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【発明の名称】 動物プランクトンの培養装置及び培養方法
【発明者】 【氏名】長瀬 俊哉

【氏名】三村 元

【要約】 【課題】多大な労力を要することなく、沈降性の低いフロックまでも十分に分離除去することが可能な動物プランクトンの培養装置及び方法を提供すること。

【解決手段】本発明の動物プランクトンの培養装置1は、少なくとも1つの表面に口径5mm以上の複数の開口部を有し、前記少なくとも1つの表面が培養槽2内に供給された飼育水9と接触するように配置され、動物プランクトンの培養に伴って生じ前記飼育水9中を浮遊するフロックを、細菌を含み前記少なくとも1つの表面に形成される細菌膜の作用により、前記フロックに比べてより高い沈降性を有する塊体に転化して、前記培養槽2の底部に沈降させるフロック凝集担体6、及び前記培養槽2の底部に沈降した塊体を前記培養槽2の外部に排出する排出手段7を具備することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも1つの表面に口径5mm以上の複数の開口部を有し、前記少なくとも1つの表面が動物プランクトンの培養を行うための培養槽内に供給された飼育水と接触するように配置され、前記動物プランクトンの培養に伴って生じ前記飼育水中を浮遊するフロックを、細菌を含み前記少なくとも1つの表面に形成される細菌膜の作用により、前記フロックに比べてより高い沈降性を有する塊体に転化して前記培養槽の底部に沈降させるフロック凝集担体、及び前記培養槽の底部に沈降した塊体を前記培養槽の外部に排出する排出手段を具備することを特徴とする動物プランクトンの培養装置。
【請求項2】 前記フロック凝集担体は、目合いが5mm以上の網状部を有することを特徴とする請求項1に記載の動物プランクトンの培養装置。
【請求項3】 前記フロック凝集担体は、孔径5mm以上の複数の孔が形成された板状部を有することを特徴とする請求項1に記載の動物プランクトンの培養装置。
【請求項4】 動物プランクトンの培養に伴って生じ培養槽内に収容された飼育水中を浮遊するフロックを、前記フロックに比べてより高い沈降性を有する塊体に転化して前記培養槽の底部に沈降させ、前記培養槽の底部に沈降した塊体を前記培養槽の外部に排出することにより、前記飼育水から前記フロックを除去することを含み、前記飼育水中を浮遊するフロックは、少なくとも1つの表面に口径5mm以上の複数の開口部を有し、前記少なくとも1つの表面が前記飼育水に接触するように配置されたフロック凝集担体により前記塊体へと転化されることを特徴とする動物プランクトンの培養方法。
【請求項5】 前記飼育水中を浮遊するフロックは、前記少なくとも1つの表面に形成され細菌を含む細菌膜の作用により前記塊体に転化されることを特徴とする請求項4に記載の動物プランクトンの培養方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、動物プランクトンの培養装置及び培養方法に係り、特に、動物プランクトンの培養に伴って発生するフロックの除去を行う動物プランクトンの培養装置及び培養方法に関する。
【0002】
【従来の技術】栽培漁業や養殖等で行われる魚類の種苗生産において、動物プランクトン、特にワムシは初期生物飼料として欠くことができないものであり、ワムシの培養なくして種苗生産を行うことのできない魚類は多い。そのため、例えば、特開平3−39021号公報、特開平6−165627号公報、及び特開平7−79659号公報において開示されるように、ワムシ等の動物プランクトンの高密度培養或いは連続培養に関する特許出願が数多くなされている。このような事実は、動物プランクトン、特にワムシの培養が魚類の種苗生産において如何に重要な技術であるのかを示している。
【0003】ところで、ワムシ等の動物プランクトンを高密度に培養した場合、残餌や糞により飼育水中に大量のフロックが発生する。このフロックの存在は、動物プランクトンを給餌される稚魚に食欲減退や疾病をもたらすものと考えられている。そのため、通常、フロックは、培養したワムシ等の動物プランクトンから分離除去される。
【0004】従来、上記フロックの分離除去は、全て手作業で行われていた。しかしながら、このような作業には極めて多大な労力を要する。そのため、このフロックを除去する方法に関しても、数多くの特許出願がなされている。
