| 【発明の名称】 |
農業用マルチフィルム |
| 【発明者】 |
【氏名】田中 住典
|
| 【要約】 |
【課題】敷設作業性が良く、寄せ土を被った部分と、寄せ土を被っていない部分との生分解速度がバランスしており、しかも、収穫後、耕耘機等を利用してマルチフィルムごと土中へ鋤込む際には粉砕されやすいような農業用マルチフィルムを提供すること。
【解決手段】ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルからなる、少なくとも2つの層を有するフィルムであって、使用時、土壌面11となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成され、使用時、雰囲気面12となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成されることを特徴とする農業用マルチフィルム1。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルからなる、2つの層を有するフィルムであって、使用時、土壌面となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成され、使用時、雰囲気面となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成されることを特徴とする農業用マルチフィルム。 【請求項2】 ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルからなる、少なくとも3つの層を有するフィルムであって、使用時、土壌面となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成され、使用時、雰囲気面となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成され、さらに、両表層間に位置する層の組成が、両表層の組成の中間的範囲に設定されていることを特徴とする農業用マルチフィルム。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、農業用マルチフィルムに関するものであり、さらに詳しくは、敷設作業が容易であるとともに、使用後速やかに生分解され、土中への鋤込み作業が容易な農業用マルチフィルムに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、農業分野において、土壌の保温、土壌の保水、土壌中の栄養分の流出防止、土壌の団粒構造保持等を目的としてマルチフィルムが用いられている。そして使用後不要となったマルチフイルムは、埋め立て、あるいは焼却により廃棄処理されていた。しかしながら、このような廃棄処理には、多大な労力と費用が必要であるばかりでなく、環境にも負荷をかけるものであった。 【0003】このような状況下近年、特開平8−259823号公報、特開平9−235360号公報等の生分解性プラスチックを使用した農業用マルチフィルムが提案されている。 【0004】一般に、生分解性農業用マルチフィルムに求められる性能としては、■適度の伸縮性を有し、畝に密着しやすいことを以て敷設作業が容易なこと、■図1で示されたような農業用マルチフィルムの敷設状況において、寄せ土を被った部分と、寄せ土を被っていない部分との生分解速度が大きく異ならないこと、■収穫後、耕耘機等を利用してマルチフィルムごと土中へ鋤込む際に、粉砕されやすいこと、■土中に鋤込まれた後は速やかに分解すること、等が挙げられるが、これらの性能を兼ね備えたものは知られていない。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、敷設作業性が良く、寄せ土を被った部分と、寄せ土を被っていない部分との生分解速度がバランスしており、しかも、収穫後、耕耘機等を利用してマルチフィルムごと土中へ鋤込む際には粉砕されやすいような農業用マルチフィルムを提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者らは鋭意研究を行った。この結果、ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルを特定に構成した多層フィルムによって前記課題を解決できることを見いだし本発明に至った。すなわち本発明によれば、ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルからなる、2つの層を有するフィルムであって、使用時、土壌面となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成され、使用時、雰囲気面となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成されることを特徴とする農業用マルチフィルムが提供される。 