| 【発明の名称】 |
血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体を発現するトランスジェニック動物 |
| 【発明者】 |
【氏名】栗原 達也
【氏名】松原 弘明
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| 【要約】 |
【課題】血管組織特異的にAT2受容体遺伝子を発現させるトランスジェニック動物を作製して、AT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する動物モデルを提供する。
【解決手段】血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物及びその子孫。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物及びその子孫。 【請求項2】血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子を導入した全能性細胞を個体発生させて得られる、請求項1記載の血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物及びその子孫。 【請求項3】齧歯類であることを特徴とする請求項1又は2記載のトランスジェニック動物及びその子孫。 【請求項4】マウスであることを特徴とする請求項3記載のトランスジェニック動物及びその子孫。 【請求項5】血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子を全能性細胞に挿入し、当該全能性細胞を仮親動物に移植し、前記仮親動物を飼育出産させて所望の形質が発現された仔動物である始祖動物を得る工程を含む請求項1記載のトランスジェニック動物の作製方法。 【請求項6】プロモーター領域が血管平滑筋タンパク質遺伝子由来である請求項5記載のトランスジェニック動物の作製方法。 【請求項7】プロモーター領域が血管平滑筋α-アクチン遺伝子由来である請求項6記載のトランスジェニック動物の作製方法。 【請求項8】血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子。 【請求項9】プロモーター領域が血管平滑筋タンパク質遺伝子由来である請求項8記載の組換え遺伝子。 【請求項10】プロモーター領域が血管平滑筋α-アクチン遺伝子由来である請求項8記載の組換え遺伝子。 【請求項11】請求項1記載のトランスジェニック動物に由来する血管組織断片又は血管細胞。 【請求項12】血管平滑筋組織断片である請求項11記載の血管組織断片。 【請求項13】血管平滑筋細胞である請求項11記載の血管細胞。 【請求項14】請求項1記載のトランスジェニック動物を用いてin vivoでアンジオテンシンII2型受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法。 【請求項15】請求項11記載の血管組織断片又は血管細胞を用いてin vitroでアンジオテンシンII2型受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する分野】本発明は、アンジオテンシンII2型受容体(AT2受容体)の生理作用、とりわけ血管生理作用及び/又は血圧調節作用を研究するための動物モデルとして有効であり、かつAT2受容体及び/又はアンジオテンシンII1型受容体(AT1受容体)に作用する化合物の薬効を解明するために有効なトランスジェニック動物に関する。 【0002】 【従来の技術】アンジオテンシンII(以下、AngIIということもある)は血圧を維持する生体内で最も重要な昇圧系であり、その作用は1型(以下、AT1)、2型(以下、AT2)の特異的受容体を介して発揮される(Matsubara, H. et al, Molecular insights into angiotensin II type 1 and type 2 receptors : expression, signaling and physiological function and clinical application of its antagonists. Endocr. J. 1998;45:137-150.)。AT1受容体は、生体内で最も強力な血管収縮作用を発揮し、成人の血管平滑筋細胞に主として発現する。AT1受容体ノックアウトマウスの成績では平均血圧で約35mmHgもの低下が報告されている(Sugaya, T. et al, Angiotensin II type 1a receptor-deficient mice with hypotension and hyperreninemia. J. Biol. Chem. 1995;270:18719-18722.)。 【0003】一方、AT2受容体は胎児型受容体であり、胎児期には全身に間葉系を中心として発現するが、生後急速に発現量は低下する。