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【発明の名称】 釣り用リールの発音機構
【発明者】 【氏名】森瀬 泰生

【要約】 【課題】ピン方式の発音機構において、音量の低下と回転抵抗の増加とを抑えかつ使用状態を変更した際の音質や回転抵抗の変化を抑えるようにする。

【解決手段】片軸受リールの第1発音機構45は、側板10と制動円板42との相対回転により発音する機構であって、複数の音出し凹部60aと、装着穴部59と、音出しピン61と、コイルばね62とを備えている。複数の音出し凹部は、回転円板40に固定された第1発音部材60に回転方向に間隔を隔てて配置されている。装着穴部は、側板の複数の音出し凹部の一つと対向する位置に設けられ、回転方向に沿って長く形成された開口部59aを有している。音出しピンは、装着穴部に進退自在に装着されている。コイルばねは、音出しピンの外周側に配置され装着穴部の底部59bに基端部が係止され音出しピンを音出し凹部側に付勢する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】釣り用リールの相対回転する第1部材と第2部材との間に配置され両部材の相対回転により発音する釣り用リールの発音機構であって、前記第1部材に回転方向に間隔を隔てて配置された複数の音出し凹部と、前記第2部材の前記複数の音出し凹部の少なくとも一つと対向する位置に設けられ、回転方向に沿って長く形成された開口部を有する装着穴部と、前記装着穴部に進退自在に装着される音出しピンと、前記音出しピンの外周側に配置され前記装着穴部の底部に端部が係止され前記音出しピンを前記音出し凹部側に付勢するコイルばねと、を備えた釣り用リールの発音機構。
【請求項2】前記装着穴部の開口部は回転方向に湾曲し両端が半円形の長円形状であり、前記底部は前記開口部の中心位置に配置され前記長円形状の直径と実質的に同じ直径の円形状である、請求項1に記載の釣り用リールの発音機構。
【請求項3】前記開口部と前記底部とは直線的に結ばれている、請求項1又は2に記載の釣り用リールの発音機構。
【請求項4】前記開口部と前記底部とは段差を持って結ばれている、請求項1又は2に記載の釣り用リールの発音機構。
【請求項5】前記音出しピンの最大直径は前記装着穴部の最小寸法より小さい、請求項1から4のいずれかに記載の釣り用リールの発音機構。
【請求項6】前記装着穴部の底部には、前記回転方向に間隔を隔てて前記コイルばねの端部を係止する2つの係止部が設けられている、請求項1から5のいずれかに記載の釣り用リールの発音機構。
【請求項7】前記音出しピンは、先端が滑らかな凸状の頭部と、前記頭部に連なって形成され前記頭部より大径の受け部と、前記受け部に連なって形成され前記受け部より小径の軸部とを有する、請求項1から6のいずれかに記載の釣り用リールの発音機構。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、発音機構、特に、釣り用リールの相対回転する第1部材と第2部材との間に配置され両部材の相対回転により発音する釣り用リールの発音機構に関する。
【0002】
【従来の技術】釣り用リールの相対回動する2つの部材の間に、両部材の相対回動によりクリック音を発生する発音機構が設けられることがある。たとえば、スピニングリールや両軸受リールや片軸受リール等の釣り用リールのドラグ機構やドラグ操作つまみに発音機構が装着されたものが知られている。ドラグ機構に発音機構を装着することによりドラグ作動による魚の当たりが音により分かる。またドラグ操作つまみに発音機構を装着することにより、ドラグ操作時の操作性が向上する。
【0003】この種の発音機構としてピン方式のものが知られている。ピン方式の発音機構は、一般に、相対回動しかつ対向する1対の部材の一方に円周方向に間隔を隔てて配置された複数の凹部と、複数の凹部のいずれかに対向する位置で他方の部材に形成された装着穴部と、装着穴部に進退自在に収納される音出しピンと、音出しピンを凹部側に付勢するコイルばねとを有している。装着穴部は、他方の部材に音出しピンの最大外径より大きな直径であけられた円柱状の穴である。音出しピンは、先端が滑らかな凸状の頭部と、頭部に連なって形成され頭部より小径の軸部とを有している。コイルばねは、軸部の外周側に圧縮状態で配置されており、頭部の背面に接触して音出しピンを凹部側に付勢している。
