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【発明の名称】 植物の遺伝物質の形質転換法
【発明者】 【氏名】ジエルツイ パズコフスキー

【氏名】インゴ ポツリクス

【氏名】バルバラ ホーン

【氏名】レイモンド ダグラス シリト

【氏名】トーマス ホーン

【氏名】ミカエル ウイリアム サウル

【氏名】バクラフ マンダク

【要約】 【課題】植物を感染させる系を使用せずに遺伝子の直接導入により形質転換された植物の提供。

【解決手段】植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる、アグロバクテリウム(Agrobacterium )属のTi−プラスミドのDNA配列を伴わない外来DNA が安定に組み込まれた双子葉植物またはそれから誘導される植物材料。該植物はa)前記のTi−プラスミドのDNA 配列を伴わない外来DNAを、適当な媒体中で植物プロトプラストが上記DNA を取込み得る条件下で、植物プロトプラストと接触させ;b)上記DNA が上記プロトプラストに取り込まれるのに十分な期間、上記DNA および上記プロトプラストを保温し;c)上記DNA が安定な方式で植物ゲノムに取込まれ、そこで発現され、複製され;d) 段階(b) 及び(c) で得られたプロトプラストを再生することにより得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる、植物ゲノムに安定に組み込まれた外来DNAを含む、双子葉植物またはそれから誘導された植物材料であって、該外来DNAが植物におけるアグロバクテリウム(Agrobacterium)属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記Ti−プラスミドのDNA配列を伴わない、双子葉植物またはそれから誘導された植物材料。
【請求項2】 植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる、植物ゲノムに安定に組み込まれた外来DNAを含む、双子葉植物またはそれの有性もしくは体細胞性子孫であって、該外来DNAが植物におけるアグロバクテリウム属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記のTi−プラスミドのDNA配列を伴わない、双子葉植物またはそれの有性もしくは体細胞性子孫。
【請求項3】 構造部分が植物、動物、微生物、ウイルスまたは合成起源であり、発現シグナルが植物、動物または合成起源である遺伝子を使用することを含む請求項1又は2記載の植物。
【請求項4】 遺伝子を植物の複製シグナルと組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項5】 遺伝子を植物の組込みシグナルと組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項6】 遺伝子を植物の複製シグナルおよび植物の組込みシグナルと組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項7】 遺伝子をエンハンサー配列と組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項8】 遺伝子を植物の複製シグナルおよびエンハンサー配列と組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項9】 遺伝子を植物の組込みシグナルおよびエンハンサー配列と組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項10】 遺伝子を植物の複製シグナル、植物の組込みシグナルおよびエンハンサー配列と組合せる請求項1又は2記載の植物。
【請求項11】 植物がソラナシエ(Solanaceae)、クルシフェレ(Cruciferae)、コンポジテ(Compositae)、リリアシエ(Liliaceae)、ビタシエ(Vitaceae)、ケノポディアシエ(Chenopodiaceae) 、ルタシエ(Rutaceae)、ブロメリアシエ(Bromeliaceae)、ルビアシエ(Rubiaceae)、テアシエ(Theaceae)もしくはムサシエ(Musaceae)科、またはレグミノセ(Leguminosae)目の植物である請求項1ないし10いずれか1項記載の植物。
【請求項12】 植物がソラナシエ(Solanaceae)および、クルシフェレ(Cruciferae)科の植物である請求項11記載の植物。
【請求項13】 CaMV遺伝子VIのプロモーターおよび終結シグナルを結合したNPTII遺伝子を含む、ニコチアナ タバクム(Nicotiana tabacum)、ニコチアナ プランバゲニフォリア(Nicotiana plumbagenifolia)、ペチュニアヒブリダ(Petunia hybrida)、ヒオシアムス ムチクス(Hyoscyamus muticus)およびブラシカ ナプス(Brassica napus) からなる群から選ばれた請求項1又は2記載の植物。
【請求項14】 CaMV遺伝子VIのプロモーターおよび終結シグナルを結合したNPTII遺伝子を含むタバコ植物である請求項13記載の植物。
【請求項15】 CaMV遺伝子VIのプロモーターおよび終結シグナルを結合したNPTII遺伝子を含むブラシカ(Brassica) 族の植物である請求項13記載の植物。
【請求項16】(a)植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる外来DNAであって、植物におけるアグロバクテリウム属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記Ti−プラスミドのDNA配列を伴わない該外来DNAを、適当な媒体中でおよび植物プロトプラストが上記DNAを取込み得る条件下で、上記植物プロトプラストと接触させ、(b)上記DNAが上記プロトプラストに取り込まれるのに十分な期間、上記DNAおよび上記プロトプラストを保温し、(c)上記DNAが安定な方式で植物ゲノムに取込まれ、そこで発現され、複製され、および(d) 段階(b)及び(c)で得られたプロトプラストを再生して、完全植物体とすることからなる、外来DNAによる植物の形質転換方法。
【請求項17】 外来遺伝子とプロトプラストを数秒から数時間の期間溶液中に放置する特許請求の範囲第16項記載の方法。
【請求項18】 遺伝子導入をポリエチレン グリコール処理によって行う特許請求の範囲第16項記載の方法。
【請求項19】 遺伝子導入を熱処理(ヒートショック)によって行う特許請求の範囲第16項記載の方法。
【請求項20】 遺伝子導入をエレクトロポレーションによって行う特許請求の範囲第16項記載の方法。
【請求項21】 遺伝子導入をポリエチレン グリコール処理、熱処理およびエレクトロポレーションからなる手法の2種または3種の組合せにより行う特許請求の範囲第16項記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は植物の遺伝物質を形質転換する新規な方法、およびその方法によって得られた植物生成物に関する。植物材料に新しい遺伝情報を導入することにより、新規および/または改良された性質を有する植物をつくることができる。
【0002】
【従来の技術・発明が解決しようする課題】世界の人口の急激な増加とそれに伴う食糧や原材料の必要性の増大という観点から、植物貯蔵物質の抽出を高めると共に有用植物の収穫を増加させること、および特に栄養および医学分野の進歩は生物学的研究の最も急がれる所である。これに関連して、次のような本質的な点が例として挙げられる:病害や害虫と共に不適当な土壌や気候条件に対する有用植物の抵抗性を強化すること;殺虫剤、除草剤、殺菌剤、消毒剤のような植物保護剤に対する抵抗性を高めること;および植物の栄養含量または収穫量を有利に変化させること。このような望ましい効果は、一般に、保護物質、有用タンパク質または毒素の誘導または生成増加によって得られる。植物の遺伝物質にこのような影響を与えることは、例えば従来の育種法を利用せずに植物細胞に特別な外来の遺伝子を挿入することによって実現できる。