【0005】例えば、特開平9−275843号公報には、培養槽中で接触濾材にフロックを付着させることにより、フロックを分離除去することが開示されている。しかしながら、この方法によると、フロックを付着させた接触濾材を定期的に培養槽から取り出して、接触濾材からフロックを洗い流す必要がある。また、特開平9−275843号公報に記載された方法は、接触濾材を定期的に培養槽から取り出す必要があるため、培養槽の外部から、ワムシ等の動物プランクトンにとって有害な原生動物を培養槽内に招き入れる危険性を有している。
【0006】本発明者らの特願平9−302662号に記載された発明は、上述した問題に対して極めて有効であり、ワムシのような動物プランクトンの培養に伴って発生するフロックの多くを除去することが可能である。しかしながら、特願平9−302662号に記載された方法によると、培養初期に発生する沈降性の低いフロックを十分に除去できない場合があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、多大な労力を必要とすることなく、沈降性の低いフロックまでも十分に分離除去することが可能な動物プランクトンの培養装置及び培養方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、本発明は、少なくとも1つの表面に口径5mm以上の複数の開口部を有し、この少なくとも1つの表面が動物プランクトンの培養を行うための培養槽内に供給された飼育水と接触するように配置され、上記動物プランクトンの培養に伴って生じ飼育水中を浮遊するフロックを、細菌を含み上記少なくとも1つの表面に形成される細菌膜の作用により、上記フロックに比べてより高い沈降性を有する塊体に転化して培養槽の底部に沈降させるフロック凝集担体、及び上記培養槽の底部に沈降した塊体を培養槽の外部に排出する排出手段を有することを特徴とする動物プランクトンの培養装置を提供する。
【0009】上記動物プランクトンの培養装置において、フロック凝集担体としては、例えば、目合いが5mm以上の網状部を有するものや、孔径5mm以上の複数の孔が形成された板状部を有するものを用いることができる。
【0010】また、本発明は、動物プランクトンの培養に伴って生じ培養槽内に収容された飼育水中を浮遊するフロックを、このフロックに比べてより高い沈降性を有する塊体に転化して上記培養槽の底部に沈降させ、培養槽の底部に沈降した塊体を培養槽の外部に排出することにより、飼育水からフロックを除去することを含み、上記飼育水中を浮遊するフロックは、少なくとも1つの表面に口径5mm以上の複数の開口部を有し、この少なくとも1つの表面が上記飼育水に接触するように配置されたフロック凝集担体により上記塊体へと転化されることを特徴とする動物プランクトンの培養方法を提供する。
【0011】上記動物プランクトンの培養方法において、上記飼育水中を浮遊するフロックは、例えば、上記少なくとも1つの表面に形成され細菌を含む細菌膜の作用により塊体に転化される。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0013】図1は、本発明の実施形態に係る動物プランクトンの培養装置を概略的に示す図である。図1において、培養装置1は、ワムシ等の動物プランクトンの培養が行われる培養槽2、飼育水供給手段である飼育水供給管3、飼料供給手段である飼料供給管4、収穫手段である収穫管5、フロック凝集担体6、及び排出手段であるドレン7で主に構成されている。なお、飼育水供給管3、飼料供給管4、収穫管5及びドレン7には、それぞれバルブ8-1〜8-4が取り付けられている。
【0014】培養槽2には、その上方に配置された飼育水供給管3から飼育水9が連続的に供給される。培養槽2内に収容された飼育水9中ではワムシ等の動物プランクトンの培養が行なわれ、これら動物プランクトンは、培養槽2の上方に配置された飼料供給管4から飼料を給餌されることにより増殖する。このようにして培養槽2内で増殖した動物プランクトンは、通常、培養槽2内に収容された飼育水9の液面近傍に配置された収穫管5から飼育水9とともに間欠的に収穫される。
【0015】培養槽2内で動物プランクトンの培養を続けた場合、培養槽2内の飼育水9中では、動物プランクトンの残餌や糞によりフロックが発生する。このフロックの存在は、上述したように、動物プランクトンを給餌される稚魚に食欲減退や疾病をもたらすものと考えられている。また、このフロックはサイズが小さく且つ比重が低い、すなわち、沈降を生じにくい。そのため、このフロックは、動物プランクトンや飼料とともに飼育水9中で分散し、培養槽2内の飼育水9を懸濁させる。