成人では脳基底核を含む脳の多くの部位と、子宮で高発現する。成人血管での発現量は少なく、従来までは血圧調節への関与は少ないと考えられていた(Matsubara, H., Pathophysiological roles of angiotensin II type2 receptor in cardiovascular and renal diseases. Circ. Res. 1998;83:1182-1191.)。 【0004】1995年にAT2受容体ノックアウトマウスが作製され(Ichiki, T. et al, Effects on blood pressure and exploratory behavior of mice lacking angiotensin II type-2 receptor. Nature. 1995;377: 748-750.、 Hein, L. et al, Behavioraland cardiovascular effects of disrupting the angiotensin II type-2receptor gene in mice. Nature. 1995;377: 744-747.)、基礎血圧が野生型に比べ上昇し、さらにAngIIによる昇圧が過剰反応を示した。この結果は、AT2受容体を介して中枢性・末梢性に何らかの血圧調節作用のあることが示唆されるが、成体血管系においてAT2受容体の発現が見いだせないことから、その作用機序は未だに不明であった。 【0005】1998年に心臓特異的AT2受容体過剰発現トランスジェニックマウスが作製され(Masaki, H. et al, Cardiac-specific overexpression of angiotensin II AT2 receptor causes attenuated response to AT1 receptor-mediated pressor and chronotropic effects. J.Clini.Invest. 1998;101: 527-535.)、このマウスでは、AngII投与による昇圧反応や頻脈反応が起きにくく、AngIIの心筋MAPkinase活性化が抑制されることから、AT2受容体が、AT1受容体の作用(昇圧、頻脈)を抑えることが示された。しかし、この作用は心臓に対するものであり、AT2受容体の血管系に対する血圧調節作用は、依然不明のままであった。 【0006】また、AT2受容体の細胞内シグナルはチロシンフォスファターゼを活性化し、細胞増殖抑制作用を発揮することが知られていたが、AT2受容体の血圧調節作用との関連は不明であった(Matsubara, H., Pathophysiological roles of angiotensin II type2 receptor in cardiovascular and renal diseases. Circ. Res. 1998;83: 1182-1191.)。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、これまで全く予想が困難であったAT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を研究するためのモデルとして有用なトランスジェニック動物を提供するものである。AT2受容体の作用の研究が困難であった理由は、胎児期には全身に発現するが、生後急速に発現量は低下し、成人血管での発現量が少ないこと、また動物においても成体血管では発現が見いだせないことによると考えられる。AT2受容体は、肥大心、梗塞心、障害血管内皮でその発現が上昇することが知られているが、その病態生理学的意義は全く不明であった。 【0008】本発明の目的は、血管組織特異的にAT2受容体遺伝子を発現させるトランスジェニック動物を作製して、AT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する動物モデルを提供することである。 【0009】 【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するために、本発明の発明者らは、様々な組織でAT2受容体遺伝子を発現させて、AT2受容体の機能を解析する研究をしている中に、血管平滑筋に発現する血管平滑筋α-アクチン遺伝子のプロモーターにAT2受容体を連結させた組換え体遺伝子を動物に導入した場合、AT2受容体が血管に発現し、血圧調節作用が見られるという点に着案して本発明を完成するに至った。 【0010】即ち、本発明は、血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物及びその子孫を提供する。本発明において好ましいのは、血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子を導入した全能性細胞を個体発生させて得られる、血管組織特異的にアンジオテンシンII2型受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物及びその子孫である。 