| 【発明の名称】 |
サツマイモ小植物体の生産方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】長谷川 修
【氏名】大野 洋次郎
【氏名】久保田 智惠利
【氏名】フォージア アフリーン−ゾバイド
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| 【要約】 |
【課題】生育に優れ、かつ、貯蔵根を有するサツマイモ小植物体を生産する方法を提供する。
【解決手段】サツマイモ小植物体片をバーミキュライトとセルロース繊維、好ましくは重量混合比が5:95〜95:5のバーミキュライト:セルロースを支持体に用いて、好ましくは、糖分を含まない培養液中で、培養環境下の二酸化炭素ガス濃度を400〜3000μmol/molに維持して培養を行うことにより、生育に優れ、且つ培養中に貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体を生産する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 サツマイモ小植物体片をバーミキュライト及びセルロース繊維を支持体として用いて組織培養を行うことを特徴とする、貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体の生産方法。 【請求項2】 前記バーミキュライト:セルロース繊維の重量混合比が、5:95〜95:5である請求項1記載の方法。 【請求項3】 糖分を含まない培養液中で培養を行う請求項1記載の方法。 【請求項4】 培養環境下の二酸化炭素ガス濃度を400〜3000μmol/molに維持して培養を行う請求項1記載の方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、サツマイモ小植物体の生産方法に関し、詳しくは、貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体の生産方法に関する。 【0002】 【従来の技術】サツマイモは、食糧、アルコール燃料用原料等として利用される多用途植物である。このため、将来生起すると予想される食糧問題、エネルギー・資源及び環境等の問題を解決するのに重要な役割を演じる植物であると期待されている。 【0003】サツマイモを増産するには、現在のところ、さし穂苗、タネイモからの萌芽苗等を用いる方法があげられる。しかし、前記方法では増殖率が低いことから、大幅に拡大されることが予想される苗の需要に応えるには対応しきれない。そこで、組織培養(マイクロプロパゲーション)による苗(以下、「小植物体」ともいう)が注目されている。 【0004】一般に細胞培養技術を使用した小植物体生産は、大きく分けて以下のステージからなる。すなわち、繁殖用の植物を選択し準備するステージ(ステージ0)、無菌培養を確立するステージ(ステージ1)、繁殖させるステージ(ステージ2)、インビトロで発根させ、コンディショニングを行うステージ(ステージ3)、エクスビトロ環境で馴化するステージ(ステージ4)である。この小植物体の培養方法として、寒天等のゲル化剤を支持体とする培養法が最も一般的に知られている。 【0005】寒天等を用いた場合は、通常、培地中に糖(ショ糖、グルコース、フラクトース等)を炭素源として加えるため、培地は培養期間中に外部からの雑菌による汚染を受けやすく、これを防止するために、培養器や多数の培養器を収納する培養室等の培養環境を、実質的に無菌状態に維持するよう厳重な取り扱いを必要としている。 【0006】さらに、寒天培地内に空気が入らないため発根が悪く、又、特殊な発根用寒天培地で発根を良くしても、出てきた根が水中根状を示し、有効に働かず、直接育苗用土壌に移植すると地上部が枯れてしまうため、寒天から出した後パーライトやバーミキュライト等の培地で馴化させた後、露地あるいは温室内の育苗用土壌に移植する方法がとられている。しかし、馴化過程には1〜3ヶ月の長期間を要し、又、馴化期間中に活着が悪く小植物体が枯死したり苗質が水浸状のまま正常な形にならないこともあり、手間や歩留まりの点で問題点が多かった。 【0007】これに対し、無糖、無菌状態で、支持体としてロックウール又はバーミキュライトを使用することにより、培養期間中に雑菌による汚染が極めて少ない無菌サツマイモ苗を増殖する方法が報告されている(特開平9−294495号)。 【0008】しかし、上記方法によりサツマイモの小植物体を生産すると、いずれも得られた小植物体にはイモに生長するべき貯蔵根は形成されず、育苗用土壌に移植後に貯蔵根は新たに形成される。そのため、イモ形成における成熟化促進という点では、まだ改良の余地があった。 【0009】ところで、バーミキュライトとセルロース繊維を含む植物組織培養培地を用いると、発根が良好で、一回の培養で順化不要の健苗の作出が可能となり、そのまま外の育苗用土壌に移植できることが報告されている(WO97/48271)。しかし、この技術をサツマイモに適用した場合に貯蔵根が形成された小植物体が得られることは知られておらず、培養中のサツマイモ小植物体の貯蔵根形成という概念自体も知られていない。 【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記観点からなされたものであり、サツマイモ小植物体片の組織培養を行うことにより、イモに生長していく貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体の生産方法を提供することを課題とする。 