【0004】このような構成のピン方式の発音機構では、2つの部材が相対回動すると、装着穴部に収納された音出しピンがコイルばねにより付勢されて凹部への衝突を繰り返し、その結果クリック音を発生する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記従来のピン方式の発音機構では、音出しピンと装着穴部との間隙を小さくすると融通が少なくなり、音出しピンが振動しにくくなるため音量が小さくなる。また、付勢部材の付勢力が逃げずに音出しピンに作用するので、音出しピンが凹部に強く当たってしまい両部材の回転抵抗が大きくなる。これを防止するために音出しピンと装着穴部との間隙を大きくすると、両部材が相対回転するとき装着穴部のなかで音出しピンがコイルばねごと回転方向に移動し、回転方向によって音質や回転抵抗が変わってしまい音質や回転抵抗が安定しない。たとえば、スプールが糸巻取方向に回転するときと糸繰り出し方向に回転するときとで音質や回転抵抗が変化することがある。このように回転方向で音質や回転抵抗が変化すると、回転方向を切り換えて使用することがある片軸受リールの場合、右ハンドル(右巻)での使用状態と左ハンドル(左巻)での使用状態とでたとえば糸巻取方向の音質や回転抵抗が変化することになる。使用状態の変化により同じ糸巻取方向の音質や回転抵抗が変化すると、たとえば糸巻取り状態であるにもかかわらず、糸繰り出し状態より大きい音が出てしまったり、回転抵抗が大きくなってしまい好ましくない。これは、糸繰り出し時には釣り人に釣り糸が繰り出されていることを明確に認識させるために大音量又は高音で発音することが望ましく、糸巻取時には釣り人の神経に障らないように小音量又は低音で回転抵抗が小さいことが望ましいからである。
【0006】本発明の課題は、ピン方式の発音機構において、音量の低下と回転抵抗の増加とを抑えかつ使用状態を変更した際の音質や回転抵抗の変化を抑えるようにすることにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明1に係る釣り用リールの発音機構は、釣り用リールの相対回転する第1部材と第2部材との間に配置され両部材の相対回転により発音する機構であって、複数の音出し凹部と、装着穴部と、音出しピンと、コイルばねとを備えている。複数の音出し凹部は、第1部材に回転方向に間隔を隔てて配置されている。装着穴部は、第2部材の複数の音出し凹部の少なくとも一つと対向する位置に設けられ、回転方向に沿って長く形成された開口部を有する穴部である。音出しピンは、装着穴部に進退自在に装着されるピンである。コイルばねは、音出しピンの外周側に配置され装着穴部の底部に端部が係止され音出しピンを音出し凹部側に付勢するばねである。
【0008】この発音機構では、装着穴部の開口部が回転方向に沿って長いので、音出しピンの先端部での装着穴部との間隙が大きくなる。そして、両部材が相対回転すると、コイルばねにより付勢された音出しピンが音出し凹部への衝突を繰り返して発音する。このとき、コイルばねの端部が底部に係止されかつコイルばねの内周側に配置された音出しピンの先端部の間隙が大きいので、先端部は音出し凹部により押されて回転方向に傾きながら音出しピンは音出し凹部への衝突を繰り返す。回転方向が変わっても同様に音出しピンは回転方向に傾いて発音する。このため、異なる回転方向でも音質や回転抵抗が変化しにくくなり使用状態が変化しても音質や回転抵抗は変化しにくい。しかも音出しピンが回転方向に傾くので、コイルばねの付勢力が弱くなり回転抵抗の増加を抑えることができる。さらに、融通が多くなるので音出しピンが振動しやすくなり音量の低下を抑えることができる。
【0009】発明2に係る釣り用リールの発音機構は、発明1に記載の機構において、装着穴部の開口部は回転方向に湾曲し両端が半円形の長円形状であり、底部は開口部の中心位置に配置され長円形状の直径と実質的に同じ直径の円形状である。この場合には、底部の円形状でコイルばねの端部が係止され、コイルばねの内周側に配置された音出しピンの先端部が開口部に沿って移動して傾く。この傾きは、底部が開口部の中心位置に配置されているので回転方向に関わらず音出しピンは同じ傾きになり、回転方向での音質や回転抵抗の変化がさらに少なくなる。