【0003】遺伝学的に細菌感染植物を操作して植物細胞に新規なDNA配列を導入することは多くの刊行文献に記載されている。例えばネイチャー303巻 209−213頁、1983年(Nature Vol.303, 209-213(1983))、ネイチャー304巻、183−187頁、1983年(Nature Vol.304, 183-187(1983));サイエンティフィック アメリカン248巻6号 50−59頁、1983年(ScientificAmerican 248(6), 50-59(1983));イーエムビーオー ジャーナル2巻6号、987−995頁、1983年(EMBO-Journal 2(6),987-995(1983));サイエンス222巻 476−482頁、1983年(Science 222,476-482(1983));サイエンス223巻 247−248頁、1984年(Science 223,247-248(1984));またはプロシーデングズ オブ ナショナル アカデミー オブ サイエンスユーエスエー80巻、4803−4807頁、1983年(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80, 4803-4807(1983)) 。これらの刊行物においては、植物に感染させる細菌の自然の性質を植物細胞に新しい遺伝物質を挿入するために利用している。現在までの所、このような挿入は、望ましくはアグロバクテリウム テュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)それ自身またはそのTi プラスミド、およびカリフラワー モザイク ウイルスを使用して行われている。
【0004】
【課題を解決するための手段】これに対し、本発明の新規な方法は生物学的ベクターを使用することなく遺伝子の直接導入を可能にする。病原菌は公知の方法においてベクターとして使用されてきた。本発明の方法は病原菌なしで行うため、病原菌の宿主特異性からくる制限もない。新規な形質転換法を行った植物の発育が、この方法により障害を受けることはない。植物の遺伝物質を形質転換する方法に加えて、本発明は、上記の方法によって得られる生成物、特にプロトプラストおよびそれから誘導された植物材料、例えば、細胞および組織、特に上記のプロトプラストから生じた完全な植物および遺伝的にそれと同一の子孫にも関する。
【0005】本発明の範囲内で、次のような定義を適用する:遺伝子:発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子構造遺伝子:たんぱく質がコードされたDNA配列発現シグナル:プロモーターシグナルおよび終結シグナル植物発現シグナル:植物において機能する発現シグナルプロモーターシグナル:転写を開始するシグナル終結シグナル:転写を終結するシグナルエンハンサーシグナル:転写を促進するシグナル複製シグナル:DNA複製を可能にするシグナル組込みシグナル:遺伝子のゲノムDNAへの組込みを促進するDNA配列雑種遺伝子:不均一DNA配列、すなわち天然および合成のDNA配列である異なった起源をもつDNA配列から構築された遺伝子キャリアーDNA:両端を遺伝子に挟まれた中性の(すなわち遺伝子の機能に関与しない)DNA配列分離された遺伝子:単一のたんぱく質をコードし、元のDNAから分離されたDNA配列NPTII遺伝子:トランスポソンTn5のネオマイシン 3′−ホスホトランスフェラーゼ遺伝子、タイプII〔エス ジェイ ロトスタインおよびダブリューエス レズニコフ、 セル 23巻、191−199頁、1981年(Rothstein, S. J. and W.S. Retznikoff, Cell 23 ,191-199(1981)〕
ゲノムDNA:植物ゲノムのDNA(全体またはその一部)
【0006】本発明は植物の遺伝物質の形質転換のための新規な方法に関し、その方法は植物に感染させる天然の系の助けなしに遺伝子を植物細胞中に直接導入することを含む。
【0007】即ち、本発明は第一に、植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる、植物ゲノムに安定に組み込まれた外来DNAを含む、双子葉植物またはそれの植物材料であって、該外来DNAが植物におけるアグロバクテリウム(Agrobacterium )属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記Ti−プラスミドのDNA配列を伴わない、双子葉植物またはそれの植物材料に関する。第二に、本発明は植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる、植物ゲノムに安定に組み込まれた外来DNAを含む、双子葉植物またはそれの有性もしくは体細胞性子孫であって、該外来DNAが植物におけるアグロバクテリウム属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記Ti−プラスミドのDNA配列を伴わない、双子葉植物またはそれの有性もしくは体細胞性子孫に関する。更に第三に、本発明はこれらの植物を得るための、(a)植物において発現される発現シグナルにより両端を挟まれた構造遺伝子からなる外来DNAであって、植物におけるアグロバクテリウム属のTi−プラスミドの導入、組込みまたは複製に必要である、上記Ti−プラスミドのDNA配列を伴わない該外来DNAを、適当な媒体中でおよび植物プロトプラストが上記DNAを取込み得る条件下で、上記植物プロトプラストと接触させ、(b)上記DNAが上記プロトプラストに取り込まれるのに十分な期間、上記DNAおよび上記プロトプラストを保温し、(c)上記DNAが安定な方式で植物ゲノムに取込まれ、そこで発現され、複製され、および(d) 段階(b)及び(c)で得られたプロトプラストを再生して、完全植物体とすることからなる外来DNAによる植物の形質転換方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】したがって、この形質転換は無ベクター形質転換である。この無ベクター形質転換において、挿入される外来遺伝子は植物の発現シグナルの調節下にある。植物遺伝子の無ベクター形質転換は、植物細胞中へ挿入する外来遺伝子を受容体(レシピエント)(レセプター プロトプラスト)として働く植物プロトプラストといっしょに好適な溶液に入れ、その遺伝子がプロトプラストによって取り込まれるまで放置することによって実施することが望ましい。プロトプラストとして、単一植物種のもの、または種の下の分類単位である系統単位のものを使用することが望ましい。外来遺伝子およびプロトプラストは溶液中に数秒乃至数時間、望ましくは10乃至60分間、最も望ましくは30分間の間放置することが好都合である。本発明の方法は適用範囲が広い。したがって、もし、植物において発現される植物、動物、微生物または合成起源の発現シグナルにより構造遺伝子が両端を挟まれているのであれば、植物起源、例えばゼイン遺伝子〔ユー ワイナンド等、モレキュラー アンド ゼネラル ゼネティックス 182巻、440−444頁、1981年(Weinand, U., et al., Mol. Gen. Genet. 182, 440-444(1981)〕、動物起源、例えばTPA遺伝子〔組織型プラスミノーゲン活性化因子遺伝子:ディー ペニカ等、ネイチャー 301巻、214−221頁、1983年(Pennica, D., et al., Nature 301, 214-221,1983)) 〕、微生物起源、例えばNPTII遺伝子、または合成起源、例えばインスリン遺伝子〔ピー ステピーン等、ジーン 24巻、289−297頁、1983年(Stepien, P., et al., Gene 24,289-297,1983)) 〕のいかなる構造遺伝子をも植物の遺伝物質中に導入することが可能である。
【0009】構造遺伝子からなり、発現シグナルにより両端を挟まれた導入される遺伝子は天然の遺伝子および雑種遺伝子であってよい。本発明の方法において、その発現シグナルが動物、特に植物または合成起源の遺伝子を使用することが望ましい。このような遺伝子の例は次のようなものである:(a)天然の発現シグナルを持った構造遺伝子からなる植物の完全な遺伝子;
(b)合成起源の発現シグナルにより両端を挟まれた合成起源の構造遺伝子からなる完全な合成遺伝子;
(c)種々の植物種起源の構造および発現シグナルをもつ、植物発現シグナルにより両端を挟まれた植物起源の構造遺伝子;
(d)合成起源の発現シグナルにより両端を挟まれた植物起源の構造遺伝子;
