| 【発明の名称】 |
タマネギとニンニク又はニラの雑種植物体及びそれらの育種方法、増殖方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】大住 千栄子
【氏名】林 隆久
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| 【要約】 |
【課題】タマネギとニンニク及びタマネギとニラの交配に基づく雑種植物体を開発することにより、両者の有用な形質を相互に活用しうる手段を提供する。
【解決手段】上記課題は、タマネギのフレーバー前駆体とニンニクのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が16本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニンニク(アリウム・サティバム)雑種植物体と、タマネギのフレーバー前駆体とニラのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が24本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニラ(アリウム・チュベロサム)雑種植物体によって解決される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 タマネギのフレーバー前駆体とニンニクのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が16本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニンニク(アリウム・サティバム)雑種植物体【請求項2】 タマネギのフレーバー前駆体としてプロペニルシステインスルフォキサイドを葉1g当り0.1〜300mg、ニンニクのフレーバー前駆体としてアリルシステインスルフォキサイドを葉1g当り0.1〜300mg含有する請求項1記載の雑種植物体【請求項3】 雑種細胞FERM BP−3164【請求項4】 タマネギのフレーバー前駆体とニラのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が24本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニラ(アリウム・チュベロサム)雑種植物体【請求項5】 タマネギとニンニクを交配して得られる受精細胞を含む胚珠を摘出してオーキシンを含有する培地で培養し、成育した幼植物体を移植してさらに成育させて得られるタマネギのフレーバー前駆体とニンニクのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が16本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニンニク(アリウム・サティバム)雑種植物体【請求項6】 タマネギとニラを交配して得られる受精細胞を含む胚珠を摘出してオーキシンを含有する培地で培養し、成育した幼植物体を移植してさらに成育させて得られるタマネギのフレーバー前駆体とニラのフレーバー前駆体を含有し、染色体数が24本であるタマネギ(アリウム・セパ)×ニラ(アリウム・チュベロサム)雑種植物体 |
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はタマネギとニンニク、又はタマネギとニラを交配せしめて得られる雑種細胞、雑種植物体及びそれらの育種方法、増殖方法に関する。 【0002】 【従来の技術】植物の改良は主に交配により種子を得、その種子より生育した植物体を選抜することにより行われてきた。しかし、このような性的交雑法は栄養繁殖性の植物、例えばニンニクでは用いることが出来なかった。従って、このような植物は栄養体の選抜を繰り返す以外に改良の方法はなく、長い年月を必要とした。また、従来の性的交雑法による育種はごく近縁の植物のみに限られており、それでも種子が得られない場合が多い。 