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【発明の名称】 植物栽培方法および液体肥料
【発明者】 【氏名】北村 文男

【氏名】平野 博

【氏名】副田 康貴

【要約】 【課題】有用微生物が有する諸機能を開放系において充分に発揮させることにより、植物の生育促進や、病害防除等の生物的防除を行う植物栽培方法および液体肥料を提供する。

【解決手段】有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給する。有用微生物の供給は、有用微生物を含む水溶液の点滴灌水等により行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給することを特徴とする植物栽培方法。
【請求項2】有用微生物の供給が、該有用微生物を含む水溶液の点滴灌水により行われることを特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項3】有用微生物が該有用微生物を含む液体肥料の供給により上記土壌に供給されることを特徴とする請求項1記載の植物栽培方法。
【請求項4】有用微生物の供給が、植物の栽培期間中、該有用微生物が土壌中に一定量以上存在するように行われることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の植物栽培方法。
【請求項5】有用微生物の植物1株当たりの供給量が、1.0×102 〜1.0×1013コロニー形成単位/日であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の植物栽培方法。
【請求項6】有用微生物と化成肥料とを含むことを特徴とする液体肥料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有用微生物を用いた植物栽培方法および液体肥料に関する。より詳しくは、有用微生物の生物的防除能力を用いた、植物栽培方法および液体肥料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、農園芸作物の美観および生産性を向上させる目的で、農薬や化成肥料の過剰使用が盛んに行われてきた。その結果、連作障害や収量の低下、および、生産者の健康面への悪影響の他、環境汚染や食品の安全性低下等、社会的に大きな問題が生じている。
【0003】そこで、これらの問題を解決すべく、土壌中の微生物の作用に着目し、拮抗菌、植物生育促進菌類(PGPR:Plant Growth−Promoting Rhizobacteria、PGPF:Plant Growth−Promoting Fungi)、光合成細菌、および内生菌根菌(VAM:Vesicular−Arbuscular Mycorrhiza)等、これら有用微生物が保有する病害防除等の生物的防除能力、生育促進、誘導抵抗といった作用を利用した各種植物栽培への応用が全世界的に検討されている。
【0004】具体的には、上記有用微生物を、植物の播種または定植前、あるいは、播種または定植時に該植物の生育に用いる土壌に供給または混合することにより、有用微生物が有する種々の能力を植物の栽培に利用している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記種々の有用微生物の植物栽培への利用は、そのほとんどが、いまだ実用化の段階に至っていないという問題点を有している。すなわち、これら有用微生物を利用する植物栽培技術は、ポットレベルでは、植物の病害防除等の生物的防除、生育促進、誘導抵抗における効果が発揮されるが、圃場レベル(開放系)では、これらの効果を安定して得ることが困難である。
【0006】本発明は上記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、有用微生物が有する諸機能を開放系において充分に発揮させることにより、植物の生育促進や、病害防除等の生物的防除を開放系においても安定に行うことができる植物栽培方法および液体肥料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本願発明者等は、上記問題点について、鋭意検討した結果、開放系において有用微生物が上記効果を安定して発揮できない主な要因は、土壌中に供給された有用微生物の灌水による流亡、土壌の持つ化学的な要因や土壌中にもともと存在する土着菌による拮抗や競合という土壌干渉作用にあることを見出した。つまり、本願発明者等は、これら幾つかの要因により、土壌中への供給後において、有用微生物が淘汰されていくため、有用微生物の持つ優れた能力(機能)が顕著に現れないという因果関係を見出すことにより、本願発明を完成させるに至った。
【0008】請求項1記載の植物栽培方法は、上記の課題を解決するために、有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給することを特徴としている。
【0009】上記の構成によれば、土壌干渉作用によって有用微生物の生物的防除能力等の諸機能が阻害されることを防止することができるので、有用微生物を土壌中に定着させ、有用微生物が本来有する機能を開放系においても充分に発揮させることができる。従って、上記の構成によれば、植物の生育促進や、病害防除等の生物的防除を開放系においても安定して行うことができる植物栽培方法を提供することができる。さらに上記の構成によれば、有用微生物を連続的あるいは断続的に供給することにより、供給量を増やすことなく、従来よりも有効に有用微生物の諸機能を発揮させることができる。
【0010】請求項2記載の植物栽培方法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の構成に加えて、有用微生物の供給が、該有用微生物を含む水溶液の点滴灌水により行われることを特徴としている。
【0011】上記の構成によれば、灌水量を微量に設定できるので、有用微生物の供給量を微量設定することが簡便に行えるため、簡便かつ低コストで有用微生物の連続的または断続的な供給を行うことができる。また、灌水と同時に有用微生物を供給できるため、有用微生物の分布域と、灌水に用いた水の分布域、すなわち、植物根圏とを等しく設定でき、有用微生物の諸機能を効率的かつ確実に植物に対して発揮させることができる。
【0012】請求項3記載の植物栽培方法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の構成に加えて、有用微生物が該有用微生物を含む液体肥料の供給により上記土壌に供給されることを特徴としている。