(e)植物起源の発現シグナルにより両端を挟まれた動物、微生物または合成起源の構造遺伝子;または(f)合成起源の発現シグナルにより両端を挟まれた動物または微生物起源の構造遺伝子。植物起源、特に植物ウイルス起源の発現シグナルにより両端を挟まれた細菌起源の構造遺伝子が最も望ましい。本発明の方法に使用するのに特に好適な発現シグナルはカリフラワー モザイク ウイルスの遺伝子VIの発現シグナルである。
【0010】雑種遺伝子は、それ自体公知の微生物学的手法により、植物細胞で産生されるべきタンパク質コーディングの読み取りフレームを残して調整される。このような手法は公知で、例えば次の刊行物に記載されている:「モレキュラー クローニング」、ティー マニアティス、イーエフ フリッシュ、ジェイ サンブルック、コールド スプリング ハーバー ラボラトリー1982年("Molecular Cloning", Maniatis T., Fritsh, E.F. and J. Sambrook, Cold Spring Harbor Laboratory, 1982)」および「リコンビナント DNA テクニックス」、アールエル ロドリゲスおよびアール シー タイト、 アジソン−ウェズリー パブリッシング カンパニー、ロンドン、 アムステルダム、 ドン ミルズ、オンタリオ、シドニー、東京、1983年("Recombinant DNA Techniques", Rodriguez, R.L. and R.C. Tait, Addition-Wesley Publising Comp., London, Amsterdam, Don Mills, Ontario, Sydney, Tokyo 1983)。
【0011】植物細胞のゲノムDNAに外来遺伝子を組込むためには、構造遺伝子と植物発現シグナルからなる遺伝子が中性のDNA(キャリアーDNA)により両端を挟まれていることが有利である。キャリアーDNAは2本の直鎖DNAからなっていてよく、そのため植物細胞に挿入されるべき構造は直鎖DNA分子となる。しかし、遺伝子形質転換のために調整したDNA配列環状構造を持っていてもよい(プラスミド構造)。このようなプラスミドは、発現シグナルを含む外来遺伝子がその中に組込まれるDNA鎖からなる。キャリアーDNAは合成起源であっても、適当な制限酵素処理した天然のDNA配列から得たものでもよい。したがって、例えば制限酵素で開環された天然のプラスミドはキャリアーDNAとして使用するのに好適である。このようなプラスミドの例は容易に入手できるpUC8プラスミド(ジェイメシング および ジェイ ビエイラ、ジーン 19巻、269−276頁、1982年(Messing, J. and J. Vieira, Gene 19,269-276 1982)に記載) である。天然プラスミドのフラグメントもキャリアーDNAとして使用できる。例えばカリフラワー モザイク ウイルスの遺伝子VIの欠損変異株である。
【0012】植物細胞の遺伝子形質転換の確率は種々の因子によって上昇させることができる。すなわち、酵母の実験から知られるように、成功した安定な遺伝子形質転換の数は、1)細胞当たりの新しい遺伝子のコピー数の増加と共に、2)複製シグナルが新しい遺伝子と組合わさった時に、および3)組込まれたシグナルが新しい遺伝子と組合わさった時に増加する。
したがって、本発明の方法は導入される遺伝子が植物細胞中で有効な複製シグナルと、または植物細胞中で有効な組込まれたシグナルと組合わさっているか、または、両方のシグナルと組合わさった時に特に有利な適用となる。植物細胞中での遺伝子の発現はメッセンジャーRNA配列における遺伝子の転写頻度に依存する。したがって、新しい遺伝子がこの転写を促進するエンハンサーシグナルと組合わさっていると有利である。特に利点のある方法は、植物において有効な複製、組込みおよびエンハンサーシグナルと組合わさった遺伝子を導入するものである。
【0013】もし導入される遺伝子が選択されたマーカー機能を持つ場合、すなわち形質転換される植物細胞が特異な選択条件下に非形質転換植物細胞から分離される場合にはさらに手法的に有利である。この種のマーカー機能により、植物の遺伝物質はマーカー特異性の選択法を可能にする発現可能な遺伝子を含むことになり、植物細胞は微生物学的手法によってカルスまたは完全な植物に再生させるだけでよいという点で、本方法を効果的に実施できることになる。
【0014】プロトプラスト、細胞培養の細胞、植物組織の細胞、花粉、花粉管、卵細胞、胚のうまたは発育の種々の段階にある接合体や胚が形質転換の好適な出発物質である植物細胞の代表例であるが、前処理無しに直接使用できることからプロトプラストが望ましい。分離した植物プロトプラスト、細胞または組織は、それ自体公知の方法または公知法と類似の方法によって得られる。分離した細胞や組織を得るための好適な出発物質でもある分離した植物プロトプラストは、植物のいかなる部分、例えば葉、胚、茎、花、根または花粉から得ることができる。葉のプロトプラストを使用するのが好ましい。分離されたプロトプラストは細胞培養から得ることもできる。プロトプラストの分離法は、例えばオー エル ガンボルグ およびエル アール ウエッター、プラント ティッシュ カルチャー メソーズ 1975年、11−21頁(Gamborg, O.L. and Wetter, L.R. Plant Tissue Culture Methods, 1975,11-21)に記載されている。
【0015】植物細胞への新しい遺伝子の導入は、植物細菌や植物のウイルス、あるいは昆虫や植物病原菌による導入のような植物感染の天然の系を使用せずに直接行う。外来遺伝子とプロトプラストを好適な溶液に入れ、外来遺伝子がプロトプラストに取り込まれるまで放置することにより、導入されるべき遺伝子を使って直接形質転換することが望ましいような植物細胞の処理によってこれを実施する。形質転換頻度は、このステップを、遺伝子導入の微生物学的研究で使われる手法、例えばポリ−L−オルニチンまたは、ポリ−L−リジンによる処理、リポソーム融合、DNAタンパク質複合体形成、プロトプラスト膜における電荷の変化、微生物プロトプラストとの融合またはリン酸カルシウム共沈澱および、特にポリエチレングリコール、熱処理 (ヒートショック) およびエレクトロポレーションによる処理、更にはこれら三者組合わせた処理のような手法と組合わせることにより上昇させることができる。
【0016】外来遺伝子と受容体プロトプラストを入れる好適な溶液はプロトプラスト培養に用いる浸透的に安定した培地が望ましい。個々の成分または成分群が異なった数多くの培地がすでに入手できる。しかし、すべての培地の成分は下記の原則で一致している:約10mg/l乃至数百mg/lの濃度範囲の無機イオンの群(硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩、カリウム、マグネシウム、鉄のようないわゆる大部分)、最高濃度数mg/lの無機イオンの群(コバルト、亜鉛、銅、マンガンのようないわゆる小成分)および多くのビタミン(例えばイノシトール、葉酸、サイアミン)、エネルギーおよび炭素源、例えばショ等またはグルコース、さらに0.01乃至10mg/lの濃度範囲でオーキシンやサイトカイニン類の天然または合成植物ホルモンの形の生育調節剤が培地に含まれる。培地は糖アルコール(例えばマンニトール)または糖(例えばグルコース)または塩イオン(例えばCaCl2 )でさらに浸透的に安定化され、また5.6乃至6.5の範囲のpHに調節される。公知の培地のより詳細な記載は、例えばエイチ コブリツ、メトーディシェアスペクテ デア ツェル ウント ゲベーベツューヒトウング バイ グラミネーン ウンター ベゾンデレア ベリュックジヒティグング デア ゲトライデ、 クルテュールプフランツェ XXII巻 1974年 93−157頁(Koblitz, H., Methodishe Aspekte der Zoll und Gewebezuchtung bei Gramineen unter besonderer Berucksichtigung der Getreide, Kulturpflanze XXII, 1974,93-157) に見られる。