【0003】近年、種子繁殖性のニンニクが見い出されているので種子稔性系統での交配は可能となったが、それによって得られた新品種の報告はまだない。 【0004】一方、従来の育種法の限界であった「種の壁」を乗り越えるための手段として細胞融合技術が開発された。この方法は種子稔性のない植物の交雑にも利用できるが、植物体の再生過程において、染色体数の変化など遺伝的な変異が生じることが知られている。また、タマネギ、ニンニク及びニラのようにアリウム属植物は一般に不定胚形成をしにくいので、融合細胞が再生しにくい等の問題がある。更に、融合細胞の安定性についても幼植物体に成長する過程でどちらか一方の染色体の欠落がおきやすいと報告されている。 【0005】タマネギとニラの雑種植物体についても同様であり交配法、融合法いずれでも両者を掛け合わせた例は報告されていない。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】タマネギとニンニク及びタマネギとニラの交配に基づく雑種植物体を開発することにより、両者の有用な形質を相互に活用しうる手段を提供することを目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者はタマネギとニンニクの雑種植物体及びタマネギとニラの雑種植物体を開発するべく種々検討の結果、両者を交配させて得た交配胚珠(以下、胚珠という)を親の植物体から分離した後、植物培養用の培地で培養することによって発芽能及び分裂増殖能を有する雑種胚の取得に成功し、この雑種胚を栽培することによって両者の性質を有する雑種植物体が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。 【0008】すなわち、本発明は、タマネギとニンニク又はタマネギとニラを交配せしめて得られる発芽能及び分裂増殖能を有する雑種胚、該雑種胚より誘導した雑種細胞及び雑種二次胚、並びにこれらを栽培して得られた雑種植物体に関するものであり、更に雑種胚、雑種細胞、雑種二次胚又は雑種植物体の育種方法及び増殖方法に関するものである。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明の雑種植物体の形成に用いられるタマネギ(Allium cepa)は、花粉又は卵細胞に稔性があるものであればなんでもよい。例えば、一般に栽培されているタマネギでよく、品種でいえば札幌黄、泉州黄、湘南レッドなどを挙げることができる。 【0010】ニンニク(Allium sativum)及びニラ(Allium tuberosum)についても花粉又は雌ずいに稔性があるものであれば如何なるものであっても利用できる。 【0011】次に本発明でいう雑種細胞、雑種胚、雑種二次胚及び雑種植物体は以下に定義される。すなわち、雑種細胞とは、花粉より精核を受精した1細胞から植物体を構成する細胞までを包含する。更には、発生の各段階にある雑種植物体組織より誘導できるカルスも含むものである。これら雑種細胞の核は、両親の核の染色体を少なくとも1つずつ持っている。 【0012】また、雑種胚とは、雑種細胞より発生したものをさし、発芽を正常に行い得る能力及び分裂増殖能力を持ち、雑種植物体に成育できるものが本発明の対象となる。色は白色から緑色を呈し、大きさは通常1〜5mmである。更に、雑種二次胚とは雑種胚と同じ性質を有するが、雑種胚を経由して取得されたものをいう。また、雑種植物体とは雑種細胞、雑種胚及び雑種二次胚のいずれかに由来した成育体若しくは幼植物体をいう。 【0013】以下に、両親の交配から雑種植物体に至るまでの本発明の育種方法について具体的に述べる。 【0014】タマネギとニンニク、又はタマネギとニラの交配に当たってはいずれの雌ずいを用いてもよい。交配に用いる雌ずいは培地で培養してもよいが、成育を確実にするために親植物につけたままで成育させるのがよい。その際、母親植物の花粉によって受精しないよう細心の注意を払う必要があり、開花直後に葯を全部切除するとか粘性物あるいはプラスチックを葯に塗布するなどして花粉が発生しないようにしておく。また、雄性不稔系統を用いるのも一つの方法である。