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【発明の名称】 釣り用リ―ルの締結部材回り止め構造
【発明者】 【氏名】坂 賢夫

【要約】 【課題】第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくする。

【解決手段】ナット回り止め構造は、スピニングリールのロータ3をピニオンギア12に締結するためにナット15を回り止めするための構造であって、リテーナ16と、ネジ部材17と、ネジ固定部18とを備えている。リテーナ16は、ナット15の外周角部に当接してナット15を回転不能に係止するためのナット係止部16cと、ナット係止部16cと間隔を隔ててロータ3の前壁3dに形成されたネジ挿通部16dとを有している。ネジ部材17は、ネジ挿通部16dに挿通されてリテーナ16を前壁3dに固定するためのタッピング可能な部材である。ネジ固定部18は、前壁3dにナット15と同芯の円弧状に形成されネジ挿通部16dに挿通されるネジ部材17がねじ込み可能なものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】少なくとも平面を有する釣り用リールの第1部材を棒状の第2部材に締結するために前記第2部材に螺合される締結部材を回り止めするための釣り用リールの締結部材回り止め構造であって、頭部と前記頭部より小径の軸部とを有し、前記締結部材の外周形状の一部に前記頭部が当接して前記締結部材を回転不能に係止するためのタッピング可能なネジ部材と、前記ネジ部材が前記締結部材を係止可能な位置で第1部材の平面に前記締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成され前記ネジ部材がねじ込み可能なネジ固定部と、を備えた釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項2】前記ネジ固定部は、前記締結部材と同芯に周方向に長く形成された円弧溝である、請求項1に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項3】前記ネジ固定部は、前記締結部材の中心を中心とする円で形成されたリング溝である、請求項1に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項4】少なくとも平面を有する釣り用リールの第1部材を棒状の第2部材に締結するために前記第2部材に螺合される締結部材を回り止めするための釣り用リールの締結部材回り止め構造であって、前記締結部材の外周形状の少なくとも一部に当接して前記締結部材を回転不能に係止するための締結部材係止部と、前記締結部材係止部と間隔を隔てて前記第1部材の平面と対向する位置に形成されたネジ挿通部とを有するリテーナと、前記ネジ挿通部に挿通されて前記リテーナを前記第1部材の前記平面に固定するためのタッピング可能なネジ部材と、前記第1部材の平面に前記締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成され前記ネジ挿通部に挿通されるネジ部材がねじ込み可能なネジ固定部と、を備えた釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項5】前記締結部材はナットである、請求項4に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項6】前記ネジ固定部は、前記締結部材と同芯に周方向に長く形成された円弧溝である、請求項4又は5に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項7】前記円弧溝は、前記締結部材の外周角部の数に関連した中心角を有する、請求項6に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項8】前記円弧溝の中心角(R)は、360度を前記締結部材の外周角部の数(A)の整数倍(N=1,2,3・・・)の数(A・N)で除算した角度(R=360/N・A)である、請求項6又は7に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項9】前記締結部材は六角ナットであり、前記締結部材係止部は、前記締結部材の外周角部を係止可能な60度毎に形成された内周角部を有する係止孔を有し、前記円弧溝の中心角は60度である、請求項8に