【0013】上記の構成によれば、有用微生物が液体肥料中に含まれているので、有用微生物の供給と共に連続的または断続的に施肥を行えるため、植物の栽培期間中、液体肥料を一定量以上土壌中に存在させることができる。また、有用微生物の連続的または断続的供給による土壌処理と同時に施肥が行えるため、農作業労力を軽減することができる。
【0014】請求項4記載の植物栽培方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構成に加えて、有用微生物の供給が、植物の栽培期間中、該有用微生物が土壌中に一定量以上存在するように行われることを特徴としている。
【0015】上記の構成によれば、有用微生物の供給を、植物の栽培期間中、該有用微生物が土壌中に一定量以上存在するように行うことにより、植物の根圏に有用微生物が存在している環境を絶えず形成し、土壌干渉作用を最小限に抑制することができる。
【0016】請求項5記載の植物栽培方法は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の構成に加えて、有用微生物の植物1株当たりの供給量が、1.0×102 〜1.0×1013コロニー形成単位/日であることを特徴としている。
【0017】上記の構成によれば、上記範囲内の供給量で有用微生物を連続的あるいは断続的に供給することによって、土壌干渉作用をより有効に抑制することができるため、有用微生物の生物的防除能力等の諸機能阻害をより有効に防止することができる。
【0018】請求項6記載の液体肥料は、上記の課題を解決するために、有用微生物と化成肥料とを含むことを特徴としている。
【0019】上記の構成によれば、液体肥料が有用微生物と化成肥料とを含んでいるので、たとえば、有用微生物の連続的または断続的供給による土壌処理と同時に施肥が行えるため、農作業労力を軽減することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の植物栽培方法は、有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給する方法である。
【0021】本発明の植物栽培方法において使用する有用微生物とは、たとえば、もともと土壌中に存在する土着の微生物等との間における拮抗、競合、殺虫等の生物的防除能力や、農園芸作物の生育において有用となる能力、たとえば、植物の生育促進能力や誘導抵抗性を付与する能力を有し、植物の栽培に有用な微生物である。該有用微生物としては、たとえば拮抗菌、植物生育促進菌類(PGPR、PGPF)、光合成細菌、および内生菌根菌(VAM)等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0022】有用微生物は、たとえば、上記生物的防除能力を有することにより、土壌中に存在する植物病害虫または植物病害菌が原因となる各種植物病害を防除し、これにより、植物の発病度を抑制する。また、有用微生物は、上記誘導抵抗性を付与する機能により、各種植物病害に対する抵抗性を植物に付与することができ、また、植物生育促進能力を有する有用微生物によって、対象となる植物の生育を促進できる。
【0023】生物的防除能力(拮抗、競合、殺虫等)を有する有用微生物としては、具体的には、たとえば、Agrobacterium radiobacter strain84(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.43)、Pseudomonas fluorescens(土壌伝染病談話会レポート、18:p.60−68)、Pseudomonas putida(生物農薬の開発・利用に関するシンポジウム、p.128−133)、Pseudomonas sepacia(植物防疫、44:p.442−445)、Pseudomonas gladioli(特開平06−086668号公報)、Pseudomonas aureofaciens(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.44−p.46)、Bacillus subtilis(特願平05−51305号公報)、Bacillus thuringiensis(特開平06−315372号公報)、Bacillus popilliae(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.91)、Streptomyces属菌(特開平7−25717号公報)、非病原性Erwinia carotovora(特開平3−101606号公報)、Enterobacter cloacae(特開平6−7037号公報)、Rhodopseudomonas属菌(特開平5−91870号公報)、Rhodospirillum属菌(特開平5−91870号公報)、Pasteuria属出芽細菌(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.92)等の細菌または放線菌;たとえば、Trichoderma harzianum(日本農薬学会誌23、p.422−426)、Trichoderma koningi(Phytopathology 86:p.188−194)、Gliocladium virens(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.31)、Coniothyrium minitans(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.31)、Sporidesmium sclerotivorum(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.31)、Pythium oligandrum(Plant disease 82:p.1100−1106)、Pythium nunn(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.35)、Taralomyces flavus(Phytopathology 87:p.1054−1060)、Chaetomiumaureum(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.32)、Heteroconium chaetospira(土壌伝染病談話会レポート19:p.81−85)、Verticillium lecanil(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.36)、非病原性Fusarium oxsporum(Plant Disease 81:p.492−496)、非病原性Rhizoctonia属菌(Can,J.Bot.64:p.2372−2378)、Aspergillus属菌(特開昭53−79027号公報)、Penicillium属菌(日本農薬学会誌23、p.422−426)、Fusarium equisetti(日本農薬学会誌23、p.422−426)、Phoma属菌(日本農薬学会誌23、p.422−426)等の糸状菌;たとえば、Steinernema属線虫(農業環境を守る微生物利用技術、家の光協会、p.100−103)等の線虫;等が挙げられる。
