入れ子式に伸縮可能とした鋼管柱と、前記鋼管柱を構成する各鋼管から張り出した複数の梁と、前記梁間をつなぐ伸縮または折れ曲がり可能な繋ぎ材とを有することを特徴とする高層魚礁。
【請求項2】 請求項1記載の高層魚礁を、前記鋼管柱を縮めた状態で洋上を設置予定位置まで曳航し、設置予定位置の洋上で前記鋼管柱を伸ばして所定の高さの高層魚礁を形成した後、海底に着底させることを特徴とする高層魚礁の施工方法。
【請求項3】 請求項1記載の高層魚礁を、前記鋼管柱を縮めた状態で洋上を設置予定位置まで曳航し、設置予定位置の海底に着底させた後、前記鋼管柱を伸ばして所定の高さの高層魚礁を形成することを特徴とする高層魚礁の施工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本願発明は、主として沿岸域の比較的水深の大きい場所に設置するための高層魚礁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年の水産業界においては、周辺水域における水産資源の減少や国際的な漁業規制問題といった情勢の中、国内での水産物供給が厳しい状況にある。
【0003】そのような中で、国内では従来の漁業形態を見直し、「つくり育てる漁業」を推進することで、沿岸漁業の安定的な発展を目指している。上記推進活動の一環として、従来、実用化されている高さ20mまでで比較的平面的な漁場の広がりを形成している魚礁から、高さ20m以上で平面的な広がりだけでなく、高さ方向にも水生生物の蝟集および育成空間を形成する高層魚礁の開発が行われており、特許第2659037号掲載公報にあるような大水深域に設置する高さ20m以上の培養型超高層魚礁が発明されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の魚礁で、ごく一般的なクレーン船で沈設作業を行うことが可能なサイズは、高さ20m以内のものとなる。すなわち、20mを超える魚礁を沈設するためには、一般的なクレーン船よりブーム長の大きい起重機船が必要となり、その起重機船は大きくなるにつれて国内の保有台数が減少し、かつ高コストとなる。
【0005】このようなことから、全国各地で実施される魚礁設置事業では、従来は20mを超える魚礁の沈設は行われていなかった。これに対し、情勢の変化に伴う「つくり育てる漁業」事業の一環として20mを超える魚礁の必要性が浮かんできており、上述した特許第2659037号掲載公報に記載された培養型超高層魚礁については、高さ35mの実施例が説明されている。
【0006】その特徴は、構造物基体の上部に間隔をおいて複数の塔状構造物を設け、吊り上げ用フックの位置を低い位置とし、魚礁の高さが高くても、クレーンブームの先端が高さ方向に沿って侵入可能な構造とするものである。
【0007】しかし、特許第2659037号掲載公報記載のものは、また構造物基体の上部に塔状構造物を有する高層魚礁の組立てには、大型のクレーンが必要であり、また運搬・設置時においては、吊り位置が低くなることで、頂部で吊り支持する場合に比べかなり不安定な状態とならざるを得ない。
【0008】本願発明は、上述のような課題の解決を図ったものであり、小型の起重機船でも安定した状態で運搬、沈設可能な高層魚礁を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】本願の請求項1に係る高層魚礁は、複数の鋼管を入れ子式に伸縮可能とした鋼管柱と、前記鋼管柱を構成する各鋼管から張り出した複数の梁と、前記梁間をつなぐ伸縮または折れ曲がり可能な繋ぎ材とを有することを特徴とするものである。
【0010】鋼管柱は、鋼管柱を構成する鋼管の径を各階層ごとに変化させることで、入れ子式に伸縮可能とすることができる。従って、洋上運搬のため陸上で吊り上げる際には、鋼管を差し込んだ状態とすることで魚礁の高さを低くすることができ、クレーンブーム長が短く、比較的小型の起重機船でも吊り上げ運搬が可能である。一方、沈設時には鋼管柱を洋上で引き出し、魚礁の高さを増し、高層魚礁としての構造体を完成させることができる。
