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【発明の名称】 ビート紙筒苗の強化法
【発明者】 【氏名】和田 勝夫

【氏名】村井 信仁

【要約】 【課題】高速移植において損傷や腰折れのないビート紙筒苗の強化法を得る。

【解決手段】育苗移植用ビート紙筒において、壌土1とピートモスを混合して調製する慣行床土3に主成分フライアッシュに水和化鉱物を混合した土壌固化剤4を混合し、紙筒用床土5を調製する。紙筒展開台6で展開した移植用ビート紙筒に、紙筒用床土5を衝撃土詰機7で土詰めする。土詰めした移植用ビート紙筒を反転し、播種器8で播種し所定日数育苗して移植用紙筒苗9を得る。また移植用ビート紙筒の2分の1に前記紙筒用床土5土詰めし、残り2分の1に慣行床土3を土詰めし、同様に播種し育苗してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される筒状の個別鉢体を連結して連続鉢とし、この連続鉢を重ね合せてその相互間を水溶性接着剤にて貼着し集合させた育苗移植用ビート紙筒において、土詰めする床土に主成分フライアッシュに水和化鉱物を混合した土壌固化剤を攪拌混合し、これを前記育苗移植用ビート紙筒に土詰めし育苗するビート紙筒苗の強化法。
【請求項2】ビート紙筒に土詰めする床土に前記土壌固化剤を重量比3%〜6%に攪拌混合した請求項1記載のビート紙筒苗の強化法。
【請求項3】前記土壌固化剤を攪拌混合して調製する床土を育苗移植用ビート紙筒の二分の一に土詰めし、残り二分の一に土壌固化剤を混合しない床土を土詰めし育苗する請求項1記載のビート紙筒苗の強化法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、育苗移植用ビート紙筒の床土に土壌固化剤を攪拌混合し育苗するビート紙筒苗の強化法に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、ビートの栽培はほとんどが育苗移植用ビート紙筒苗(以下、紙筒苗と略す)の移植栽培である。その理由は、除草作業が容易であることから直播栽培より省力的であり、生育の安定性も高いことにある。用いられる紙筒は、例えば、1冊の本数1400本、1本が径2cm、高さ13cmの日本甜菜製糖株式会社製のものである。従来、この紙筒に土詰めする床土は、業者が販売する一般黒土または本圃の腐植に富む壌土又は植壌土に、容積比約15%のピートモスを混合し含水率30%から35%に調製している。
【0003】ビートの育苗は、ハニカム状に展開した紙筒に床土を土詰めし、上面にコーテイング種子を播種して覆土し、苗床で育苗する。育苗された紙筒苗は、例えば、苗の自動振り分け装置付き2条用移植機(東京、コロナ社1996年 刊、生物生産機械ハンドブック、P780参照)や特開平10−164997号所載のものなどによって本圃に移植される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】最近、ビート栽培の経営規模が拡大し、より移植作業の高能率化が望まれるようになった。また、ビートに加えて野菜作を導入しているケースが多く、そのための余剰労働力を生み出さねばならない状況がある。したがって、ビートの移植作業は必然的に高速化の傾向にある。慣行の床土を紙筒に詰めて育苗し、所定の速度で移植作業をすれば、移植精度が保たれる。しかし、高速移植作業では紙筒の腰折れなどが発生し、移植精度が乱れ、収量低下をきたすという問題点がある。その原因は、ビート紙筒苗の機械的強度が高速移植に耐えられないことにある。
【0005】ところで、土壌の機械的強度を高める手段として、土壌に固化剤を混合し固形化する試みがあり、固化剤にはセメント系、石灰系、高分子系など多くの種類のものが提案されている。発明者らは、紙筒苗の機械的強度を高め移植時における腰折れなどを無くするには、紙筒に土詰めする床土の強度を高めればよいことに着目した。
【0006】その観点から、比較的価格が安く、作物に害がなく、取り扱いが簡単なものとして、人工ポラゾンである主成分フライアッシュに水和化鉱物を含有させた土壌緑化安定団粒剤(商品名パルコートグリーン、札幌市、シエエス化学工業株式会社製)が法面保護に効果があることに注目し、これの適量を床土に混合することによってビート紙筒苗の強化法を提案するに至った。パルコートグリーンは灰緑色の微粉剤である。