【0024】植物に生育促進能力や誘導抵抗性を付与する能力を有する有用微生物(PGPR、PGPF)としては、具体的には、たとえば、Agrobacteriumpaspali、Azotobacter putida、Bacilluspumilus、Bacillus subtilis、その他のBacillus属細菌、Flavomonas orzihabitans、Pseudomonas fluorescens、Pseudomonas putida、Serratia marcescens、Streptomyces属菌(いずれも日本農薬学会誌23、p.422−426)等の細菌;Fusarium roseum、Phytophtora parasitica、非病原性Rhizoctonia solani、2核Rhizoctonia AG−F,AG−K、Rhizopus nigricans、Phoma属菌、Trichoderma harzianum、Trichoderma koningi、Trichoderma viridae、Penicillium属菌(いずれも日本農薬学会誌23、p.422−426)等の糸状菌;等が挙げられる。
【0025】これら有用微生物は、天然から分離されたものであってもよく、また天然より分離した後、培養されたもの、あるいは、これらの変種や変異株であってもよい。また、上記微生物は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。
【0026】本発明にかかる有用微生物が有する拮抗、競合、殺虫等の生物的防除能力によって防除される植物病害菌または植物病害虫は、特に限定されない。本発明の植物栽培方法は、植物病害菌または植物病害虫のうち、土壌病害菌または土壌病害虫に対して特に有効に用いられる。
【0027】土壌病害菌または土壌病害虫により植物が羅患する病害は、特に限定されないが、具体的には、たとえば、Rhizoctoria属菌による苗立枯病、Pythuium属菌による苗立枯病、Fusarium各種属菌による萎凋病、Verticillium属菌による萎凋病、Gaeumannomyces属菌による立枯病、Plasmodiophora brassicaeによるアブラナ科野菜根こぶ病、Pernospora属菌によるべと病、Phytophthora属菌による疫病、Pseudomonas solanacearumによる各種青枯病、Erwinia carotovoraによる軟腐病、Agrobacterium tumefaciensによる根頭がんしゅ病、Rosellinia necatrixによる白紋羽病、Sclerotiumrolfsiによる白絹病、Aphanomycesによる立枯病、ネコブセンチュウによる根コブ病、マメコガネによる根部食害等が挙げられる。
【0028】また、本発明にかかる有用微生物の誘導抵抗性付与能力により防除できる植物病害としては、たとえば、Sphaerotheca属菌、Erysiphe属菌、Uncinula属菌、Phyllactinia属菌、Podosphaera属菌、Microsphaera属菌等によるうどんこ病;Botrytis属菌による灰色カビ病;Colletotrichum属菌による炭そ病菌;Pseudomonas syringaeによる斑点細菌病;Fusarium属菌によるつる割病;各種ウィルスによるモザイク病;等が挙げられる。
【0029】本発明において、上記有用微生物を土壌に連続的あるいは断続的に供給する方法としては、たとえば、有用微生物を含む水溶液を点滴灌水する方法、有用微生物を含む水溶液を所定の頻度で繰返し散布することにより灌水する方法、有用微生物をたとえば粉体等の固体の形態で連続的または断続的に散布する方法等が挙げられる。上記例示の方法のうち、コスト面および農作業の労力を軽減する観点から、有用微生物を含む水溶液を点滴灌水する方法が特に好ましい。
【0030】上記有用微生物を含む水溶液を点滴灌水する方法としては、より具体的には、たとえば、点滴灌水装置を用いて、所定速度で点滴灌水する方法が望ましい。点滴灌水装置の構造は、点滴灌水機能を具備したものであれば特に限定されないが、微量設定できる程度の直径を有する灌水ホースおよび該灌水ホースに接続され、連続供給すべき有用微生物溶液を攪拌する容器とを供えたものがより好ましい。
【0031】有用微生物を含む水溶液を点滴灌水する方法を用いることにより、供給量の微量設定を簡便に行うことができる。また、同方法により、灌水が同時に行えるため、供給した有用微生物の分布域と、灌水に用いた水の分布域とを等しく設定することができる。一般に、植物は、水の分布域にのみ根を発達させる、すなわち、植物根圏を形成させる。このため、植物根圏に有用微生物の分布域を設定することができ、土壌処理により、有用微生物の効果を効率的かつ確実に植物に対して発揮させることができる。
【0032】また、有用微生物を供給する方法は、たとえば、有用微生物を含む水溶液等を散布することにより、有用微生物の供給と灌水とを同時に行う方法であってもよい。また、たとえば、有用微生物を含まない水溶液による灌水と、有用微生物の供給とを組み合わせて行う方法をとってもよい。さらには、たとえば、有用微生物を含む水溶液等に化成肥料等をさらに含有させることにより、上記供給と施肥とを同時に行う方法をとってもよい。
【0033】有用微生物を連続的あるいは断続的に土壌に供給する期間は、対象となる植物の栽培期間により適宜決定され、特に限定されるものではないが、植物の栽培に関わる期間内、具体的には、少なくとも、播種あるいは定植時から収穫期までの間、より好ましくは、播種あるいは、定植前に植物の栽培に用いる土壌を準備する期間から該植物の収穫期までの間の、少なくとも植物の正常な生育に関与する期間、より好適には、全期間である。たとえば、移植栽培する場合は、少なくとも圃場(本圃)への定植期から収穫期までの期間であり、また、直播栽培する場合は、播種から収穫期までの期間である。