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項10】前記ネジ固定部は、前記締結部材の中心を中心とする円で形成されたリング溝である、請求項4又は5に記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項11】前記リテーナは、一端に形成された大径部と他端に形成された小径部とを有する略雨滴状の薄板金属製の部材であり、前記締結部材係止部は前記大径部に前記締結部材の外周形状に合わせて形成された孔であり、前記ネジ挿通部は前記小径部に形成されている、請求項4から10のいずれかに記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項12】前記六角孔の締結部材係止部は、その一部が切り欠かれている、請求項4から11のいずれかに記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項13】前記釣り用リールはスピニングリールであり、前記第1部材はそのロータであり、前記第2部材はそのピニオンギアである、請求項1から12のいずれかに記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【請求項14】前記釣り用リールは両軸受リールであり、前記第1部材はハンドルであり、前記第2部材はハンドル軸である、請求項1から12のいずれかに記載の釣り用リールの締結部材回り止め構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、締結部材回り止め構造、特に、少なくとも平面を有する釣り用リールの第1部材を棒状の第2部材に締結するために第2部材に螺合される締結部材を回り止めするための釣り用リールの締結部材回り止め構造に関する。
【0002】
【従来の技術】スピニングリールや両軸受リールなどの釣り用リールでは、たとえば棒状のピニオンギアやハンドル軸(第2部材の一例)にロータやハンドル(第1部材の一例)をナット(締結部材の一例)により締結することが行われている。このナットは、ピニオンギアやハンドル軸とともに回転するため、ロータやハンドルに作用する慣性力や振動により緩みやすい。
【0003】そこでナットのゆるみを防止するために、固定用のナットに薄板金属製のリテーナが装着されている。リテーナは、その一端に大径部が他端に小径部が形成された薄板金属製の略雨滴状の部材である。この大径部には、ナットがたとえば6つの外周角部を有する六角ナットの場合、2つの六角形を30度ずらして配置したような12の内周角部を有する星形のナット係止孔が形成されており、ナット係止孔にナットの外周形状が30度毎に回転不能に係止可能である。小径部には小ネジを挿通可能なネジ挿通孔が形成されており、たとえばロータの前側面に形成されたネジ固定孔に小ネジをねじ込むことでリテーナがロータに回転不能に固定され、ナットが回り止めされる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前記従来の回り止め構造では、ナット係止部がたとえば30度毎にナットを係止するだけであるので、この間の回転位相でナットが回転しなくなると、ネジ挿通孔とネジ固定孔の位置が合わなくなる。2つの孔の位置が合わなくなると、小ネジをネジ固定孔にねじ込むことができず、ナットの回り止めを行えない。このため、ナットを工具により回転させてロータを固定する際に、作業者は、ナットの締め付けトルクと回転位相との両方に注意を払いながらナットを締結する必要がある。しかし、注意しても30度の間の回転位相でナットが回らなくなると、さらにナットをきつく回すか逆に緩めてリテーナのネジ挿通孔がネジ固定孔に合うようにする必要がある。このようなことを行うと、ナットの締め付けトルクが変動する。ナットの締め付けトルクがきつすぎると、ピニオンギアの内径が小さくなり、ピニオンギアとスプール軸とが接触してロータの回転が重くなる。また、締め付けトルクが緩すぎるとロータががたつく。このようにナットの締め付けトルクが変動すると、ピニオンギアに対するロータの固定状態やロータの回転状態に悪影響を与えるおそれがある。