【0007】上記土壌緑化安定団粒剤の固化作用は、吸水したフライアッシュが水和鉱物によって水和反応を起こし、速やかにエトリンガイドを生成し、フライアッシュと土粒子とを包囲しながら土壌を迅速に固化する。さらに、上述の水和反応で生じた水和物と土粒子の鉱物などとがポゾラン反応し、より強固に土壌を固化するのである。
【0008】
【課題を解決するための手段】紙または紙のような薄膜を展開することにより形成される筒状の個別鉢体を連結して連続鉢とし、この連続鉢を重ね合せてその相互間を水溶性接着剤にて貼着し集合させた育苗移植用ビート紙筒において、土詰めする床土に主成分フライアッシュに水和化鉱物を混合した土壌固化剤を攪拌混合し、これを育苗移植用ビート紙筒に土詰めしビート苗を育苗する。また、ビート紙筒に土詰めする床土に前記土壌固化剤を重量比3%〜6%に攪拌混合して育苗する。
【0009】また、ビート紙筒への土詰めに関し、前記土壌固化剤を攪拌混合して調製する床土を育苗移植用ビート紙筒の二分の一に土詰めし、残り二分の一に土壌固化剤を混合しない床土を土詰めしビート紙筒苗を育苗してもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】慣行のように、一般黒土または本圃から採取した腐食に富む壌土または植壌土に容積比約15%のピートモスを混合し、含水率30%ないし35%に調製して床土とする。そして前記床土に適量のパルコートグリーンを攪拌混合し、ビート紙筒用床土とする。上記適量のパルコートグリーンは重量比3%〜6%で床土に攪拌混合することが好ましい。
【0011】育苗は、慣行のように、展開串でハニカム状に展開したビート紙筒を展開枠に載せ、前記床土を紙筒全高に土詰めし展開枠とともに反転して展開枠を外し、展開枠によって紙筒の上部表面に形成された播種穴に、1粒ずつコーテイング種子を播種し覆土する。そして播種したビート紙筒をビニールハウス内の苗床に置き十分に散水する。育苗期間約40日の間は床土が乾燥しない程度に適宜潅水し育苗する。
【0012】また、ビート紙筒への土詰めは、紙筒の二分の一に土壌固化剤を混合しない慣行の床土を詰め、残り二分の一に土壌固化剤を混合した床土を土詰めして紙筒を反転してもよい。すなわち、反転後の紙筒は下部又は上部の二分の一が土壌固化剤を混合した床土になる。このビート紙筒に、上述のように播種し覆土し、ビニールハウス内の苗床で育苗する。
【0013】
【実施例】図1は、発明を実施する概略のフローチャートの一例である。図1のようのに、本圃の壌土1に容積比15%のピートモス2を混合して慣行床土3を作る。前記壌土1は業者が販売する一般黒土でもよい。慣行床土3に土壌固化剤4を混合し紙筒用床土5を作製する。紙筒用床土の所要量は1冊1400本の紙筒に対し40kg〜45kgである。土壌固化剤は前述した商品名パルコートグリーンである。紙筒は紙筒展開台6に展開し、衝撃土詰機7で加振し土詰めする。土詰めした紙筒にコーテイング種子700粒を紙筒1本に1粒ずつ一度に播種する。播種した紙筒はビニールハウス内で適切な潅水のもとに育苗し、移植用紙筒苗9にする。
【0014】移植用紙筒苗9の苗素質は、表1のとおりである。表中の区分0%は土壌固化剤を混合しない慣行床土で育苗したもの、1/2下6%は紙筒の下部二分の一に土壌固化剤6%を混合した床土を土詰めし、上部二分の一に慣行床土を土詰めしたものである。3%、6%は、慣行床土に土壌固化剤を重量比で3%、6%混合した床土である。播種日は平成10年3月21日であり、慣行床土は一般黒土に容積比15%のピートモスを混合したものである。調査値は10株の平均値であり、表中100位の数値は対比指数である。
【0015】表1のように、土壌固化剤を混合した床土で育苗した紙筒苗は、慣行床土の苗素質に比べ、葉長、葉数、1本当り生茎葉重ともすぐれていた。表2は表1の苗10株について紙筒苗重量および水分を調査した平均値であり、原物重、乾燥重とも土壌固化剤を混合した床土の紙筒苗が、土壌固化剤を混合しない床土のものより良好であった。
【0016】
【表1】