【0017】遺伝子形質転換の特に好適な手法は「ポリエチレン グリコール処理」である。本発明の範囲内においては、「ポリエチレン グリコール」なる語は物質のポリエチレン グリコール自身のみならず、プロトプラスト膜を同様に変化させて、例えば細胞融合の分野で使用される全ての物質の一般名として理解すべきである。したがって、この語には、より長い鎖長をもつ他の多価アルコール、例えばポリプロピレン グリコール(425乃至4000g/モル)、ポリビニルアルコールまたはヒドロキシル基が一部または完全にエーテル化された多価アルコール、さらに農業に一般に使用されて植物に耐えられる洗剤も含まれており、これらは例えば下記の刊行物に記載されている:「マカチョンズ デタージェンツ アンド エマルシファイアーズ アニュアル」エム シー パブリッシング コーポレーション、リッジウッド ニュー ジャージー、1981年("McCutcheon's Detergents and Emulsifiers Annual" MC Publising Corp., Ridgewood New Jersy 1981);エイチ スタッシェ、「テンジド−タッシェンブーフ」、カルル ハンザー フェアラーク、ミュニヒ/ヴィエンナ、1981年(Stache, H., "Tensid-Taschenbuch", Carl Hanser Verlag, Munich/Vienna,1981)。もしポリエチレン グリコール自身を使用する場合には(実施例1乃至3,5および7のように)、1000乃至10,000g/モル、望ましくは3000乃至8000g/モルの範囲の分子量を持つポリエチレン グリコールを使用することが望ましい。上記の物質のうち、ポリエチレン グリコール自身を使用することが望ましい。上記の手法により10-5の実質的で再現性のある形質転換頻度が実現する。しかし、この頻度を以下に詳細に記載する適当な手法により大幅に改良することができる。
【0018】ポリエチレン グリコール処理において、その方法は、例えばプロトプラストの懸濁液を培地に加え、次いで通常はプラスミドとして使用する遺伝子をポリエチレン グリコールと培地の混合物に加えるか、または、有利には、プロトプラストと遺伝子(プラスミド)を最初に培地に加え、次いでポリエチレン グリコールを加えるようなものであってもよい。
【0019】本発明の方法において、エレクトロポレーションと熱処理も特に有利な手法であることがわかった。エレクトロポレーション〔イー ノイマン等 ザ イーエムビーオー ジャーナル 7巻、 841−845頁、1982年(Neumann, E. et al., The EMBOJournal 7, 841-845(1982) 〕においては、プロトプラストを浸透性のもの、例えばマンニトール/マグネシウム溶液に移し、そのプロトプラスト懸濁液を2個の電極の間においたエレクトロポレーター室に入れる。懸濁液にコンデンサーを放電することにより、プロトプラストは高圧で短時間の電気衝撃を受ける。それにより、プロトプラスト膜の分極が起こり、膜に穴が開く。
【0020】熱処理の場合、プロトプラストを浸透性のもの、例えばマンニトール/塩化カルシウム溶液に懸濁し、この懸濁液を小容器、例えば遠心分離用管に入れ、望ましくは水浴で加熱する。加熱時間は選んだ温度に依存する。一般に、その値は40℃,1時間から80℃、1秒の範囲内である。最も良好な結果は45℃の温度、5分で得られる。懸濁液を次いで室温またはそれ以下に冷却する。細胞外ヌクレアーゼを不活性化することにより、形質転換頻度を上昇させ得ることが知られている。この不活性化は、植物が耐え得る二価陽イオン、例えばマグネシウムあるいはカルシウムを使って行うことができ、また望ましくは高いpH、最適pHは9乃至10.5で形質転換を行うことによっても実施できる。
【0021】驚くべきことに、これらの種々の方法を選択的に使用することにより、遺伝子工学の分野で長い間の目的であった形質転換頻度を非常に高めることが可能になる。遺伝子形質転換において形質転換頻度が低ければ低いほど、莫大な数の非形質転換クローンの中の形質転換細胞から新しいクローン化細胞を見出すことはより困難で、時間のかかるものとなる。形質転換頻度が低い場合には、使用する遺伝子が選択的マーカー機能(例えば、特定物質への耐性)を持つものでなければ、従来のスクリーニング手法を使うことはほとんどまたは完全に不可能である。したがって、マーカー機能のない遺伝子を使う場合、形質転換頻度が低いと時間と労力に莫大な投資が必要となる。マーカー機能のない遺伝子を使った形質転換においては、形質転換頻度がパーセントのオーダー(約10-2)であるときのみ、従来のクローン細胞選択のスクリーニング法を効果的に使用して成功する。以下に示すように、本発明の方法によりこの望ましい形質転換頻度を実現することが可能となった。驚くべきことに、本発明の方法において種々の手法を特異的に使用することにより従来得られた形質転換頻度を1乃至2%まで非常に高めることができるようになった。
【0022】ポリエチレングリコール処理、エレクトロポレーションおよび熱処理のような他の手法を用いる前に、外来遺伝子と受容体プロトプラストを合わせると、用いるステップの順序が異なる方法に比較して、形質転換頻度が約10倍のオーダーで改良される。エレクトロポレーションは5乃至10倍、熱処理は10倍以上に形質転換頻度を改良する。以下の手法の2乃至3種の組合わせが有利であることがわかった:ポリエチレングリコール処理、熱処理およびエレクトロポレーションで、外来遺伝子とプロトプラストを溶液に入れた後にこれらの手法を用いることにより特に良好な結果が得られる。望ましい手法はポリエチレングリコール処理の前に熱処理を行い、望みに応じて次にエレクトロポレーションを行うことである。一般にエレクトロポレーションを加えると形質転換頻度が更に高められる;しかし、熱処理とポリエチレングリコール処理によって得られた結果が、エレクトロポレーションを追加してももはや本質的に改良されない場合もある。この手法をたがいに組合わせることができるように、植物により耐えられる2価陽イオンを使用することおよび/またはpH9乃至10.5で形質転換を行うことを、個々の手法、及び組合せた手法、望ましくはポリエチレングリコール処理、熱処理およびエレクトロポレーションを組み合わせた手法と組合わせることも可能である。数多くの組合せの可能性により、本発明の方法をそれぞれの条件に良く合うようにすることができる。すでに存在する外来遺伝子と受容体プロトプラストの組合せに続いて熱処理、ポリエチレングリコール処理及び、望みに応じてエレクトロポレーションの組合せにより、10-2乃至10-3の形質転換頻度となる。
【0023】従って、本発明の方法は、形質転換のための生物学的ベクター、例えばカリフラワーモザイクウイルスまたはアグロバクテリウム(Agrobacterium)を利用することなしに、高形質転換頻度を実現する。有利な方法におてい、例えば、プロトプラストをマンニトール溶液に入れ、このプロトプラスト懸濁液を遺伝子の水溶液と混合する。プロトプラストをこの混合物中で45℃、5分間加熱し、次いで10秒間で0℃に冷却する。次にポリエリエングリコール(分子量3000乃至8000)を濃度が1乃至25%の範囲内、望ましくは約8%になるまで加える。注意深く十分に混合した後、処理をエレクトロポレーター中で行う。次いでプロトプラスト懸濁液を培地で稀釈し、プロトプラストを培養し始める。
【0024】本発明の方法はすべての植物、特にアンジオスペルメ(Angiospermae) 群およびジムノスペルメ(Gymnospermae)群のものの形質転換に好適である。ジムノスペルメ(Gymnospermae)の内、コニフェレ(Coniferae) 鋼の植物が特に興味がある。アンジオスペルメ(Angiospermae) の内、特に興味がある植物は落葉性の木や灌木に加えて下記の科の植物である:ソラナシエ(Solanaceae), クルシフェレ(Cruciferae), コンポジテ(Compositae), リリアシエ(Liliaceae),ビタシエ(Vitaceae), ケノポジアシエ(Chenopodiaceae), ルタシエ(Rutaceae), ブロメリアシエ(Bromeliaceae), ルビアシエ(Rubiaceae), テアシエ(Theaceae), ムサシエ(Musaceae)またはグラミニエ(Gramineae) およびレグミノセ(Leguminosae) 目、特にパピリオナシエ(Papilionaceae) 科の植物である。望ましい植物はソラナシエ(Solanaceae), クルシフェレ(Cruciferae) およびグラミニエ(Gramineae) 科の代表的なものである。特に挙げられるものはニコチアナ(Nicotiana),ペチュニア(Petunia),ヒオシアムス(Hyoscyamus), ブラシカ(Brassica)およびロリウム(Lolium)種の植物、例えばニコチアナ タバクム(Nicotiana tabacum),ニコチアナ プランバゲニフォリア(Nicotiana plumbagenifolia),ペチュニア ヒブリダ(Petunia hybrida),ヒオシアムス ムチクス(Hyoscyamus muticus), ブラシカ ナパス(Brassica napus), ブラシカ ラパ(Brassica rapa) およびロリウム マルチフロルム(Lolium maltiflorum)のようなものである。