【0010】発明3に係る釣り用リールの発音機構は、発明1又は2に記載の機構において、開口部と底部とは直線的に結ばれている。この場合には、装着穴部の回転方向の長さが徐々に変化するので、回転方向が変わっても音出しピンを回転方向にスムーズに傾かせることができる。発明4に係る釣り用リールの発音機構は、発明1又は2に記載の機構において、開口部と底部とは段差を持って結ばれている。この場合には、開口部と底部とが段差を持って結ばれているので、底部を加工してから開口部の所定深さまで加工することにより装着穴部を形成できる。このため、装着穴部の加工が容易である。
【0011】発明5に係る釣り用リールの発音機構は、発明1から4のいずれかに記載の機構において、音出しピンの最大直径は装着穴部の最小寸法より小さい。この場合には、音出しピンの最大直径が装着穴部の最小寸法より小さいので、音出しピンのどの部分も装着穴部との間に隙間があく。このため、音出しピンがより振動しやすくなり、音量の低下をより抑えることができる。発明6に係る釣り用リールの発音機構は、発明1から5のいずれかに記載の機構において、装着穴部の底部には、回転方向に間隔を隔ててコイルばねの端部を係止する2つの係止部が設けられている。この場合には、たとえば右巻と左巻との使用状態に応じてコイルばねの係止位置を変更することで、異なる使用状態における音質や回転抵抗の変化を生じにくくするとともに、たとえば糸巻取方向と糸繰り出し方向との相違に対して異なる音質で発音できる。このため、糸繰り出し方向の回転時に糸巻取方向より大きな音あるいは高音を発することができ、使用状態が異なっていても音質で方向を判断できる。
【0012】発明7に係る釣り用リールの発音機構は、発明1から6のいずれかに記載の機構において、音出しピンは、先端が滑らかな凸状の頭部と、頭部に連なって形成され頭部より大径の受け部と、受け部に連なって形成され受け部より小径の軸部とを有している。この場合には、軸部の外周側にコイルばねを配置してコイルばねの一端を底部に他端を受け部に当接させコイルばねを圧縮状態で配置する。これにより音出しピンが音出し凹部側に付勢される。この音出しピンの頭部は、受け部より小径であるため、音出し凹部の間隔を小さくすることができ、発音間隔が短い細かなクリック音を出すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】〔全体の構成〕図1及び図2は、本発明の一実施形態による片軸受リールを示している。図1及び図2において片軸受リールは、リール本体1と、リール本体1に片持ち支持されたスプール軸2と、スプール軸2に対して相対回転自在に配置され外周に釣り糸が巻かれるスプール3と、スプール3の一方向の回転を制動するドラグ機構4とを備えている。
【0014】リール本体1は、一方側(図2左側)に円盤状の側板10を有し、他方側は開放されている。側板10の外周には、軸方向に延びる上下1対の保護部11が円周方向に所定の間隔で形成されている。上側の保護部11には、この片軸受リールを釣り竿に取り付けるための取付部12が設けられている。スプール軸2は、その一端がリール本体1の側板10の中心部にねじ込み固定されている。スプール軸2の基端部には、リール本体1にねじ込まれる雄ネジ部2aが形成されている。この雄ネジ部2aは、リール本体1の側板10の中心部から外方に突出している。また、スプール軸2の先端には、くびれ部2bとくびれ部2bより大径で先端が先細り球状の頭部2cとが形成されている。
【0015】スプール3は、内部に空間3aを有する筒状の胴部15と、胴部15の一端部に胴部15と一体で形成された円盤状の内フランジ16と、胴部15の他端部にリール本体1の開放部を覆うようにボルト17aにより装着された外フランジ17とを有している。内フランジ16はリール本体1の側板10と対向するように形成されている。空間3aのうちスプール軸2の先端側は端面部材18で塞がれている。端面部材18は胴部15と外フランジ17とを連結するボルト17aによりスプール3に装着されている。端面部材18の外面は、中心部分がわずかに外側に膨出し、中心から外周に向かって緩やかに傾斜して平坦な外フランジ17の外面へと僅かな段差で連続的につながっている。外フランジ17の外面で外周近くにはハンドル48が取り付けられている。ハンドル48は、軸受49を介して外フランジ17に立設されたハンドル軸50に回転自在に支持されており、ハンドル48をつかんだままでのスプール3の回転操作を容易にしている。