【0017】
【表2】

【0018】次に、表1の紙筒苗の荷重による撓みと折損荷重を測定した。計測器は、図2、図3に示す自作のものである。図2、図3において、10は基板であり、中央部に幅5cm、長さ35cmの開口部11を切抜いている。12は、左右片が対向するブラケットであり、前端を開口部11の後縁部中央にのぞませ、開口部11と平行に基板10の上面に固定されている。ブラケット12の内側に一端をヒンジピン13で枢着したレバー14が、開口部11の縦方向中心線に沿ってヒンジピン13周りに上下旋回動自在に取付けられている。レバー14は、幅14mmであり、ヒンジピン13から前方への長さが32cmである【0019】15は門形フレームであり、基板10の前端部表面に開口部11の前端部をまたいで垂直に固定されている。16は、門形フレーム15の下部中央に形成した窓部であり、その中をレバー14の前端部が自在に上下動できるようになっている。門形フレーム15の背面中央部に縦方向に沿って固着したシリンダー18に、昇降ロッド17が摺動自在に挿入され、その下端面がレバー14の前端部上面に接している。昇降ロッド17は、下端が角錐になっていて、その頂点がヒンジピン13から30cm前方でレバー14に接している。昇降ロッド17の上端には載荷台19が水平に固定され、100g単位の測定用重りを載せるようになっている。20は物指であり、門形フレーム15の上端部前面に左右端を固定したU形金具21に取付けられている。Pは紙筒苗である。
【0020】紙筒苗の撓みと折損荷重の測定は、レバー14の前端を持ち上げ、紙筒苗Pをヒンジピン13から15cm前方位置で基板10の開口部11と直交に置き、紙筒苗Pの上面にレバー14を下げて接触する。載荷台19に重りを載せると紙筒苗Pが撓むので、載荷台の下方移動を物指20で読み取り、重りと撓み関係を求めた。すなわち、撓みは、開口部11の幅が5cmなので、紙筒苗の5cm間の中央撓みである。折損荷重の測定は、基板10上の幅5cmの開口部11と直交に紙筒苗Pを置き、レバー14を紙筒苗Pの中央部に接し、載荷台19に載せたカップに注水して荷重を増加し、紙筒苗Pが折損したところで注水を止め、カップと水量の合計から折損荷重を求めた。図3は紙筒苗Pの折損時の状態である。表3は、測定結果である。
【0021】表3中における4月29日(39日苗)の調査は、前日に潅水したものを当日さらに潅水し、3時間放置後に調査した。5月2日(42日苗)の調査は4月29日調査のものをそのまま放置して調査した。数値は調査本数各10本の平均値であり、100位の数値は対比指数である。表3に示すように、床土に土壌固化剤を混合した紙筒苗は、土壌固化剤を混合しない床土のものに比べ、明らかに強度が増加していた。
【0022】
【表3】

【0023】紙筒苗は植付け時に移植機の落下筒内を開溝器が開けた地面に向かって落下する。したがって、紙筒苗が地面に落下する時の床土脱落量に関し、根部を下方にし自然落下高さ1m、落下回数3回で試験した。落下する面は条件を一定にするため、コンクリート面とした。表4は試験結果である。
【0024】
【表4】

【0025】落下による床土脱落量は、表4のように、床土に土壌固化剤を混合した場合が、混合しない場合より脱落割合が小さくなる傾向が認められた。この場合は、水分調整法と関連するが、大きな差はなかった。
【0026】次に、異なる慣行床土として植壌土にピートモスを容量で15%混合した床土に、前記土壌固化剤を攪拌混合した床土とを紙筒に土詰めし、播種日平成10年5月2日の25日苗について調査した。表5は、紙筒苗重量と茎葉生重の調査結果であり、土壌固化剤を混合した床土の苗紙筒苗が、慣行床土での紙筒苗(区分0%)に比べ、重量が大きくなった。すなわち、土壌固化剤を混合した床土は、充填度がよい土詰めができたものである。
【0027】
【表5】