【0005】本発明の課題は、第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明1に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、少なくとも平面を有する釣り用リールの第1部材を棒状の第2部材に締結するために第2部材に螺合される締結部材を回り止めするための構造であって、ネジ部材とネジ固定部とを備えている。ネジ部材は、頭部と頭部より小径の軸部とを有し、締結部材の外周形状の一部に頭部が当接して締結部材を回転不能に係止するためのタッピング可能な部材である。ネジ固定部は、ネジ部材が締結部材を係止可能な位置で第1部材の平面に締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されネジ部材がねじ込み可能なものである。
【0007】この締結部材回り止め構造では、締結部材を第2部材に螺合させて第1部材を第2部材に締結する。そして、頭部が締結部材の外周形状に接触する位置でネジ固定部にネジ部材をねじ込む。これにより締結部材が回り止めされる。ここでは、ネジ固定部が締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されているので、締結部材の回転位相がずれてもネジ部材の頭部を締結部材の外周形状に当接可能である。このため、第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【0008】発明2に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明1に記載の構造において、ネジ固定部は、締結部材と同芯に周方向に長く形成された円弧溝である。この場合には、ネジ固定部が円弧溝でよいのでその構成が簡素になる。
【0009】発明3に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明1に記載の構造において、ネジ固定部は、締結部材の中心を中心とする円で形成されたリング溝である。この場合には、ネジ固定部がリング溝であるので、締結部材の回りのどの位置にもネジ部材を固定できる。
【0010】発明4に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、少なくとも平面を有する釣り用リールの第1部材を棒状の第2部材に締結するために第2部材に螺合される締結部材を回り止めするための構造であって、リテーナと、ネジ部材と、ネジ固定部とを備えている。リテーナは、締結部材の外周形状の少なくとも一部に当接して締結部材を回転不能に係止するための締結部材係止部と、締結部材係止部と間隔を隔てて第1部材の平面と対向する位置に形成されたネジ挿通部とを有している。ネジ部材は、ネジ挿通部に挿通されてリテーナを第1部材の平面に固定するためのタッピング可能な部材である。ネジ固定部は、第1部材の平面に締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されネジ挿通部に挿通されるネジ部材がねじ込み可能なものである。
【0011】この締結部材回り止め構造では、締結部材を第2部材に螺合させて第1部材を第2部材に締結する。そして、締結部材の外周形状をリテーナの締結部材係止部で係止し、ネジ挿通部にネジ部材を挿通してネジ固定部にねじ込みリテーナを固定する。これにより、締結部材が回り止めされる。このネジ固定部は、締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されているので、締結部材の回転位相がずれてもリテーナのネジ挿通部を挿通したネジ部材をネジ固定部にねじ込み可能である。このため、第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【0012】発明5に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明4に記載の構造において、締結部材はナットである。この場合には、ナットを締め付けトルクの変動を抑えて緩みにくくすることができる。
【0013】発明6に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明4又は5に記載の構造において、ネジ固定部は、締結部材と同芯に周方向に長く形成された円弧溝である。この場合には、ネジ固定部が円弧溝でよいのでその構成が簡素になる。
【0014】発明7に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明6に記載の構造において、円弧溝は、締結部材の外周角部の数に関連した中心角を有する。この場合には、円弧溝の中心角が締結部材の回収角部の数に関連しているので、たとえば、締結部材が六角形の場合、中心角をそれに関連して30度や60度に設定される。このような中心角に設定すれば、締結部材がどのような回転位相になっても最小限の円弧溝の長さで締結部材を回り止めできる。