【0011】また、本願発明の高層魚礁は、鋼管柱を構成する各鋼管の高さを高くしなくても、引き出す段数を増やすことで高層魚礁全体の高さを増すことができるため、完成時の高さに依らず、重量だけで起重機船のサイズを決定することができる。
【0012】鋼管柱を構成する鋼管としては、直管、テーパー管等を用いることができる。また、鋼管どうしの接合については、ピンなどの留め金を用いた接合や、振り出し竿のようにテーパー部の摩擦力による接合、コンクリート等を接合部に注入して固定する接合などが可能である。
【0013】梁間を高さ方向につなぐ繋ぎ材については、チェーン、関節、リンク、紐、ワイヤー、引き出し式部材の使用など、伸縮に対応できる構造とすることで、洋上での鋼管柱引き出しの際などにおける接合作業が不要となり、魚礁の運搬時と完成時の高さの変化に対応可能である。
【0014】本願の請求項2に係る高層魚礁の施工方法は、請求項1記載の高層魚礁を、前記鋼管柱を縮めた状態で洋上を設置予定位置まで曳航し、設置予定位置の洋上で前記鋼管柱を伸ばして所定の高さの高層魚礁を形成した後、海底に着底させることを特徴とするものである。
【0015】洋上で鋼管柱を伸ばす方法としては、例えば、高層魚礁を浮力により海面に浮く構造とし、注水作業を行いながら徐々に鋼管を引き出して行く方法や、各階層の梁間にチェーンやワイヤーを取り付け、それを徐々に伸ばすことで高層魚礁を自然に海中へ落としながら引き出す方法がアる。
【0016】本願の請求項3に係る高層魚礁の施工方法は、請求項1記載の高層魚礁を、前記鋼管柱を縮めた状態で洋上を設置予定位置まで曳航し、設置予定位置の海底に着底させた後、前記鋼管柱を伸ばして所定の高さの高層魚礁を形成することを特徴とするものである。
【0017】着底後に鋼管柱を伸ばす方法としては、高層魚礁が海底に着底するまで鋼管柱が引き出されることのないように、縮めた状態の鋼管どうしを仮固定しておき、海底に着底した後に、チェーンやワイヤーなどを利用して上部の鋼管を上方へ引き出す方法などがある。
【0018】
【発明の実施の形態】図1は、本願発明の高層魚礁の一実施形態における運搬、沈設時の状態を示したもので、図2はその完成時の状態を示したものである。
【0019】図1において、鋼管柱1は下側が大径鋼管、上側が小径鋼管の3節の鋼管1a,1b,1cからなり、大径鋼管側に小径鋼管が差し込まれた構造となっている。
【0020】このような構造において、完成時の魚礁高さを、例えば1節当たり10m、3節で計30mとした場合、運搬時の高さを15m前後に抑えることが可能である。
【0021】したがって、重量に問題がなければ、クレーン船は30m運搬可能クラスでなく、15m運搬可能クラスで十分ということになる。また、繋ぎ材3は各階層を形成する梁2a,2b,2cおよび底版部4間を高さ方向につないでおり、鋼管柱1を縮めた状態では、繋ぎ材3が弛んだ状態となっている。
【0022】一方、図2の完成時には、縮められていた鋼管柱1が、引き伸ばされた状態で固定されており、繋ぎ材3は鋼管柱1の伸びに併せて、弛んでいたものが張った状態になっている。
【0023】この繋ぎ材3は水生生物の蝟集および育成空間を形成し、また、繋ぎ材3にFRP製や鋼製、その他繊維状の水生生物の着生基質などを取り付けることで、藻場造成など多機能な空間を形成することも可能である。
【0024】
【発明の効果】■本願発明によれば、高層魚礁が組立て時および運搬時には、鋼管柱を縮めた状態とすることで、その高さを低く抑えることができ、比較的小型の起重機船で運搬、沈設が可能である。
【0025】■吊り点を下げることなく、上方から吊り支持することができるため、運搬時における安定性を損なう恐れがない。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成11年2月25日(1999.2.25)
【代理人】 【識別番号】100070091
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 知 (外1名)
【公開番号】 特開2000−245289(P2000−245289A)
【公開日】 平成12年9月12日(2000.9.12)
【出願番号】 特願平11−48310