【0016】上記培養装置1においては、培養槽2内にフロック凝集担体6が飼育水9と接触するように配置され、飼育水9中のフロックは、このフロック凝集担体6を用いることにより分離除去される。以下、フロック凝集担体6を用いたフロックの分離除去方法について、図2を参照しながら説明する。
【0017】図2(a)〜(d)は、それぞれ、本発明の実施形態に係るフロックの分離除去方法を概略的に示す図である。図2(a)に示すフロック凝集担体6を培養槽2内の飼育水9中に数日間浸漬させ続けた場合、図2(b)に示すように、フロック凝集担体6の表面には細菌膜10が形成される。この細菌膜10は、例えば、動物プランクトンの培養に伴って不可避的に生ずる或いは増殖する細菌を含むものである。
【0018】培養槽2内の飼育水9を懸濁させる低比重のフロック11は、図2(c)に示すように、この細菌膜10が形成されたフロック凝集担体6の表面に凝集する。フロック凝集担体6の表面に凝集したフロック11の少なくとも一部は、細菌膜中の細菌の活動により分解され、細菌膜10と同化する。そのため、図2(d)に示すように、細菌膜10は次第に肥厚する。
【0019】細菌膜10が肥厚することにより、細菌膜10のフロック凝集担体6との界面近傍は嫌気状態となる。その結果、肥厚した細菌膜10は、図2(d)に示すように、フロック凝集担体6の表面から比較的サイズの大きな塊体12として剥離する。
【0020】フロック凝集担体6の表面から剥離した塊体12は、上記フロック11に比べてサイズが大きく且つ比重が高い。すなわち、塊体12はフロック11に比べて、より高い沈降性を有している。また、この塊体12は、飼育水9に比べて比重が高い。したがって、フロック凝集担体6の表面から剥離した塊体12は、培養槽2の底部に直ちに沈降する。
【0021】このように、上記培養装置1によると、沈降性の低いフロック11は、より高い沈降性を有する塊体12に転化される。したがって、例えば、培養槽2の底部に接続されたドレン7から培養槽2内の飼育水9を間欠的に排出することにより、培養槽2の底部に沈降した塊体12を除去し、培養槽2内の飼育水9を常に清浄に維持することができる。すなわち、上記培養装置1によると、多大な労力を必要とすることなく、培養初期に発生する比重の低いフロックまでも十分に分離除去することが可能となる。
【0022】上述したフロック凝集担体6は、飼育水9と接触する少なくとも1つの表面に、所定の口径の開口部を有するものである必要がある。フロック凝集担体6がこのような開口部を有する場合、培養槽2内の飼育水9の流れを妨げることがない。また、フロックを凝集させるのに有効な表面積を増加させることができるため、上述した効果がより顕著となる。
【0023】フロック凝集担体6の開口部の口径は、上述したフロックの分離除去に関して極めて重要な技術的要素である。開口部の口径が小さい場合、肥厚した細菌膜10の剥離が生じにくくなる。そのため、細菌膜10をフロック凝集担体6から強制的に剥離させる必要を生ずる。また、開口部の口径が小さい場合、フロックによる開口部の閉塞が激しく、硫化水素の発生を招き、培養に障害をもたらす危険がある。本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、開口部の口径を5mm以上とすることにより、上述した問題を生ずることなく、良好にフロックを分離除去することが可能となることが判明した。
【0024】フロック凝集担体6の開口部の口径は、5mm以上であることがより好ましい。開口部の口径が5mm以上である場合、上述した効果がより顕著となる。また、フロック凝集担体6の開口部の口径は、10cm以下であることが好ましい。開口部の口径が10cmよりも大きい場合、細菌膜の形成に有効な表面積が低下し、フロックを十分に分離除去することが不可能となるおそれがある。
【0025】フロック凝集担体6の適切なサイズ、より具体的には、培養槽2内の飼育水9と接触する表面の面積は、培養槽2内の飼育水9の量や動物プランクトンの密度等に依存する。また、フロック凝集担体6は、動物プランクトンの培養に伴って発生するフロックを十分に分離除去することが可能であれば、どのような形状であってもよい。例えば、図1に示すように、網目状のシートを用いて形成された円筒体であってもよく、図2(a)等に示すように、孔が設けられた板状体であってもよい。