【0034】但し、収穫期前、特に収穫期直前においては、供給された有用微生物が収穫期までの間、一定量以上、土壌中、好ましくは、植物根圏に存在する場合には、有用微生物が収穫期までの間、一定量以上、土壌中、好ましくは植物根圏に存在することが可能な臨界期間まで有用微生物を供給すればよく、それ以降は、必ずしも有用微生物の供給を必要としない。
【0035】上記有用微生物を連続的あるいは断続的に土壌に供給する場合の植物への有用微生物の供給頻度は、有用微生物、植物、土壌等の種類により適宜設定される。より具体的には、有用微生物の供給頻度は、土壌中、好適には、植物根圏に一定量以上の有用微生物が存在するように設定されることが望ましい。具体的には、既に供給された有用微生物が土壌(好適には植物根圏)に定着しなくなる、あるいは、存在しなくなる現象が発現されるまでには、少なくとも新たな有用微生物の供給が行われることが望ましく、有用微生物が有するたとえば生物的防除能力が土壌干渉作用により抑制されない頻度、すなわち、有用微生物が有する生物的防除能力が、土壌干渉作用を上回る頻度に設定されることがより望ましい。つまり、土壌中、好適には、植物根圏に104 cfu/株以上、特には、107 cfu/株以上有用微生物が存在するように、上記頻度が設定されることがさらに望ましい。
【0036】また、上記頻度は、たとえば、有用微生物を含む水溶液により有用微生物を土壌に供給する場合であれば、10日に1回以上、好ましくは5日に1回以上、更に好ましくは毎日等、各供給間の間隔が少ない方がより好ましい。従って、たとえば、上記栽培期間を通じて絶え間なく連続的に供給し続けてもよい。
【0037】上記有用微生物の供給量としては、有用微生物の生物的防除能力を維持することができる量、つまり植物の正常な生育に必要とされる量であればよく、有用微生物、土壌等の種類により適宜決定されるものであり、特に限定されるものではないが、上記有用微生物の効果を充分に発揮するためには、有用微生物の供給量を、たとえば、植物1株あたり1.0×102 〜1.0×1013cfu(colony formation unit、コロニー形成単位)/日の範囲内で上記有用微生物を供給することが好ましい。これにより、有用微生物を土壌中により安定に定着させ、土壌干渉作用をより有効に抑制することができる。
【0038】また、有用微生物が細菌である場合は、植物1株あたり1.0×106 〜1.0×1010cfu/日の範囲内がさらに好ましく、有用微生物が放線菌または糸状菌である場合は、植物1株あたり1.0×104 〜1.0×107 cfu/日の範囲内がさらに好ましい。
【0039】有用微生物の供給量を、たとえば、上記範囲内とすることにより、植物の栽培期間中、該有用微生物が土壌中に一定量以上存在することができる。これにより、植物の根圏に有用微生物が存在している環境を絶えず形成し、土壌干渉作用を最小限に抑制することができる。
【0040】尚、本発明の植物栽培方法において、植物への有用微生物の供給量は、有用微生物、植物、土壌等の種類に応じて適宜設定すればよく、上記の記載にのみ限定されるものではない。
【0041】有用微生物を含む水溶液により連続的または断続的に有用微生物を供給する場合、該水溶液中の有用微生物濃度は、植物の定植密度等にもよるが、たとえば、上記範囲内の供給速度で供給した場合に、植物が窒息しない程度の水溶液量となる範囲内であれば、特に限定されない。具体的には、102 〜1011cfu/mlの範囲内であることがより好ましく、103 〜109 cfu/mlの範囲内であることがさらに好ましく、104 〜108 cfu/mlの範囲内であることが最も好ましい。
【0042】また、有用微生物の供給は、植物病害を予防・治療し、または生育促進や誘導抵抗性付与を図る対象となる植物の根圏(植物根圏)またはその近傍に直接供給されることが、同一圃場内の植物生育の固体差を減少させることができることから、より好ましい。
【0043】本発明において用いられる土壌は、植物栽培に用いられる土壌であれば特に限定されるものではなく、栽培する植物の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0044】本発明の植物栽培方法を用いる対象となる植物は、特に限定されず、あらゆる種類の農園芸作物に対し用いることができる。また、本発明の植物栽培方法を行う場合の植物の栽培方式は、特に限定されず、ハウス栽培、圃場栽培等種々の形態による栽培方式を採用することができる。
【0045】本発明の植物栽培方法において、有用微生物を連続的にあるいは断続的に供給する場合に用いられる有用微生物を含むたとえば水溶液等は、さらに化成肥料や農薬等の他の成分を含んでいてもよい。また、上記水溶液等は、有用微生物や化成肥料を含む液体肥料であってもよい。
【0046】本発明の液体肥料とは、上記液体肥料をいい、たとえば有用微生物の連続的または断続的な供給等により土壌処理を行う際に、同時に施肥を行う場合等に使用される液体肥料をいう。本発明の液体肥料は、上述のように上記有用微生物と化成肥料とを含んでなる。
【0047】上記液体肥料が有用微生物と化成肥料とを含むことによって、施肥と同時に有用微生物を連続的あるいは断続的に供給することができ、農作業労力の軽減が図れると共に、植物の病害防除、生育促進をより有効に行うことができる。以上のことから、上記液体肥料は、点滴用液体肥料として、特に好適に用いられる。
【0048】上記化成肥料の種類は特に限定されないが、たとえば、住友尿素複合液肥1号(住友化学(株)製)、くみあい尿素複合液肥2号(コープケミカル製)、尿素入り複合液肥エード1号(武田薬品化学製)等が挙げられる。
【0049】本発明の液体肥料に含まれる化成肥料濃度は、有用微生物濃度、対象となる植物、および土壌の種類により特に限定されないが、0.05〜10重量%の範囲内であることがより好ましく、0.05〜2重量%の範囲内であることがさらに好ましく、0.1〜0.5重量%の範囲内であることが最も好ましい。
【0050】本発明の液体肥料の施肥方法は特に限定されないが、農作業労力の軽減およびコストの面から、点滴灌水装置を用いて施肥することがより好ましい。また、液体肥料は、有用微生物および化成肥料が有する諸機能を阻害しない範囲内で他の成分を含んでいてもよい。