【0016】図2に詳しく示すように、スプール3の空間3a内には、スプール3をスプール軸2に対して回転自在に支持する滑り軸受21と、スプール3の釣り糸繰り出し方向の回転時に連結されるローラクラッチ23と、スプール3をスプール軸2に着脱自在に係止するための係脱機構24とが設けられている。また、ドラグ機構4が、側板10のスプール軸2の周囲に設けられている。滑り軸受21は、スプール軸2に回転自在に装着さてており、胴部15の端部と外フランジ17の中心部とにまたがって装着され、外フランジ17と一体で回転する。
【0017】〔ローラクラッチの構成〕ローラクラッチ23は、クラッチホルダ22によりスプール3に着脱自在に装着され、ドラグ機構4が糸繰り出し方向でのみ作動するように設けられている。ローラクラッチ23は、図3に示すように、スプール3の内部空間3aに回転不能に装着された外輪25と、スプール軸2に回転自在に装着された内輪26と、両輪25,26の間に両者に接触可能に配置された、たとえば6つのローラ27とを有する内輪遊転形のものである。
【0018】外輪25は、両端が内方に湾曲した金属製の筒状部材であり、スプール3に回転不能に係止されている。内輪26は、金属製の筒状部材であり、外輪25より長く側板10側に突出している。内輪26の突出端には、軸方向に突出する1対の係止突起26aが形成されている。この係止突起26aは、ドラグ機構4を内輪26に回転不能に連結するために設けられている。内輪26は、スプール軸2にはめ込まれた止め輪2dとリール本体1の側板10の壁面とにより軸方向の移動が規制されている。
【0019】両輪25,26の間には、ローラ27を周方向に間隔を隔てて保持するための合成樹脂製のリテーナ28が装着されている。リテーナ28には、ローラ27を周方向に所定距離移動可能に保持するための保持空間(図示せず)が形成されている。保持空間の周方向の一側には、糸繰り出し方向(ローラ27が両輪25,26に食い込む方向)に付勢するためのバネ部材(図示せず)が一体で形成されている。
【0020】〔ドラグ機構の構成〕ドラグ機構4は、図3に示すように、内輪に回転不能に係止される回転円板40と、リール本体1にスプール軸2に沿う軸方向に移動自在かつ回転不能に装着された押圧円板41及び回転円板40に圧接可能な制動円板42と、リール本体1に軸方向に移動可能に設けられ制動円板42を回転円板40側に圧接するための圧接機構43とを有している。回転円板40とリール本体1との間には、両者の相対回転、つまりドラグ作動時に発音する第1発音機構45が設けられている。また、圧接機構43には、ドラグ力を調整する際に発音する第2発音機構46が設けられている。
【0021】回転円板40は、たとえばステンレス等の金属製の部材であり、内周部に内輪26の係止突起26aに係止される1対の係止溝40aを有している。また、回転円板40の径方向の中間部には、リング状の凹部40bが形成されている。この凹部40bには、第1発音機構45を構成するリング状の第1発音部材60が回転不能に固定されている。押圧円板41は、たとえばステンレス等の金属製の部材であり、径方向の中間部には、周方向に等間隔に配置されたたとえば3つの丸孔41aが形成されている。制動円板42は、たとえば炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸させた繊維強化樹脂からなり、径方向の中間部には、周方向に等間隔に配置されたたとえば3つの丸孔42aが形成されている。両丸孔41a,42aは同じ位置に形成されている。
【0022】圧接機構43は、操作つまみ51と、操作つまみ51により押圧される3枚の皿ばね52と、皿ばねにより押圧されるワッシャ53と、ワッシャ53により押圧される、たとえば3本の押圧ピン54(図3では1本のみ図示)とを有している。操作つまみ51は、縁付き皿状のつまみ部51aと、つまみ部51aの中心に一体形成されたボス部51bとを有している。つまみ部51aの径方向の中間部背面には、第2発音機構46の第2発音部材65がネジにより回転不能に固定されている。ボス部51bは、スプール軸2の先端に形成された雄ネジ部2aに螺合している。操作つまみ51は、スプール軸2の基端面に装着された抜け止めボルト55により抜け止めされている。