通常、アリウム属植物の花は雄性先熟であり、開花前に除雄を施せば、自家受粉の可能性はなく、発生した胚は雑種である確率は非常に高いと考えられる。交配は常法に従って行えばよく、例えば花粉を筆等を用いて雌ずいに付着させればよい。花粉は柱頭上で発芽し、花粉管を伸長させ胚のうに達し受精する。受精した細胞は胚発生能及び分化増殖能を有する雑種細胞である。 【0015】交配後、受精細胞を含む胚珠を植物培養用の培地にて培養する。培地への置床は、交配後から1ヵ月以内に行えばよい。組織の摘出に先立って花の殺菌処理を施すことが好ましい。殺菌処理は常法を用いればよく、例えば70%エタノール水溶液への浸漬、次亜塩素酸水溶液への浸漬等によって行えばよい。 【0016】植物培養用の培地は、植物培養に用いられているものであればなんでもよい。例えば、ムラシゲ&スクーグの培地、リンズマイヤー&スクーグの培地、ホワイトの培地、ガーンボルグの培地、ヘラーの培地等又は上記培地の無機イオン濃度を適当量に改変した培地等の無機塩培地に、炭素源としてシュークローズ、グルコース、フラクトース等が5〜100g/l添加された培地が使用される。上記培地に更にビタミン、イノシトール、場合によっては植物ホルモン、カザミノ酸、アミノ酸類を適宜加え、寒天あるいはジェランガム等で固めた固体培地を用いるとよい。例えば、イノシトール1〜1000mg/l、ニコチン酸0.001〜5mg/l、チアミン塩酸塩0.01〜1mg/l、ピリドキサール塩酸0.01〜1mg/l、カザミノ酸1〜1000mmg/l、グリシン0.01〜10mg/l、アルギニン1〜1000mg/l、グルタミン1〜1000mg/l及びアラニン1〜1000mg/lを必要に応じて選択して添加し、更に植物ホルモンとしてオーキシンとサイトカイニンを添加した培地を用いると良好な結果が得られる。培養温度は20〜30℃、通常は室温で培養し、光は照射した方がよりよい結果が得られる。 【0017】数週間のち、前述の如く培養した胚珠から雑種胚、具体的には胚又は胚様体を取り出し、胚培養培地にて培養する。当該培地は、上述の胚珠培養の培地と同一組成でもよいが、更に炭素源である糖の濃度を下げた方がよりよい結果が得られる。その他の培養条件は胚珠培養時と同様でよい。胚又は胚様体は上記培養条件下で発芽し、葉及び根を展開した幼植物体に成長する。該幼植物体は、馴化したのち鉢上げして更に雑種植物の成育体を得ることができる。 【0018】一方、上述の雑種胚を胚珠培養培地又は胚培養培地、好ましくは胚培養培地中にオーキシンとサイトカイニンが各々0.01〜2.0mg/l添加されている培地にて培養すると、雑種細胞が集塊したカルス(雑種細胞カルス)が得られる。該カルスは常法の継代培養が可能であり、不定胚形成、又は不定芽形成に続いて不定根形成をさせることにより雑種植物体に再生できる。 【0019】また、雑種二次胚は雑種胚より誘導することができる。例えば、上述の胚培養培地中に植物ホルモンとしてナフタレン酢酸、ベンジルアデニンが各0.5mg/l含まれる培地にて、光照射下で培養したときに誘導できる。なお、ナフタレン酢酸は2,4−Dやインドール酪酸に、ベンジルアデニンはカイネチンなどに変えてもよい。こうして誘導された雑種二次胚は、上述の雑種胚の場合と同様の培養条件で発芽し、葉及び根を展開した幼植物体に成長し、これを馴化後、鉢上げして雑種植物の成育体を得ることができる。 【0020】雑種細胞を単離するには、上述の雑種胚、雑種二次胚及び雑種細胞カルスを例えばセルラーゼ、ペクトリアーゼ等で処理することによって取得できる。あるいは、アミノ酸培地にて雑種細胞カルスを培養し単離してもよい。一例として、タマネギとニンニクの雑種胚より誘導した雑種細胞カルスとしてFERM BP−3164がある。 【0021】次に上記方法により得られた雑種植物体の増殖方法について詳しく述べる。本雑種植物体の増殖は、栄養繁殖によれば完全にその形質を維持することができる。具体的には、雑種植物体のりん片又は珠芽を用いて増殖させることが可能である。使用する土壌は、酸性の弱い(pH5.5以上)畑が適しており、密植でも粗植でもよい。9月の中旬に作付予定地に堆肥、石炭、熔りんを全面散布、耕起、整地し、元肥を施し作畦する。