【0051】本発明の植物栽培方法は、以上のように、有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給する方法である。本発明において、上記有用微生物の供給は、好適には、該有用微生物を含む水溶液の点滴灌水により行われる。本発明の植物栽培方法を用いることにより、植物の根圏に有用微生物が存在している環境を絶えず形成し、土壌の持つ化学的な要因や土壌中にもともと存在する土着菌による拮抗や競合という土壌干渉作用を最小限に抑制することができる。これにより、開放系における有用微生物による植物の土壌病害防除や生育促進等の諸機能を安定して発揮させることができる。また、このように、供給を連続的あるいは断続的とすることにより、植物の栽培期間において供給される有用微生物の全供給量を増やすことなく、有用微生物のたとえば生物的防除能力が土壌干渉作用によって阻害されることを従来よりも有効に防止できる効果を発揮させることができる。
【0052】また、本発明の液体肥料は、有用微生物と化成肥料とを含んでなり、有用微生物の連続的または断続的供給による土壌処理と同時に施肥が行えるため、農作業労力を軽減することができる。
【0053】
【実施例】以下、実施例および比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0054】<点滴灌水装置>以下の実施例では、以下の点滴灌水装置を使用した。
【0055】灌水チューブとして直径20mmのポリエチレン製パイプを使用し、該パイプを接続し、植物の株元に点滴灌水できるように設置したポットドリッパー(Netafim社製)を点滴灌水装置とした。また、有用微生物を含む点滴灌水用処理液は、液肥混入機(スミカインジェクター20、Dosatron International社製)を用いて上記装置へ混入した。
【0056】<有用微生物を含む水溶液の調製>有用微生物として、(1)Bacillus subtilis SB0327株(住化農業資材株式会社保存菌株)
(2)Pseudomonas fluorescens SB0212株(住化農業資材株式会社保存菌株)
(3)Pseudomonas fluorescens SAT−F2株(住化農業資材株式会社保存菌株)
を用い、上記有用微生物をそれぞれKB(King’s B)液体培地にて所定細菌濃度となるまで培養し、有用微生物を含む水溶液とした。
【0057】<苗立枯病発病度算出方法>発病指数を、0:健全(褐変が全く見られないもの)、1:軽症(褐変が胚軸の50%未満を示しているもの)、2:重症(褐変が胚軸の50%以上を示しているもの)、3:立枯れ症状が見られるもの、4:完全枯死とした。上記発病指数を用いて、以下に示した計算式により発病度を算出した。
発病度=(0×A+1×B+2×C+3×D+4×E)/発病固体数ここで、A〜Eは、発病指数0〜4と判定されたそれぞれの植物の固体数を示す。
【0058】<ナス半身萎凋病発病度算出方法>発病指数を、0:健全(葉に萎凋または黄色の病徴がみられず、導管褐変がない)、1:発病軽(下位の1〜2葉に病徴が見られる)、2:発病中(褐変が胚軸の50%以上を示しているもの)、3:発病多(ほとんどの葉に病徴が見られるが、落葉は一部にとどまる)、4:発病甚(落葉が著しい、または株が枯死する)とした。上記発病指数を用いて、以下に示した計算式により発病度を算出した。
発病度=(0×A+1×B+2×C+3×D+4×E)/発病固体数ここで、A〜Eは、発病指数0〜4と判定されたそれぞれの植物の固体数を示す。
【0059】〔実施例1〕
<病原土の調製>本実施例においては、以下の方法により病原土の調製を行った。
【0060】500ml容三角フラスコにえん麦粒80gと蒸留水80mlとを入れ、オートクレーブにて120℃で20分間高圧滅菌した。病原菌として、苗立枯病菌(菌名:Rhizoctonia solani AG2−1)を用い、予めジャガイモ・グルコース寒天培地(PDA:Potato Dextrose Agar)中で25℃、暗室下に3〜6日間培養して該病原菌の菌糸を生育させた。この菌糸先端を、直径5mmのコルクボーラーで6片打ち抜き、上記三角フラスコ内のえん麦粒に該6片の菌糸を供給した。供給後、25℃にて10〜14日培養して病原菌を生育させた後、病原菌が生育したえん麦粒を三角フラスコから取り出し、25℃で10日間乾燥した。使用時までは、これを5℃で保管し、使用時に市販の粉砕機(こなどん・SCM−40A、株式会社石崎製作所製)で粉砕して供給源として使用した。粉砕した供給源を0.5%(w/w)となるよう供試土壌と均一になるまで混合し、病原土を調製した。
【0061】<有用微生物の供給>上記で作成した病原土をプランター(縦22.5cm、横64cm、深さ20cm)に詰め、200穴セルトレーにて25日間栽培したキャベツ苗(品種:マヤボール)3植物を上記プランターに定植した。定植後、上記点滴灌水装置を用いて、有用微生物を含む水溶液を上記プランターに、キャベツ苗1株・1日あたり50mlの割合で20日間滴下供給した。有用微生物として、上記Bacillus subtilis SB0327株を用い、有用微生物を含む水溶液の濃度は、5.0×107 cfu/mlとした。従って、上記20日間で供給した有用微生物の全供給量は、キャベツ苗1株あたり5.0×1010cfuであった。上記定植操作および定植後20日間における上記有用微生物の供給操作を5反復し、定植後20日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表1に示した。
【0062】〔比較例1〕キャベツ苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液50mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注し、第二日目からの19日間、キャベツ苗1株・1日あたり、水50mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例1と同様の操作を行い、定植後20日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記20日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例1と同じく5.0×1010cfuであった。結果を表1に示した。
【0063】〔比較例2〕キャベツ苗1株・1日あたり水50mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例1と同様の操作を行い、定植後20日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表1に示した。