【0023】3枚の皿ばね52は、ボス部51bの外周側に軸方向に並べて装着されており、操作つまみ51の回転により伸縮してドラグ力を細かく調整するために設けられている。ワッシャ53は、皿ばね52の付勢力を押圧ピン54に伝達するために設けられている。押圧ピン54は、先端側が小径の段付きピンであり、側板10に周方向に等間隔に3カ所に形成された貫通孔10aに大径部分が軸方向移動自在に装着されている。押圧ピン54の先端は、押圧円板41及び制動円板42に形成された丸孔41a,42aに挿通されており、両円板41,42をリール本体1に対して回転不能に係止している。押圧ピン54の段差部分は押圧円板41に当接している。これにより押圧円板41は押圧ピン54により押圧される。皿ばね52のバネ力を操作つまみ51の回動操作により調整することで、制動円板42と回転円板40との摩擦力が変化しドラグ力を調整できる。
【0024】〔発音機構の構成〕第1発音機構45は、リール本体1(側板10)に対して回転円板40が回転するドラグ作動時に発音する。第1発音機構45は、図4及び図5に示すように、第1音出し凹部60aを有する第1発音部材60と、側板10の内側面に形成された第1装着穴部59と、第1装着穴部59に進退自在に装着される第1音出しピン61と、第1音出しピン61を第1音出し凹部60a側に付勢する第1コイルばね62とを有している。
【0025】第1発音部材60は、前述のように回転円板40に固定されたリング状の部材である。第1音出し凹部60aは第1発音部材60の第1音出しピン61側の側面に回転方向に間隔を隔てて多数形成されている。第1装着穴部59は、複数の第1音出し凹部60aの少なくとも一つと対向する位置に設けられ、回転方向に沿って長く形成された第1開口部59aと第1底部59bとを有している。第1装着穴部59は、回転方向の断面が、図5に示すように第1開口部59aに向けて末広がりの台形形状であり、径方向の断面が、図3に示すように平行な矩形形状である。第1開口部59aは回転方向に湾曲し両端が半円形の長円形状であり、第1底部59bは第1開口部59aの中心位置に配置され長円形状の直径と実質的に同じ直径の円形状である。この第1開口部59aと第1底部59bとは直線的に結ばれている。
【0026】第1音出しピン61は、第1装着穴部59に軸方向移動自在に装着されている。第1音出しピン61は、先端が滑らかな凸状の頭部61aと、頭部61bに連なって形成され頭部より大径の受け部61bと、受け部61bに連なって形成され受け部61bより小径の軸部61cとを有する、頭部61aは、球状で小径であり、ドラグ作動時に第1発音部材60の第1音出し凹部60aで衝突を繰り返し、細かなクリック音を発する。受け部61bは、第1装着穴部59の最小径より小さい直径を有している。受け部61bと軸部61cとの段差部分に第1コイルばね62の先端が当接している。軸部61cは、外周に第1コイルばね62を配置できるように受け部61bより小さい直径の軸状の部分である。
【0027】第1コイルばね62は、第1音出しピン61の軸部61cの外周側に配置され第1装着穴部59の第1底部59bに基端部が係止され、先端部が第1音出しピン61の受け部61bと軸部61cとの段差部分に当接して圧縮状態で第1装着穴部59に収納されている。第2発音機構46は、図3に示すように、第1発音機構45と略同様な構成であり、操作つまみ51がリール本体1(側板10)に対して回転すると発音する。第2発音機構46は、第2発音部材65と、第2装着穴部(図示せず)と、第2音出しピン66と、第2コイルばね(図示せず)とを有している。第2発音部材65は、操作つまみ51の裏面に固定されたリング状の部材であり,その側板10に対向する面に第2音出し凹部65aが回転方向に間隔を隔てて多数形成されている。第2装着穴部は、側板10の外側面に第1装着穴部59と同様な形状で形成されている。第2発音機構46は、操作つまみ51が回転すると細かなクリック音を発する。
【0028】〔係脱機構〕係脱機構24は、図2及び図6に詳しく示すように、概略L字形の板状をなし一端が支持ピン70に旋回自在に支持された係脱部材71と、係脱部材71の他端に固定された突起状の着脱つまみ72とを有している。支持ピン70は端面部材18の内面から突出している。係脱部材71は、スプール軸2の端部に形成されたくびれ部2bに係合可能な係合位置と、くびれ部2bから離脱した係合解除位置(図6に2点鎖線で示す)とを取り得る。