畦は一条、または二条抱き畦、あるいは広畦として三条から四条の多条植えてもよい。畑地では平畦、水田の場合は高畦がよい。10月上旬〜11月中旬にかけて植え付けを行う。病害対策としては、ベンレート水和剤1000倍液に30分間浸漬する消毒法がよい。根ダニの防除対策としては、スミチオン乳剤3000倍液に30分間浸漬するのがよい。2月中旬から4月上旬に第1回の追肥を行う。更に2月下旬〜4月下旬に第2回の追肥を行う。こうすれば5月〜7月にかけて雑種植物体のりん片が収穫できる。また、とう立ちしたものより先端部に発生する珠芽を採取することができる。 【0022】更に、親植物の組合せによっては雑種植物体は稔性を有し、この場合は種子を用いて増殖させることができる。アリウム属植物の花は、雄性先熟で自家授粉しにくいので交配袋をかけ、中にハエを放つなどして自家授粉させる。採種の方法は、常法を用いればよい。採種した種子はタマネギ、ニラ、ニンニクの種子と同様に発芽させることができるが、1ppm〜100ppmジベレリン処理をすると発芽率が高くなる。種子より発芽した苗は、リン片や珠芽と同様に栽培できる。 【0023】また、該雑種植物体の増殖法として、組織培養技術を用いたクローン増殖方法も利用できる。りん片内の生長点、茎葉、根の生長点を無菌的に摘出し、組織培養用基本培地にて培養する。例えば、ムラシゲ&スクーグの培地、リンズマイヤー&スクーグの培地、ホワイトの培地、ガーンボルグの培地、ヘラーの培地等、あるいは上記培地の無機イオン濃度を適当量に改変した培地に、炭素源としてシュークローズ、グルコース、フラクトース等が5〜100g/l添加された培地が使用できる。該培地に更に、イノシトール1〜1000mg/l、ニコチン酸0.001〜5mg/l、チアミン塩酸塩0.01〜1mg/l、ピリドキサール塩酸0.01〜1mg/l及びグリシン0.01〜10mg/lを必要に応じて選択して添加し、植物生長調節剤として、オーキシンとサイトカイニンを添加した培地を用いると良好な結果が得られる。培養温度は20〜30℃、通常は室温で培養し、光は照射した方がよい結果が得られる。多芽体あるいは茎葉を形成させ、次に発根培地に移植し、幼植物体とする。幼植物体は馴化し、鉢上げする。鉢上げした植物は、2週間〜1ヵ月ほど温室で栽培し、圃場に植え付ける。この時期は、9月下旬〜12月頃がよい。以下、りん片、珠芽と同様に生育させることができる。 【0024】以上の方法で得られた全ての雑種植物体は、両親の遺伝的形質を少なくとも一つずつは活性のある形で持ちうるという特徴を有する。雑種植物体の雑種性の確認は葉、茎、花などの形態観察、染色体の解析、アイソザイム解析などにより行うことができる。細胞質における遺伝形質については母親に由来する。 【0025】遺伝的形質の多くは、胚発生以降の発生の段階で現れる。遺伝的形質としては、具体的には成分、草型、耐寒性、耐病性、稔性などに関するものがある。例えば、タマネギとニンニクの雑種植物体はその葉1gあたり、タマネギの成分であるプロペニルシステインスルフォキサイドを0.1〜300mg、ニンニクの成分であるアリイン(アリルシステインスルフォキサイド)を0.1〜300mg、両者の成分であるメチルシステインスルフォキサイドを0.05〜300mg含んでいる。更に、タマネギとニンニクの雑種植物体は両親の遺伝形質に依存して、例えば草型に関してはタマネギの性質、成分、耐寒性、耐病性に関してはニンニクの性質を有するといった形で発現させることもできる。また、タマネギとニラの雑種植物体の場合は、タマネギの遺伝的形質とニラの単為発生の形質を有するといった形で発現させることもできる。このように雑種植物体の遺伝形質は、両親の遺伝形質に依存するものであり、両親が特定された品種であれば、その雑種植物体が有する遺伝形質は基本的には特定できる。また、雑種植物体を増殖させて得られる子孫は親の遺伝形質を安定して継承しており、形質の脱落は見られない。 【0026】なお、雑種植物体の染色体の確認はrDNA解析により、細胞質遺伝情報に関しては制限酵素による葉緑体ないしミトコンドリアDNAの解析などにより確認することができる。