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【発明の名称】 疑似餌装置用錘
【発明者】 【氏名】中井 崇

【要約】 【課題】鋼球製の錘よりも大きな比重を得ることができて、所望の飛距離や尾振り動作をさせるために充分な重量および偏心量を得ることができ、しかも擬似餌装置の磁石に対して2個を直列に配設した場合でも、磁石に2個着磁させるに充分な着磁力を有するとともに、耐食性にも優れる疑似餌装置用錘を提供する。

【解決手段】疑似餌装置内に形成された中空部に組み込まれ、内部の磁石に対して接離自在に設けられる錘1〜4であって、結合相形成成分として、Ni:3〜15重量%およびFe:15〜35重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する燒結合金によって形成したことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 疑似餌装置内に形成された中空部に組み込まれ、内部の磁石に対して接離自在に設けられる錘であって、結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%およびFe:15〜35重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する燒結合金によって形成したことを特徴とする疑似餌装置用錘。
【請求項2】 上記結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%、Fe:15〜35重量%およびCo:0.5〜10重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の疑似餌装置用錘。
【請求項3】 上記結合相形成成分として、さらにCu:0.5〜10重量%を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の疑似餌装置用錘。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、釣りに用いられる疑似餌装置の内部に、移動自在に組み込まれる着磁性を備えた錘に関するものである。
【0002】
【従来の技術】魚釣りの一種として、釣り糸の先端部に小魚の形を模倣した疑似餌装置(ルアー)を取り付け、水中であたかも生きた小魚が泳いでいるような形態を見せることにより、他の大魚を誘う方法が広く知られている。図3は、従来のこの種の釣りに用いられる疑似餌装置を示すもので、魚の外形に似せた本体11内に、頭部12側から尾13側に向けて延在する中空部14が形成され、この中空部14内に長手方向にガイドワイヤ18が張設されるとともに、当該ガイドワイヤ18に挿通された球状の錘15が移動自在に組み込まれ、かつ中空部14の頭部12側に、等方性バリウムフェライトなどのフェライトからなる磁石16が設けられたもので、頭部12に取り付けられた金物17に上記釣り糸が挿通されるようになっている。
【0003】このような疑似餌装置においては、先ずキャスティング時に加速度を作用させることにより、慣性力によって錘15が磁石16から引き離され、図中点線で示すように尾13側に移動する。これにより、疑似餌装置は、空気抵抗の小さい尾13側を先頭にして飛ぶため、頭部12側を先頭にして飛ぶ場合と比較して、より大きな飛距離が得られる。また、着水後においては、釣り糸を手繰ることにより、頭部12側が先頭になるとともに、磁石16の磁力によって錘15が中空部14内を移動し、図中実線で示すように当該磁石16に磁着する。この結果、疑似餌装置における重心が頭部12側に移動し、釣り糸を引き寄せた際に、疑似餌装置は尾13を振って、小魚が泳いでいるような形態を見せることになる。
【0004】このように、上記疑似餌装置は、慣性力あるいは磁石16によって錘15を中空部14内において移動させることにより、疑似餌装置の重心を偏心させるものであるため、当該錘15として、着磁性と所定の比重とを有するものを用いる必要がある。このため、従来の疑似餌装置においては、一般に上記錘15として軟鋼によって形成された鋼球が使用されていた。
【0005】ところが、上記従来の鋼球製の疑似餌装置用錘15にあっては、比重が約7.9であるために、大きな偏心量を得ることができず、よってキャスティング時に所望の飛距離が得られなくなったり、あるいは着水後における水中での尾13の振りが不充分になってしまうという問題点があった。そのため、図4に示すように、2個の錘15、15を中空部14内に直列に配設し、重量を補充することにより、飛距離の向上と、尾振り動作の改善を図ったものが使用されている。このように錘15を2個連ねても、鋼球製の錘15の場合、着磁力が強いために、磁石16から離れている側の錘15も着磁することができる。