【0011】本発明はさらに、血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子を全能性細胞に挿入し、当該全能性細胞を仮親動物に移植し、前記仮親動物を飼育出産させて所望の形質が発現された仔動物である始祖動物を得る工程を含む前記トランスジェニック動物の作製方法を提供する。 【0012】本発明はさらに、血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域と、アンジオテンシンII2型受容体遺伝子とを含むトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子を提供する。 【0013】本発明はさらに、前記トランスジェニック動物に由来する血管組織断片又は血管細胞を提供する。本発明はさらに、前記トランスジェニック動物を用いてin vivoでアンジオテンシンII2型受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法を提供する。 【0014】本発明はさらに、前記血管組織断片又は血管細胞を用いてin vitroでアンジオテンシンII2型受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法を提供する。 【0015】 【発明の実施の形態】本発明において用いることができる血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域としては、血管平滑筋で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域が好ましい。特に好ましいのは血管平滑筋α-アクチン遺伝子由来であるプロモーター領域であり、ヒトまたはマウス等哺乳類由来のものを使用することができる。 【0016】本発明において用いることができるAT2受容体遺伝子の由来は特に限定されるものではなく、ヒトまたはマウス等哺乳類由来のものを使用することができる。本発明のトランスジェニック動物作製用組換え遺伝子の調製は当業者に公知の方法を用いて行うことができ、調製方法の一例を図1に模式図として示す。 【0017】本発明では、血管組織で発現するタンパク質遺伝子由来のプロモーター領域の下流に、AT2受容体遺伝子を連結して得られるトランスジェニック動物製造用組換え遺伝子を導入した全能性細胞を個体発生させて得られる哺乳動物及びその子孫であって、血管組織特異的にAT2受容体が発現することを特徴とするトランスジェニック動物を提供する。 【0018】対象となる哺乳動物は、技術的にはヒト以外の全ての動物種が可能であるが、特に近交系が多数作出されており、しかも受精卵の培養、体外受精などの技術が整っている齧歯類が望ましく、特にマウスが好ましい。 【0019】ここで全能性細胞とは、潜在的に全ての細胞に分化する能力を有する細胞をいう。全能性細胞としては、例えばマウスの場合、受精卵や初期胚のほか、多分化能を有するES細胞のような培養細胞を対象とすることができる。培養細胞へのDNA断片の導入法としては、静電パルス法、リポソーム法、リン酸カルシウム法などが利用できる。特に受精卵へのDNA溶液の物理的注入(マイクロインジェクション)法が好ましい。本発明に係るトランスジェニック動物の作製方法に用いる組換え遺伝子は受精卵の胚発生期に挿入することが望ましい。 【0020】DNAを注入した細胞を仮親動物に移植し、前記仮親動物を飼育出産させて所望の形質が発現された仔動物である目的のトランスジェニック動物(始祖トランスジェニック動物)を得る。当該動物中における所望の形質の発現を確認するには、当該動物の体の一部(例えば尾部先端)を切断し、体細胞中のDNAを抽出して、PCR法やサザンブロット法などにより導入遺伝子の存在を確認する。 【0021】さらに、始祖トランスジェニック動物と正常動物とを交配させてF1動物(子孫動物)を得て、当該F1動物のうち形質が発現されたトランスジェニック動物を交配させて同型集合体F2動物(子孫動物)を得る工程を更に含むことにより、本発明に係るトランスジェニック動物の子孫動物を作製することができる。 【0022】本発明で得られた始祖トランスジェニック動物及びその子孫動物の導入遺伝子の確認を、抽出精製された尾DNAを用いてPCR法、及び3%アガロース電気泳動にて検定した。その結果、図2に示すように、350 bpのAT2受容体特異的バンドが、始祖トランスジェニック動物及びその子孫動物で認められた。 【0023】また、野生型動物及びトランスジェニック動物(いずれも成体)から、大動脈、左心室、腎臓、及び脳の組織を切除し、RT-PCR法により導入遺伝子の発現解析を行った。図3に示すように、野生型動物からはいずれの臓器(大動脈、左心室、腎臓)においてもAT2受容体のバンドが全く検出できなかったが、トランスジェニック動物からは、大動脈、左心室、腎臓、及び脳の各臓器とも720 bpのAT2受容体特異的バンドが検出された。