【0007】さらに、ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルからなる、少なくとも3つの層を有するフィルムであって、使用時、土壌面となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成され、使用時、雰囲気面となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成され、さらに、両表層間に位置する層の組成が、両表層の組成の中間的範囲に設定されていることを特徴とする農業用マルチフィルムが提供される。 【0008】農業用マルチフィルムは一般に、図1で示されたようにして敷設される。すなわち、畝3に被覆され、固定を目的として、その両側に寄せ土4が被せられる。このような状況において、土壌中の水分は農業用マルチフィルム1の寄せ土を被っていない部分では、該農業用マルチフィルムの表裏の温度差によって凝縮し、水滴2として農業用マルチフィルム面に付着して、その後土壌面に滴下するというサイクルを繰り返す。 【0009】一方、農業用マルチフィルム1の寄せ土4を被った部分では、その表裏においてさほどの温度差がなく、上記のサイクルはきわめて穏やかなものである。 【0010】本発明の農業用マルチフィルム1は本質的に、分解において加水分解が優先される樹脂であるポリ乳酸と、分解において土壌微生物による生分解が優先される樹脂であるウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルから構成されるものであり、使用時、土壌面11となる層がポリ乳酸60重量部以上と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下からなる組成物から構成されるとともに、使用時、雰囲気面12(土壌面と反対の面で、大気に接する面を意味する)となる面の層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上と、ポリ乳酸40重量部以下からなる組成物から構成されていることを特徴とする。 【0011】従って、本発明の農業用マルチフィルムが敷設された場合、寄せ土を被っていない部分は、土壌微生物による生分解は受けにくいものの、加水分解が優先した分解を受ける。一方、寄せ土を被った部分は、加水分解反応による分解は受けにくいものの、土壌微生物による生分解を受けるようになる。この結果として本発明の農業用マルチフィルムは、作物の収穫後、寄せ土を被っていた部分と、そうでなかった部分の分解の進行度がバランスしているという特徴を有している。この特徴は、収穫後、耕耘機等を利用してマルチフィルムごと土中へ鋤込む作業、あるいは、栽培地から農業用マルチフィルムを除去する作業において有用である。 【0012】 【実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。本発明において用いられるポリ乳酸は、分子中に繰り返し構造単位として乳酸単位を含有するポリマーであり、具体的には、ポリ乳酸、または、乳酸と他のヒドロキシカルボン酸とのコポリマーである(本発明においては、これらを総称してポリ乳酸という)。そしてこの樹脂は、分解において加水分解が優先される樹脂である。 【0013】一方本発明において用いられるウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルとは、特開平4−189822号公報、特開平4−189823号公報、特開平5−105736号公報、特開平5−140284号公報、特開平5−140285号公報、特開平5−140286号公報、特開平5−140287号公報、特開平5−140288号公報等で開示された、末端基が実質的にヒドロキシル基であるポリエステルジオールに、その融点以上の溶融状態において、カップリング剤としてのジイソシアナートを添加することにより、高分子量化されたウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルである。そしてこの樹脂は分解において土壌微生物による生分解が優先される樹脂である。 【0014】なお、これらの樹脂はいずれも工業的に生産されているものであり、容易に入手することが可能である。 【0015】本発明においては、上記ポリ乳酸と、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルが組みあわされて用いられる。すなわち、本発明の農業用マルチフィルムは、使用時、土壌面となる層がポリ乳酸60重量部以上、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル40重量部以下を含む組成物から構成される。この層に占めるポリ乳酸の割合が60重量部を下回ると、寄せ土を被っていない部分の分解速度が遅くなり好ましくない。一方、使用時、雰囲気面となる層がウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル60重量部以上、ポリ乳酸40重量部以下を含む組成物から構成される。この層に占めるウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルの割合が60重量部を下回ると、寄せ土を被っている部分の分解速度が遅くなるばかりか、マルチフィルムの伸縮性が低下し、畝に密着させて敷設することが困難となり好ましくない。 