【0006】また、本出願人は、既に鋼球製の錘15よりも大きな比重を得ることができ、しかも必要以上の着磁力を有しないW−Ni−Fe系の材料からなる錘15を提案している(特願平10−223806)。これは、錘を、結合相形成成分として、Ni:3〜15重量%およびFe:4〜15重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する燒結合金によって形成したものである。また、上記結合相形成成分として、Ni:3〜15重量%、Fe:4〜15重量%およびCo:0.5〜10重量%を含有するものである。また、上記結合相形成成分として、さらにCu:0.5〜10重量%を含有するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、鋼球製の錘15は、比重が小さいため、大きな偏心量を得るには不都合であるという問題を依然包含している。さらに、この錘15にあっては、軟鋼によって形成されているために、中空部14内が密閉されているとはいえ、封じ込められた水分と酸素とによって、経時的に表面に錆が発生し、この結果長期間にわたって使用した場合に錘15の移動不良が生じるという問題点もある。
【0008】一方、本出願人提案の上記W−Ni−Fe系の材料からなる錘15は、磁石16から離れた錘15を保持するには、着磁性が充分ではないため、2個連ねて使用することは困難である。
【0009】また、特に、上記疑似餌装置が小型になった場合には、必然的に錘15も小さくせざるを得ないために、鋼球製の錘15を2個連ねて使用する場合、および上記W−Ni−Fe系の材料からなる錘15を1個使用する場合のいずれも、充分な重量と偏心量とが得られず、よってキャスティング時に錘15の重量よりも本体11における空気抵抗がまさって充分な飛距離が得られなくなるという問題点がある。
【0010】本発明は、このような従来の疑似餌装置用錘が有する課題を有効に解決すべくなされたもので、鋼球製の錘よりも大きな比重を得ることができて、所望の飛距離や尾振り動作をさせるために充分な重量および偏心量を得ることができ、しかも擬似餌装置の磁石に対して2個を直列に配設した場合でも、磁石に2個着磁させるに充分な着磁力を有するとともに、耐食性にも優れる疑似餌装置用錘を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明に係る疑似餌装置用錘は、疑似餌装置内に形成された中空部に組み込まれ、内部の磁石に対して接離自在に設けられる錘であって、結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%およびFe:15〜35重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する燒結合金によって形成したことを特徴とするものである。
【0012】また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%、Fe:15〜35重量%およびCo:0.5〜10重量%を含有することを特徴とするものである。また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の結合相形成成分に加えて、さらにCu:0.5〜10重量%を含有することを特徴とするものである。
【0013】請求項1〜3のいずれかに記載の疑似餌装置用錘によれば、タングステン(W)を主体とする焼結体であるために、軟鋼製の錘と比較してはるかに高い比重となる。また、このタングステンに、上記範囲の重量%のFeおよびNiを加えることにより、両成分の協働によって充分な着磁力を得ることができる。ちなみに、請求項1〜3に記載の成分組成を有するW−Ni−Fe、W−Ni−Fe−Co、W−Ni−Fe−Cu、またはW−Ni−Fe−Co−Cuの燒結合金によって形成した錘によれば、9.0〜13.9の高比重と、鋼球の90〜95%という充分な着磁力が得られる。
【0014】したがって、本発明に係る疑似餌装置用錘によれば、鋼球製の錘よりも遥かに高い比重を得ることができるため、小型の疑似餌装置に組み込んだ場合においても、所望の飛距離や尾振り動作をさせるために充分な重量および偏心量を得ることができる。加えて、充分な着磁力を有しているため、擬似餌装置の磁石に対して2個を直列に配設した場合でも、磁石に2個着磁させることができる。さらに、主成分となるタングステンは、耐食性に優れ、かつ鋼球のように経時的に錆が進行してころがり不良を生じる虞も無いので、長期間にわたって安定した転がり性能を保持することができる。
【0015】ここで、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、NiおよびFeを含有することを必須構成要素としたのは、タングステンのみでは必要とされる着磁力が得られないからであり、さらにNiまたはFeのいずれか一方のみを加えても上記着磁力は得られないからである。なお、Niの含有量を15〜35重量%の範囲とし、かつFeの含有量を15〜35重量%の範囲とした理由は、当該含有量がそれぞれ15重量%に満たないと、いずれも充分な着磁力が得られず、他方両成分とも、含有量が30重量%を超えると着磁力は充分得られるものの、比重が低下して不都合だからである。