【0025】植物細胞の形質転換の分野においては、メイズ、コメ、コムギ、オオムギ、ライムギ、カラスムギおよびキビのような栽培植物の高収率に特に興味が集中している。プロトプラストからの再生により産出されるすべての植物は本発明の方法を利用して形質転換することができる。穀物をも含むグラミニエ(Gramineae)科 (草) の代表的なものを遺伝的に操作することは現在までの所不可能である。上記の直接形質転換法で、穀類細胞を含むグラミニエ細胞を遺伝的に形質転換することは、今のところ知られていない。総収量および作付面積は世界的に少ないものの、ソラナム(Solanum),ニコチアナ(Nicotiana),ブラシカ(Brassica), ベタ(Beta), ピスム(Pisum),ファゼオラス(Phaseolus),グリシネ(Glycine),ヘリアンタス(Helianthus), アリウム(Allium),コムギ,オオムギ, カラスムギ,セタリア(Setaria), アブラナ, コメ, シドニア(Cydonia),ピラス(Pyrus),マラス(Malus), ルバス(Rubus),フラガリア(Fragaria), プルナス(Prunus), アラキス(Arachis),セカレ(Secale), パニクム(Panicum),サカルム(Saccharum),コフィア(Coffea), カメリア(Camellia), ムサ(Musa), アナナス(Ananas), ビティス(Vitis) またはシトラス(Citrus)属の栽培植物の形質転換は同様にして可能であり、望ましい。
【0026】形質転換した遺伝子の証明は、それ自体公知の方法、例えば特にサザーンブロット分析および酵素活性試験を含む交配分析および分子生物学試験により行う。サザーンブロット分析は例えば次のようにして行うことができる:形質転換した細胞またはプロトプラストから分離したDNAを制限酵素で処理した後に1%アガロースゲルで電気泳動し、ニトロセルロース膜に移す〔イー エム サザーン,ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー98巻 503−517頁,1975年(Southern, E.M.,J.Mol.Biol. 98 ,503-517(1975)〕。これを、その存在を確かめたく、またニック翻訳(nick-translated)されたDNAとハイブリダイズする〔ダブリュー ジェイ リグビイ, エム ディークマン,シーローデスおよびピー バーグ, ジャーナル オブ モレキュラー バイオロジー 113巻 237−51頁, 1977年(Rigby, W. J., Dieckmann., M., Rhodes, C. and P. Berg, J. Mol. Biol. 113, 237-51,(1977)) 〕(DNAの比活性5×108 乃至10×108 c.p.m./μg)。ろ紙を65℃で3回、0.03M クエン酸ナトリウムと0.3M塩化ナトリウムの水溶液で1時間洗浄する。ハイブリダイズされたDNAはX線フィルムを24乃至48時間で黒化することにより見える。
【0027】酵素活性の試験−アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(カナマイシンを特異的にリン酸化する酵素)の分析で詳細に説明する−は例えば次のようにして行うことができる:カルスまたは葉片(100乃至200mg)をエッペンドルフ(Eppendorf)遠心分離管中、20μlの抽出緩衝液の中で磨砕する。この緩衝液は、エルヘレラーエストレラ,エム ドブロック, イーメッセンス, ジェイ ピー ヘルナルスティーンズ,エム ファンモンタギュおよびジェイ シエル,イーエムピーオー ジャーナル 2巻,987−995頁,1983年(Herrera-Estrella, L., Deblock, M. Messens, E., Hernalsteens, J. -P., VanMontagu, M. and J. Schnell, EMBO J.,2, 987-995(1983)) が使用したものを、血清アルブミンを除き、0.1Mショ糖を加えることによって変えたものである。抽出物を12000gで5分間遠心分離し、上清液にブロモフェノールブルーを終濃度0.004%になるように加える。上清35μl中のタンパク質を10%非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動して分画する。このゲルをカナマイシンとγ−32P標識ATPを含むアガロースゲル層で覆い、反応させて、リン酸化反応生成物をホワットマン(Whatman)p81ホスホセルロース紙に移す。この紙を脱イオン水により90℃で6回洗浄してからオートラジオグラフィーを行う。
【0028】
【実施例】以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、これにより本発明の範囲を制限するものではない。ここには雑種遺伝子の構築および環状のキャリアーDNA配列へのその挿入、上記雑種遺伝子の植物細胞への導入、形質転換された植物細胞の選択および形質転換された植物細胞からの完全な植物の再生、更にその遺伝的交配と分子生物学的分析を記載する。実施例において、本発明の方法を以下のように例示する:1) CaMV遺伝子 VI のプロモーターおよび終結シグナルをNPTII遺伝子に加え、その遺伝子をpUC8プラスミドに挿入し、この得られたキメラプラスミドを分離したタバコプロトプラストにポリエチレングリコール処理により導入することによるNPTII遺伝子の導入によるタバコ植物の形質転換により、2) CaMV遺伝子 VI のプロモーターと終結シグナルをNPTII遺伝子に加え、この構築物をCaMV遺伝子 VI の代わりにCaMVゲノムに挿入し、得られたキメラプラスミドを分離したブラシカ(Brassica) プロトプラストにポリエチレングリコール処理により導入することによるNPTII遺伝子の導入によるブラシカ(Brassica) 族植物の形質転換により、および3) CaMV遺伝子 VI のプロモーターと終結シグナルをNPTII遺伝子に加え、この遺伝子をpUC8プラスミドに挿入し、得られたキメラプラスミドを分離したロリウム(Lolium)プロトプラストにポリエチレングリコール処理により導入することによるNPTII遺伝子の導入によるロリウム(Lolium)族植物の形質転換による。更にプロトプラストとNPTII遺伝子を合わせた後に、熱処理およびエレクトロポレーション、および熱処理、ポリエチレングリコール処理およびエレクトロポレーションの組合せた方法を行うことが形質転換に有利な効果を持つことを例示する。
【0029】実施例1NPTII遺伝子の導入によるニコチアナ タバクム シー ブイ プチ ハバナ エス アール アイ(Nicotiana tabacum. c.v. Petit Havana SRI) の細胞の形質転a)pABDIプラスミドの構築自由に入手できるプラスミドpKm21およびpKm244〔イー ベック等ジーン19巻 327−336頁,1982年(Beck, E. et al., Gene 19,327-336(1982))〕をPstI制限エンドヌクレアーゼを用いて切断する。組換えに使用するプラスミドのフラグメントを0.8%アガロース ゲルで電気泳動することにより精製する。ジーン 19巻 327−336頁,1982年 Gene19, 327-336(1982))〕にベック等(Beck, et al. )によって記載されているように、このフラグメントの組合せで得られたプラスミドpKm21244はNPTII遺伝子の5′−および3′−Bal 31欠損の組合せを含む。カリフラワー モザイク ウイルスのプロモーターシグナルをプラスミド pKm21244のHind IIIフラグメントに加えるのはリンカー プラスミド pJPAXを構築することによって行う。