【0028】
【表6】

【0029】紙筒苗は移植機において分離ローラで挟まれて分離される。したがって、ベンチテストで移植機を通過させた後の欠苗と弱苗割合を調査した。表6はその結果である。土壌固化剤を混合した床土の紙筒苗は、土壌固化剤を混合しない床土の苗より健苗割合が高く、土壌固化剤を混合した効果が認められ、折れのない高精度移植が可能なことが裏付けられた。
【0030】表5に示した土壌固化剤を混合した場合と混合しない場合の紙筒苗について、移植機を通過させる前と通過後の撓みおよび折損荷重を、図2の測定器で測定した。測定本数は6本である。図4は撓み、図5は折損荷重を示す棒グラフあり、図中の白抜き棒の機械処理前は移植機を通過させる前、縞模様棒の機械処理後は移植機を通過させた後の値である。図4、図5のように、土壌固化剤を混合した床土の紙筒苗が、撓み、折損荷重とも土壌固化剤を混合しない床土のものより大きな値となり、苗の強化が認められた。
【0031】また、 前述した表5の紙筒苗について、落下による床土の落下量を測定した。調査本数10本、根部を下方にしコンクーリト面への落下高さ95cm、落下回数1回、表7は測定結果の平均値である。土壌固化剤を混合した床土の紙筒苗が、混合しないものより脱落量が少なかった。すなわち、床土に土壌固化剤を混合すると、移植機で移植する際に、床土の脱落(紙筒苗の破損となる)が少ない紙筒苗が得られるのである。
【0032】
【表7】

【0033】表8は、移植機を通過(機械処理と表示)させたときの床土脱落量を、作業速度を変えて行なったベンチテストの結果である。この調査は、実際に移植作業を行なったとき、土壌固化剤が床土脱落量に対しどのように影響するかを見るためのものである。テストの結果は、作業速度の上昇は脱落量を増加するが、土壌固化剤を混合すると紙筒からの床土脱落量が減少する傾向が認められた。
【0034】
【表8】

【0035】次に図6は、表5の紙筒苗について圧縮量を測定したグラフである。図中、0%は土壌固化剤を混合しない床土のもの、3%、6%および紙筒苗の1/2下6%は、土壌固化剤を3%、6%(重量比)および6%混合した床土を紙筒の下部二分の一に混合し、上部二分の一に慣行床土を土詰めしたものである。試験は、図2の計測器の開口部11に該部を切り抜いた板をはめ込んで、開口部11の箇所に紙筒苗2本を横並びに開口部11と直交に置き、レバー14(接触幅14mm)て加圧した。横並び2本は、図2で説明したヒンジピン13から前方へ15cmの箇所を中央部にして前後に並べた。
【0036】試験結果は、床土に土壌固化剤を加えない場合は荷重200gのとき物指目盛りが92.4mmであるのに対し、土壌固化剤6%混合が90.5mm、3%混合が91.2mm、1/2下6%が89.5mmで、いずれも土壌固化剤を混合しないものよりも圧縮量が小さかった。また、200g〜1,000g間の圧縮量の変化も、土壌固化剤を混合しない紙筒苗に比べ圧縮量が小さく、土壌固化剤を混合した床土がビート紙筒苗を強化していることが認められた。
【0037】表9は収量の調査結果であり、表1に示した播種日平成10年3月21日の紙筒苗を、平成10年4月29日ビニールハウスに移植し、1条7株2反復で栽培し、14株を平成10年9月23日に収穫した。収量において、床土に土壌固化剤を混合した場合の収量は、土壌固化剤を混合しない床土の場合に比べ、根周、根長が大きく、平均重量が25%以上増加していた。この収量増加は、土壌固化剤を混合した床土での苗が、土壌固化剤によって保水性が良くなることと土壌固化剤が含む微量要素の肥効から健苗になったことによるものと考えられる【0038】
【表9】

【0039】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明は、慣行床土に比較的安価な土壌固化剤を攪拌混合してビート用紙筒に土詰めすることによって、ビート紙筒苗の機械的強度を強化できる方法を提供できるものである。したがって、本発明によれば紙筒苗の腰折れを防止し、本圃における高速移植作業において移植精度の乱れが無い移植が可能になり、ビート栽培における省力化ならびに収量増加に大きな効果を収めることができる。
【出願人】 【識別番号】399020407
【氏名又は名称】シエエス化学工業株式会社
【出願日】 平成11年4月14日(1999.4.14)
【代理人】 【識別番号】100073829
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 一男
【公開番号】 特開2000−295925(P2000−295925A)
【公開日】 平成12年10月24日(2000.10.24)
【出願番号】 特願平11−106134