【0016】また、本発明の農業用マルチフィルムは3層以上の構成をとることができるが、この場合、両表層の間に位置する層の組成は、上記した両表層の組成の中間的範囲に設定するようにする。このような範囲の組成を設定することによって、各層間の接着強度を高く保つことができるとともに、両表層の間に位置する層の分解挙動が、両表層の分解挙動の中間的なものとなる結果、両表層のいずれから優先して分解が進行しても、この層によって農業用マルチフィルム全体としての分解が遅延を受けるということがない。 【0017】なお、本発明においては必要により、ポリ−ε−カプロラクトン、ポロヒドロキシブチレート/ポリヒドロキシバリレート共重合体、変性デンプン系樹脂等の、ポリ乳酸、ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂を併用してもかまわない。 【0018】次に、本発明の農業用マルチフィルムを構成する各層の厚みについて説明する。本発明の農業用マルチフィルムは総厚み10〜100μm、より好ましくは15〜50μmである。そして本発明の目的から、土壌面となる層の厚みd1 と、雰囲気面となる層の厚みd2 の比d1/d2は0.5〜2となるようにするのが好ましい。さらに、本発明の農業用マルチフィルムが3層以上の構成をとる場合は、両表層間に位置する層の合計厚みは、両表層の合計厚みd1+d2を上回らないようにするのが望ましい。 【0019】以上述べた組成・構成を有する本発明の農業用マルチフィルムは多層インフレーション法、多層Tダイ法等公知の押出成形法を用いて製造されるものである。 【0020】 【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに詳細に説明する。なお、本実施例では以下の樹脂を用いた。 ポリ乳酸・・・カーギル・インコーポレーテッド製 商品名「エコプラ4200D」 ウレタン結合を含む脂肪族ポリエステル・・・昭和高分子(株)製 商品名「ビオノーレ#3001」 【0021】[実施例1〜2、比較例1〜2]2層押出機を用い、表1に示すごとき組成・構成のフィルムを製造した。なお、使用時土壌面となる層を内層、使用時、雰囲気面となる層を外層として示した。 【0022】 【表1】
【0023】[実施例3〜4]三層押出機を用い表2に示すごとくの組成・構成のフィルムを製造した。なお、使用時土壌面となる層を内層、使用時、雰囲気面となる層を外層、その間に位置する層を中層として示した。 【0024】 【表2】
【0025】[比較例3〜4]三層押出機を用い表3に示すごとくの組成・構成のフィルムを製造した。なお、使用時土壌面となる層を内層、使用時、雰囲気面となる層を外層、その間に位置する層を中層として示した。 【0026】 【表3】
【0027】実施例1〜4、比較例1〜4で得られた農業用マルチフィルムを耕作され、形成された畝に図1のごとく被覆、敷設した。 【0028】農業用マルチフィルム敷設の3月後、寄せ土を被った部分(寄せ土内)と、寄せ土を被っていない部分(寄せ土外)においてそれぞれ一部切り出し、フィルムの伸び率を測定(JIS K 6781に準拠)し、敷設前の値との比(維持率)を算出した。さらに、トラクターを用いて該フィルムを土中に鋤込んだ。この際の作業性を評価した。この基準を以下に示す。 【0029】<鋤込み作業性>A:フィルムが粉砕されやすく、土中への鋤込みが容易である。 B:フィルムが粉砕されにくく、土中への鋤込みが困難である。 【0030】以上の評価試験の結果を表4に示す。 【0031】 【表4】
【0032】表3より本発明の農業用マルチフィルムはたるみなく敷設が可能であり、また、寄せ土を被った部分と、寄せ土を被っていない部分との生分解速度バランスしており、収穫後の鋤込み作業も容易であることがわかる。これに対し、比較例1〜4で示されたものは、前記した生分解速度のバランス、敷設作業性、鋤込み作業性のうち一以上において難を残すものであった。 【0033】 【効果】以上説明したように本発明によれば、敷設作業性が良く、寄せ土を被った部分と、寄せ土を被っていない部分との生分解速度がバランスしており、しかも、収穫後、耕耘機等を利用してマルチフィルムごと土中へ鋤込む際には粉砕されやすいような農業用マルチフィルムが提供される。このような特徴を有する本発明の農業用マルチフィルムは農園芸用途において好適に用いられるものであり産業に利するところ大である。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000206473 【氏名又は名称】大倉工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年4月13日(1999.4.13) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2000−295929(P2000−295929A) |
| 【公開日】 |
平成12年10月24日(2000.10.24) |
| 【出願番号】 |
特願平11−104742 |
|