【0011】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、バーミキュライトとセルロース繊維から成る支持体を用いてサツマイモ小植物体片の組織培養を行うことにより得られるサツマイモ小植物体は、生育に優れ、さらに根部に貯蔵根が形成されるということを見出し、本発明を完成するに至った。 【0012】すなわち、本発明は、サツマイモ小植物体片をバーミキュライト及びセルロース繊維を支持体として用いて組織培養を行うことを特徴とする、貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体の生産方法を要旨とする。 【0013】また、本発明は、前記バーミキュライト:セルロース繊維の重量混合比が、5:95〜95:5であるサツマイモ小植物体の生産方法を提供する。さらに、本発明は、糖分を含まない培養液中で培養を行うサツマイモ小植物体の生産方法を提供する。 【0014】さらに、本発明は、培養環境下の二酸化炭素ガス濃度を400〜3000μmol/molに維持して培養を行うサツマイモ小植物体の生産方法を提供する。 【0015】 【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明は、サツマイモ小植物体片をバーミキュライト及びセルロース繊維を支持体として用いて組織培養を行うことを特徴とする、貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体の生産方法である。 【0016】通常の培養方法、例えば、寒天等のゲル化剤を支持体とする培養法では、小植物体にイモとなるべき貯蔵根は形成されず、主根と側根が形成される(図1参照)。このため、貯蔵根が形成されていない小植物体は、育苗用土壌に移植後に貯蔵根である新しい根を形成するので、貯蔵根が形成されるまでに時間を要し、結果的にイモの成熟にも時間を要する。 【0017】これに対し、本願発明では、小植物体にイモとなるべき貯蔵根が形成される。このため、本発明のサツマイモ小植物体を育苗用土壌に移植すると、成熟したイモが形成されるのが極めて早い。 【0018】本発明において、「サツマイモ小植物体」とは、組織培養により得られる培養苗をいう。また、「サツマイモ小植物体片」とは、組織培養によりサツマイモ小植物体に生育することが可能な植物体の一部をいい、例えば、サツマイモの細胞又は組織を培養して得られる、葉を有する節(node)、又は植物体の茎部について、複数の節を節単位で切断したものである。 【0019】本発明において、バーミキュライトの種類に特に制限はなく、バーミキュライトをあらかじめ各種処理したものを用いても構わない。ここでいう各種処理としては、加熱処理、冷却処理、精製処理、膨潤化処理、粉砕処理、造粒処理、含浸処理、コーティング処理等の化学的、物理的処理等が挙げられる。 【0020】本発明において、セルロース繊維の種類に特に限定はないが、パルプ状のものが好ましい。セルロース繊維としては、コットンリント、コットンリンター、針葉樹セルロース、広葉樹セルロース、靭皮セルロース、麻セルロース、再生セルロース、バクテリアセルロース等、そしてこれらの混合物が使用できる。 【0021】また、これらのセルロース繊維をあらかじめ各種処理したものを用いても構わない。ここでいう各種処理としては、加熱処理、冷却処理、精製処理、非晶化処理、膨潤化処理、重合度低下処理、誘導体化処理、架橋処理、結晶型転換処理、溶解再生処理、粉砕処理、造粒処理、含浸処理、コーティング処理等の化学的、物理的処理等が挙げられる。 【0022】本発明のサツマイモ小植物体の生産方法において、支持体としてのバーミキュライトとセルロース繊維の混合比としては、重量比で5:95〜95:5が良く、特に70:30が好ましい。バーミキュライトの比率が高すぎても、逆にセルロースの比率が高すぎても、この条件でサツマイモ小植物体片を培養した場合、サツマイモ小植物体に貯蔵根が形成しないことがある。 【0023】また、この支持体には、活性炭、やしがら、パーライト、くん炭、ピートモス等を適宜添加しても良い。本発明における組織培養においては、糖分を含まない培養液中で培養を行うことが好ましい。ここで、糖分とは、例えばショ糖、グルコース、フルクトース等の炭素源が挙げられる。 【0024】糖分を含まない培養液で培養することにより、培地内に糖を添加する際に生起し易い、雑菌による汚染が回避できる。また、糖分を含まない培養液で培養された小植物体片は、従属栄養的生長ではなく、一貫して完全な独立栄養生長条件下で組織培養を行うことができる。 【0025】本発明における培養には、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の多量元素や、鉄、マンガン、銅、亜鉛等の微量元素等の無機栄養素等の成分を含む培養液を用いることができる。さらに、ニコチン酸、チアミン塩酸等のビタミン類やアミノ酸等の有機栄養素、成長調節物質を含んでいてもよいが、これらは必ずしも必須ではない。具体的な培養液としては、例えばMS培養液が挙げられる。 【0026】本発明における組織培養では、培養期間中、培養環境下の二酸化炭素ガス濃度を400〜3000μmol/molに維持することが好ましい。