【0064】〔実施例2〕有用微生物として、Pseudomonas fluorescens SB0212株を用いる以外は、実施例1と同様の操作を行い、発病度を求めた。結果を表1に示した。
【0065】〔比較例3〕キャベツ苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液50mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注処理し、第二日目からの19日間、キャベツ苗1株・1日あたり、水50mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例2と同様の操作を行い、定植後20日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記20日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例2と同じく5.0×1010cfuであった。結果を表1に示した。
【0066】〔比較例4〕キャベツ苗1株・1日あたり水50mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例2と同様の操作を行い、定植後20日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表1に示した。
【0067】
【表1】

【0068】表1の結果から、Bacillus subtilis SB0327による苗立枯病菌に対する生物的防除効果は、本発明の植物栽培方法により上記有用微生物を連続的または断続的に供給した場合、1回のみの処理により供給した場合と比較して、高くなることがわかる。
【0069】また、Pseudomonas fluorescens SB0212株による苗立枯病菌に対する生物的防除効果は、本発明の植物栽培方法により上記有用微生物を連続的あるいは断続的に供給した場合、1回のみの処理により供給した場合と比較して、高くなることがわかる。
【0070】〔実施例3〕
<病原土の調製>本実施例においては、以下の方法により病原土の調製を行った。
【0071】500ml容三角フラスコに土壌160mlと、ふすま40mlと、湿室状態となるように、ショ糖3%加用ジャガイモ煎汁50mlとを入れ、オートクレーブにて120℃で20分間高圧滅菌した。病原菌として、ナス半身萎凋病菌(菌名:Verticillium dahliae)を用い、予めジャガイモ・グルコース寒天培地中で25℃、暗室下に10日間培養して該病原菌の菌糸を生育させた。この菌糸先端を、直径5mmのコルクボーラーで6片打ち抜き、上記三角フラスコに該6片を供給した。供給後、25℃にて45日培養して病原菌を生育させた後、病原菌が生育した内容物を三角フラスコから取り出し使用時までこれを5℃で保管し、供給源とした。供給源を1.0%(w/w)となるよう供試土壌と均一になるまで混合し、病原土を調製した。
【0072】<有用微生物の供給>上記で作成した病原土をプランター(縦22.5cm、横64cm、深さ20cm)に詰め、120穴セルトレーにて25日間栽培したナス苗(品種:筑陽茄子)3植物体を上記プランターに定植した。定植後、上記点滴灌水装置を用いて、有用微生物を含む水溶液を上記プランターに、ナス苗1株・1日あたり100mlの割合で30日間滴下供給した。有用微生物として、上記Bacillussubtilis SB0327株を用い、有用微生物を含む水溶液の濃度は、5.0×107 cfu/mlとした。従って、上記30日間で供給した有用微生物の全供給量は、キャベツ苗1株あたり1.5×1011cfuであった。上記定植操作および定植後30日間における上記有用微生物の供給操作を5反復し、定植後30日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表2に示した。
【0073】〔比較例5〕ナス苗1株あたり、濃度5.0×107 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液100mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注し、第二日目からの29日間、ナス苗1株・1日あたり、水100mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例1と同様の操作を行い、定植後30日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記30日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例3と同じく1.5×1011cfuであった。結果を表2に示した。
【0074】〔比較例6〕ナス苗1株・1日あたり水100mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例3と同様の操作を行い、定植後30日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表2に示した。
【0075】〔実施例4〕有用微生物として、Pseudomonas fluorescens SB0212株を用いる以外は、実施例3と同様の操作を行い、発病度を求めた。結果を表2に示した。
【0076】〔比較例7〕土壌処理において、ナス苗1株あたり、濃度5.0×107 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液100mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注し、第二日目からの29日間、ナス苗1株・1日あたり、水100mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例4と同様の操作を行い、定植後30日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記30日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例4と同じく1.5×1011cfuであった。結果を表2に示した。
【0077】〔比較例8〕ナス苗1株・1日あたり水100mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例4と同様の操作を行い、定植後30日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表2に示した。