この方法については、成書に詳しい(Gleba and Sytnik 1984 Protoplast Fusion,Edited byR.Shoeman,Springer−Verlag.,Uchimiyaet al 1983 Theor.Appl.Genet.,64,117〜118)。 【0027】本発明の特徴は、栄養体に対して半数体である花粉と卵細胞を用い、交配により雑種胚を形成させ、その雑種胚はそのままでは死滅に至るが、人工的に培養することによってレスキューし雑種植物体に育成する点にある。アリウム属植物のカルスは不定胚分化をしないので、細胞融合した細胞は不定芽形成に続き不定根形成をさせねばならないが胚を直接的に得ることのできる本発明の方法では胚の発芽を助けるだけでよい。その結果、分裂可能な受精卵細胞を得た時点で、安定に細胞分裂をし胚発生できる細胞を得たことになり、発生した雑種胚の遺伝的な安定性及び植物体への発生の容易さは、細胞融合等で得られる雑種細胞とは比べものにならない。更に、細胞融合に比べ短期間で、具体的には交配後2ヵ月で雑種植物体を鉢上げすることが出来る。このような方法で育種した雑種植物体は、育種母本としても利用できる。コルヒチン処理を施して倍数体化してもよい。稔性を有する雑種植物体は戻し交配、他のアリウム属植物との交配などにも使える。 【0028】もう一つの特徴として、ニンニクの場合にはニンニクの稔性花粉あるいは稔性卵細胞を用いる点である。ニンニクが種子稔性株である必要はなく、花粉あるいは卵細胞が稔性を持っていればよい。本発明では、タマネギを花粉親にすることもできるしニンニクを選択してもよい。卵細胞(胚珠)は、タマネギに対してはニンニクを、ニンニクに対してはタマネギを選択すればよい。 【0029】 【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれのみに限定されるものではない。 【0030】実施例1 タマネギとニンニクの交配札幌黄K1品種のタマネギを開花直後に葯をピンセットにて丁寧に取り除いた。その後、該花は他の花粉の混入を避ける為に交配袋を掛けて隔離した。三日後、成熟した柱頭にニンニクの花粉を交配させ、交配三日後に花を採取した。この花を75%エタノール水溶液にて1分間滅菌し、さらに10%アンチホルミンに1分間浸漬したのち滅菌水で2回洗浄した。顕微鏡下で胚珠を無菌的に摘出し、培地に置床し25℃、16時間光照射下にて培養した。用いた培地はガーンボルグB−5の無機塩培地にシュークローズ80g/l、イノシトール100mg/l、カザミノ酸100mg/l、インドール酢酸0.01mg/lを加え寒天で固めた固体培地である。こうして、該胚珠より発芽した雑種胚は、シュークローズを20g/lに変更した以外は上記と同じ培地に移植し同様に培養した。雑種胚は第2葉を展開し根が達成したところで馴化し、ポットに移植して雑種植物体の成育体に生育させた。 【0031】生育状態を第1図〜第4図の写真に示す。第1図の写真は胚珠から雑種胚が出てきている時点のものである。雑種胚の発達の程度はシリンダー状胚である。第2図の写真は雑種胚を胚生育培地に移植し、根部が少し延びた時点のものである。第3図の写真はさらに生育して葉、根が展開した時点のものである。第4図の写真はバーミキュライトの入った試験管にて馴化している時点のものであり、第3葉まで展開している。 【0032】次に、この成育した雑種植物体の雑種性を調べた。雑種植物体の葉の形態はタマネギ型とニンニク型の中間を示し、葉の付き方はニンニク型を示した。すなわちタマネギの場合、葉は円筒型で中空で、葉のつき方は茎葉の基部より分岐しており葉は互生していない。一方、ニンニクの場合、葉は扁平型で中央にて折りたたまれていて、葉のつき方は茎葉の基部より上部にて分岐しており葉は互生している。これに対し、雑種植物体の葉は扁平型であるが中空の形態で、また、葉のつき方は茎葉の基部より上部にて分岐し、葉は互生していた。 【0033】更に、ニンニクの茎葉の基部は紫色に、またタマネギのそれは黄色に着色しているが、雑種植物体の茎葉の基部は紫色に着色し、ニンニク型を示した。 【0034】また、該雑種植物体のフレーバー前駆体は成分分析の結果、タマネギとニンニクの両フレーバー前駆体を有していた。 