二酸化炭素ガス濃度を上記濃度に維持するのは、二酸化炭素ガス濃度が低すぎると、小植物体の光合成が必ずしも十分ではないからであり、二酸化炭素ガス濃度が高すぎると、小植物体に障害が生ずることがあるためである。 【0027】上記のように、サツマイモ小植物体片を培養する際、培養液中に糖分を含まず、培養環境下の二酸化炭素ガス濃度を400〜3000μmol/molに維持することにより、独立栄養生長を促進することができ、小植物体を培養器外に移植したり、育苗用土壌に移植して独立栄養生長条件にさらしても、環境の激変がないので馴化が容易又は不要で、生育も良好な小植物体を作出することができる。 【0028】二酸化炭素ガス濃度のコントロールは、使用する培養器内、あるいは培養室内のガス濃度を測定し、規定の濃度に対する不足分を培養器内、あるいは培養室内に補充すればよい。 【0029】培養する容器に関しては、特に制限されるものではないが、換気性を高めるために、気体透過性であることが好ましい。例えば、培養器の蓋にガス透過性フィルムを用いて、通気性を高めることができる。また、培養器はサツマイモ小植物体片に光合成を行わせるために少なくとも一部が光透過性であることが好ましい。例えば、透明な蓋を有する培養器を用いることができる。 【0030】その他の培養条件、例えば温度、光の種類、光の強度、光照射方向、明期・暗期の周期、相対湿度、培養液量、培養液濃度等の培養に適する最適条件は、適宜、実験によって確認することにより選ぶことができる。 【0031】 【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。従来法にしたがって培養したサツマイモを、葉1枚を含む単節に切り分け、単節4つを485cm3のプラスチックのポット型容器にて培養した。それぞれの容器には、ビタミン、ホルモン及び糖を含まないMS(Murashige and Skoog, Physiol.Plant.,15,473-497 (1962))培養液45cm3を入れ、支持体として、様々な混合比率(表1に示した)のバーミキュライト(昭和バーミキュライト社製、TG−4)及び広葉樹クラフトパルプ(製品名:ポンティアック)からなる成形体を入れた。 【0032】上記支持体上にサツマイモの単節を載せ、合計30日間光独立栄養培養で、培養した。培養する際の環境条件は、培養容器の気温28℃、相対湿度80%、白色蛍光ランプの照射強度150μmol/m2/s、照射時間16時間/日、インキュベーター内の二酸化炭素ガス濃度1400μmol/molの条件であった。 【0033】実施例1〜6は、バーミキュライトとパルプを90:10〜10:90の比率で混合した支持体を用いて培養を行った。比較例1は、支持体をバーミキュライトのみとした以外は、実施例と同様に培養を行った。 【0034】比較例2は、培地として0.8wt%の寒天(関東化学社製)を用いた以外は、実施例と同様に培養を行った。上記条件で、サツマイモ小植物体片を30日間培養して得られたサツマイモ小植物体の茎部、葉部及び根部の生体重量と乾重量の計測を行った結果を表1に示す。 【0035】 【表1】
【0036】表1から明らかなように、実施例1〜6では、生体重量及び乾重量共に、比較例1及び比較例2に比べ、有意に増加しており、特に実施例3の支持体がV:P=70:30の重量混合比で顕著な効果を表している。このことより、本発明の方法により生産されたサツマイモ小植物体は、生育に優れていることが示される。 【0037】さらに、実施例1〜6で得られたサツマイモ小植物体は、根部に根が紫色を呈するものが多数存在し、貯蔵根1へと器官分化した(図1a)。これに対し、比較例1及び比較例2で得られたサツマイモ小植物体の根部は、図1bに示すように貯蔵根は有さず、主根2と側根3のみであった。 【0038】実施例1〜6で得られたサツマイモ小植物体を直接育苗用土壌に移植すると、貯蔵根がイモへと生長した。一方、比較例1で得られたサツマイモ小植物体を同様に直接育苗用土壌に移植すると、主根と側根とは別に貯蔵根を形成した後に、貯蔵根がイモへと生長した。 比較例2で得られたサツマイモ小植物体を直接育苗用土壌に移植したところ、枯死した。 【0039】 【発明の効果】本発明により、生育に優れ、且つ培養中に貯蔵根が形成されたサツマイモ小植物体を生産することができる。 【0040】本発明の方法により得られるサツマイモ小植物体は、生育に優れ、育苗用土壌に移植する際、馴化過程が容易又は不要である。さらに、貯蔵根を有しているため、育苗用土壌に移植後のイモの成熟が、従来の小植物体に比べ極めて早い。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004374 【氏名又は名称】日清紡績株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年4月27日(1999.4.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089244 【弁理士】 【氏名又は名称】遠山 勉 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開2000−308427(P2000−308427A) |
| 【公開日】 |
平成12年11月7日(2000.11.7) |
| 【出願番号】 |
特願平11−119569 |
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