【0078】
【表2】

【0079】表2の結果から、Bacillus subtilis SB0327株による、ナス半身萎凋病に対する生物的防除効果は、本発明の植物栽培方法により上記有用微生物を連続的あるいは断続的に供給した場合、1回のみ供給した場合と比較して、高くなることがわかる。
【0080】また、Pseudomonas fluorescens SB0212株による、ナス半身萎凋病に対する生物的防除効果は、本発明の植物栽培方法により上記有用微生物を連続的あるいは断続的に供給した場合、1回のみの処理により供給した場合と比較して、高くなることがわかる。
【0081】〔実施例5〕ナス半身萎凋病発病圃場に上記点滴灌水装置を設置し、該圃場に120穴セルトレーにて25日間栽培したナス苗(品種:筑陽茄子)を定植した。定植後、上記点滴灌水装置を用いて、有用微生物を含む水溶液を上記ナス半身萎凋病発病圃場に、ナス苗1株・1日あたり200mlの割合で40日間滴下供給した。有用微生物として、上記Bacillus subtilis SB0327株を用い、上記水溶液中の有用微生物濃度は、2.5×107 cfu/mlとした。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、2.0×1011cfuであった。上記定植操作および定植後40日間における上記有用微生物の供給操作を上記操作を15植物について各々3回繰返し、定植後40日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表3に示した。
【0082】〔比較例9〕ナス苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液200mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注処理し、第二日目からの39日間、ナス苗1株・1日あたり、水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例5と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例5と同じく2.0×1011cfuであった。結果を表3に示した。
【0083】〔比較例10〕ナス苗1株・1日あたり水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例5と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表3に示した。
【0084】〔実施例6〕有用微生物として、Pseudomonas fluorescens SB0212株を用いる以外は、実施例5と同様の操作を行い、発病度を求めた。結果を表3に示した。
【0085】〔比較例11〕有用微生物として、Pseudomonas fluorescens SB0212株を用い、ナス苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液200mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注処理し、第二日目からの39日間、ナス苗1株・1日あたり、水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例5と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例5と同じく2.0×1011cfuであった。結果を表3に示した。
【0086】〔比較例12〕有用微生物として、Pseudomonas fluorescens SB0212株を用い、ナス苗1株・1日あたり水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例5と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における発病度を上記算出方法により求めた。結果を表3に示した。
【0087】
【表3】

【0088】表3の結果より、Bacillus subtilis SB0327株およびPseudomonas fluorescens SB0212株による、ナス半身萎凋病発病圃場における生物的防除効果は、本発明の植物栽培方法により上記有用微生物を連続的あるいは断続的に供給した場合、1回のみ供給した場合と比較して、いずれも高くなることがわかる。
【0089】〔実施例7〕カンラン連作圃場に上記点滴灌水装置を設置し、200穴セルトレーにて25日間栽培したカンラン苗(品種:マヤボール)を定植した。定植後、上記点滴灌水装置を用いて、有用微生物を含む水溶液を上記カンラン連作圃場に、カンラン苗1株・1日あたり200mlの割合で40日間滴下供給した。有用微生物として、上記Pseudomonas fluorescens SB0212株を用い、上記水溶液中の有用微生物濃度は、2.5×107 cfu/mlとした。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、2.0×1011cfuであった。上記定植操作および定植後40日間における上記有用微生物の供給操作を上記操作を15植物について各々3回繰返し、定植後40日間経過後におけるカンランの各重量(g)の平均値を1株あたりの生育収量(g)として求めた。結果を表4に示した。
【0090】〔比較例13〕カンラン苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液200mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注処理し、第二日目からの39日間、カンラン苗1株・1日あたり、水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例7と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における生育収量(g)を求めた。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例7と同じく2.0×1011cfuであった。結果を表4に示した。
【0091】〔比較例14〕カンラン苗1株・1日あたり水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例7と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における生育収量(g)を求めた。結果を表4に示した。