【0026】フロック凝集担体6は、図1に示すように飼育水9中に完全に浸漬されてもよく、一部のみが浸漬されてもよい。また、フロック凝集担体6を飼育水9に比べて比重の低い材料で構成し、水面に浮遊させてもよい。
【0027】また、フロック凝集担体6を構成する材料は、上述したフロックの分離除去を可能とし、且つ動物プランクトン等に悪影響を与えないものであれば特に制限はない。フロック凝集担体6を構成する材料としては、例えば、合成樹脂等を挙げることができる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
【0029】図1に示す動物プランクトン培養装置1を用い、以下に示す方法により、動物プランクトンの培養を行った。すなわち、最初にフロック凝集担体6を用いることなくワムシを培養した後、培養槽2内にフロック凝集担体6を配置し、上述した方法によりフロックを分離除去しつつワムシの培養を継続した。数日毎に収穫管5から飼育水9等をサンプリングして、ワムシ密度とフロック量とを測定することにより、フロック凝集担体6を用いることによる効果を調べた。
【0030】なお、フロック凝集担体6としては、3cm以上の目合いを有する網目状シートからなる円筒体を用いた。また、上記網目状シートは、飼育水9に比べて高い比重を有する合成樹脂製であり、フロック凝集担体6は、図1に示すように、飼育水9中に浸漬させた。
【0031】図3に、ワムシ密度及びフロック量の経時変化をグラフにして示す。図3において、横軸は測定日を示し、縦軸はワムシ密度及びフロック量を示している。また、図中、帯グラフはワムシ密度に関するものであり、折れ線グラフはフロック量に関するものである。なお、ここで、フロック量とは、サンプリングした直後の飼育水9をメスシリンダー中で30分間静置してフロックを沈降させることにより観測されるフロックの体積(ml)を、メスシリンダーに投入した飼育水9の体積(ml)で割り、さらに100を乗じることにより得られる値を意味する。
【0032】図3に示すように、ワムシ密度は、フロック凝集担体6を設置した直後に一時的に低下したが、その後回復した。一方、フロック量は、フロック凝集担体6を設置した直後から急激に低下し、以後、増加することはなかった。
【0033】このように、図1に示す培養装置1によると、サイズが小さく且つ比重が低いフロックは、細菌膜が形成されたフロック凝集担体6の表面に凝集し、細菌膜と同化する。したがって、図1に示す培養装置1によると、本発明者らの特願平9−302662号に記載された方法で除去することが困難な沈降性の低いフロックまでも分離除去することが可能である。
【0034】また、フロックが同化することにより肥厚した細菌膜は、フロック凝集担体6の表面からサイズが大きく且つ比重の高い塊体として剥離する。この塊体は、高い沈降性を有しているため、培養槽2の底部に直ちに沈降する。そのため、培養槽2の外部に容易に排出することが可能である。したがって、上記培養装置1によると、特開平9−275843号公報に記載された方法とは異なり、上記担体6を培養槽2から取り出してフロックを洗い流す必要がない。すなわち、多大な労力を必要とすることなく、培養槽2内の飼育水9を常に清浄に維持することが可能となる。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、動物プランクトンの培養に伴って発生するフロックは、口径5mm以上の複数の開口部を有するフロック凝集担体の表面に形成される細菌膜の作用により、より高い沈降性を有する塊体に転化される。また、この塊体は、培養槽の底部に直ちに沈降し、排出手段により培養槽の外部に排出される。
【0036】したがって、本発明によると、多大な労力を必要とすることなく、沈降性の低いフロックまでも十分に分離除去することが可能な動物プランクトンの培養装置及び培養方法が提供される。
【出願人】 【識別番号】000120401
【氏名又は名称】荏原実業株式会社
【出願日】 平成11年2月15日(1999.2.15)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦 (外5名)
【公開番号】 特開2000−232833(P2000−232833A)
【公開日】 平成12年8月29日(2000.8.29)
【出願番号】 特願平11−35163