【0035】フレーバー前駆体の成分分析は以下のように行った。該雑種植物体及びその親であるタマネギ札幌黄K1品種とニンニクの葉をそれぞれ新鮮重約20mg採取し、これをメタノール:クロロホルム:水=12:5:3の混合溶液0.5mlにて磨砕し、アリイナーゼによる分解を抑えつつ、水層画分にフレーバー前駆体であるアミノ酸を抽出した。この水層画分を高速液体クロマトグラフィーで分析した。クロマトグラフィーの条件はウォーターズ社のアミノ酸分析用カラム(No.80002 強陽イオン交換カラム)を用いて通常の分析条件で各物質を分解し、これをオルトフタルアルデヒドと反応させて日立製作所製の蛍光分光光度計F1000で分析した。タマネギ、ニンニクの特徴的なフレーバー前駆体であり、うまみ成分でもあるプロペニルシステインスルフォキサイド、アリイン及びメチルシステインスルフォキサイドの各含量分析値を第1表に示した。この結果から該雑種植物体はタマネギとニンニクのそれぞれに特徴的であるプロペニルシステインスルフォキサイドとアリインを合わせ持つことが示され、雑種性が証明された。 【0036】 【表1】
※MCSO =メチルシステインスルフォキサイド※ProCSO=プロペニルシステインスルフォキサイド【0037】更に、該雑種植物体の染色体数を観察した結果、16本であることが確認された。染色体の観察は以下のように行った。すなわち、該雑種植物体の根端(根の先端)5〜10mmの部分を剃刀で切り取り、コルヒチン0.05%液にて前処理をした。前処理した組織をよく洗浄後、酢酸アルコール混液(氷酢酸:エチルアルコール=1:3)にて、10℃で固定した。固定後、室温の70、30、15%エチルアルコールの各水溶液に1回、5分間ずつ浸漬し、蒸留水で2回浸漬した。水洗後、室温の1N塩酸水溶液で3分間浸漬したのち、あらかじめ60℃にあたためた1N塩酸水溶液で8分間処理した。直ちに、室温に戻したのち蒸留水にて5分間ずつ3回水洗した。水を切り、シッフの試薬(染色液)に1時間室温で浸漬した。直ちに、亜硫酸液(10%重亜硫酸ナトリウム5ml、1N塩酸水溶液5mlを蒸留水100mlに混合した溶液)に浸漬し未反応の染色液を洗い流した。供試試料の先端の濃染された部分のみをスライドグラスの上にのせ摘出し、45%酢酸水溶液を1〜2滴落とし、カバーグラスをのせた。押しつぶし法により、細胞を薄い層にひろげた後に光学顕微鏡(×1000倍)で観察し、染色体数を調べた。 【0038】続いて、該雑種植物体のエステラーゼのアイソザイム分析を行った。すなわち、雑種植物体、タマネギ、ニンニクの葉各0.2gをそれぞれ0.05Mリン酸緩衝液(pH6.7)1mlにて磨砕し、この磨砕液を遠心分離し、上清を53%T、5%Cの各アクリルアミドゲル(pI 3−10 BIOLYTE)にのせ、等電点電気泳動した。エステラーゼの活性染色は0.1% Fast BlueRR Salt、0.03%α−Naphthyl Acetateにて染色した。その結果、タマネギで5本ニンニクで4本のそれぞれ移動度の異なるバンドが検出され、雑種植物体ではそれら9本のバンドが検出された。 【0039】実施例2 タマネギとニラの交配札幌黄K1品種のタマネギを開花直後に葯をピンセットにて丁寧に取り除いた。その後、該花は他の花粉の混入を避ける為に交配袋を掛けて隔離した。三日後、成熟した柱頭にニラ(フラワーボール)の花粉を交配させ、交配三日後に花を採取した。この花を75%エタノール水溶液にて1分間滅菌し、さらに10%アンチホルミンに1分間浸漬したのち滅菌水で2回洗浄した。顕微鏡下で胚珠を無菌的に摘出し、培地に置床し25℃、16時間光照射下にて培養した。用いた培地はムラシゲ&スクーグの無機塩培地にシュークローズ60g/l、イノシトール100mg/lを加え寒天で固めた固体培地である。こうして、胚珠より発芽した雑種胚は、シュークローズを20g/lに変更した以外は上記と同じ培地に移植し同様に培養した。雑種胚1第2葉を展開し根が発達したところで馴化し、ポットに移植して雑種植物体の成育体に生育させた。 【0040】第2葉まで展開し、馴化している状態を第5図の写真に示す。 【0041】次に、この雑種植物体の雑種性を調べた。