【0016】また、請求項2に記載の発明のように、結合相形成成分として、Coを加えることにより、着磁力を向上させる効果が得られる。ここで、Coの含有量を、0.5〜10重量%の範囲としたのは、この含有量が0.5重量%に満たないと、着磁力の上昇効果が得られず、他方上記含有量が10重量%を超えると、比重が低下して不適当だからである。
【0017】さらに、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の結合相形成成分として、さらにCuを加えれば、同様に着磁力を向上させる効果が得られるとともに、焼結性が向上する効果が得られて好適である。なお、当該Cuの含有量を0.5〜10重量%の範囲に限定した理由は、Coの場合と同様に、当該含有量が0.5重量%に満たないと、着磁力の上昇効果が得られず、他方上記含有量が10重量%を超えると、比重が低下して不適当だからである。
【0018】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)図1(a)〜(d)は、本発明の疑似餌装置用錘の一実施形態における各種の形状を示すもので、これらの錘1〜4は、結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%およびFe:15〜35重量%、またはNi:15〜35重量%、Fe:15〜35重量%およびCo:0.5〜10重量%、あるいはこれらの結合相形成成分に加えて、さらにCu:0.5〜10重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する液相焼結合金などの燒結合金によって形成されたものである。
【0019】上記範囲の含有量を有する、W−Ni−Fe、W−Ni−Fe−Co、W−Ni−Fe−Cu、またはW−Ni−Fe−Co−Cuを製造するには、例えば、先ず原料粉末として、1〜5μmの範囲内の所定平均粒径を有するW、Ni、Fe、Co、Cu粉を用意し、ボールミルで24時間混合した後、1〜5ton/cm2 の力で圧粉体を成形し、次いで得られた圧粉体を、水素雰囲気中において1200〜1500℃の範囲内の所定温度で液相焼結することにより、図1(a)〜(d)に示すような、球状、たわら状、円柱状あるいは角柱状の錘1〜4を得る。このようにして得られた錘1〜4は、図3または図4に示したような疑似餌装置であって、かつガイドワイヤ18が設けられていない中空部14内に移動自在に組み込まれて使用に供される。
【0020】(実施の形態2)また、図2(a)〜(f)は、それぞれ本発明に係る疑似餌装置用錘の他の実施形態における各種の形状を示すものである。図2(a)〜(d)に示す疑似餌装置用錘5〜8は、図3または図4に示した疑似餌装置のように、中空部14内にガイドワイヤ18が調節されたものに組み込まれる形状のもので、ぞれぞれ第1の実施形態に示した疑似餌装置用錘1〜4と同様の外形形状を有し、かつその中心部に、上記ガイドワイヤ18が挿通される貫通孔5a〜8aを穿設したものである。
【0021】また、図2(e)、(f)に示す疑似餌装置用錘9,10は、上記中空部14の側壁に、長手方向に沿ってガイド用レールが形成されているような疑似餌装置に組み込む形状のもので、それぞれの側面に上記ガイド用レールと係合するガイド溝9a、10aを形成したものである。これら、図2(a)〜(f)に示す疑似餌装置用錘5〜10は、いずれも第1の実施形態に示したものと同様に、結合相形成成分として、Ni:15〜35重量%およびFe:15〜35重量%、またはNi:15〜35重量%、Fe:4〜15重量%およびCo:0.5〜10重量%、あるいはこれらの結合相形成成分に加えて、さらにCu:0.5〜10重量%を含有し、かつ残部が分散相形成成分としてのWおよび不可避不純物からなる組成を有する液相焼結合金などの燒結合金によって形成されている。
【0022】図1(a)〜(d)および図2(a)〜(f)に示した本発明に係る疑似餌装置用錘1〜10によれば、上記重量%の範囲の成分組成を有するW−Ni−Fe、W−Ni−Fe−Co、W−Ni−Fe−Cu、またはW−Ni−Fe−Co−Cuの燒結合金によって形成しているので、9.0〜13.9といった従来の鋼球製の錘と比較して、遥かに高い比重が得られるとともに、さらに鋼球の約95%程度といった充分な着磁力を得ることができる。