これらの臓器はいずれも血管をもつ臓器であり、血管組織特異的にAT2受容体が発現していることが確認された。 【0024】本発明はさらに、前記トランスジェニック動物を用いてin vivoでAT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法を提供する。例えば、トランスジェニック動物にAngII、AngII拮抗薬、あるいはこれらと同等の作用を示す可能性のある候補化合物を投与し、血管生理的反応及び/又は血圧調節反応を観察することにより、AT2受容体拮抗薬及び作動薬のスクリーニングができる。さらに、現在使用されているAT1受容体に作用する可能性のある薬物も存在するので、本発明に係るトランスジェニック動物を用いて、AT1拮抗薬又はAT1作動薬のAT2受容体への作用、とりわけ副作用を評価することも可能である。以下の実施例4に示すように、AngIIを持続投与した本発明のトランスジェニック動物では、発現されたAT2受容体が、AngIIによる昇圧反応を抑制することを示した。 【0025】本発明はさらに、本発明のトランスジェニック動物に由来する血管組織断片又は血管細胞を提供する。好ましい血管組織断片は例えば摘出大動脈血管平滑筋組織断片などの血管平滑筋組織断片である。また、好ましい血管細胞は例えば血管平滑筋細胞である。このような血管組織断片又は血管細胞を用いてin vitroでAT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用を解析する方法を提供する。例えば、トランスジェニック動物の摘出大動脈を用いて、AT2受容体又はAT1受容体の作動薬、拮抗薬又はこれらと同等の作用を示す可能性のある候補化合物を後述する実施例5に係る方法に従い、灌流液に添加後、当該摘出大動脈の収縮性を測定することにより行うことができる。さらに、トランスジェニック動物の摘出大動脈を用いて、AT2受容体又はAT1受容体の作動薬、拮抗薬又はこれらと同等の作用を示す可能性のある候補化合物を、後述する実施例6及び7に係る方法に従い、灌流液に添加後、摘出大動脈のcGMP産生やkininogenase活性などを測定することによっても行うことができる。これによりAT2受容体拮抗薬及び作動薬のスクリーニング、AT1受容体の拮抗薬及び作動薬のスクリーニングを行うことも可能である。 【0026】本発明によるトランスジェニック動物の摘出血管組織断片を用いてAT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用について以下の知見が得られた。 1)AT2受容体が、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させた。 2)AT2受容体が、AngIIによるcGMP産生を有意に上昇させていること、また、この上昇が内皮由来血管弛緩因子であるNO、及びbradykininを介していることを示した。すなわち、AT2受容体が降圧システムとして知られているbradykinin/NO/cGMP産生系を活性化することで、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させ、降圧作用を発揮していることが示唆された。 3)AT2受容体が、AngIIによるkininogenaseの活性化に関与することを示した。すなわち、kininogenaseがkininogenからbradykininヘの産生量を増加させることにより、降圧システムであるbradykinin/NO/cGMP産生系を介して、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させ、降圧作用を発揮していることが示唆された。 【0027】以下、実施例によって本願発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。種々の変更、修飾が当業者には可能であり、本発明はこれらの変更、修飾も含むことを意図する。 【0028】 【実施例】実施例1 トランスジェニック動物作製用組換え遺伝子の調製先ず、図1に示すようにマウスAT2受容体を含むプラスミドpBS-mAT2(Biophys. Biochem. Res. Commun. 1993;197:393-399 、ATCC S67465)をSpeI-NotIで二重消化し、2.9 KbのcDNA断片を得た。 【0029】次に、本実施例では大阪大学遺伝情報実験施設、三輪岳志博士から恵与されたプラスミドpBS-HSMA-EA4.7を使用した。なお、プラスミドpBS-HSMA-EA4.7は以下の方法で得ることもできる。 【0030】ヒトゲノムDNAライブラリー(HK1067j, Clonetech社製品、CA, USA)を鋳型DNAとし、Long-PCRにてヒト血管平滑筋α−アクチンプロモーターを取得する。