その結果、葉の形態、葉の付き方ともにタマネギ型を示した。また、この植物体がもつフレーバー前駆体は、実施例1と同様の成分分析を行った結果、タマネギとニラの両方のフレーバー前駆体を有していた。更に、染色体数についても実施例1と同様の方法で調べたところ24本あった。親のタマネギは16本の染色体を持ち、その生殖細胞である卵細胞は8本であり、一方、ニラは4倍体なので32本の染色体を持ち、その花粉は16本の染色体を持つ。このことから、この雑種植物体はタマネギの卵細胞にニラの花粉が受精した雑種植物体であることを確認した。 【0042】実施例3 雑種植物体の栄養繁殖による増殖実施例1で得られた雑種植物体は夏期に結球した。10月に該植物体のりん片をベンレート水和剤1000倍液に30分間浸漬することにより消毒し、予め耕し施肥をした圃場に植え付けた。更に、追肥は2月上旬に第1回、4月に第2回、畦間に施肥した。各施肥量は第2表に示した通りである。病害虫を防除する為、オルトラン、スミチオンを用いて4月中旬より散布した。3月〜5月にかけて茎葉の生育は活発になり(第6図)、初夏から夏期にかけて結球したりん片は、数個から十数個であった。こうして、得られたりん片を用いて繰り返し増殖をすることができた。 【0043】 【表2】
【0044】実施例4 雑種植物体のクローン増殖タマネギとニンニクの雑種植物体のりん片成長点を無菌的に摘出し、培地に置床して培養した。培地は、ムラシゲ&スクーグの無機塩培地にシュークローズ30g/l、ニコチン酸0.5mg/l、イノシトール100mg/l、チアミン塩酸0.1mg/l、ピリドキサール塩酸0.5mg/l、グリシン1mg/l、更に植物成長調節剤としてナフタレン酢酸0.5mg/l、ベンジルアデニン0.5mg/l、及び寒天10g/lを加え、pH5.8に調製したものを用いた。25℃、16時間光照射下で培養し、茎葉を分化させた。ほとんどの組織は複数の茎葉を分化し、多芽体を形成した。該多芽体を茎葉1本ずつに分離し、ムラシゲ&スクーグの無機塩培地にシュークローズ30g/l、ニコチン酸0.5mg/l、イノシトール100mg/l、チアミン塩酸0.1mg/l、ピリドキサール塩酸0.5mg/l、グリシン1mg/l、アブシジン酸0.1mg/l及び寒天10g/lを加え、pH5.8に調製した培地へ移植し、25℃、16時間光照射下にて培養した。培養4週間後、多数の茎葉が発生し発根した幼植物を作出した。幼植物体は2週間馴化処理をした後に、ポットに鉢上げした。3週間ほど温室内で栽培した後、圃場に出し前述の栄養繁殖で用いた雑種植物体のりん片や珠芽等と同様に栽培することができた。 【0045】 【発明の効果】アリウム属植物のタマネギ、ニンニク及びニラは、それぞれ有用な性質をもつにもかかわらず互いに利用できなかった。本発明によりタマネギ×ニンニク雑種植物体及びタマネギ×ニラ雑種植物体の育種方法並びに増殖方法が発明されたため、互いの有用形質を利用できるようになった。 【0046】互いの有用形質の例をあげると、タマネギではフレーバー前駆体のプロペニルシステインスルフォキサイドをもち、種子稔性が高く、耐病性で、生育が早生である。ニンニクは、フレーバー前駆体のアイリンをもち、種子稔性が低く、生育が遅手である。これら各両親の性質を少なくとも1つ以上もつ植物体を得ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000066 【氏名又は名称】味の素株式会社
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| 【出願日】 |
平成2年11月21日(1990.11.21) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−350526(P2000−350526A) |
| 【公開日】 |
平成12年12月19日(2000.12.19) |
| 【出願番号】 |
特願2000−141247(P2000−141247) |
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