カップリングプラスミドpJPAXはプラスミドpUC8とpUC9から得られる〔ジェイ メッシングおよびジェイ ビエイラ, ジーン 119巻、269−276頁 1982年(Messing, J. and J. Vieira, Gene 119, 269-276(1982)) 〕。プラスミドpUC9のリンカー配列中10塩基対をHind IIIとSal I部位で制限酵素処理により欠落させ、得られた結合性末端をポリメラーゼI Klenow フラグメントによる処理でふさぎ〔エイチ ジャコブリン等、ヨーロピアン ジャーナル オブ バイオケミストリー,45巻,623頁,1974年(Jacobson, H. et al., Eur. J. Biochem. 45, 623,(1974)) 〕、そのポリヌクレオチド鎖をつないでHind III部位を修復する。8塩基対の合成Xho Iリンカーをこの欠落したリンカー配列のSma I部位に挿入する。プラスミドpUC8と修復したプラスミドpUC9の適当なXor IおよびHind IIIフラグメントの組換えにより以下の制限部位配列を含む部分的に非対称なリンカー配列をもったプラスミドpJPAXを得る:EcoRI,SMaI,BamHI,Sal I,Pst I,Hind III,BamHI,Xho IおよびEcoRI。CaMV VI遺伝子5′−発現シグナルとNPTII遺伝子のHind IIIフラグメントを合わせることは、CaMV VI遺伝子のプロモーター部分をPst IとHind III部位の間に挿入することによりプラスミドpJPAX上で行う。このようにして得たプラスミドを単一のHind III部位で制限切断し、プラスミドpKm21244のHindIIIフラグメントをこの制限部位に両方向に挿入してプラスミドpJPAX CaKm+ とpJPAX CaKm- を得る。NPTII雑遺伝子の3′末端部位の近くにEcoRV部位をつくるために、プラスミドpJPAXCaKm+ のBamHIフラグメントをプラスミドpBR327のBamHI部位に挿入し〔エックス ソバロン等、ジーン 9巻、287−305頁、1980年(Soberon, X.et al., Gene 9 ,287-307(1980)〕、プラスミドpBR327CaKmを得る。新しいDNA構築を含むこのプラスミドpBR327CaKmのEcoRV フラグメントをCaMV遺伝子VIのEcoRV部位に置き換え、プラスミドpUC8のSal部位でクローニングし、それによりNPTII遺伝子のタンパク質をコードしたDNA配列をカリフラワー モザイク ウイルス遺伝子VIの5′−および3′−発現シグナルの制御下におく。このようにして得られたプラスミドをそれぞれpABDIとpABDIIと名付ける(第1図参照)。
【0030】b)プラスミドpABDIの部分としてNPT遺伝子の導入によるニコチアナタバクム シーブイ プチ ハバナ エス アール アイ(Nicotiana tabacumc.v. Petit Havana SRI) プロトプラストのPEG処理による形質転換2,4−ジクロロフェノキシ酢酸0.1mg/l、1−ナフチル酢酸1.0mg/lおよび6−ベンジルアミノプリン0.2mg/lを含むK3 培地〔ツアイトシュリフト フュール プフランツェンフィジオロギー 78巻 453−455頁、1976年(Z. Pflanzenphysiologie 78 ,453-455(1976) );ミューティション リサーチ 81巻 165−175頁、1981年(Mutation Reserch 81(1981)165-175) 参照〕1mlにタバコ(Tabacco)プロトプラストを1ml当たり2×106 の濃度で懸濁する。プロトプラストは予めpH5.8の0.6モルショ糖中に浮遊させ、pH5.8の0.17M塩化カルシウム中で沈降させること(100g、5分間)により酵素懸濁液から得ておく。上記のプロトプラスト懸濁液に対し、修飾(オートクレーブ後に再びpH5.8に調整)F培地〔ネイチャー 296巻、72−74、1982年(Nature, 296, 72-74(1982)) 〕中に分子量6000のポリエチレングリコール(PEG)を40%に溶解した溶液0.5mlおよびプラスミドpABDI 15μgと仔牛胸腺DNA50μgを含む水溶液65μlを順番に加える。この混合物を時々攪拌しながら26℃で30分間培養し、次いでF培地で段階稀釈する。プロトプラストを遠心分離(100gで5分間)で分離し、30mlのK3 培地に再懸濁する。径10cmのペトリ皿に10mlづつ入れて24℃、遮光下に保温する。濃度は1ml当たり6.3×104 プロトプラストである。3日後に各ペトリ皿の培養液を0.3容量部の新鮮なK3 培地で稀釈し、24℃、3000ルクスで更に4日間保温する。合計7日の後、プロトプラストから生じたクローンをカナマイシン50mg/lを含み1%アガロースで固化した培地に埋め込み、ビーズ型培養法により遮光下、24℃で培養する〔プラント セル リポート 2巻、244−247頁、1983年(Plant Cell Reports, 2, 244-247(1983)) 〕。培地は5日毎に同じ種類の新鮮な栄養液で置換する。
【0031】c)カナマイシン耐性タバコ植物の再生カナマイシン含有培地で3乃至4週間培養を継続後直径2乃至3mmの耐性カルスを2,4−ジクロロフェノキシ酢酸0.05mg/l、1−ナフチル酢酸2mg/l,6−ベンジルアミノプリン0.1mg/l、カイネチン0.1mg/lおよびカナマイシン75mg/lを含む寒天固化LS培地〔フィジオロギアプランタルム 18巻、100−127頁、1965年(Physiol Plant 18, 100-127(1965))〕に移す。カナマイシン150mg/lおよび6−ベンジルアミノプリン0.2mg/lを含むLS培地上に新芽を誘発させ、次いでT培地〔サイエンス163巻 85−87頁 1969年(Science 163, 85-87(1969)) 〕に根付かせることにより、カナマイシン耐性ニコチアナ タバクム プチ ハバナエス アール アイ(Nicotiana tabacum Petit Havana SRI) 植物を得る。
【0032】d)植物の遺伝物質におけるNPTII遺伝子の検出形質転換細胞培養のカルスまたはそれから再生した植物の葉組織の試料0.5gを1−エチレンジアミンN,N,N′,N′−テトラ酢酸(EDTA)50mmol/l、塩化ナトリウム0.25mol/lおよびα,α,α−トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン ハイドロクロライド(TRIS−HCl)50mmol/lを含むpH8の15%ショ糖溶液中、0℃で磨砕する。磨砕物を1000gで5分間遠心分離して粗核ペレットを得、これをEDTA50mmol/lとTRIS−HCl 50mmol/lを含む15%ショ糖溶液にpH8.0で再懸濁する。ドデシル硫酸ナトリウムに終濃度0.2%になるように加え、70℃に10分間加熱する。20℃−25℃に冷却後、酢酸カリウムを混合物に終濃度0.5mol/lになるように加える。この混合物を0℃で1時間置く。沈澱をミクロ遠心分離器で4℃、15分間、遠心分離する。DNAを20−25℃で2.5容のエタノールで上清から沈澱させる。分離したDNAをリボヌクレアーゼA10μg/mlを含むTRIS−HCl 10mmol/lの溶液に溶解する。37℃で10分間反応させた後、プロテイナーゼKを250μg/mlの濃度で加え、37℃で1時間反応を続ける。プロテイナーゼKをフェノールとクロロフォルム/イソアミルアルコール抽出で除去する。イソプロパノールに溶解した酢酸ソーダの0.6モル溶液を0.6容量部加えることにより、DNAを水層から沈澱させ、これをTRIS−HCl 10mmol/lとEDTA 5mmol/lを含むpH7.5の溶液50μlに溶解する。この調製で実質的に50,000以上の塩基対を含むDNA配列が得られる。EcoRVエンドヌクレアーゼによるこのDNAの制限分解、NPTII遺伝子の放射性標識したHind IIIフラグメントとのハイブリダイゼイションおよびプラスミドpABDIとの比較により、サザーン ブロット分析において、形質転換したニコチアナ タバクム(Nictiana tabacum) 細胞の細胞核DNAにNPTII遺伝子が存在することがわかる。
【0033】e)形質転換した遺伝子の有性子孫への導入および正常植物遺伝子として遺伝する証拠この遺伝的に形質転換された植物(第一世代と子孫)について、広範な遺伝学的交配分析と詳細な分子生物学的研究(例えば植物ゲノムのDNAのサザーンプロット分析;アミノグリコシド ホスホトランスフェラーゼ、即ちカナマイシン特異リン酸化の酵素、の酵素活性の研究)を行った結果、次のことがわかった:1.細菌の遺伝子は植物ゲノム中に安定して組込まれている;