先行技術(Gene. 1991;99:285-289)に記載された遺伝子の一次配列を参考にし、EcoRI部位を含む上流プライマー(SMA-FE, -891, 5'-GATTATGGAGATTAGAATTC-3',20mer, 20uM)と、BamHI部位を含む下流プライマー(SMA-RB, +3828, 5'-CTGGATCCGCTTCACAGGATTC-3', 22mer, 20uM)を作製する。TaKaRa Z-Taqキットを用いてLong-PCRを行い、PCR産物(4.7kb)を得る。そのDNA断片の両末端をEcoRIとBamHIで部分消化して4.7kbのDNA断片を単離、精製した後、pBluescript II KS- ベクター(Stratagene社、La Jolla, CA, USA)のEcoRI/BamHI部位にライゲーションし、プラスミドpBS-HSMA-EA4.7を得る。 【0031】次に、pBS-HSMA-EA4.7のマルチプルクローニングサイト中に単独で存在する制限酵素SpeIとNotIで二重消化し、前記の2.9 kbのcDNA断片をライゲーションし、E.coli JM109株(東洋紡績株式会社製品)を形質転換してプラスミドpBS-SM-AT2を得た。 【0032】マイクロインジェクション用のDNA溶液を調製するために、プラスミドpBS-SM-AT2をBssHIIで消化し、7.7KbのDNA断片(smaAT2-DNA)を得た。 実施例2 トランスジェニック動物の作製まず、smaAT2-DNAを注入する受精卵を得るためのマウス(採卵用マウス)はC57BL6/J純系マウスで、日本クレア株式会社から購入して使用した。8週齡以上の雌を過排卵処理して8週齡以上の雄と交配させ、多数の受精卵を採取し、M2培地に移し、37℃で5%炭酸ガスインキュベータの中で培養した。 【0033】次に、前記受精卵の雄性前核にDNA注入ピペットで2plのsmaAT2-DNA溶液をマイクロインジェクション法により注入した。smaAT2-DNA溶液を注入された受精卵をM16培地に移し、37℃で5%炭酸ガスインキュベータのなかで一夜培養した。 【0034】次に、smaAT2-DNA溶液を注入された受精卵を妊娠・出産・保育するための雌マウス(仮親マウス)及びそれと交配させる雄マウスはICR近交系マウスで、日本クレア株式会社から購入して使用した。精管結紮手術をした8週齡以上の雄マウスは、8週齡以上の雌マウスと交配させ、膣栓のあるものを仮親として使用した。仮親は、ネンブタール注射液(ダイナボット株式会社製品、ペントバルビタールナトリウム、50mg/ml)を希釈液(プロピレングリコール20ml、エタノール10ml、滅菌水70mlの混合液)にて12%に希釈した麻酔薬0.01ml/g体重を腹腔内注射し外科的手術により左右の輸卵管を体外に露出させた。 【0035】smaAT2-DNA溶液が注入された受精卵を一夜培養し、2細胞胚に発生したものを選んで、10〜15個ずづ左右の輸卵管内に挿入した後、手術部位を縫合した。仮親は3週間飼育し、出産した場合仔マウスを5週後に、尾を約1cm切断し、染色体DNAをEasy-DNA Kit(Invitrogen社製品)を用いて抽出精製した。 【0036】この尾DNAを用いて、PCR法により導入遺伝子の存在を確認した。導入遺伝子の存在を確認したマウスは、始祖トランスジェニックマウスとして7週齡に達した後、7週齡以上の野生型C57BL6/Jと自然交配して子孫のトランスジェニックマウスを得た。 【0037】即ち、本実施例により以下の結果が得られた。採卵用マウスC57BL6/Jの累計179匹から、2878個の卵を得、そのうち1182個が受精卵と確認され、smaAT2-DNA溶液を注入した。翌日858個(73%)が、2細胞胚に発生し、これを累計33匹の仮親の輸卵管に移植した。20匹の仮親が妊娠し、累計85匹(10%)の仔マウスを出産した。尾DNAのPCR法による導入遺伝子の検定により、累計7匹(8%)の始祖トランスジェニックマウス(雄1匹、雌6匹)が得られた。これらの始祖トランスジェニックマウスは、野生型C57BL6/Jと自然交配して子孫を得たが、1匹の雌以外は、6匹とも、雄雌両方に導入遺伝子を伝達した。 実施例3 トランスジェニック動物の遺伝子解析導入遺伝子の確認は、抽出精製された尾DNAを用いてPCR法により行った。鋳型DNAとして尾DNA試料1ul、2.5mMのdGTP, dATP, dTTP, dCTP混合液4 ul、5 u/ulTaKaRa Taq(宝酒造株式会社製品)0.5 ul、10xPCR Buffer(TaKaRa Taq付属の緩衝液、宝酒造株式会社製品)5 ul、上流プライマー(EaTg-F、5'-TAACGGTCAGAGGATAG-3', 17mer, 20 uM)2 ul、下流プライマー(AT2-R、5'-TTCTGCTGGTGGCAGCA-3', 17mer, 20 uM)2 ulをふくむ50 ulの反応液を93℃で1分間、50℃で1分間、72℃で1分間の3段階反応を30回行った。 【0038】PCR反応後、10 ulを分注して3%アガロース電気泳動にて検定した。図2は、この実験結果として、始祖トランスジェニックマウス及びその子孫マウスが導入DNAを染色体に含んでいることを示している。