【0015】発明8に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明6又は7に記載の構造において、円弧溝の中心角(R)は、360度を締結部材の外周角部の数(A)の整数倍(N=1,2,3・・・)の数(A・N)で除算した角度(R=360/N・A)である。この場合には、リテーナの締結部材係止部の係止位置の数に応じて円弧溝の中心角を決定できるので、最小限の長さの円弧溝で締結部材の回転位相に関わらずリテーナで締結部材を回り止めできる。
【0016】発明9に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明8に記載の構造において、締結部材は六角ナットであり、締結部材係止部は、締結部材の外周角部を係止可能な60度毎に形成された内周角部を有する係止孔を有し、円弧溝の中心角は60度である。この場合には、リテーナを60度だけ回転させれば、締結部材がどのような回転位相でも締結部材を回り止めできるので、中心角が60度であっても、締結部材を確実に回り止めできる。
【0017】発明10に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明4又は5に記載の構造において、ネジ固定部は、締結部材の中心を中心とする円で形成されたリング溝である。この場合には、ネジ固定部がリング溝であるので、リテーナを締結部材のどの位置に装着してもネジ部材を固定できる。
【0018】発明11に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明4から10のいずれかに記載の構造において、リテーナは、一端に形成された大径部と他端に形成された小径部とを有する略雨滴状の薄板金属製の部材であり、締結部材係止部は大径部に締結部材の外周形状に合わせて形成された孔であり、ネジ挿通部は小径部に形成されている。この場合には、薄板金属製のリテーナに形成された孔で締結部材係止部を構成しているので、プレス加工等の簡単な加工で締結部材係止部を形成できる。
【0019】発明12に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明4から11のいずれかに記載の構造において、六角孔の締結部材係止部は、その一部が切り欠かれている。この場合には、締結部材係止部の六角孔の一部が切り欠かれているので、締結部材係止部の孔加工が容易になるとともに、リテーナの大きさが小さくなり狭いスペースにもリテーナを装着できる。
【0020】発明13に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明1から12のいずれかに記載の構造において、釣り用リールはスピニングリールであり、第1部材はそのロータであり、第2部材はそのピニオンギアである。この場合には、スピニングリールのロータをピニオンギアに締結するための締結部材を回転位相に関わらず確実に回り止めでき、締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【0021】発明14に係る釣り用リールの締結部材回り止め構造は、発明1から12のいずれかに記載の構造において、釣り用リールは両軸受リールであり、第1部材はハンドルであり、第2部材はハンドル軸である。両軸受リールのハンドルをハンドル軸に締結するための締結部材を回転位相に関わらず確実に回り止めでき、締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】〔実施形態1〕図1に示す本発明の一実施形態を採用したスピニングリールは、レバーブレーキ型のスピニングリールであり、ハンドル1及びブレーキレバー30が装着されたリール本体2と、リール本体2の前部に回転自在に支持されたロータ3と、ロータ3の前部に配置され釣り糸を巻き取るスプール4とを備えている。
【0023】リール本体2は、図1に示すように、釣り竿に装着される竿装着部2aと、竿装着部と一体で形成されたリールボディ2bとを有している。
【0024】竿装着部2aは、釣り竿に沿って配置される竿取付部2cと、釣り竿から離反する方向に竿取付部2cから延びる脚部2dとを有している。
【0025】リールボディ2bは、竿装着部2aの脚部2dと一体形成されている。リールボディ2bは、図2に示すように、内部に形成された機構収納空間14を有している。