2.この遺伝子は正常には不変で常に交配した子孫に移る;
3.その遺伝は自然の単一優性遺伝子に相当する;
4.DNAハイブリダイゼイションと酵素試験による分子レベルの分析により遺伝学的交配分析の結果が確認される;
5.遺伝的に形質転換された植物は処理中に正常で自然の表現型を保持している、すなわち望ましくない修飾は認められない。プロトプラストに直接遺伝子を導入する本発明の方法が特異的に植物物質を遺伝的に形質転換する最良の方法であることをこれらの結果が示している。遺伝的形質転換は安定しており、植物の遺伝型に望ましくない修飾は起こらない。ニコチアナ プルンバゲンフォリア(Nicotiana plumbagenifolia)、ペチュニア ヒブリダ(Petunia hybrida) 、ヒオシアムス ムチクス(Hyoscyamus muticus)およびブラシカ ナプス(Brassica napus)について形質転換を行うと同様の結果が得られることを以下の実施例に記載する。
【0034】実施例2NPTII遺伝子の導入によるブラシカ ラパ シーブイ ジャスト ライト(Brassica rapa c.v. Just Right)細胞の形質転換a)プラスミドpCaMV 6Kmの構築実施例1aに記載したプラスミドpBR327CaKm+ を制限酵素EcoRVで消化し、カナマイシン耐性遺伝子(NPTII)を含むEcoRV制限フラグメントを使ってカリフラワー モザイク ウイルスの遺伝子VIを含むプラスミドpCa20−Bal IのEcoRVフラグメントと置き換え、プラスミドpCaMV 6Km(第2図)を得る。プラスミドpCa20−Bal Iは天然の欠損変異株CM4−184から得られるキメラCaMVプラスミドである。このプラスミドからは最初の5コドンと翻訳停止記号TGA以外は遺伝子IIが全て欠落している。Xho Iカップリング成分を部位IIの停止コドン直前に挿入した。
【0035】b)プラスミドpCaMV6Kmの部分としてのNPT遺伝子の導入によるブラシカ ラパ シーブイ ジャスト ライト(Brassica rapa c.v. Just Right)プロトプラストのPEG処理による形質転換ブラシカ ラパ(Brassica rapa )プロトプラストを好適な浸透性物によって洗浄し、プロトプラス83、プロシーディング エクスペリエンチア サプルメンタム、ビルクホイゼル フェアラーク、バーゼル、45巻 44−45頁 1983年(Proceedings Experientia Supplementum, Birkhauser Verlag, Basel, Vol.45(1983),44-45) に従って調製した培地に1ml当たり5×106 の濃度に懸濁する。修飾F培地(pH5.8)(実施例1b参照)に溶解した分子量6000の40%ポリエチレン グリコール(PEG)をプロトプラスト懸濁液と終濃度13%PEGになるように混合物する。エンドヌクレアーゼSal Iで消化したプラスミドpCaMV6Km10mgと仔牛胸腺DNA50μgを水60μgに溶解した溶液を直ちにこの混合液に加える。時々攪拌しながらこの混合物を20℃−25℃で30分間保つ。次いで修飾F培地3×2ml(全部で6ml)および培地2×2ml(全部で4ml)を5分間隔で加える。プロトプラスト懸濁液を10cmペトリ皿に移し、培地を加えて全容20mlにする。このプロトプラスト懸濁液を遮光下、26℃で45分間置く。プロトプラストを100g、5分間遠心分離して分離し、最初の液に採った後、アガロースゲル固化培地に入れ、ビーズ型培養法(プラント セル リポーツ 2巻、244−2471983年(Plant Cell Reports 2, 244-247(1983))〕によって培養する。4日後の第1回細胞分裂発現段階でカナマイシンを50mg/lの濃度で培養物を加える。アガロース部分の周囲の液体培地は4日毎に新鮮なカナマイシン含有栄養液と取換える。4週間後にカナマイシン耐性クローンを分離し、更にカナマイシン含有栄養液(50mg/l)を毎週加えて培養を続ける。
【0036】c)植物の遺伝物質におけるNPTII遺伝子の検出形質転換したブラシカ ラパ(Brassica rapa )細胞の細胞核におけるNPTII遺伝子の存在は実施例1d)に記載したように、細胞核DNAを分離し、制限酵素分解してDNAフラグメントのハイブリダイゼイションすることにより検出することができる。
【0037】実施例3ロリウム マルチフロルム(Lolium multiflorum) 種のイネ科植物プロトプラストの形質転換ロリウム マルチフロルム(Lolium multiflorum) (イタリア ライグラス)のプロトプラストをpH5.8の0.4モル マンニトール1ml中に1ml当たり2×106 の濃度で加える。この懸濁液に対し、修飾F培地(pH5.8)〔ネイチャー 296巻,72−74頁、1982年(Nature 296, 72-74(1982))〕に溶解した分子量6000の40%ポリエチレン グリコール(PEG)0.5mlおよびプラスミドpABDI 15μgと仔牛胸腺DNA50μgを含む水溶液65μlを順番に加える。この混合物を時々攪拌しながら26℃で30分間置き、次いでネイチャー 296巻 72−74頁、1982年(Nature 296, (1982),72-74〕に記載されたF培地で稀釈する。プロトプラストを遠心分離(100gで5分間)で分離し、CC培地〔ボトリカス、ハームズ、レルツ、コーン(ゼア メイズ リンネ(Zea Mays L.)) の細胞培養プロトプラストからのカルス形成、セオリティカル アンド アプライド ゼネティックス 54巻、209−214頁、1979年(Potrykus, Harms, Lorz, Callus formation from cell culture protoplast of corn(Zea Mays L.), Theor, Appl. Genet. 54,209-214(1979)) 〕4mlに採り、遮光下、24℃で保温する。14日後、生育した細胞培養を同じ培地で抗生物質G−418(市販:ギブコ ヨーロッパ プロダクト カタログ、カタログ番号 0661811(GIBCO EUROPE Procut Catalogue, Catalogue No.0661811)) を含むものに移す。G−418は25mg/lの濃度でロリウム(Lolium) 細胞に有毒であり、カナマイシン耐性の細菌遺伝子を取り入れた細胞の生育のみが可能である。G−418はイネ科細胞にカナマイシン自体より実質的に高い活性を持つカナマイシン アナログである。耐性細胞コロニーを寒天培地に移し(25ml/l G−418を含み浸透性物を含まない上記と同じ培地)、細胞コロニー当たり新生したものが数グラムの大きさになった後に、細菌遺伝子の存在および遺伝子の生物学的活性を分析する。前者の分析は細胞培養から分離したDNAと遺伝子の放射性標識DNA試料とのハイブリダイゼイションで行う一方、後者は放射性ATPを使ったカナマイシンのリン酸化により酵素活性を検出して行う。両分子レベルの分析によりG−418で選択された細胞コロニーの遺伝学的形質転換の明瞭な証明が得られた。これらの分析は、イネ科植物のプロトプラストの遺伝学的形質転換の第1の証明と、更に本質的に草類のプロトプラストを上記の方法により遺伝学的に操作できることの証明を含む。したがって、培養草類、例えば穀類、を遺伝的に操作する可能性も示す。