【0092】
【表4】

【0093】表4の結果から、Pseudomonas fluorescens SB0212株によるカンラン連作圃場におけるカンラン1株あたりの生育収量は、本発明の植物栽培方法による場合、比較例13の1回のみ供給した場合と比較して、80g高く、また、上記有用微生物供給による処理を行わなかった比較例14の場合と比較して150g高いことがわかる。従って、本発明の植物栽培方法によれば、連作圃場においても優れた生育促進効果が得られることがわかる。
【0094】〔実施例8〕カンラン連作圃場に上記点滴灌水装置を設置し、200穴セルトレーにて25日間栽培したカンラン苗(品種:マヤボール)を定植した。定植時には、有用微生物がカンラン苗に流入・定着しやすいように、根部に数カ所切り込みを入れた。また、定植時にモモアカカブラムシを1植物につき10頭導入した。定植後、上記点滴灌水装置を用いて、有用微生物を含む水溶液を上記カンラン連作圃場に、カンラン苗1株・1日あたり200mlの割合で40日間滴下供給した。有用微生物として、殺虫性微生物であるPseudomonas fluorescens SAT212株(住化農業資材保存菌株)を用い、上記水溶液中の有用微生物濃度は、2.5×107 cfu/mlとした。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、2.0×1011cfuであった。上記定植操作および定植後40日間における上記有用微生物の供給操作を上記操作を15植物について各々3回繰返し、定植後40日間経過後における1株あたりのアブラムシ頭数を計測した。結果を表5に示した。
【0095】〔比較例15〕カンラン苗1株あたり、濃度1.0×109 cfu/mlの有用微生物を含む水溶液200mlを、定植後第一日目において1回のみ灌注処理し、第二日目からの39日間、カンラン苗1株・1日あたり、水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例8と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における1株あたりのアブラムシ頭数を計測した。従って、上記40日間で供給した上記有用微生物の全供給量は、実施例8と同じく2.0×1011cfuであった。結果を表5に示した。
【0096】〔比較例16〕カンラン苗1株・1日あたり水200mlを上記点滴灌水装置にて灌水する以外は、実施例8と同様の操作を行い、定植後40日間経過後における1株あたりのアブラムシ頭数を計測した。結果を表5に示した。
【0097】
【表5】

【0098】表5の結果から明らかなように、本発明の植物栽培方法により連続的あるいは断続的に殺虫性を有する有用微生物を供給した場合は、同量の殺虫性を有する微生物を1回のみ供給した場合と比較して、より高い殺虫効果を得られることがわかる。これに対して、比較例13のように、同量の殺虫性を有する微生物を1回のみ供給した場合では、有効な殺虫効果が認められないことがわかる。
【0099】以上の結果から総合的に判断されるように、上記有用微生物の全供給量が同じであっても、1回のみの供給を行う場合と比較して、連続的あるいは断続的に供給する本発明の植物栽培方法を用いることにより、有用微生物の生物的防除能力が土壌干渉作用によって阻害されることを簡便かつ有効に防止できることがわかる。
【0100】
【発明の効果】本発明の植物栽培方法は、以上のように、有用微生物を植物の栽培に用いられる土壌に連続的あるいは断続的に供給する構成である。
【0101】それゆえ、土壌干渉作用によって有用微生物の生物的防除能力等の諸機能が阻害されることを防止することができるので、有用微生物を土壌中に定着させ、有用微生物が本来有する機能を開放系においても充分に発揮させることができる。従って、上記の構成によれば、植物の生育促進や、病害防除等の生物的防除を開放系においても安定して行うことができる植物栽培方法を提供することができる。さらに上記の構成によれば、有用微生物を連続的あるいは断続的に供給することにより、供給量を増やすことなく、従来よりも有効に有用微生物の諸機能を発揮させることができるという効果を奏する。
【0102】また、有用微生物の連続的あるいは断続的な供給は、該有用微生物を含む水溶液の点滴灌水により行うことにより、有用微生物の供給量を微量設定することが簡便に行えるため、簡便かつ低コストで有用微生物の連続的または断続的な供給を行うことができる。また、灌水と同時に有用微生物を供給できるため、有用微生物の分布域と、灌水に用いた水の分布域、すなわち、植物根圏とを等しく設定でき、有用微生物の諸機能を効率的かつ確実に植物に対して発揮させることができるという効果を奏する。
【0103】また、有用微生物が該有用微生物を含む液体肥料の供給により上記土壌に供給されることにより、有用微生物の供給と共に連続的または断続的に施肥を行えるため、植物の栽培期間中、液体肥料を一定量以上土壌中に存在させることができるという効果を奏する。また、有用微生物の連続的または断続的供給による土壌処理と同時に施肥が行えるため、農作業労力を軽減できるという効果を奏する。
【0104】また、有用微生物の供給を、植物の栽培期間中、該有用微生物が土壌中に一定量以上存在するように行うことで植物の根圏に有用微生物が存在している環境を絶えず形成し、土壌干渉作用を最小限に抑制することができる。
【0105】さらには、本発明の植物栽培方法は、たとえば、有用微生物の植物1株当たりの供給量を、1.0×102 〜1.0×1013コロニー形成単位/日とすることにより、土壌干渉作用をより有効に抑制することができるため、有用微生物の生物的防除能力等の諸機能阻害をより有効に防止できるという効果を奏する。
【0106】また、本発明の液体肥料は、以上のように、有用微生物と化成肥料とを含む構成である。
【0107】それゆえ、たとえば、有用微生物の連続的または断続的供給による土壌処理と同時に施肥が行えるため、農作業労力を軽減できるという効果を奏する。
【出願人】 【識別番号】596005964
【氏名又は名称】住化農業資材株式会社
【出願日】 平成11年4月27日(1999.4.27)
【代理人】 【識別番号】100080034
【弁理士】
【氏名又は名称】原 謙三
【公開番号】 特開2000−308418(P2000−308418A)
【公開日】 平成12年11月7日(2000.11.7)
【出願番号】 特願平11−119285