【0026】リールボディ2bの内部の機構収納空間14には、ロータ3を回転させるためのロータ駆動機構5と、ロータ3を制動するためのレバーブレーキ機構6の一部と、スプール4を回転軸芯Xに沿って前後方向に移動させてスプール4に釣り糸を均一に巻き取るためのオシレーティング機構7とが設けられている。
【0027】ロータ3は合成樹脂製であり、リール本体2に回転自在に支持されている。ロータ3は、図2に示すように、円筒部3aと、円筒部3aの側方に互いに対向して設けられた第1アーム部3b及び第2アーム部3cとを有している。円筒部3aの前壁3dの中央部には貫通孔3eを有するボス部3fが形成されている。この貫通孔3eにスプール軸8及びピニオンギア12(後述)が貫通している。貫通孔3eは略矩形形状であり、この貫通孔3eにピニオンギア12が回転不能に係止される。第1アーム部3bの先端と第2アーム部3cの先端部との間には、揺動自在にベールアーム9(図1)が設けられている。
【0028】スプール4は合成樹脂製であり、ロータ3の第1アーム部3bと第2アーム部3cとの間に配置されている。スプール4はスプール軸8の先端に着脱自在かつ回転不能に装着されている。スプール4は、外周に釣り糸が巻かれる糸巻き胴部4aと、糸巻き胴部4aの後部に一体成形されたスカート部4bと、糸巻き胴部4aの前端に固定されたフランジ部4cとを有している。スプール軸8は、オシレーティング機構7により前後方向に移動可能である。
【0029】ロータ駆動機構5は、ハンドル1が固定されたハンドル軸10とともに回転するフェースギア11と、このフェースギア11に噛み合うピニオンギア12とを有している。ハンドル軸10は、リール本体2に回転自在に支持されている。ピニオンギア12は筒状に形成されており、その前部12aはロータ3の貫通孔3eを貫通してスプール4側に延びている。ピニオンギア12は、中間部及び後部をそれぞれ軸受25,26によりリールボディ2bに支持されている。
【0030】ピニオンギア12の前部12aには、図2及び図3に示すように、ロータ3を回転不能に締結するための雄ネジ部12b及び貫通孔3eに係合する面取り部12cが形成されている。雄ネジ部12bには、六角形状のナット15が螺合しており、ナット15により押圧されたロータ3のボス部3fがピニオンギア12に回転不能に装着される。ナット15には、緩み止めのためのリテーナ16が装着されている。
【0031】リテーナ16は、図3及び図4に示すように、一端に形成された大径部16aと他端に形成された小径部16bとを有する略雨滴状の薄板金属製の部材である。大径部16aには、ナット15の外周角部を回転不能に係止可能なナット係止部16cが形成されている。ナット係止部16cは、図3下側が切り欠かれた六角孔状である。したがって、ナット係止部16cは、60度毎にナット15の6つの外周角部のうち5つを係止可能である。
【0032】小径部16bには、ナット係止部16cと間隔を隔ててロータの先端面と対向する位置に形成されたネジ挿通部16dが形成されている。ネジ挿通部16dには、リテーナ16をロータの先端面に固定するためのタッピング可能な先端が細いネジ部材17が挿通されている。
【0033】ネジ部材17は、たとえばセルフタッピング機能を有する先細りの丸頭ネジであり、ロータ3の前壁3dにロータ3と同芯に円弧状に形成されたネジ固定部18にねじ込まれている。ネジ固定部18は、図4に示すように、ネジ部材17の下孔径より狭い幅を有し、かつ中心角Rが、360度をナット15の外周角部の数(A)の整数倍(N=1,2,3・・・)の数(A・N)で除算した角度(R=360/N・A)である。ここでは、ナット15が六角形状でかつナット係止部16cが六角孔形状であるため、数(A)が6であり、N=1として中心角(R)=60度の円弧状の溝18aでネジ固定部18を構成している。このような中心角(R)を有するネジ固定部18を設けることで、ナット15の回転位相がどのような位相になってもネジ部材17をネジ固定部18にねじ込み可能である。
【0034】なお、このナット係止部16cが、30度回転位相をずらせた2つの6角形からなり12の角部を有する星形の場合には、30度毎にナット15の角部を係止可能である。したがって、N=2として中心角(R)を30度にすることができる。
【0035】このような円弧溝18aで構成されたネジ固定部18にネジ部材17をねじ込むことによりナット15がどのような回転位相に位置しても、ネジ部材17をネジ固定部18にねじ込むことができ、リテーナ16を確実に固定できる。このため、ナット15がどのような回転位相であってもナット15を回り止めでき、ナット15の締め付けトルクの変動を抑えてナット15を緩みにくくすることができる。