Mは、DNA分子量マーカーで上から、1000、700、500+525、400、300、200、100、及び50 bpの泳動位置を示している。鋳型DNAとして、レーン1は蒸留水、レーン2は野生型マウス、レーン3は始祖トランスジェニックマウス、レーン4は始祖トランスジェニックマウスの子孫マウス、レーン5は始祖トランスジェニックマウスの別の子孫マウス、レーン6は陽性対照として導入DNAである。350 bpのAT2受容体特異的バンドが、始祖トランスジェニックマウス及びその子孫マウスで認められた。 【0039】導入遺伝子の発現解析はRT-PCR法により行った(図3)。野生型マウス及びトランスジェニックマウスから、大動脈、左心室、腎臓、及び脳の組織を切除し、常法によりtotal RNAを抽出精製した。RNA 15 ugを使用して、上流プライマー(AT2-F3、5'-GAGTGCATGCGGGAGCTGAGT-3', 21mer, 20 uM)と下流プライマー(AT2-R2、5'-GGTGTCCATTTCTCTAAGAG-3', 20mer, 20 uMをもちいてRT-PCRを行った。その結果、野生型のマウスからはバンドが検出できなかったが、トランスジェニックマウスからは、各臓器とも720 bpのAT2受容体特異的バンドが検出された。 実施例4 アンジオテンシンII持続投与後の血圧変化アンジオテンシンII(AngII)慢性投与による覚醒時の平均血圧の変化をトランスジェニックマウスと野生型で比較した。AngII(0.7mg/day/Kg)はマウス背中に埋め込んだ浸透圧ポンプを用いて慢性投与し、マウスの血圧は尾よりtail-cuff法にて測定した(表1)。平均血圧は野生型マウスでは2週後には38mmHgの上昇を認めたが、血管平滑筋特異的AT2受容体発現(AT2-TG)マウスでは全く血圧は変化しなかった。これは、トランスジェニックマウスでは、発現されたAT2受容体が、AngIIによる昇圧反応を抑制したことを示す。 【0040】 【表1】
【0041】実施例5 アンジオテンシンIIによる摘出大動脈の収縮性摘出大動脈血管のAngIIによる血管収縮性をトランスジェニックマウスと野生型で比較した。マウスを開腹後に腹部大動脈を摘出し、ミオグラフを用いて0.8gの一定張力をかけて懸垂切片を作製した。Tyrode solution(137 mmol/L NaCl,2.7 mmol/L KCl, 1.8 mmol/LCaCl2, 1.1 mmol/L MgCl2, 0.42 mmol/L NaH2PO4,12 mmol/L NaHCO3 and 5.7 mmol/L glucose, pH 7.4)で潅流し、AngII添加後の血管張力の変化を記録した(表2)。摘出大動脈のAngIIによる収縮性はAT2受容体阻害薬(PD123319、1-[[4-(Dimethylamino)-3-methylphenyl]-5-(diphenylacetyl)-4567-tetrahydro-1H-imidazo[45-c]pyridine-6-carboxylic acid, ditriflouroacetate, monohydrate、PARKE-DAVIS社製品、Ann Arbor, Michigan)存在下では、非存在下に比較してAT2-TGマウスにおいて約24%増加していた。 【0042】一方、野生型マウスではPD123319による収縮性変化は見られなかった。これは、トランスジェニックマウスでは、発現されたAT2受容体が、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させることが示された。 【0043】 【表2】
【0044】実施例6 アンジオテンシンIIによる摘出大動脈のcGMP産生次に、AngIIの血管拡張作用が、cGMPを介しているかどうかを検証するために、摘出大動脈血管のAngIIによるcGMP産生をトランスジェニックマウスと野生型で比較した。マウスを開腹後に腹部大動脈を摘出し、エタノール中でsonicationにより均一化した大動脈抽出物を窒素乾固し、acetylation reagent (acetic anhydride:triethylamine=1:2)で処理後、抗cGMP抗体を用いてradioimmunoasssayを行い、cGMP量を定量した(表3)。摘出大動脈のcGMP産生量は野生型マウスではAng II+AT1拮抗薬CV11974(AT2受容体刺激、(±)-1-(cyclohexyloxy-carbonyloxy)ethyl-2ethoxy-1-[[2'-(1-H-tetrazol-5-yl) biphenyl -4yl]methyl]-1H-benzimidazole-7carboxylate、武田薬品工業(株)製品)により変化しなかったが、AT2-TGマウス血管では105%増加した。この増加は内皮除去、NO synthase 阻害薬(L-NAME)、bradykinin receptor antagonist (icatibant)で完全に抑制された。これは、トランスジェニックマウスでは、発現されたAT2受容体が、cGMP産生を有意に上昇させていること、また、この上昇が内皮由来血管弛緩因子であるNO、及びbradykininを介していることを示した。すなわち、降圧システムとして知られているbradykinin/NO/cGMP産生系を活性化することで、実施例5で示したように、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させ、降圧作用を発揮していることが示唆された。 【0045】 【表3】