【0029】係脱部材71は、その側部に配置されたリターンばね73によって常に係合位置に付勢されている。リターンばね73はヘアピン状に屈曲した帯状の板ばね材料からなり、拡がろうとする弾発力が係脱部材71を係合位置へと付勢する力を生じさせる。着脱つまみ72を操作しない限り、係脱部材71は常にスプール軸2のくびれ部2bに係止し、スプール軸2からスプール3が抜け出るのを阻止する。
【0030】図1にも示すように、着脱つまみ72は、スプール3の端面部材18に貫通する円弧状の長孔からなる遊動孔18aに挿通されて端面部材18の外部に露出している。遊動孔18aに沿って着脱つまみ72が移動すると、係脱部材71も着脱つまみ72とともに移動するが、着脱つまみ72の移動位置が何れの位置であっても、係脱部材71が遊動孔18aの内面側を塞ぐ。具体的には、L字形をなす係脱部材71の短辺部分の面積が、遊動孔18aの幅および長さに比べて十分に広く設定されていて、遊動孔18aを塞ぐ遮蔽面71aとなる。このような遮蔽面71aを備えていることで、遊動孔18aを通じて外部から内部空間3aへと水や塵埃その他の異物が浸入するのを防ぐことができる。
【0031】〔リールの動作〕次に動作について説明する。図示していないが、スプール3の胴部15の外周には釣り糸が巻かれる。釣り糸を巻き取る際には、ハンドル48を操作してスプール3を回転させる。スプール3はスプール軸2に対して相対回転する。このとき、ローラクラッチ23は遮断されるので、外輪25は自由に回転してスプール3の巻取り方向の回転は許容される。このため、スプール3はスムーズに回転する。
【0032】スプール3から釣り糸を繰り出す際には、スプール3は前記とは逆方向に回転する。このとき、ローラクラッチ23は、連結されるので、内輪26も外輪25とともに回転しようとする。しかし、内輪26は、回転円板40を介して制動円板42により制動されているので、回転力に対して皿ばね52により設定された抵抗力(ドラグ力)が作用してドラグ作動状態になる。このため、スプール3が必要以上に回転して釣り糸が過剰に引き出されるのを防止でき、糸からみを避けることができる。
【0033】また、このような釣り糸の繰り出し時には、回転円板40はスプール3とともに回転し、押圧円板41,制動円板42はその回転が禁止されているので、両円板40,42が相対回転する。回転円板40が図4の矢印R1方向に回転すると、第1音出しピン61の頭部61aが音出し凹部60aへの衝突を繰り返して第1発音部材60との間で発音する。このとき、第1コイルばね62の基端部が第1底部59bに係止されているので、軸部61cが第1コイルばね62の内周側に配置された第1音出しピン61の中心線A1は図4上方に傾く。
【0034】一方、使用状態を変更して回転円板40が逆に矢印R2方向に変わっても、第1底部59bが開口部59aの回転方向の中心部に位置しているので、第1音出しピン61の中心線A2の図4下方への傾きは、中心線A1とほぼ同じになる。このため、右巻から左巻に使用状態を変更してドラグ作動時の回転方向が変わっても音質や回転抵抗が変化しにくい。また、第1音出しピン61に融通が多いので、音量が低下しにくい。さらに第1音出しピン61が傾斜して配置されるので、回転抵抗の増加を抑えることができる。
【0035】つぎに、この片軸受リールは、スプール3をリール本体1およびスプール軸2から取り外すことができる。着脱つまみ72をリターンばね73の付勢力に対向して操作し、係脱部材71をスプール軸2のくびれ部2bから離脱させる。着脱つまみ72を離脱位置に維持したままで、スプール3をスプール軸2から抜き出す。スプール3には、ローラクラッチ23や滑り軸受21が装着されたままで、スプール軸2から取り外される。
【0036】スプール軸2からスプール3を取り外せば、ローラクラッチ23の装着方向を逆側に変更することで、糸巻方向を逆方向に変更できる。この場合、まず、クラッチホルダ22の先端を、たとえば人差し指と親指とでつまんでスプール3から引き抜く。すると、内輪26が止め輪2dによりスプール軸2に残った状態でローラクラッチ23がクラッチホルダ22ごと外れる。このとき、クラッチホルダ22がスプール3から突出しているので、クラッチホルダ22を引き抜きやすい。クラッチホルダ22を引き抜いたら、クラッチホルダ22からローラクラッチ23を取り出す。クラッチホルダ22からローラクラッチ23を取り出す際には、ローラクラッチ23の後部を押して取り出す。