【0036】レバーブレーキ機構6は、ロータ3の円筒部3aの内部に配置された制動部20と、制動部20を制動状態に保持するための制動保持部21とを有している。
【0037】制動部20は、図2に示すように、リールボディ2bに揺動自在に支持されたブレーキレバー30と、ブレーキレバー30により制動される制動部本体31と、制動部本体31をロータ3の糸繰り出し方向の回転にのみ連動して回転させるワンウェイクラッチ32とを有している。
【0038】ブレーキレバー30は、図1に示すように、リールボディ2bと竿装着部2aとの境界部分においてリールボディ2bに揺動軸33により揺動自在に支持されており、かつコイルばね34により図1反時計回りに付勢されている。ブレーキレバー30は、揺動軸33から湾曲して竿取付部2cに沿って延びる操作レバー部30aと、揺動軸33から湾曲して斜め下方に延びる制動作用部30bと、操作レバー部30aの途中から前方に延びるカバー部30cとを有している。カバー部30cは、合成樹脂製であり、その先端は、ベールアーム9より先端側に延びている。ブレーキレバー30の操作レバー部30aと制動作用部30bとはそれぞれ金属製である。制動作用部30bの先端には、圧接部30dが着脱自在に装着されている。圧接部30dは合成樹脂製であり、ブレーキレバー30の揺動により制動部本体31を押圧する。
【0039】制動部本体31は、図2に示すように、ロータ3の内周側にロータ3と同芯に配置された制動円筒40と、制動円筒40を傾動自在かつ回転不能に支持する回転円筒41と、リールボディ2bに設けられたドラム部42とを有している。
【0040】制動円筒40は薄肉の有底円筒形状の金属製円筒であり、その周部の先端の摺接部40aがドラム部42とブレーキレバー30の圧接部30dとの間に配置される。
【0041】回転円筒41は、大径部41aと小径部41bとを有する段付きの金属製円筒部材であり、大径部41aに制動円筒40の内周部に噛み合う外歯部41cが形成されている。この外歯部41cにワンウェイクラッチ32及び制動円筒40が回転不能に係止されている。大径部41aの内側には、ピニオンギア12との間に軸受43が配置されている。小径部の外側にはリールボディ2bとの間に軸受44が配置されている。このため、回転円筒41は、前部が軸受43によりピニオンギア12に回転自在に支持され、後部が軸受44によりリールボディ2bに回転自在に支持されている。また、回転円筒41は、ワンウェイクラッチ32によりロータ3の糸繰り出し方向の回転には一体で回転し、巻き取り時にはロータ3の回転力が作用しないようにロータ3に連結されている。
【0042】制動円筒40とワンウェイクラッチ32との間には傾動した制動円筒40を元の姿勢に戻すための円錐コイルばね45が配置されている。また、制動円筒40と軸受44との間には制動円筒40を位置決めするためのフランジ46が嵌め込まれている。
【0043】ドラム部42は制動円筒40を外側から覆うようにリールボディ2bと一体で形成された円筒形状の部材である。ドラム部42のブレーキレバー30の圧接部30dに対向する位置には、ブレーキライナー42aが装着されている。
【0044】ワンウェイクラッチ32は外輪遊転型のものであり、ロータ3の円筒部3aの内周面に回転不能に外輪が連結され、内輪が回転円筒41に回転不能に連結されている。
【0045】制動保持部21は、保持位置と解除位置とに揺動自在なレバー部51と、レバー部51の揺動により進退する操作軸52と、レバー部51を2つの位置で保持するためのトグルばね機構53とを有している。操作軸52は押圧ばね54により前進側に付勢されており、リールボディ2bとの係合によりレバー51が保持位置に揺動すると前進し解除位置に揺動すると後退する。
【0046】〔ロータの組み付け手順〕ロータ3をピニオンギア12に組み込む際には、制動部20をリール本体2に予め装着する。制動部20がリール本体に装着された状態で、ロータ3の円筒部3aをピニオンギア12の前部12aに装着する。すると、ピニオンギア12の前部12aに形成された面取り部12cにより、ロータ3はピニオンギア12に回転不能に装着される。続いて、ナット15をピニオンギア12の雄ネジ部12bにねじ込み、ロータ3をピニオンギア12に締結する。