【0046】実施例7 アンジオテンシンIIによる摘出大動脈のkininogenase活性次に、血管平滑筋でkininogenからbradykininを産生する酵素である摘出大動脈血管kininogenaseの活性をトランスジェニックマウスと野生型で比較した。マウスを開腹後に腹部大動脈を摘出し、プロテアーゼ阻害薬を含む0.1Mリン酸バッファー(0.2% bacitracin, 3mM 0-phenanthroline, 30 mM EDTA-Na2)存在下で均一化した大動脈抽出物を90%エタノール下で窒素乾固した。乾固物はアンジオテンシン変換酵素阻害薬を含むバッファーで溶解し、ウシkininogenを基質として産生されたカリクレインをradioimmunoasssayにて測定し、Kininogenase活性とした(表4)。摘出大動脈のkininogenase活性は野生型マウスではAng II+AT1拮抗薬CV11974(AT2受容体刺激)により変化しなかったが、AT2-TGマウス血管では150%増加した。この増加は内皮除去、NO synthase 阻害薬(L-NAME)、bradykinin receptor antagonist (icatibant)で完全に抑制された。 【0047】これは、トランスジェニックマウスでは、発現されたAT2受容体が、AngIIによるkininogenaseの活性化に関与することを示した。すなわち、kininogenaseがkininogenからbradykininヘの産生量を増加させることにより、降圧システムであるbradykinin/NO/cGMP産生系を介して、実施例5で示したように、AngIIによる摘出血管の血管収縮性を低下させ、降圧作用を発揮していることが示唆された。 【0048】 【表4】
【0049】 【発明の効果】上記説明したとおりの技術的操作を行うことにより、血管組織にAT2受容体が発現されたトランスジェニック動物を得ることができ、これはAT2受容体の血管生理作用及び/又は血圧調節作用の機序を研究するためのモデルとして有用であり、AT2受容体又はAT1受容体の拮抗薬及び作動薬の検定システムなどの研究分野で有用に利用できる。 【0050】 【配列表】SEQUENCE LISTING<110> Suntory Ltd.<120> Transgenic Animal Having Angiotensin II Type 2 Receptor<160> 6<210> 1<211> 20<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> GATTATGGAG ATTAGAATTC<210> 2<211> 22<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> CTGGATCCGC TTCACAGGAT TC<210> 3<211> 17<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> TAACGGTCAG AGGATAG<210> 4<211> 17<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> TTCTGCTGGT GGCAGCA<210> 5<211> 21<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> GAGTGCATGC GGGAGCTGAG T<210> 6<211> 20<212> Primer<213> Artificial Sequence<400> GGTGTCCATT TCTCTAAGAG |
| 【出願人】 |
【識別番号】000001904 【氏名又は名称】サントリー株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年2月5日(1999.2.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089705 【弁理士】 【氏名又は名称】社本 一夫 (外5名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−224939(P2000−224939A) |
| 【公開日】 |
平成12年8月15日(2000.8.15) |
| 【出願番号】 |
特願平11−29354 |
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