【0037】ローラクラッチの装着方向を逆にする場合、内輪26が取り外されたローラクラッチ23を反転させてクラッチホルダ22に装着する。そして、クラッチホルダ22をスプールの内部空間3aに挿入する。このようにローラクラッチ23を逆向きにすれば、糸巻方向を簡単に逆にすることができる。そして、最後にローラクラッチ23を逆組みしたスプール3をスプール軸2に装着すると、係脱部材71がリターンばね73の付勢力によりくびれ部2bに係止され、スプール3がスプール軸2に装着される。
【0038】このようにすると、左巻(左ハンドル)の片軸受リールを実現できる。このように使用状態を左巻にすると、前述したように、ドラグ作動時のスプール3の回転方向が右巻の場合と反対になる。しかし、この場合にもドラグ作動時に第1発音機構45は、右巻の時の同様な音質の音を発する。
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、第1装着穴部59を先広がりの穴で構成したが、図7に示すように回転方向で段差を持った穴で構成してもよい。この場合には、第1装着穴部59の穴加工が容易になる。
【0039】(b) 前記実施形態では、第1装着穴部59の第1底部59b自体で第1コイルばね62の基端部を係止したが、第1底部59bに係止部を設けて第1コイルばね62の基端部を係止してもよい。たとえば、図8及び図9に示すように、1対の係止ピン64a,64bを第1底部59bに立設し、この係止ピン64a,64bにより第1コイルばね62の基端部を係止するようにしてもよい。この場合、第1装着穴部59はストレートな長穴でよい。また、この場合、2つの係止ピン64a,64bの位置を適宜の位置にすることで、回転方向R1,R2により第1音出しピン61の中心線A1,A2の傾きを異ならせることができる。このように傾きを異ならせる構成は、たとえば、ローラクラッチなどのワンウェイクラッチを設けずに発音機構だけでスプールに回転抵抗を与える場合に好適な構成になる。
【0040】すなわち、右巻の時には図8に示すように係止ピン64aにより第1コイルばね62の基端部を係止し、糸繰り出し時に回転方向R1に回転するときには、強い回転抵抗を与えるために中心線A1の傾きを小さくし、糸巻取時に回転方向R2に回転するときには、弱い回転抵抗になるように中心線A2傾きを大きくする。これにより回転抵抗を回転方向に応じて変更できるとともに、回転方向によって音質及び回転抵抗を異ならせることができ、音により回転方向を判断できる。
【0041】また、左巻に使用状態を変更したときには、第1コイルばね62の装着位置を図8下側に変更し、係止ピン64bにより基端部を係止する。これにより図8に示す位置と線対称の位置に第1音出しピン61が配置され、糸繰り出し時の回転方向がR2に変わっても傾きが小さくなり音量が大きくなりかつ回転抵抗が大きくなり、右巻の時のときと同様な音質が得られる。また,糸巻取時には回転方向がR1になり傾きが大きくなって音量が小さくなりかつ回転抵抗が小さくなる。
【0042】(c) 前記実施形態では、釣り用リールとして片軸受リールを例に説明したが、本発明の発音機構が適用される釣り用リールは片軸受リールに限定されず、両軸受リールやスピニングリールなどの他の釣り用リールにも適用できる。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、コイルばねの端部が底部に係止されかつコイルばねの内周側に配置された音出しピンの先端部の間隙が大きいので、先端部は音出し凹部により押されて回転方向に傾きながら音出しピンは音出し凹部への衝突を繰り返す。回転方向が変わっても同様に音出しピンは回転方向に傾いて発音する。このため、異なる回転方向でも音質や回転抵抗が変化しにくくなり使用状態が変化しても音質や回転抵抗は変化しにくい。しかも音出しピンが回転方向に傾くので、コイルばねの付勢力が弱くなり回転抵抗の増加を抑えることができる。さらに、融通が多くなるので音出しピンが振動しやすくなり音量の低下を抑えることができる。
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【出願日】 平成11年2月12日(1999.2.12)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
【公開番号】 特開2000−228936(P2000−228936A)
【公開日】 平成12年8月22日(2000.8.22)
【出願番号】 特願平11−33651