【0047】ナット15を所定のトルクで完全に締め込むと、リテーナをナット15に装着する。このとき、リテーナのネジ挿通部16dがネジ固定部18に配置されるように装着位置を調整する。このネジ固定部18は、60度の中心角を有する円弧溝18aで構成されているので、ナット15がどのような回転位相で止まっても、装着位置を調整することで必ずネジ固定部18にネジ挿通部16dが位置するようになる。
【0048】ネジ固定部18にネジ挿通部16dを位置させると、ネジ部材17をネジ挿通部16dに挿通し、ドライバでネジ部材17を締め込む。このネジ部材17は、セルフタッピング機能を有しているので、ドライバでネジ部材17を押さえつけながら回転させると、ネジ部材17がネジ固定部18に食い込み、タッピングしながらネジ固定部18にねじ込まれていく。この結果、リテーナ16が固定され、ナット15が回り止めされる。
【0049】ここでは、円弧溝18aで構成されたネジ固定部18にネジ部材17をねじ込むことによりナット15がどのような回転位相に位置しても、ネジ部材17をネジ固定部18にねじ込むことができ、リテーナ16を確実に固定できる。このため、ナット15がどのような回転位相であってもナット15を回り止めでき、ナット15の締め付けトルクの変動を抑えてナット15を緩みにくくすることができる。
【0050】〔リールの操作及び動作〕キャスティング時には、ベールアーム9を糸開放姿勢側に倒し釣り竿を振り出すことにより、スプール4の外周から釣り糸が繰り出される。釣り糸巻き上げ時には、ハンドル1を糸巻き取り方向に回転させると、ベールアーム9が図示しない戻し機構により糸巻き取り姿勢に戻る。ハンドルの回転力は、ハンドル軸10、フェースギア11を介してピニオンギア12に伝達される。ピニオンギア12に伝達された回転力は、ピニオンギアの前部12aを介してロータ3に伝達される。このときロータ3は、糸巻き取り方向に回転するので、この回転力は回転円筒41には伝達されない。ピニオンギア12が回転すると図示しない中間ギアによりその回転がオシレーティング機構7に伝達され、スプール軸8が前後方向に往復移動する。
【0051】ロータ3を逆転させて魚とやりとりするときには、レバー部51を解除位置に揺動させる。これにより、操作軸52が後退する。そしてブレーキレバー30がコイルばね34により制動解除位置まで揺動する。この状態でブレーキレバー30を操作し魚とのやりとりを行う。釣り糸が魚により引かれてロータ3が糸繰り出し方向に逆転すると、前述したようにその回転力がワンウェイクラッチ32を介して回転円筒41に伝達され、さらに制動円筒40に伝達される。この結果、制動円筒40がロータ3と一体で回転する。
【0052】そして、釣り竿を持つ手の中指と薬指との間で脚部2dを挟んでをブレーキレバー30の操作レバー部30aを釣り竿を握る握持動作によって中指で握ってブレーキレバー30を図1の時計方向に揺動させると、ブレーキレバー30の圧接部30dが制動円筒40の摺接部40aを径方向外方に押圧し、制動円筒40を図2に二点鎖線で示す位置に傾け、摺接部40aの外面がブレーキライナー42bに圧接する。この結果、逆転するロータ3に制動力が作用する。この制動力は、ブレーキレバー30に加える力を加減することで調整でき、ロータ3の逆転量を任意に調整できる。この調整時に、中指で操作レバー部30aを細かく操作できるので、制動力を微妙に調整することができる。
【0053】このような巻取時や糸繰り出し時にロータが回転すると、振動や回転によりナット15が緩みやすい。また、ナット15の締め付けトルクが変動すると、ロータの回転が重くなったり、がたが生じたりしやすい。しかし、本実施形態では、所定のトルクでナット15を締め付けたときにナット15がどのような回転位相にあっても、ナット15を確実に回り止めできる。このため、ナット15の締め付けトルクが変動しにくくすることができ、ロータ3の回転が軽くなり、かつロータ3のがたつきが生じにくくなる。
【0054】釣り場を移動するときやリールを収納するときには、レバー部51を保持位置側に揺動させる。この結果、操作軸52が前進し、ブレーキレバー30が制動位置に揺動する。ブレーキレバー30が制動位置になると、制動時と同様にして制動円筒40が制動される。この結果、釣り糸が仕掛けの自重等により繰り出されることはない。
【0055】〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、ネジ固定部18を円弧溝18aで構成したが、図5に示すように、環状溝18bで構成してもよい。この環状溝18bの溝幅は前記実施形態と同じである。この場合には、リテーナ16をどのような位置でナット15に装着してもネジ挿通部16dがネジ固定部18に常に位置するので、リテーナ16の装着がさらに容易になる。また、ナット係止部16cの構造も簡素なものでよい。