【0023】したがって、上記疑似餌装置用錘1〜10によれば、鋼球製の錘より高比重を得ることができるため、小型の疑似餌装置に組み込んだ場合においても、所望の飛距離や尾振り動作をさせるために充分な重量および偏心量を得ることができる。また、充分な着磁力を有しているため、擬似餌装置の磁石に対して2個を直列に配設した場合でも、磁石に2個着磁させることができる。さらに、主成分となるタングステンは、耐食性に優れ、かつ鋼球のように経時的に錆が進行してころがり不良を生じる虞も無いので、長期間にわたって安定した性能を保持することができる。
【0024】また、上記疑似餌装置用錘1〜10は、いずれも粉末成形により焼結体によって形成されているので、要すればこれらに潤滑油を含浸させることにより、容易に含油製品とすることもでき、この場合には、中空部14内における移動をより一層円滑に行わせることが可能になる。なお、上記疑似餌装置用錘1〜10においては、上述した組成成分に加えて、さらに比重調整用としてモリブデン(Mo)を添加してもよい。
【0025】
【実施例】本発明の効果を確認するために、以下の組成を有する各種の疑似餌装置用錘に対して、それぞれの比重と着磁力とを測定した。下記表は、本発明に係る実施例の疑似餌装置用錘と、本発明の組成成分範囲を外れる比較例の錘とにおける比重および着磁力を比較したものである。なお、着磁力については、固定されている、直径6mmで高さ2mmの円柱からなる最大磁気エネルギー積0.8〜1.1MGOeの等方性バリウムフェライト磁石に、直径8mmの球からなる錘を磁着させ、これを水平方向に引っ張って上記磁石から引き離れた際の引張り力を測定し、鋼球の場合における当該引張り力との比(%)として示した。また、下記組成の欄において、各成分に表記された数値は、当該成分の重量%を示すものである。
【0026】
組成 比重 着磁力実施例 64W−15Ni−2Cu−1Co−18Fe 13.1 90% 64W−20Ni−2Cu−1Co−13Fe 13.2 90% 50W−25Ni−25Fe 11.7 90% 50W−20Ni−5Cu−5Co−20Fe 11.8 95% 40W−25Ni−5Cu−5Co−25Fe 10.9 95%【0027】
比較例 64W−5Ni−2Cu−1Co−28Fe 12.9 20% 78W−5Ni−2Cu−1Co−14Fe 14.9 45% 78W−8Ni−2Cu−1Co−11Fe 15.0 85% 85W−4Ni−2Cu−1Co−8Fe 16.1 80% 85W−6Ni−2Cu−1Co−6Fe 16.2 80% 80W−4Ni−4Cu−4Co−8Fe 15.4 80% 80W−4Ni−6Cu−4Co−6Fe 15.4 75% 80W−4Ni−8Cu−4Co−4Fe 15.5 70% 93W−3Ni−4Fe 17.7 65% 85W−6.5Ni−0.5Co−8Fe 16.1 75% 85W−6.5Ni−0.5Cu−8Fe 16.1 75% 85W−7Ni−8Fe 16.1 70% 85W−2Ni−2Cu−1Co−10Fe 16.0 40% 80W−4Ni−10Cu−4Co−2Fe 15.6 50% 95W−3.5Ni−1.5Fe 18.2 30% 95W−3Ni−2Cu 18.2 0% 鋼球 7.9 100%【0028】上記実施例から、本発明の範囲の成分組成を有する錘によれば、いずれも9.0〜13.9の高比重と、鋼球の90〜95%といった充分な着磁力が得られるのに対して、比較例に見られるように、いずれかの成分が本発明の範囲を逸脱する錘にあっては、大きな着磁力または高い比重のいずれか一方が得られなくなることが判る。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1〜3のいずれかに記載の疑似餌装置用錘によれば、鋼球製の錘よりも遥かに大きな比重を得ることができるため、小型の疑似餌装置に組み込んだ場合においても、所望の飛距離や尾振り動作をさせるために充分な重量および偏心量を得ることができ、また充分な着磁力を有しているため、擬似餌装置の磁石に対して2個を直列に配設した場合でも、磁石に2個着磁させることができる。
【0030】さらに、主成分となるタングステンは、耐食性に優れ、かつ鋼球のように経時的に錆が進行してころがり不良を生じる虞も無いので、長期間にわたって安定した性能を保持することができとともに、いずれも粉末成形により焼結体によって形成している結果、要すればこれらに潤滑油を含浸させることにより、容易に含油製品とすることもでき、装置内における移動をより一層円滑に行わせることも可能になるといった効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】594111292
【氏名又は名称】株式会社東富士製作所
【出願日】 平成11年2月4日(1999.2.4)
【代理人】 【識別番号】100096862
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 千春 (外1名)
【公開番号】 特開2000−224941(P2000−224941A)
【公開日】 平成12年8月15日(2000.8.15)
【出願番号】 特願平11−27228