【0038】実施例4エレクトロポレーションによるNPT遺伝子導入によるニコチアナ タバクム(Nicotiana tabacum)の細胞培養細胞の形質転換ニコチアナ タバクム(Nicotiana tabacum)nia−115細胞株〔エイ ジェイ ミューラーおよびアール グレイフ、モレキュラー アンド ゼネラルゼネティックス 161巻、67−76頁、1978年(Muller, A.J. and R.Grafe, Mol. Gen. Gent. 161, 67-76(1978))〕の硝酸レダクターゼ欠損株の対数増殖相懸濁培養50mlから沈降によってプロトプラストを調製し、酵素溶液〔KOHでpH5.6に調整した洗浄溶液(0.3Mマンニトール、0.04M塩化カルシウムおよび0.5% 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸)に溶解した2%セルラーゼ オノズカ(Cellulase Onozuka)R−10、1%マゼロザイム(Mazerozym)R−10および0.5%ドリセラーゼ(Driselase)(ヘミッシェ ファブリク シュバイツェルハレ バーゼル(Chemishe Fabrik Schweizerhalle, Basel)) から入手〕20mlに再懸濁した後、旋回シェーカーを使って24℃で3時間保温する。次いで、プロトプラストを100μmメッシュ、篩を通して未消化の組織から分離する。等量の0.6Mショ糖を加え、その懸濁液を100gで10分間遠心分離する。表面に浮遊するプロトプラストを集めて洗浄液中で沈降させることにより3回洗浄する。形質転換をエレクトロポレーションにより行う。ダイアログ「ポレーター」(DialogR "Porator")(ダイアログ ジーエムビーエイチ、ハルフストラーセ 34,4000 デュッセルドルフ,西ドイツ(Dialog GmbH, Harffstr. 34, 4000 Dusseldorf, West Germany) から入手)のチェインバーを70%エタノール、次いで100%エタノールで洗浄して殺菌し、層状通風の通風機からの無菌空気流で乾燥する。塩化マグネシウムで1.4キロオームの抵抗値に調整した0.4mMマンニトール溶液にプロトプラストを1×106 /mlに懸濁し、pABDI DNAを10μg/mlの濃度で加える。このプロトプラスト懸濁液0.38mlづつを1000ボルトまたは2000ボルトの放電に10秒間隔で3回処理する。AA−CH培地〔ケイ グリメリウス等、フィジオロギア プランタルム 44巻、273−277頁、1978年(Glimellius, K. et al., Physiol Plant 44, 273-277(1978)) のAA培地〕のイノシトール濃度を100mg/lに、ショ糖濃度を34g/lに高め、2−(3−メチル−2−ブテニル)アデニンを0.05ml/l加え、アガロースの0.6%含量で固化したもの(シー プラーク、 エフエムシー コーポレーション、マリン コロイド ディビジョン、ポスト オフィス ボックス 308,ロックランド、メイン04841,アメリカ(Sea Plaque, FMC Corp.,Marine Colloids Division, P.O. Box 308, Rockland, Maine 04841, USA))3ml中にプロトプラストを1×105 /mlの濃度で培養する。一週間後、プロトプラストを含むアガロース層をカナマイシン50mg/lを含む液体AA−CH培地30mlに移す。液体培地の半分を毎週同一組成の新鮮な培地で置き換えつつ3週間後、形質転換された細胞コロニーが目で見えてくる。カナマイシン含有培地に移して4週間後、カナミアイシン50mg/lを含むAA培地(ケイグリメリウス等、フィジオロギア プランタルム 44巻、273−277頁,1978年(Glimelius, K. et al., Physiol. Plant. 44 273-277(1978) ;0.8%寒天)にこれらの細胞コロニーを移し、更に培養と研究を続ける。形質転換成功をDNAハイブリダイゼイションとアミノグリコシド ホスホトランスフェラーゼの酵素活性の試験で確認する。ブラシカ ラパ(Brassica rapa)とロリウム マルチフロラム(Loloum multiflorum)のプロトプラストを用いた同様の試験の結果、形質転換の成功を認めた。
【0039】実施例5エレクトロポレーションによるNPTII遺伝子の導入によるニコチアナ タバクム(Nicotinia tabacum)細胞の形質転換エレクトロポレーターの調整は実施例4に、プロトプラストの調製は実施例1に記載したようにして行う。形質転換のために、ニコチニア タバクム(Nicotinia tabacum)のプロトプラストをマンニトール溶液(0.4M、0.5%W/V 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸でpH5.6に緩衝化)に1.6×106 /mlの濃度に再懸濁する。プロトプラストの懸濁液の抵抗をポレーター チェインバー(0.38ml)中で測定し、塩化マグネシウム溶液(0.3M)で1乃至1.2キロオームに調整する。0.5mlづつを栓をしたプラスチック管(5ml容)に入れ、そのそれぞれにまずpABDI(SmaIで直鎖にした)8μgと仔牛胸腺DNA20μgを含む水40μl、次いでポリエチレン グリコール溶液(0.4Mマンニトール中に24%W/V)0.25mlを加える。DNAの添加9分後に0.38mlをパルスチェインバーにいれ、DNAの添加10分後、チェインバー中に存在するプロトプラスト懸濁液を10秒間隔で3回の衝撃(1000−2000ボルト)にさらす。処理した分を直径6cmのペトリ皿に入れ、20℃で10分間置く。次いでシー プラク(Sea Plaque) アガロース0.7%W/Vを含むK3 培地3mlを各ペトリ皿に加えて、ペトリ皿の内容物を十分に混合する。各皿の内容物を固化させた後、遮光下に24℃で1日間培養し、次いで光をあてて6日間置く。プロトプラストを含むアガロースを四つに切り液体培地に入れる。次いでビーズ型培養法でプロトプラストを培養する。カナマイシンを用いた形質転換物質の選択で得たカルスおよびそれから再生した植物はNPTII遺伝子の生成物をしてNPTII酵素(アミノグリコシド ホスホトランスフェラーゼ)を含む。エレクトロポレーションはエレクトロポレーションを行わない方法に比較して形質転換頻度を5乃至10倍上昇させた。ブラシカ ラパ ブイ ジャスト ライト(Brassica rapa c.v. Just Right)およびロリウム マルチフロラム(Loliummultiflorum)を使った同様の試験も形質転換頻度を同じオーダーで上昇させる。
【0040】実施例6熱処理によるNPTII遺伝子の導入によるニコチアナ タバクム(Nicotianatabacum)細胞の形質転換ニコチアナ タバクム(Nicotiana tabacum)の葉または細胞培養から分離したプロトプラストを実施例1および4に記載したように分離し、前の実施例に記載したように浸透性培地に移す。プロトプラスト懸濁液を45℃に5分間保ち、10秒間氷で冷却後、実施例1及び4に記載したようにプラスミドpABDIを加える。熱処理はこの処理なしに行った形質転換に比較して形質転換頻度を10倍以上高める。実施例2および3に記載したプロトプラストおよびプラスミドを用いた同様の試験も形質転換頻度を同じオーダーで高める。
【0041】実施例7プロトプラストおよび遺伝子を最初のステップで合わせ、次いで処理を組み合わせてNPTII遺伝子を導入することによる種々の植物細胞の形質転換植物のプロトプラスト: ニコチニア タバクム シーブイ プチ ハバナ エス アールアイ(Nicotiana tabacum c.v. Petit Havana SRI) (A)
ブラシカ ラパ ブイ ジャスト ライト(Brassica rapa c.v. Just Right)(B)
およびロリウム マルチフロラム(Lolium multiflorum) (C)
を実施例5に記載したように分離して浸透性培地に移す。A)およびC)のプロトプラスト懸濁液をプラスミドpABDI(実施例1a )と、B)のものはプラスミドpCaMV6Km(実施例2a)と、実施例1乃至3に記載したように、しかしポリエチレン グリコールでの同時処理は行わずに混合する。次いでプロトプラスト懸濁液を実施例6に記載したように熱処理した後、実施例1乃至3に記載したようにポリエチレン グリコール処理して、最後に実施例5に記載したようにエレクトロポレーションを行う。この方法における形質転換頻度は10-3乃至10-2の範囲、条件により1乃至2%である(実施例1乃至3における形質転換頻度は約10-5のオーダーである)。もしプロトプラストとプラスミドを合わせた後、次に行う熱処理、ポリエチレン グリコール処理およびエレクトロポレーションのステップを異なった順序で行った場合、10-3乃至10-2の範囲の結果が得られる。
【出願人】 【識別番号】597011463
【氏名又は名称】ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト
【出願日】 昭和60年5月11日(1985.5.11)
【代理人】 【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫 (外1名)
【公開番号】 特開2000−78936(P2000−78936A)
【公開日】 平成12年3月21日(2000.3.21)
【出願番号】 特願平11−238350