【0056】(b) 前記実施形態では、リテーナ16によりナット15を回り止めしたが、ネジ部材17によりナット15を直接回り止めしてもよい。図6において、ネジ部材17は、たとえば丸頭の頭部と頭部から延びる先細りの軸部とを有している。この頭部がナット15に接触してナット15を回り止めしている。ここで、もネジ固定部18は、中心角(R)が60度の円弧溝18aで構成されている。この溝幅は前述した実施例と同じである。このような構成でも、ナット15の回転位相に合わせてネジ部材17のネジ込み位置を変更できるので、ナット15を所定のトルクで締め込んでも、ナット15を確実に回り止めできる。
【0057】(c) 前記実施形態では、回り止め構造をロータ締結用のナット15に用いたが、両軸受リールのハンドル締結用のナットなどの他のナットの回り止めにも適用できる。
【0058】図7及び図8において、本発明の他の実施形態を採用した両軸受リールは、リール本体101と、リール本体101に回転自在に装着されたハンドル102と、リール本体101の内部に設けられハンドル102の回転により回転する糸巻用のスプール103とを備えている。
【0059】リール本体101は、左右1対の側板110,111とを有するリールフレーム112と、リールフレームの両側方を覆う1対の側カバー113,114とを有している。側カバー114には、ハンドル102のハンドル軸115が回転自在に支持されている。
【0060】ハンドル軸115の先端には、ハンドル102を構成するクランクアーム120が回転不能に装着されている。クランクアーム120の先端には、ハンドル把手121が回転自在に装着されている。ハンドル軸115の先端には、雄ネジ部と平行な面取り部(ともに図示せず)が形成されている。
【0061】図8に示すように、雄ネジ部には、クランクアーム120をハンドル軸115に固定するための六角形状の袋ナット125が螺合している。袋ナット125には、袋ナット125を回り止めするためのリテーナ126が装着されている。リテーナ126は、前記実施形態と同様な構造である。リテーナ126は、タッピング可能なネジ部材127によりクランクアーム120に固定されている。ネジ部材127は、クランクアーム120に円弧状に形成されたネジ固定部128にねじ込まれている。ネジ固定部128の円弧の中心角Rは、たとえば60度である。このような構成でも前記実施形態と同様な効果が得られる。
【0062】このようにナットで平面を有する第1部材を棒状の第2部材に装着する全ての釣り用リールに本発明は適用できる。
【0063】(d) 前記実施形態では、6角形状のナットを回り止めしているが、本発明の回り止め構造が適用されるナットの形状はこれに限定されるものではなく、六角穴付きナットや平行な面取り部を有するナットなどの全ての形状のナットを回り止めする構造に本発明を適用できる。
【0064】(e) 前記実施形態では締結部材としてナットを例示したが、締結部材はナットに限定されず六角ボルト等の他のネジを用いたものでもよい。
【0065】
【発明の効果】本発明によれば、ネジ固定部が締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されているので、締結部材の回転位相がずれてもネジ部材の頭部を締結部材の外周形状に当接可能である。このため、第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【0066】また、本発明の別の発明によれば、このネジ固定部は、締結部材の径方向と交差する方向に沿って形成されているので、締結部材の回転位相がずれても締結部材に装着されたリテーナのネジ挿通部を挿通したネジ部材をネジ固定部にねじ込み可能である。このため、第1部材を第2部材に締結するための締結部材の締め付けトルクの変動を抑えて締結部材を緩みにくくすることができる。
【出願人】 【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
【出願日】 平成11年1月11日(1999.1.11)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男 (外1名)
【公開番号】 特開2000−201594(P2000−201594A)
【公開日】 平成12年7月25日(2000.7.25)
【出願番号】 特願平11−3822